よむよむカラーミー[転載元] 8:00

ECサイトの運営は、商品の写真撮影やサイト更新、顧客対応などさまざまな業務があります。そういった業務を行い売り上げを伸ばすためには、EC人材の育成や確保が求められます。そんな課題を解決する糸口として、近年注目を集めているのが「AI活用」です。特にAIによるチャットボットの活用への注目が高い傾向にあります。ECは24時間どこからでもスマホがあれば買い物ができる反面、24時間ユーザー対応ができる環境を整えるのは非常に難しくコストもかかります。

また、対面接客ができないため、問い合わせ対応はショップの印象を左右する非常に重要な施策です。「買いたいときに買えない」「問い合わせのレスポンスが遅い」となるとECでのコンバージョンは低下します。そういった課題に対し、業務効率化や顧客満足度向上などさまざまな効果が期待できるのが「AIチャットボット」です。今回は「GMO即レスAI」の秦(はた)さんと小林さんにAIチャットボットがどのようなものなのか、EC上での活用事例について聞いてみました。

AIチャットボットサービス「GMO即レスAI」提供の背景

――最初にお2人の自己紹介をお願いします。

:GMOペパボ 事業開発部 AXチームリーダーの秦と申します。約10年間カスタマーサポート業務に携わっており、前職ではコールセンターで管理職などを務めていました。ペパボ入社後は「カラーミーショップ」の顧客対応やアドバイザー、当社11サービスの問い合わせ対応をAI化するプロジェクトのリーダーとして参画。現在は「GMO即レスAI」の企画や営業を担当しています。

小林:同じく事業開発部AXチーム所属の小林です。私もカスタマーサポート業界で10年ほど経験を積んだ後、2022年にペパボに入社しました。「 カラーミーショップ」のカスタマーサポートにて「カラーミーAIチャット」の設計、導入を担当した後、現在は「GMO即レスAI」に関する営業や各企業のAIチャットボットの会話設計などを担当しています。

GMOペパボ 事業開発部 AXチーム 小林氏

――お2人とも長くカスタマーサポートの現場に携わっていたんですね。GMOペパボで提供を開始した「GMO即レスAI」についてお話を伺いたいのですが、どういった経緯で新サービスを提供することになったのでしょうか?

小林:GMOペパボでは、以前から問い合せの件数が非常に多く、対応に課題を感じていました。

――具体的にどれくらいの件数だったのでしょうか?

小林:2023年4月時点で、主要サービスだけでも月間約2.5万件の問い合わせがあり、対応時間は約3857時間にものぼっていました。

もちろん、お客さま対応は非常に重要な業務なのですが、このままでは新しい価値を生み出すための時間やリソースが不足してしまうという危機感がありました。そこで、問い合わせ対応の効率化、そして最終的には問い合わせ件数そのものを削減するために、GMOペパボの問い合わせ窓口にAIチャットボットの導入を検討し始めました。

――お客さま対応にかけるリソースの配分については、多くの企業が抱える課題ですよね。AIチャットボットの導入を決断するまでには、さまざまな検討事項があったのではないでしょうか?

:はい、その通りです。特に私たちが懸念していたのは「お客さまにご満足いただけるか」 という点でした。「AIチャットボットを導入することで、お客さまにご不便をおかけしてしまうのではないか」という不安がありました。

――確かに、AIチャットボットに対して「冷たい」「機械的」といったイメージを持つ人もいるかもしれません。

:そうなんです。AIチャットボットを導入したことで 、お客さまにご迷惑をおかけするわけにはいきません 。むしろ、AIチャットボットの導入によって、お客さまにより満足いただけるような、より良い顧客体験を提供したいと考えていました。

小林:まずは、AIチャットボットで対応できる範囲と、有人対応が必要な範囲を明確に区別することから始めました。お客さまからの問い合わせ内容を分析し、よくある質問や簡単な手続きなどはAIチャットボットで対応できるように、会話設計をしていきました。

:その際、お客さまに寄り添った自然な会話ができるように、シナリオの内容や言葉づかいには特に気をかけました。また、AIチャットボットでは対応が難しい問い合わせの場合は、シームレスに有人対応へ切り替わるような仕組みも構築しました。

1620時間の工数削減とリスキリング。AIチャット導入による変化

――お客さま視点で、導入準備を進めていたことがよくわかります。実際に導入してみて、お客さまの反応はいかがでしたか?

