ECサイトの利益率はどのくらい? 利益率をアップするための11つの方法や事例を紹介!

EC事業における重要な経営指標の1つが利益率です。ECサイトでの理想的な利益率の目安は20%程度といわれており、ECサイトを継続させたり事業を拡大させたりするためには、適切な利益率の設定が不可欠でしょう。そこでこの記事では、利益率の計算方法や利益率を向上させるための具体的な11の方法を紹介します。

利益率なんて気にしたことなかったなぁ。ボクのサイトはどのくらいなんだろう。

ECサイトを長く続けるためには利益率をきちんと把握する必要がありますよ! まずは計算してみましょう。
ECサイトにおける利益率の目安とは?

利益率とは、売り上げからコストなどを引いて残った利益の割合のことで、「売り上げの何%が利益として残ったのか」を把握できる数値です。
一般的に、ECサイトの(営業)利益率の目安は約20%といわれています。これは、商品原価やその他の経費などを考慮した上で、運営を継続していくための基準となる数値です。
もちろん、ECサイトで扱う商品やビジネスモデルによって適切な利益率は変動しますので、1つの目安としてください。
自社のECサイトの利益率を把握することは、経営状況を正確に理解する上で非常に重要です。利益率が悪いと今後の運営が難しくなってしまう可能性もあるので、きちんと把握しておきましょう。
ECサイトの利益率は2種類! 計算方法も紹介

先ほど「営業利益率」の目安は約20%とお伝えしたように、ECサイトで把握しておきたい利益率には「粗利益」と「営業利益」の2種類あります。
それぞれの利益率がどのようなものなのか、計算方法もご紹介します。
1.粗利益
粗利益とは、売上高から商品を仕入れたり製造したりするためにかかった費用(売上原価)を差し引いた金額のことです。簡単にいうと、「商品を売って、まず手元に残る利益」です。粗利益は以下の計算式で求められます。
たとえば、商品価格が1000円、原価が500円の商品を10個売って、合計1万円の売上高があった場合の粗利益は、以下のようになります。
この場合の粗利益は5000円、粗利益率は50%になります。粗利益率を見ることで、それぞれの商品がどれくらい利益を生み出しているのかがわかります。
もし粗利益率が低い場合は、製造コストを下げるか、販売価格を上げるなどして、改善していく必要があります。
2.営業利益
営業利益とは、粗利益からさらに販売や営業にかかるコストを差し引いた利益のことです。ECサイトの売上高から商品原価だけでなく、広告費、人件費、送料といった販管費も差し引いて計算します。
そのため計算式は以下のようになります。
たとえば先ほどの商品価格が1000円、原価が500円の商品が10個売れた際、販売にかかった費用がトータルで4000円だった場合の営業利益は、以下のようになります。
この場合の営業利益は1,000円、営業利益率は10%になります。繰り返しますが、ECサイトにおいてこの営業利益は、20%程度が望ましいとされています。
営業利益を把握することで、ECサイトの本質的な収益性を理解することができるでしょう。
粗利益と営業利益の2つを把握する理由
粗利益は、商品やサービスの販売による直接的な収益性を表します。一方、営業利益は、粗利益から販売費及び一般管理費を差し引いたものなので、ECサイト運営全体の収益性がわかります。
つまり粗利益を見ることは、商品の価格設定や仕入れ先の選定など、販売戦略の改善に役立ちますが、ECサイト全体の経営状況を知るには営業利益の把握が必要なのです。
そのため、ECサイトの利益率の目安としては粗利益ではなく、営業利益で約20%とされているのです。
ECサイトの健全な運営のためには、粗利益と営業利益の両方を把握し、バランスのとれた経営判断を行うことが不可欠でしょう。
ECサイトの利益率を上げる11の方法

