新型コロナウイルスの「影響が出ている」企業は6割以上。製造業や卸売業に大きな影響
東京商工リサーチは2月20日、「新型コロナウイルスに関するアンケート」の調査結果を発表した。「世界の工場」である中国国内の企業活動の停滞が、日本国内企業にも影響を及ぼしている。
アパレルではユニクロやアダストリアなどが、新商品やECサイトの予約商品の一部で発売や到着が遅れる可能性があるとECサイトなどで発表。他の業界でも中国からの商品調達が遅れているといった声があがっている。
今回調査は2020年2月7日~16日にインターネットでアンケートを実施し、有効回答12,348社を集計・分析した。
6割以上の国内企業に影響が出ている
国内企業に新型コロナウイルスの影響を聞いたところ、最も多かった回答は「現時点で影響は出ていないが、今後影響が出る可能性がある」(43.7%)。次いで「現時点ですでに影響が出ている」(22.7%)で、6割以上の企業が影響があると考えていることがわかった。
「すでに影響が出ている」と回答した企業の割合を企業規模別に見ると、資本金1億円以上の大企業は31.5%。それに対し、資本金1億円未満の中小企業は20.6%となり、大企業が10.9ポイント上回った。グローバルで事業を展開し、中国との取引が多い大企業ほど、より早く影響が出ていると考えられる。
「出張の中止・延期」をする企業が4割
「すでに影響が出ている」と回答した企業のうち、2,745社が影響内容について回答した。その中で最も多かったのは「現地への出張の中止、延期」(39.3%)。「現地サプライヤーからの仕入れが困難となった」(35.9%)、「売り上げが減少」(32.7%)、「営業日数が減少」(20.5%)が続いた。
また、「現地取引先の事業停止や倒産の発生」(4.9%)との回答もあった。新型コロナウイルスの発生から約2か月が経過し、すでに中国では企業の信用度に大きな変動が生じていると考えられる。
「今後影響が出る可能性がある」と回答した企業のうち、影響内容について回答した5,133社の中では「売り上げの減少」(42.3%)がトップ。次いで「現地サプライヤーからの仕入困難化」(30.1%)。「現地取引先の事業停止や倒産の発生」を懸念する企業は6.6%だった。
製造業に大きな影響
産業別に影響を見ると、卸売業や運輸業、製造業の約3割が「すでに影響が出ている」と回答。「今後影響が出る可能性がある」は製造業が最多(51.7%)、次いで卸売業(47.3%)。世界的なサプライチェーンを築く製造業や、価格競争などで国境をまたぎ商品を輸入する卸売業などへの影響が大きい。
小売業は23.5%が「すでに出ている」と回答。「今後出る可能性」と答えた割合は42.4%にのぼった。
観光バスの運行会社が含まれる運輸業では「影響なし」が3割を割った。訪日観光客の減少や、国内旅行の自粛等が背景にあるとみられる。
対応状況について聞いたところ、「対応を取る可能性がある、対応を取っている」(23.9%)は約4分の1にとどまった。一方「対応を取っていない」は76.1%となった。
企業規模別では、大企業の39.5%が「対応を取る可能性がある、対応を取っている」と回答したのに対し、中小企業は20.2%で企業規模により対応に大きな差が生じている。
サプライチェーンや拠点の在り方を再考
「対応を取る可能性がある、対応を取っている」と回答した企業のうち、対応内容について2,638社が回答した。
最多となったのは「中国以外に所在する企業からの調達強化」(36.9%)。また、「中国への新規進出計画の凍結・見直し」(7.5%)、「中国拠点の撤退・縮小」(3.9%)といった回答があった。国内企業の多くがサプライチェーンや拠点の在り方を再考しているようだ。
半数が中国景気への影響を懸念
今後の懸念について聞いたところ、11,352社から回答があり、最も多かった回答は「中国の消費減速、景気低迷」(51.3%)だった。中国景気が国内企業の受注や業績に直結していることを物語っている。