Instagram×ECの最新トレンドとは? 2024年に向けた戦略や打ち手を解説!
Instagramマーケティングを成功させるには、機能やアルゴリズムを理解して的確な施策を打つことが大切です。
今回はInstagramの最新トレンドを中心に、今知っておくべきInstagramの動向をハピラフ 代表取締役CEOの富田竜介さんに伺いました。EC事業者さんにぜひ取り組んでいただきたい、最新活用術も紹介します。
ハピラフデジタル 代表 富田竜介さん。成蹊大学卒業後、マイクロアド(旧マイクロアドプラス)に入社。その後ヘルスケアD2C/フィットネススタートアップ/ブライダルスタートアップ、クックパッドでマーケティング担当として幅広く従事。ブライダル会社在籍中にハピラフデジタル/ハピラフを設立。現在はハピラフ代表としてSNSマーケティングに特化したサービスを展開している。
2023年上期、Instagramのアルゴリズムの変化について
――前回インタビューをさせていただいてから約1年が経ちました。2023年上半期を振り返って、Instagram上の重要な動きやアルゴリズムの変化などがあれば教えてください。
Instagramはもともとフォロワーファーストのツールです。フォロワーが多いほどリーチを獲得できて評価が上がることから、これまではフォロワー数を増やすことが重視されてきました。
それがこの1年の間に一部がTikTokやYouTubeショートと似たようなアルゴリズムに変わり、フォロワー数よりも1投稿単位の評価が優先されるようになりました。
Instagramの3種類の投稿方法のうち、「フィード」や「ストーリーズ」は今もフォロワーファーストで、まず既存フォロワーに表示されて反応が良ければ拡散される形ですが、「リール」はコンテンツベースで評価・露出されます。
具体的には、「リール」に投稿するとそのジャンルに興味のある「フォロワーではない人」にも表示され、一定の反応が取れたら拡散されて、次の人が反応したらさらに拡散されていきます。これにより、1つの投稿をより多くの人に見てもらえるようになりました。
それから、コンテンツの表示をコントロールできるようになったことも変わったポイントです。Instagramでは「好きと欲しいをつくる」ことを重視していて、ユーザーの興味があるものだけをおすすめしたいという方針を貫いています。
これまでは興味関心から遠いものが表示されることもありましたが、興味のないコンテンツのメニューから「興味なし」を選ぶと似たような投稿の表示を減らせる機能がリリースされ、好きなものに近い投稿だけを見ることも可能になりました。
ただ、本当に興味のある人に届くようになった反面、興味が曖昧な人のリーチを期待できなくなったので、1投稿あたりのリーチが伸びづらくなったなと感じます。
Instagramのトレンドは?
――投稿トレンドなど、Instagramの今の傾向を教えてください。
2023年10月から景品表示法のステマ規制がスタートします。
それに先駆けて「#PR」「#タイアップ」のようなハッシュタグによるPR投稿は非推奨となり、クリエイター(インフルエンサー)がPR投稿をする際は、タイアップ投稿機能を使って、ユーザーネームの下にタイアップ投稿ラベル(ブランドコンテンツのタグ)を付けなければならなくなりました。
タイアップ投稿を行うには、ブランドとクリエイターの双方で操作する必要があり少し手間がかかりますが、それなりのメリットも得られます。
ラベル付きの投稿はブランドの透明性を確保できるうえ、クリエイターのインサイトを直接見られるようになるので、どの人のどの投稿が伸びているかを把握できます。フォロワー以外にリーチを拡大することも可能です。
