データ分析基盤構築、メルマガ自動生成などEC事業者のAI活用事例も。「カラーミーショップ byGMOペパボ」の「AIエージェント機能」について聞いた

GMOペパボは「カラーミーショップ byGMOペパボ」において、「カラーミーショップ AIエージェント」を「プレミアムプラン」利用ショップ向けに先行導入した。その背景などを取材した

藤田遥

7:00

GMOペパボは4月27日、ECサイト構築サービス「カラーミーショップ byGMOペパボ(カラーミーショップ)」の「プレミアムプラン」利用ショップ向けに、管理画面のチャット上でショップの情報を確認できる新機能「カラーミーショップ AIエージェント」を先行実装した。機能の内容、実際にショップがどのようにAIを業務に活用しているのか、その具体例や機能などについて、GMOペパボの寺井秀明氏(執行役員 兼 EC事業部長)に聞いた。

受注や商品情報の参照が行える「カラーミーショップ AIエージェント」

――「カラーミーショップ AIエージェント」について教えて下さい。機能を利用してショップさんが実現できること・メリットは何でしょうか。

GMOペパボ 寺井秀明氏(以下、寺井氏):「カラーミーショップ AIエージェント(以下、AIエージェント)」は、管理画面のチャットパネルからショップ情報を直接参照できる機能です。2026年4月27日に「プレミアムプラン」利用ショップさまへ先行リリースしました。同年3月から提供している「カラーミーショップAIコネクター(リモートMCPサーバー)」では、Claudeなどの生成AIツールを利用していることが前提でしたが、「AIエージェント」はすぐに「カラーミーショップ」の管理画面から利用できます。

現時点では、受注・商品・顧客情報などの参照(読み取り)に対応しており、日本語で話しかけるだけでショップの状況をすばやく把握できます。具体的には「今月の売り上げを教えて」「先月、一番売れた商品は?」「在庫が残り5件以下の商品を一覧化して」といった質問に、管理画面を開いてメニューをたどらなくても即座に回答が得られます

「カラーミーショップ AIエージェント」の使用画面
「カラーミーショップ AIエージェント」の使用画面(画像は「カラーミーショップ」サイトからキャプチャ)
「カラーミーショップ AIエージェント」の使用画面(画像は「カラーミーショップ」サイトからキャプチャ)

毎朝の売上確認、在庫チェック、社内共有用のデータ集計といった日常的なルーティン業務をスムーズにこなせる点が最大のメリットです。「ChatGPT」のように会話感覚でEC運営に活用できるため、これまでAIツールに馴染みのなかった人でも、入口として使いやすい設計となっています。なお、商品情報の編集、注文ステータスの変更といった更新操作は、今後順次対応を拡大する予定です。

「リモートMCPサーバー」提供で商品情報の更新が行いやすく

――「リモートMCPサーバー」提供開始から約2か月経ちました。ショップさんの利用状況、ショップさんから寄せられた意見などを教えて下さい。

寺井氏:利用状況として多いのは、商品情報の更新への活用です。仕入れ商品を多数扱うショップさまから特に大きな反響がありますね。

パッケージ変更、価格改定、内容量の変更といった商品情報の更新を、これまでは担当者がマクロやCSVなどを使いながら都度対応していました。しかしMCP連携後は「この品番をこの価格に直して」と指示するだけで完了し、仕様変更に伴う説明文の一括書き換えなども自然言語の指示で対応できるようになっています。数万アイテムを扱うショップさまからは「劇的に改善した」「本当に助かっている」といった声をいただいています。

また、メルマガ作成やアウトレット商品登録への活用も見られます。「賞味期限が近い商品でアウトレット商品を登録して」「新商品を紹介するメルマガを作って」といった指示だけで一連の作業が完了するケースも出てきており、文章生成を伴う業務でのMCP活用が広がっています。

詳しくは後述しますが、入金消し込みフローを独自に構築したショップさまもおり、私たちが想定していなかったユースケースも次々と生まれています。

データ分析基盤構築、メルマガ自動生成の事例も

――EC業界において、AI検索からの流入、業務効率化などさまざまな面で存在感が大きくなってきています。「カラーミーショップ」利用ショップにおけるAIへの考え方・取り組み状況などを教えて下さい。

寺井氏:弊社が「カラーミーショップ」利用中のEC事業者さん312人を対象に実施したアンケートでは、約71%が「何らかの形でAIを活用している」と回答しており、EC事業者においてもAI活用への関心と実践が急速に広がっていることが確認できました。

「カラーミーショップ」利用ショップのAI利用状況(n=312、出典:カラーミーショップ)
「カラーミーショップ」利用ショップのAI利用状況(n=312、出典:カラーミーショップ)