小林:当初は、AIチャットボットに対して抵抗を感じるお客さまもいらっしゃるのではないかと懸念していました。しかし、蓋を開けてみると、想像以上に多くのお客さまがスムーズにご利用いただけている印象です。

たとえば、あるお客さまから「AIチャットボットの対応が早くて助かった」「24時間いつでも質問できるのが便利」といったお声をいただきました。また、「AIチャットボットで解決できなかった場合でも、すぐに担当者につないでもらえたので安心だった」というお声もありました。

:実際にAIチャットボット導入後、顧客満足度を測るアンケートを実施したのですが、結果は導入前と比べて1%上昇していました。「AIチャットボットの導入によって、顧客満足度が下がってしまうのではないか」という当初の懸念は払拭されましたね。

――顧客満足度が向上したということは、AIチャットボットの導入が、お客さまにとってもプラスに働いたという証明になりますね。ちなみに、問い合わせ対応業務の効率化にはどの程度つながったのでしょうか?

小林5か月間の運用で、合計1620時間の人員対応時間の削減に成功しました。これは、およそ11名分の業務量に相当します。

GMOペパボ 即レスAI導入で得られた結果

――11名分! それはすごいですね。大幅な業務効率化を実現できた要因は何だとお考えですか?

:やはり、AIチャットボットが24時間365日休まず対応してくれるようになったことが大きいですね。これまで、お客さまからの問い合わせに対応できるのは、営業時間内に限られていました。

しかし、AIチャットボット導入後は、時間外の問い合わせにも対応できるようになったため、お客さまをお待たせすることがなくなりました。また営業時間内であっても、AIチャットボットが一次対応を行うことでオペレーターの負担が軽減され、より複雑な問い合わせ対応に集中できるようになったことも、大きな成果につながっています。

――24時間365日対応できる点は、AIチャットボットの大きなメリットですね。お客さまをお待たせすることなく、スピーディーな対応ができるだけでなく、企業側としても営業時間外の人員配置を減らすなど、コスト削減の効果も期待できますね。

小林:おっしゃる通りです。さらに、AIチャットボットは対応品質にばらつきがないため、お客さまに対して常に一定レベル以上のサービスを提供できるという点もメリットとしてあげられます。新人オペレーターの育成にかかる時間やコストを削減できるという点も、企業にとっては大きなメリットと言えるでしょう。

さらに、AIチャットボットの導入は、人材リソースの有効活用にもつながっています。これまでは、問い合わせ対応に多くの時間を割かれていたオペレーターが、AIチャットボット導入によって生まれた時間を活用して、よりお客さまに喜んでいただく ための施策や新サービスの開発としての配置転換(リスキリング)など、会社としてもより創造的な業務に取り組めるようになりました。

――AIチャットボット導入によって、顧客満足度向上、業務効率化、コスト削減といった様々な効果が得られる可能性があることがよくわかりました。さらに人材不足が叫ばれるなか、限られたリソースを有効活用できる点は企業にとって大きなメリットですね。

80以上の多言語対応から個性のあるキャラクター設定まで対応可能。「GMO即レスAI」の魅力とは

――あらためて、GMOペパボが提供するAIチャットボットサービス「GMO即レスAI」について、詳しく伺っていきたいと思います。まずは、「GMO即レスAI」にはどのような特徴や機能があるのでしょうか?