また、最近は「コラボ」機能による共同投稿を行う企業が増えてきたように思います。共同投稿の長所は、コラボした相手と自分のフォロワーに同じ投稿を見てもらえることで、1投稿あたりのエンゲージメント獲得数を増やせるため高い関心が寄せられています。
ただし、広告のルールを遵守する必要があるので、景表法や薬事法に抵触しないように注意しなければなりません。ちなみに、ブランドとクリエイターの共同投稿の場合は、広告主が発信しているような見せ方になるのでタイアップ投稿ラベルは不要です。
Instagramではクリエイター向けのサービスにも力を入れています。2023年6月にリリースされた「一斉配信チャンネル」は、クリエイターが大勢のフォロワーとリアルタイムに交流できる公開メッセージツールで、関心度の高いファンとの絆を深められます。ほかのクリエイターを呼んでトークを展開することもできます。
また、もう1つ、「Meta認証」という「X Blue(旧Twitter Blue)」 のような有料サービスも始まっています。本人確認書類を提出すると青い認証バッジを得られ、なりすましを防げます。いずれも残念ながらビジネスアカウントや一般ユーザーは対象外なので、今後のサービス範囲の拡大を期待したいですね。
余談ですが、フェイスブックジャパン代表取締役の味澤将宏氏が、2022年10月に開催された「House of Instagram2022」で、2023年のInstagramのテーマの1つに「価値共創」をあげていました。タイアップ投稿、共同投稿、一斉配信チャンネルはまさに共創するものなので、アカウント運用者は意識したほうがいいと思います。
――前回の記事でもお伺いしたのですが、改めて投稿のコツやおすすめの投稿数(頻度)を教えてください。
Instagramでは、
- リールで外部の人にリーチして新規フォロワーを取り込む
- ストーリーズで新規フォロワーとの仲を深める
- 既存のフォロワーにはフィードで情報を発信する
というように、それぞれの役割に合わせて使い分けることが大事です。さらに、エンゲージメントの高いフォロワーと共同投稿すれば、親密度を高められるのではないかと思います。
「リール」や「フィード」の投稿頻度は、Instagramでは興味関心や親密度に加えて新鮮度を重視していることを考えると毎日が理想です。とはいえ、投稿の質が低ければエンゲージメントを獲得できません。
毎日投稿するのが大変で質が下がるのであれば、3日に1投稿、月に10投稿程度でも問題ないので、可能な限り質の良い投稿をめざしてください。1投稿あたり1000リーチのものを月に30投稿しても3万リーチにしかなりませんが、1投稿あたり1万リーチ取れるコンテンツなら、月に10投稿でも10万リーチ獲得できます。
また「ストーリーズ」の投稿は、1日10投稿以上を推奨しています。投稿内容は、「今日も暑いですね、外に出る予定はありますか?」といった「はい」「いいえ」で答えられる問いかけでもOKで、回答をもらえればシグナルが貯まって親密度を上げることができます。
フィードへの投稿が滞っていても、ストーリーズで交流できていればエンゲージメントを高められるので、忙しくてもストーリーズの投稿だけは止めないようにしてください。
なお、親密度にはユーザーの反応回数も関係していて、5回反応する人より10回反応する人のほうが親密だと判断されます。親密度が高い人ほどストーリーズの投稿はより左側に、フィードの投稿はより上部に掲載されて反応を得やすくなるため、好循環を生むためにもフォロワーとの双方向のコミュニケーションを大切にしてください。
Instagram運営におけるKPIは何にすべき?
――SNSを運用する際、どうしてもKPIを何に置くかという話がついてきます。指標の設定時に気をつけるべきことはどんなところでしょうか?