利益率を上げるためにはどうすれば良いのか、主な11個の方法をご紹介します。
1.ECサイトで利益率の高い商品を扱う
粗利益を計算してみて、あまりに低い場合は利益率を意識した商品を販売してみるのもおすすめです。
たとえば、自社独自のオリジナル商品は他社では販売されていないため、価格競争に巻き込まれにくく、高い利益率を設定できるとされています。また、ギフト商品の場合は、パッケージやデザインに力を入れて付加価値を高めることで、通常の商品よりも高い価格設定が可能となるでしょう。
音楽、イラスト、写真などダウンロードコンテンツは、一度作ってしまえば原価や送料がかからないので、非常に利益率が高い商品といえます。
2.他の仕入れ先を探す
原価や仕入れ値を少しでも下げることができれば、利益率を改善できます。
そのため、現在の仕入れ先以外にも目を向け、より低価格で仕入れられる先を探してみましょう。仕入れ価格は同じでも、大量に仕入れることで割引してくれる場合もあるかもしれません。
また、複数の仕入れ先と取引することもリスク分散するためのポイントです。特定の仕入れ先でトラブルが発生した場合でも、別の仕入れ先から商品を調達できれば、販売機会の損失を防ぎ、結果的に利益率アップにつながる可能性もあります。
3.商品価格を設定し直す
利益率が低い場合、商品価格の見直しが必要になることがあります。ですが、単純に値上げしてしまうと顧客離れを招きかねません。
そこで、価格設定を見直す際は、たとえば商品の品質や機能面をアップさせたり、保証やアフターサービスを充実させたりなど、「価格以上の価値」を感じてもらえるように工夫することが大切です。
4.決済手数料の削減に取り組む
売上規模が拡大するにつれて費用負担も大きくなるため、決済手数料を見直すことで大幅なコストダウンにつながるかもしれません。
決済手数料の割合は、サービス会社や契約プランによって異なるので、自社の主要な決済方法はどの会社・プランが安いのか見直してみましょう。
なお、決済手数料の話ではありませんが、人気の決済方法である「Amazon Pay」の利用料もサービスによって異なり、「カラーミーショップ」では無料で利用できますが、サービスによっては月額1万円程度かかる場合もあります。決済手数料だけでなく、決済方法の利用料も確認することがポイントです。
5.配送方法を見直す
複数の宅配会社を比較検討し、商品のサイズや重量、配送エリアに応じて、送料が安い配送会社を使い分けることで、配送料を抑えることができるでしょう。
また、ポストに入るような化粧品やアクセサリーといった商品は、宅配便ではなく200円程度から送れるメール便を使うことで、配送料を大幅に抑えられます。
ですが、メール便は土日の配達や追跡がない場合もあるため、どのような仕組みなのかをきちんと確認した上で利用するのがおすすめです。
6.在庫管理を徹底する
在庫管理とは、「商品が必要な時に、必要な量をスムーズに供給できるよう管理すること」です。
適切な在庫管理を行うことは、保管コストを削減し、販売機会の損失を防ぎ、不良在庫(による破棄コスト)を抑えるなどの効果があります。在庫が原因の無駄な支出を抑えて売り上げを最大化することで、最終的に利益率向上に貢献するでしょう。
7.一部業務をAIなどで自動化する
ECサイト運営には、多くの業務があります。顧客対応、ページ制作、在庫管理、マーケティングなど多岐にわたる業務を人の手で行うことは、時間がかかるだけでなく人件費が必要です。また、手作業で行うことでミスやトラブルが発生し、顧客離れや顧客満足度の低下につながってしまうかもしれません。
そこで、AIや自動化ツールを活用することで、業務効率化によるコスト削減と利益率向上を図れるでしょう。
8.リピーターを増やす
リピーターは、新規顧客よりも費用をかけずに獲得できるため、広告費など集客にかかるコストを抑え、結果的に利益率アップを実現できるでしょう。
リピーターを増やすための具体的な施策として、以下のようなものがあげられます。
- 会員限定の割引やポイントの付与
- 購入後のフォローメールやメルマガの配信
- 誕生クーポンなどECサイトのクーポンの配布
- CRM(顧客管理ツール)の導入
顧客が再びショップへ訪れるようなきっかけを作ったり、顧客との良好な関係性を築けるような施策を行ったりすることで、リピーターを増やしていきます。
9.オウンドメディアなど広告に頼らない集客を始める
オウンドメディアとは、自社のコンテンツを発信するメディア(ブログ)のことです。ユーザーの興味関心を高めることで、ECサイトへの訪問を促します。
広告の場合は露出するのに必ず費用がかかるので、予算がなくなれば広告が止まってしまいます。ですが、オウンドメディアは基本的には無料で自社情報を発信でき、コンテンツを蓄積していけるので、継続的に運用すれば費用対効果の高い集客施策になるでしょう。
なお、オウンドメディアを構築するには、ECサイトと連携できる「WordPress」がおすすめです。
10.ECサイトの移行・引越し・乗り換えを検討する
ECサイトのリプレイスは、利益率向上につながりやすいと考えられます。
大きな理由の1つは、月額利用料が低いサービスに移行することで、毎月のランニングコストが抑えられるからです。また、ユーザーが買いやすいようなデザインにしたり、機能面がアップしたりすれば、ECサイトのCVR(コンバージョン率)も改善できます。
ECサイトの移行や引越し自体はコストがかかりますが、長期的に見ればECサイト全体の運営コストダウンや売上増加が期待できるでしょう。
11.EC運営のプロに相談する
ECサイトの利益率をどう改善すればいいのか、方法がわからない場合はEC運営のプロに相談するのも1つの方法です。
プロのアドバイザーは、自社のECサイトの課題を明確にして解決策を提案してくれます。利益率を改善したい場合、なぜ利益率が悪いのかの原因を探り、具体的な改善方法をあげてくれるでしょう。
ただし、ECコンサルティングの場合、サービスによっては毎月数十万円と高額な費用がかかってしまうこともあります。
ECサイトの利益率を左右する3つの運営コスト

