新型コロナで化粧品の購入行動に変化? コスメのタッチアップはどうなった?
アイスタイルが6月11日に発表した「@cosmeベストコスメアワード2020上半期 トレンドキーワード」は、「おうち美容」「ハンドケア重視」などがあがった。新型コロナウイルス感染症の影響がトレンドや売れ筋商品に反映されている。「トレンドキーワード」、は2019年11月1日~2020年4月30日に発売した新商品に寄せられた「@cosme」内の口コミデータを元に4つ抽出したもの。
アイスタイルが@cosme会員を対象に実施したアンケート調査の結果を踏まえ、アイスタイルのリサーチプランナー西原羽衣子氏と原田彩子氏がコロナの影響によるユーザーのEC利用の変化や商品選定の傾向も分析した。
コスメ・美容商品にもコロナの影響あり
スキンケアの関心が高まる
アイスタイルは「@cosme」会員に対して「美容とスキンケアに関するアンケート」を実施。会員の65%が「新型コロナウイルスの影響でスキンケアへの関心が増えた」と回答。スキンケア商品にかける金額も33%が「増えた」という。
トレンドキーワードと同時に発表した「@cosme2020上半期ベストコスメ」にランクインした商品も、上位10位中7商品がスキンケア商品・化粧下地などのベースメイク商品だった。
以前から美しい肌への意識がユーザー心理にありました。コロナの影響により化粧をせずに家で過ごす時間が増えたことや、手を洗うタイミングで鏡を見るなど、自分の素肌を見つめ直す機会が増えたことでスキンケアアイテム人気が加速したと考えられます。(アイスタイル リサーチプランナー 西原羽衣子氏)
ECで商品を購入したユーザー増加
EC利用や意識についてもアンケートを実施。「コロナウイルスの影響でECで化粧品を買うこと」について聞いたところ、48%が「増えた」と回答した。
新型コロナウイルス終息後の購入方法は、29%が「化粧品をECで購入する機会が増える」と回答した。
アイスタイルが運営する化粧品ECサイト「@cosme SHOPPING」でも購入者数・購入金額ともに増加。百貨店の休業に伴い、臨時で取り扱った百貨店コスメ商品の売れ行きが好調だったという。「『店舗休業で購入できず困っていたが買えて良かった』という声がSNS上で見られた」(アイスタイル広報)
「実際に試せない」ことはメリットでもありデメリットでもある
「@cosme」に寄せられた口コミについても分析。コロナウイルスに関連した内容では「美容部員に化粧をしてもらう『タッチアップ』ができない」という記述が目立ったという。しかし「『タッチアップができない』という口コミ内容は、必ずしもネガティブな評価につながるわけではなかった」
タッチアップのできない状況でも肌診断や美容部員のアドバイスを受けることで「教えてもらいながら自分で練習できるから良いかも」といった内容がありました。
一方で「最適な製品選択ができているか不安」というネガティブな内容も見受けられました。「自分の肌の色と合っていなかった。試さずに妥協して買ったら駄目だと反省した」という購入を悔やむ声もあり、ECでのコスメ商品購入にはまだ課題があると見受けられます。(アイスタイル リサーチプランナー 原田彩子氏)
コロナがメイク・美容業界に生み出したものとは?