具体的な活用業務としては、「商品説明文の作成が最多」で、「データ分析(受注状況の分析)」「SNS投稿」「画像制作」「カスタマー対応」などが続きました。効果としては約半数が「作業時間の短縮」を実感している一方、「売り上げへの直接貢献」を感じている人は少数で、現状は生産性向上フェーズにある人が多いという結果でした。

AI利用者における、業務での活用内容(n=222/回答数:442件(複数回答可)、出典:カラーミーショップ)
AI利用者における、業務での活用内容(n=222/回答数:442件(複数回答可)、出典:カラーミーショップ)
AI利用者における、活用での効果(n=222、出典:カラーミーショップ)
AI利用者における、活用での効果(n=222、出典:カラーミーショップ)

――実際に活用しているショップさんの事例と活用方法を教えて下さい。

寺井氏:実際にAIを積極的に活用しているショップさまの事例を2社紹介します。

1つ目は食品EC事業者さん(製造業)です。売上急増を機に「Claude Code」を活用し、受注・発送・在庫・会計・社内チャットを一本化した自社システムを、コードを一行も書かずに構築。MCP連携では「アウトレット商品を30本作って」と指示するだけで「カラーミーショップ」上に商品登録されるほか、メルマガの自動生成にも活用しています。

社内に仕組みを浸透させるため、「プロンプト形式の指示書テンプレートを埋めてClaudeに貼るだけ」という仕組みを整備し、AIに不慣れなスタッフでも一定品質の指示が出せるよう標準化しています。また「MCPで試してみて、頻度が高い業務はシステム化する」という使い分けの考え方も、効率化を進める上で重要な指針になっているとのことです。

2つ目は生活雑貨を販売されている事業者さん。「Search Console」、カラーミーAPIデータ、Google広告、自社経営データをClaudeに統合し、横断的なデータ分析基盤を構築。壁打ちとして活用するなかで「特定の購入層のリピート率が通常購入者の◯%しかない」という新たな発見があり、2026年の施策立案に直結したとのことです。

一方で「自分たちがすでに考えたことを提案してくる段階で止まりがち」という課題感も持っており、「AIが自社の文脈をより深く理解した上で、次の一手を提案できるようになることを期待している」と話していました。AIの活用効果を最大化するには、データ接続の環境整備と自社固有の情報をいかに蓄積させるかがカギになると実感しているようです。

決裁権者の判断基準をAIに学習させている事業者さんもいます。「判断責任を個人に帰さない設計が、組織全体へのAI浸透を後押ししている」とのことで、AI活用における組織設計の工夫として非常に示唆に富む事例です。

商品管理面では、数万アイテムを抱えるなかで日々発生するパッケージ変更、価格改定、内容量変更といった商品情報の更新を、MCP連携により自然言語の指示で一括対応できるようになりました。「この品番をこの価格に直しておいて」と指示するだけで完了するほか、グループ登録も「劇的に改善した」とのことです。

さらに「Claude」を活用し、明細情報を元に「カラーミーショップ」側の受注情報の入金ステータスを一括変更する入金消し込みフローも独自に構築しており、通常の入金であれば8~9割をこの方法で処理しています。

2社に共通することは「AIを使う」から「AIに任せる」への意識転換です。業務を細かいステップに分解してどこをAIに委ねるかを設計すること、そしてスタッフが安心して使える仕組みを整えることが、組織全体への浸透と効果最大化につながっています。一方で、AIが自社の文脈や判断基準を十分に理解するまでには一定の時間と情報の蓄積が必要なため、そこは課題として各社が取り組んでいます。

GMOペパボ 執行役員 兼 EC事業部長の寺井秀明氏
GMOペパボ 執行役員 兼 EC事業部長の寺井秀明氏

AIに慣れていないショップには「どこをAIに任せるか考えて」一歩を踏み出してもらう

――3割のショップさんは「AIを活用していない」と回答しています。そういったショップさんを対象に、AI活用をサポートする取り組みを行っていますか。

寺井氏:複数の形で取り組みを進めています。まず機能面では、AIの活用レベルに応じた段階的な提供を行っています。文章生成を支援する「カラーミーAIアシスタント」から、管理画面上でチャットによる情報参照ができる「AIエージェント」、外部AIツールと連携できる「AIコネクター(MCP連携)」、開発者向けの「CLI & Skills」まで、4段階で用意しています。「まずはチャット感覚で売り上げを確認するところから」と、AIに不慣れな人でも入口を選べる設計にしています。

AI活用レベルに応じて機能を提供(画像提供:カラーミーショップ)
AI活用レベルに応じて機能を提供(画像提供:カラーミーショップ)