小林:「GMO即レスAI」は、GMOペパボが長年培ってきたカスタマーサポートのノウハウと、最新のAI技術を融合させたサービスで、AIチャットボットの導入を検討されている企業さまに対して、導入支援から運用サポートまでワンストップでサービスを提供しています。
まず「GMO即レスAI」の特徴の1つとして 、「多言語対応」があげられます 。80以上の言語に対応しており、海外のお客さまへの対応も可能です。

近年、インバウンド需要の高まりや越境ECの市場拡大もあり、ECサイトを運営する上で多言語対応はますます重要になっています。「GMO即レスAI」は、多言語に対応しているだけでなく、各言語のネイティブスピーカーによる翻訳・監修を行っているため、自然でわかりやすい文章でお客さまとコミュニケーションをとることができます。さらに「GMO即レスAI」では、導入段階で独自の技術とノウハウで多言語の検証をすることで、より自然で正確性の高いAIチャットを提供することが可能です。

――それは心強いですね。他にどのような機能があるのでしょうか?

小林:もうひとつ大きな特徴の1つとして、「キャラクター設定の柔軟性」があげられます。企業さまのブランドイメージやターゲット層に合わせたキャラクター設定が可能です。

たとえば、キャラクターの口調を「ですます調」や「方言」などに変えたり、キャラクター独自の一人称や挨拶を喋らせたりすることができます。なので企業さまの既存のマスコットキャラクターをAIチャットボットのキャラクターとして設定することも可能です。

キャラクターを設定したAIチャットボットの役割は、単に質問に答えるだけでなく、お客さまとコミュニケーションをとることで親近感を抱かせるなど、さらなる付加価値を作れると考えています。

また、キャラクター設定は、ECサイトの個性化にも大きく貢献します。同じような商品を扱うサイトが多いなかで独自のキャラクターを持つことは、競合他社との差別化にもなります。お客さまに「あのキャラクターがいるサイト」として記憶してもらえれば、ブランドの認知度向上にもつながるでしょう。

――確かに、キャラクターとサイト上で楽しく会話できたら接客してもらったように感じますし、すごく記憶に残りますね。

小林:ECサイトでのメリットをさらにあげると、「商品検索の手助けや提案」ができることです。

たとえば、お客さまがECサイト上で「こういう商品を探している」と伝えると、AIチャットボットが商品情報を基に最適な商品を提案することができます。ECサイトによっては非常に多くの商品を取り扱っていて、お客さまが欲しい商品をピンポイントで見つけるのに苦労することもあると思います。そんな時に、AIチャットボットが適切な商品を絞り込んで提案してくれます。

また、AIチャットボットは単に商品を探すだけでなく、お客さまの悩みや質問に対して提案をすることで購買意欲を向上させる役割も果たします。

たとえば、お花屋さんのECサイトであれば「結婚祝いに適した花は?」「元気が出る花言葉の花は?」といった質問にも答えられます。そして、そのような花を使った商品をサイト内から見つけ出し、購入ページへと誘導することもできるんです。

これにより、お客さまは欲しい商品を素早く見つけられるだけでなく、自分では思いつかなかった商品との出会いも生まれます。結果として、顧客満足度の向上やコンバージョン率の改善にもつながります。

このようなAIチャットボットとのやり取りは、お客さまの行動分析にも活用できます。どのような商品が求められているのか、どんな悩みを持っているのかなど、貴重な情報が得られますので、商品開発やマーケティング戦略にも生かせると考えています。

ECサイトでのチャットボット活用事例

――それでは、実際に「GMO即レスAI」がECサイトでどのように活用されているのか、具体的な事例をご紹介いただけますか?

小林:「カラーミーショップ」でECを運営している「肉の寺師」さんでは、「GMO即レスAI」を活用してお客さまからのさまざまな質問に対応しています。

たとえば、「2人暮らしですが、ちょうどいい量の商品はありますか?」といった質問に対して、AIチャットボットが適切な商品を提案しています。具体的には「寺師の国産牛もつ鍋セットの2~3人前」を推奨しつつ、「ちょっと少なめでヘルシーなものをお探しであれば、『モテ鍋』という商品もあります」といった具合に、お客さまのニーズに合わせた提案を行っています。