Instagramの効果を見るなら、定量的ではありませんが、ハッシュタグ数とタグ付け数に注目してください。
「#ブランド名」「#商品名」のようなハッシュタグは、ユーザーがブランドや商品を気に入ったときに付けてくれるものです。ハッシュタグ検索は指名検索に似ているので、ハッシュタグ数を把握すればいわゆる口コミ(UGC)の影響を量ることができます。
それから、「リール」や「フィード」へのタグ付け数にも注目すべきです。タグ付けされるメリットは、タグからユーザーを呼び込めることで、「友達が投稿したタグからブランドのプロフィールにきてフォロワーになる」というような効果を期待できます。
定量評価を重視する企業では、フォロワー数やリーチ数をKPIに設定するケースが多いですが、個人的にはいずれも追う必要はないと考えています。それよりも顧客満足度を指標にして、お客さんとどれだけ仲良くなれたか、お客さんにブランドをどれだけ好きになってもらえたかを重視したほうが売り上げにつながると思います。
「Instagramはフォロワーやリーチよりもユーザーの投稿を増やすために運用するもの」と、視点を切り替えることが大事です。
また、Instagram以外にX(Twitter)広告やGoogle広告、SEO記事と複数の施策を打っている場合、Instagramのアカウント経由でどのくらい売り上げが上がったかを証明する術はありません。
購入者に「商品購入のきっかけとなったのはどの媒体ですか?」とアンケートを取ればある程度の効果を把握できますが、売り上げとなると施策の前後で売上状況を比較して判断するしか方法はなく、定量的なKPIは立てにくいです。評価方法もチャネルごとに区切らず「全体の売り上げが上がれば評価します」という方向に変えていったほうがいいと思います。
企業でよくあるのは、「広報:アカウント運用、指標=ブランド認知度」「広告チーム:インフルエンサーマーケティング、指標=新規顧客獲得数」のように担当や部署で目標や目的を切り分けてしまうケースです。
それぞれでプレゼントキャンペーンだ、広告だとやってしまうと良い成果は得られませんし、フォロワー数が積み上がって一時的に売り上げが上がったとしても、フォロワーとのコミュニケーションが深まっていなければ一瞬で落ちてしまいます。
その結果として、「売上が上がらない⇒SNSは意味がない⇒SNSをやめる」という道を辿る企業が増えているので、状況を打開するには組織の評価軸から変えなければなりません。
新しいアルゴリズムに効果的な対策方法は?
――新しいアルゴリズムへの対応策を教えてください。
コンテンツ/コミュニケーションを強化することが一番の対策法です。TikTokが伸びているのはプラットフォームの利用者が増えているからで、今TikTokを始めれば誰でも一定数のフォロワーを獲得できます。
一方、Instagramはやや飽和状態にあるため、新たなフォロワーを獲得するには必然的にコンテンツやコミュニケーションの質で勝負せざるを得ません。
記事コンテンツはわざわざアカウントをフォローしなくても「いいね!」で保存できるので成果が見えにくいという側面がありますが、SEOやコンテンツマーケティングに近づいてきている状況なので、ジャンルの中でもNo.1の質を狙ってコンテンツをブラッシュアップしていくしかないのかなと思います。
コンテンツの中味についてもアイディアが出尽くした感があり、オリジナル性の高さで勝負するのは難しくなっています。質の高いAとBの記事を掛け合わせてもっと中身の濃い記事に仕上げるとか、動画ならクオリティの高いTikTok動画を参考に制作するなど、なんらかの工夫が必要です。
滞在時間を延ばす策としては、文章+動画でコンテンツをリッチにする戦略が増えています。文章は長ければ長いほど滞在時間が延びますし、投稿内に動画もあればその分滞在時間が増えて評価されやすくなります。
これらを参考に、高品質のコンテンツ作りに取り組んでみてください。
一方で、矛盾するようですが、ブランドアカウントではあまりコンテンツマーケティングに力を入れる必要はないとも思っています。記事コンテンツはコアなファンに任せて、ブランドアカウントは世界観を作ることや、ファンとコミュニケーションを取ることを優先したほうが効率的です。
ブランド自身で1日1投稿してもMAX30投稿/月ですが、ファン100人に共同投稿を依頼して月に1回ずつ投稿してもらえれば100投稿/月になります。なので、ブランドアカウントで発信するものは文章の長いコンテンツではなく、原点回帰して映える画像や動画で世界観を見せる方向に舵を切ってもよいかもしれません。
コンテンツの中身だけでなくフォロワーも質が大切です。コアなファンはフォロワー獲得に貢献してくれます。親密度の高い100人が新たな100人を呼び、200人が別の200人を連れてきて、と地道に輪を広げていくほうが今の時代に合っていますし、プレゼントキャンペーンなどで無理にフォロワーを増やすよりも成果が生まれやすいです。
Instagramの運用者は、フォロワー全員の名前を覚えて交流するくらい濃厚なコミュニケーションを取るようにしてください。
2024年に向けたInstagramの戦略や打ち手は?
