ユーザーの購買体験向上+店舗運営効率化などにつながる「楽天市場」のAI機能と戦略
楽天グループが「楽天市場」において、AIを活用したユーザー向け機能の拡充と出店店舗への運営支援を加速させている。その施策や効果、出店店舗の活用事例とは
8:30
楽天グループ(楽天)は7月7日、「楽天市場」におけるAI活用に関する説明会を実施、ユーザー向けのAI活用機能や出店店舗向け機能について説明した。
対話型AIで購買決定時間を40%短縮。ユーザーの購買体験向上をめざす
楽天はグループ全体で「AIナイゼーション」を掲げ、1億を超える会員ID「楽天ID」や年間3兆件以上のトランザクションデータなど経済圏の強みを生かし、AI化を促進している。
蓄積した膨大なデータを活用し、店舗の商品データ、トレンド、気候などを踏まえつつ、ユーザー1人ひとりの行動データを分析し、出会いや発見、パーソナライズを提案。AI活用で出店店舗の魅力を最大化することをめざしている。


ユーザー向け機能の1つが、2025年12月に実装した対話型ショッピング体験を提供する「AIコンシェルジュ」。オフラインの店舗で店員から接客を受けているかのような会話体験をオンライン上で実現することをめざしているという。機能について、高間真理氏(※高ははしご高、執行役員 市場編成部 ジェネラルマネージャー)は「商品を選びやすい切り口の提案、季節やセールイベントに合わせた提案、スタータープロンプト(ユーザーがAIに迷わず指示を出せるように用意された、質問や指示のテンプレート)などを提供している。利用状況が増えてきており、特に『楽天スーパーセル』『お買い物マラソン』などの大型イベント時の利用が増えてきている」と話す。

機能の導入で、従来型の検索機能と比較して、ユーザーが検索を始めてから購入を決定するまでの時間が約40%短縮したほか、平均注文金額が11%増加するなどの成果が出ている。また、ユーザーの利便性向上に向け、次の2つの新機能を実装した。
「商品比較」機能
ユーザーの要望に合わせてAIが提示した複数の商品のうち、最大4つまでを表形式で表示し、同時に比較できる機能。内容量、レビューのスコア、配送目安などを一覧化し、おすすめのポイントを要約して表示することで、その場での迅速な意思決定を促すという。

「詳細を聞く」機能
提案された商品を単一選択すると、商品ページ内の情報をベースに、商品の特長、サイズ感、素材、レビューの抜粋など必要なポイントを要約してわかりやすく説明する。
「AIコンシェルジュ」のチューニング、アップデートを引き続き実施している。今後は5万を超える出店店舗の専門知識や接客のパターンデータを取り入れ、たとえば家電量販店の販売員に相談するかのような、より高度な接客AIへと進化させていきたい。(高間氏)
楽天グループ 執行役員 市場編成部 ジェネラルマネージャーの高間真理氏
ユーザー向け機能として、2025年11月からSNS感覚でパーソナライズされた商品との偶発的な出会いを提供する「ディスカバリーレコメンデーション」も展開、2026年7月1日時点で20万以上のオリジナルコンテンツを表示している。今後はライブコマースの導入などにより、エンタメ性をさらに高めていく方針だ 。

汎用AIからの流入はチャンスととらえている
「ChatGPT」などの汎用AIからの流入について、高間氏は「ボリュームは非公開」としながらも、「Googleの検索サーチ経由など従来型の検索や広告経由の流入のほうが多いが、汎用AIからの流入は増えてきている」という。「現時点で汎用AIに対する明確な施策は伝えられないが、こうした状況は非常にチャンスだととらえており、入り口として活用したい」(高間氏)
「AIコンシェルジュ」内への広告機能実装については、「まずはユーザー体験向上に注力している。広告機会を提供するならば、店舗にとってメリットのある形でないといけないと思っている」(高間氏)。ユーザーが「AIコンシェルジュ」を活用するなかでどのような行動を取っているのか、結果的に店舗にとってどのようなメリットが得られるのかなどを分析中だが、「自信を持って店舗に提供できる機会があれば考えたい」と話す。
店舗向けAIの利用率は50%に拡大。データ分析も自動化
出店店舗の運営支援においては、店舗向けシステム「RMS(Rakuten Merchant Server)」のAI機能群である「Rakuten AI for RMS」を実装。機能の利用率は2024年12月時点の約25%から、2026年5月には50%へと倍増しており、出店店舗におけるAI活用が拡大している状況という。
主な機能として、商品管理システム「R-Storefront」における商品説明文の入力サポートや商品画像の背景加工 、問い合わせ管理システム「R-Messe」における返答文の作成・校正支援などを提供している。また、店舗からのシステム操作やマニュアルに関する問い合わせにAIが自動返答する機能も備える。

2026年4月30日に新機能「データ分析エージェント」を実装。これは店舗がテキストで質問を入力すると、AIエージェントが実際の数値やそれを基にした考察、次に確認すべき深掘り質問を提示する機能だ。従来のデータツールに比べて分析のハードルが下がったことで、利用店舗の72.9%が何らかのデータの深掘り分析に活用しているという。

効率化によって生み出された時間を、店舗独自のコンテンツ作成や付加価値の高い業務に充ててもらえるよう、今後も機能を進化させていく。(コマース&マーケティングテクノロジー統括部 ジェネラルマネージャー 山川祐介氏)
楽天グループ コマース&マーケティングテクノロジー統括部 ジェネラルマネージャーの山川祐介氏
問い合わせ対応時間を3分の1に削減。少人数運営店舗の活用事例
説明会では、「楽天市場」に出店する「プチギフトmomo-fuku(運営:ももふく)」の専務 木澤典子氏が登壇。少人数での店舗運営におけるAIの具体的な導入効果を明かした。

「プチギフトmomo-fuku」はギフト商品を専門に扱う店舗であるため 、地域ごとに異なる熨斗の作法や配送に関する細かい問い合わせが多く、1件あたり約10分の対応時間を要していた。しかし、AIによる返答文の作成支援を活用し、対応時間は1件あたり1~3分に短縮。月間で約60時間以上かかっていた問い合わせ対応時間を約20時間へと劇的に削減した。
木澤氏は「敬語やマナーに悩むスタッフの心理的負担がなくなった。迅速なレスポンスによって顧客からの信頼が高まり、新規購入や好意的なレビューという好循環が生まれている」と評価する。さらに、商品説明文の作成をAIに任せることで、登録商品数は従来の1000点から1万点超へとスピーディに拡大した 。
楽天が提供する画像加工AIについても 、「他社のAIツールでは商品のラベルやタオルの水玉の数といったディテールが変わってしまうことがある。しかし楽天のツールは現物の特長を正確に保ったまま背景を加工できるため、安心して利用できる」と話し、ECに特化したAIの精度の高さを強調した。