さらに、AIチャットボットは季節感も考慮して対応しています。たとえば「今のおすすめ商品は?」という質問に対して、「現在は2024年4月、春の季節ですね」と前置きしてから、季節に合った商品を提案しています。

また、配送に関する質問にも正確に回答しており、「最短でいつ配送されますか?」という質問に対して、現在の日付や営業日を考慮した上で具体的な配送可能日を案内しています。

――AIチャットボットが季節感や配送状況まで考慮して対応できるのは素晴らしいですね。お客さまにとっても、より親身な対応を受けているように感じられそうです。

小林:そうなんです。さらに興味深いのは、AIチャットボットがお客さまとの自然なコミュニケーションを実現している点です。

たとえば「全部美味しそう」というお客さまのコメントに対して、「ありがとうござい“もつ”」と返答し、キャラクター設定に沿った言葉づかいで応対しています。

「肉の寺師」さんの場合、AIチャットボットに「おいどん」という一人称を使わせるなど、独自のキャラクター設定を行っています。方言を使ったり商品名にかけた言葉遊びをしたりすることで、お客さまとのコミュニケーションをより楽しいものにしているんです。

――そういった工夫がお客さまの印象に残り、ECサイトのブランディングにもつながりそうですね。

:おっしゃる通りです。AIチャットボットを通じて、ECサイトの個性や魅力を伝えることができるのも大きなメリットだと考えています。単に問い合わせに答えるだけでなく、お客さまとの対話を通じてブランドの世界観を体験していただくことができるんです。

GMOペパボ 事業開発部 AXチームリーダーの秦氏

――AIチャットボットが、ECサイトの「顔」として機能しているわけですね。ところで、こういったAIチャットボットの導入に興味はあるものの「うちのショップにはどう導入していいかわからない」「キャラクターもないし……」といった導入イメージを持てない人も多いと思います。そういった人たちに向けてアドバイスはありますか?

小林:そういった悩みをお持ちの人も多いですね。「GMO即レスAI」では、導入を検討されている企業さまに対して、個別相談を承っています。オンラインミーティングを通じて、企業様の課題やニーズをお伺いし、最適な導入方法をご提案させていただいています。

相談を受けた結果、AIチャットボットの導入がお客さまにとって最適な解決策でないと判断した場合は、別の方法をご提案することもあります。どういったものか興味がある段階で気軽にご相談ください!

ECサイトでのAI活用の将来性

――最後に、お2人が考えるECサイトでのAI活用の将来性について聞かせください。

:まず、AIによる24時間365日の対応がもっと進化して、お客さま1人ひとりに合わせたサービスが提供できるようになると思います。たとえば、お客さまがこれまで何を買ったか、どんな質問をしたかといった情報をAIが理解して、まるで常連さんへの対応のようにぴったりの提案や接客ができるようになっていくのではないかと思います。

今はチャットで文字のやり取りが中心ですが、将来的には音声での会話もできるようになるのではないでしょうか。まるで人間と話しているみたいに、自然にAIとおしゃべりできることが当たり前の世界がすぐそこまで来ていると思います。

小林:私は、パソコンやスマートフォンが私たちの生活に欠かせなくなったように、そう遠くない未来にAIも日常的に使うものになると思います。AIの進化って本当に早いんですよね。今は「AIってどう付き合えばいいんだろう?」と戸惑う人も多いかもしれませんが、数年後には「AIが使えないページって不便だよね」 なんて言っている可能性もあります。そのため 今回のAIチャットボットに限らず、どんどんAIツールには触れていってほしいと考えています。

最終的には、AIが日常的なECサイトの業務を担ってくれることで、私たち人間はもっとクリエイティブな仕事に集中できるようになるんじゃないかな。AIと人間が、お互いの得意なことを生かしながら協力し合える。そんな世界が来ることを楽しみにしています。

――お2人ともありがとうございました!

この記事はカラーミーショップの公式Webメディア『よむよむカラーミー by GMOペパボ』の記事を、ネットショップ担当者フォーラム用に再編集したものです。

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