サポート面では、「プレミアムプラン」の「ECアドバイザー」が月に一度ショップの運営状況を把握した上で、そのショップに合ったAI活用のユースケースを個別に提案しています。

情報発信面では、オウンドメディア「よむよむカラーミー」を通じて、ショップさまの活用事例、AI機能の使い方ガイドを継続的に発信しています。また、AIをテーマにしたセミナーも行っており、「業務を分解して、どこをAIに任せるか考えてみよう」といった実践的な内容で、具体的な一歩を踏み出すきっかけ作りを行っています。今後もこうした情報発信やセミナーを継続・拡充していく予定です。

情報セキュリティに不安を抱いている人には、「AIだから特別なルールが必要」と過度に身構える必要はなく、従業員や外部委託先に業務を任せる際と同様の情報管理ポリシーで対応できることを伝えています。学習利用をオフにできる生成AIもあるため、まずは小さな単位で試すことをお勧めしています。

AIエージェントが正確に情報取得+適切な提案が行えるよう、整備しておくことが大切

――米国ではAIエージェントを活用し、検索から購入まで行えるサービスも登場しています。今後、日本国内ではどのような流れになると思いますか。また、EC事業者が今取り組んでおくと良いこと、注目しておくべきポイントを教えて下さい。

寺井氏:米国ではGoogleとUlta Beautyが共同で、Googleの「AIモード」を通じて商品の検索・比較・購入までをシームレスに完結させるエージェント型コマースの展開を開始しています(参考:「検索から「エージェント」へ。Googleと米国美容大手が挑む「UCP」活用によるAIで検索→購入までできる買い物体験とは 」)。

こうした流れは日本においても遅からず到来すると見ています。消費者がAIエージェントを介して商品を発見・購入するようになれば、AIが読み取りやすい形で情報を整備しているショップとそうでないショップとの間で、集客や売り上げに大きな差が生まれる可能性があります。「カラーミーショップ」でも、「ChatGPT」上の商品紹介をきっかけに購入へつながるケースが増えており、AI経由の流入は昨年同月比で約6倍に伸長しています(「カラーミーショップ」調べ)。

EC事業者の皆さんに今から取り組んでほしいことは、まず「AIが使いやすいショップ」への情報整備です。商品説明、価格、在庫、仕様などの情報が構造的に整理されていると、AIエージェントの正確な情報取得と適切な提案につながります。次に、AIを業務の外側に置くのではなく、日常の業務フローのなかに組み込む経験を積み重ねること。MCP連携などを通じてAIが自社のデータを参照できる環境を整えておくことが、エージェント型コマースへの対応力を高める基盤になります。

弊社としても、受注・決済データをコアに持ちながら、さまざまなAIクライアントと柔軟につながれる環境作りを加速させることで、「カラーミーショップ」を利用するEC事業者さんがエージェント型コマースの時代においても競争力を持てるよう、引き続き取り組んでいきます。

人もAIも使いやすいプロダクト作り、環境作りを進める

――今後の施策や展望を教えて下さい。

寺井氏:今回の一連のAI機能は「どのショップさんでも、自分のペースでAIを活用できる環境」を整えるという方針の元、設計しています。先述の通り、段階別にサービスを用意しているのはそのためです。

機能拡充の面では、現在「AIエージェント」は「プレミアムプラン」への先行提供となっていますが、今後は対象プランを順次拡大していく予定です。またAIコネクターで対応している操作範囲も、受注・入金ステータスの変更、商品ごとのSEO設定の編集、商品画像の操作など、ショップさまから要望の多い領域を中心に順次広げていきます。安心してAIを深く使っていただけるよう、誤操作防止機能の整備もあわせて進めていく考えです。

中長期的な方向性としては、「人が使いやすいプロダクト」であると同時に「AIが使いやすいプロダクト」へと進化させていくことを重視しています。APIエコシステムをさらに拡充し、MCPを介して生成AIが「カラーミーショップ」に接続することで、AIが「カラーミーショップ」の情報を参照しデータをAIに活用してもらいやすい基盤を整えていきます。

私たちが最終的にめざしているのは、AIがEC事業者さんの「事業成長のための経営参謀」として機能する世界です。日常業務の自動化にとどまらず、販売傾向の分析、在庫・製造計画の提案、施策の優先度判断といった経営判断の支援まで、AIが担える領域を広げていきたい。「カラーミーショップ」に蓄積された受注・決済データをコアに、AIがEC事業者さんと並走できる環境を整えることで、SMB層をはじめとする国内のEC事業者さんの流通額向上と事業成長に貢献していきます。

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