――2023年下期、さらに2024年に向けてECを伸ばすためのInstagram戦略や打ち手をぜひ教えてください!
いろいろな手法がありますが、おすすめの施策をいくつかピックアップして紹介します。
1.共同投稿を増やす
PR投稿だけでなく、積極的にフォロワーとコラボして共同投稿を行ってください。
Instagramは、フォロワー数よりもエンゲージメントや質が大事だと公言しているので、コラボ相手はクリエイターではなく、タグ付けされた投稿にコメントが多く付いている人や、エンゲージメント率の高い人を選ぶのがおすすめです。一般の人に近いほうが購買の意思決定につながります。
2.ギフティングでタグ付け欄を埋める
インフルエンサーに商品を提供して紹介してもらう「ギフティング」でタグ付け欄を充実させてください。
Instagramを始めたばかりの企業はタグ付け欄がゼロの状態です。日本人は1人目になることを避けがちなので、最初の30件くらいはギフティングで埋めることをおすすめします。
一般的に、ユーザーはブランドアカウントのタグ付け欄から他人の投稿を見て「これは私に合いそうだから買ってみよう」と思うものなので、検討材料を与える意味でもギフティングは活用したほうがいいです。
ブランドフォロワーとブランドリーチを増やす方法
――ブランドフォロワーとブランドリーチを増やすにはどうしたらよいですか?
ブランドの情報だけでフォローしてくれる「ブランドフォロワー」を増やすことも大切です。
記事コンテンツに興味があってフォローしてくれる「コンテンツフォロワー」は、ブランドフォロワーよりブランドを好きな度合いが一段階浅く移ろいやすくもあるので、ブランドフォロワーを獲得したほうが売り上げにつながります。
リーチも同じで、メディア頼りにせずブランドの情報だけでリーチを増やすことをめざしてください。ブランドが発信した情報でブランド理解が深まったファンは、次にファンになる人たちを連れてきてくれます。
「リール」に投稿する動画の長さは30~45秒くらいがおすすめです。伸びている動画も30~45秒くらいのものが多い印象です。一部ビジネスアカウントでは、Instagramインサイトで、投稿動画の総再生時間や平均再生時間・率、オーディエンスのリテンションレート(継続率)などを見られるので確認してみてください。
参考までに、平均再生時間は10秒以上、平均再生率は30~40%以上が良い動画の基準となっています。
――最後ぜひ本記事を読んでいるEC事業者さんにアドバイスをお願いいたします!
ECではよく、「リソースが足りない」「運用方法がわからない」などの理由から、Instagramの運用を支援会社に丸投げしたり、業務委託でアルバイトの人に任せたりするケースを見かけますが、外部に依頼するのはおすすめできません。
SNSはオンライン上で一番の接客ツールなので、ブランドについてよく理解している人が運用しなければ、本当の意味でのファンは獲得できないと思います。アカウントの運営人数は企業の戦略次第で1人でも複数人でも構いませんが、「SNSをやる」と決めたらリソースを割いて本格的に取り組んでほしいです。
またInstagramの運用では、リーチやフォロワーを増やす施策よりも、いかにして口コミを発生させるかに重きを置くべきです。
購買の意思決定につながるのは、企業より友人や家族など身近な人のレコメンドなので、購入者の100%が口コミを投稿したくなるような設計やマーケティングの仕組みを作ることに注力してください。
新規獲得のために宣伝ばかりしていたのでは、ユーザーはタグ付けしたりハッシュタグを付けて投稿したりする気がなくなると思います。Instagramを含めSNSはコミュニケーションツールなので、ぜひユーザーとのコミュニケーションを大切にして絆を深めてくださいね。
この記事はカラーミーショップの公式Webメディア『よむよむカラーミー by GMOペパボ』の記事を、ネットショップ担当者フォーラム用に再編集したものです。