そもそもECサイトではどのようなコストがかかるのか、利益率をアップさせるためにも今一度、確認しておきましょう。
ECサイトでは主に「ECサイト維持のためのコスト」「ECサイト運営のためのコスト」「その他のコスト」に分けられます。それぞれについて、どのようなものなのか解説します。
ECサイト維持のためのコスト
ECサイト自体を維持するためには、主に以下のようなコストが発生します。
- サーバー費用
- ドメイン費用
- ECサイト構築サービスの使用料
- セキュリティ対策費用
これらのコストは、サイトの規模や機能、そしてECサイトの構築方法によっても異なります。
たとえば、無料のシステムであるオープンソースを利用し、自社でECサイトを立ち上げる場合、ECサイト構築サービスの使用料は不要ですが、サーバーやドメインの設定、ECサイトのセキュリティ対策などを自社で対応するので、費用が必要です。
一方、ECサイト構築サービスを利用してECサイトを開業する場合、初期費用や月額費用を支払わなければなりませんが、サーバーやドメインなどの費用はかからず、セキュリティ対策もサービス側で行ってくれます。
ECサイト運営のためのコスト
ECサイトを運営していくためには、主に以下のコストは必須といえます。
- 商品の仕入れや製造の費用
- 決済手数料
- 商品画像などの撮影に関する費用
- 梱包や配送の費用
- 人件費
商品の仕入れ、販売、顧客による決済、商品の配送という一連の流れに関する費用や、それらの業務を行うための人件費は、ECサイトの構築方法にかかわらず必要です。ただし、商品を安く仕入れたり、ツールを使って作業を自動化したりすることでコストが抑えられるでしょう。
その他のコスト
その他のコストとは主に、より売れるECサイトにするためにかかる以下のような費用です。
- デザイン費用
- 運営の外注費用
- 広告出稿の費用
- 記事などのコンテンツ作成費用
上記のコストは場合によっては発生します。もし、社内にデザイナーがいればデザイン費用は不要ですし、運営を外注しなくて良いことも多いでしょう。
広告出稿や記事コンテンツ制作など集客に関する費用も必須ではありませんが、集客はECサイトの売り上げを伸ばすためには、必ずやらなければならないと認識しておきましょう。
ECサイトで利益率は先に決めるのがポイント

ECサイトを安定して運営していくためには、価格を決めてから利益率を調整するよりも、まず利益率を設定することをおすすめします。
利益率を定めてから、目標とする利益率を維持できるよう価格やその他のコストを調整します。そうすることで、安定した利益を確保しやすいため、ECサイトを長期的に運営していけるでしょう。
もし価格を先に決めてしまうと、他社との価格競争を行った結果、売れてもほとんど利益が出ない状況に陥ってしまうかもしれません。
ただし利益率を重視するあまり、ユーザーの求める価格帯から大きく乖離してしまうと商品が売れなくなるリスクがあるので、注意しましょう。
利益率を考えて自社ECサイトを開設して成功した事例

山形県の老舗和菓子屋の佐藤屋さんは、伝統和菓子「乃し梅」が看板商品です。コロナ禍により百貨店などでの販売ができなくなったことから、ネットショップ開業を決意。
ECサイトのオープンにあたっては、手数料の多いECモールでは利益率が低くなると考え、「カラーミーショップ」で自社サイトを立ち上げました。開業前にSNSで呼びかけていたこともあり、開業からわずか1時間で100件以上の注文が入るなどとても反響が大きかったそうです。
まとめ
ECサイトの(営業)利益率は20%程度が目安といわれています。あまりに利益率が低いと事業を継続していくのが難しくなってしまいますので、適切な利益率を確保することは大切です。
利益率を上げるには上記で解説したように、高利益率商品の販売、仕入れコストの見直し、送料や決済手数料の削減、ECサイトの移行、オウンドメディアによる集客などさまざまな方法があります。
すべてを一気に始めることはできないため、できるところから始めましょう。
この記事はカラーミーショップの公式Webメディア『よむよむカラーミー by GMOペパボ』の記事を、ネットショップ担当者フォーラム用に再編集したものです。