コスメ・ケアを楽しむことへの価値
原田氏は「コロナがfunを促進」しているという。アンケート調査で気分転換やテンションを上げるためにスキンケアやメイクをするようになるか聞いたところ、48%が「はい」と回答した。
アンケート結果と合わせて「@cosme2020上半期ベストコスメ」総合大賞1位に選んだ商品から「ユーザーがコスメやケアを楽しむ傾向がある」と原田氏は分析する。
1位になった化粧水への口コミを見ると、「ボトルが綺麗でテンションが上がる」「甘い香りがして癒やされる」など見た目や香りを楽しんでいるユーザーが多い。また、この商品は使用前にシェイクする必要があるが、そのひと手間を楽しんでいる口コミがありました。一見、手間に見える作業や使用するまでに一つ一つ作り上げる過程を楽しむ傾向があるのではないでしょうか。
コロナによるストレスからユーザーは楽しみを求めており、コスメやケアを楽しむ傾向はより強まると考えられます。また、「化粧品は何を使ってもある程度効果がある」という状況から、「化粧品を使うことの楽しさ」が価値として再認識されるでしょう。(原田氏)
ひと手間で「時短/楽ちん」の罪悪感を払拭
アンケートでコロナウイルスの影響で自分のために使える時間に変化があったか聞いたところ、有職者と専業主婦で大きな乖離(かいり)があった。有職者は59%が「自分のために使える時間が増えた」と回答し、「減った」は14%。一方、専業主婦は「増えた」が22%、「減った」は39%だった。
ITの恩恵にも両者で差が生じた。テレビ電話やオンライン会議をする機会に変化があったか聞いたところ、有職者は38%が「増えた」と回答。一方、専業主婦で「増えた」と回答したのは19%だった。
有職者はリモートワークによって自分のために使える時間が増えたことで、スキンケア商品の需要が高まっている。一方で専業主婦は家族の食事の準備などの時間が増えたことにより、自分のために使える時間が減っています。
1位を受賞した商品は化粧水と美容液が混ざっており1つで2つの役割を果たしています。このような商品が自分にかける時間が減った層へのアプローチにつながる。また、「シェイクする」というひと手間かける商品を使うことで「きちんとケアをしている」という実感を持たせ、「自分の肌を労っていない」など時短することへの罪悪感を払拭(ふっしょく)できるのではないでしょうか。(原田氏)
これからのビューティ業界
アンケート調査で新型コロナウイルスの影響で購入をやめたもの・購入したものがあったか聞いた。どちらもキーになるのはマスクで、購入をやめたものはマスクをすることで使用率が減る口紅やリップ、購入したものは美容液やスキンケア関連だった。
マスクをすることで需要が減った商品もありますが、一方でスキンケア用品やマスクにつきにくいファンデーションなど、マスクを付けて生活することによって生まれた消費もあります。(原田氏)
西原氏は「マスクにつかない化粧品が求められること以外は、コロナ以前からあったこと」と説明。
コロナの影響で化粧品に求められることや、化粧品を使うユーザーの気持ちがまったく変わってしまったと感じることもあるかもしれません。しかし「マスクにつかない化粧品」の需要が高まっていること以外は以前から傾向としてありました。
長い不景気や東日本大震災をはじめとした自然災害をきっかけに、「モノを持つ」ことよりも「無駄のないシンプルな生活が美しい」「頑張りすぎは可愛くない」という価値観の変化が、コロナで一気に加速して顕在化したのではないでしょうか。
アフターコロナの世界は今までと全く違う世界になるのではなく、来たるべき世界がスピード感を上げて訪れたのではないかと考えられます。(西原氏)
「@cosme TOKYO」をはじめ「体験できる実店舗」が増えている中、コロナの影響でタッチアップも禁じられている状況を踏まえ「コスメを実際に試せる空間」の需要について、アイスタイルは下記のようにコメントした。
まだ完全に以前と同じとはいかないが、「@cosme TOKYO」の再開を待っていたユーザーの来店が多いです。
来店したユーザーと接していると「オンラインだけでは選びきれない」「店頭でスタッフに相談して後押しをしてほしい」という方が多く、人を介しているからこその思いがけない商品との出会いや、一人一人に寄り添ったパーソナライズされた接客が求められているのではないかと思います。コロナ後の店舗の役割は、そういった点を進化させたところにあるのではないでしょうか。
コロナウイルスの影響でユーザーのデジタルシフトは確実に進んでおり、それが逆行することはないと考えています。しかし、ユーザーの行動はオンラインだけでもオフラインだけでも完結することはなく、その割合が変化するだけです。
今後もメディアの「@cosme」、ECの「@cosme shopping」、店舗の「@cosme STORE」をシームレスにつなぎ、オンラインだけでもオフラインだけでもないユーザー体験の創造に注力していきます。