LINEヤフーの「Yahoo!ショッピング」が大きく動いている。4月以降、LINEアプリの「LINEショッピングタブ」に「Yahoo!ショッピング」の商品を順次掲載。9月からは出店プランを一部変更し、これまで無料だった月額利用料および売上ロイヤリティを有償化する。さらに、生成AIが商品選びから購入、配送確認まで支援する「Yahoo!ショッピング エージェント」を2月25日から順次、提供を始めた。会話型で提案・比較を行い、カート投入や値下げ通知にも対応する。
生成AIがカート投入や値下げ通知にも対応
LINEヤフーが実施した「Yahoo!ショッピング エージェント」に関する説明会。コマースドメイン ショッピングSBU統括本部長の杉本勉氏が狙いとロードマップを説明し、コマースカンパニー ショッピングSBUプロダクト開発本部長である市丸数明氏が新機能のデモを実施した。質疑応答では、効果の見立てや対象範囲、アルゴリズム、外部AIとの接続、ハルシネーション対策、出店者の対応などについて見解を示した。
商品要約やレビュー比較など条件に応じた提案
「Yahoo!ショッピング エージェント」は、商品情報の要約やレビュー比較に加え、条件に応じた提案を行うことでユーザーの意思決定を支援するAIエージェント。アプリでは右下のアイコンからアクセス可能。トップページ、検索結果、商品詳細ページなど、さまざまな画面からチャットを起動できる。
商品探索の初期段階だけでなく、比較・検討の途中からでも会話の文脈を維持したまま利用可能で、チャット上でカート追加まで完結できる。
ログイン中の「Yahoo! JAPAN」IDにひも付く属性情報や購入履歴を元にパーソナライズ提案を実施。「おトク情報」や購入タイミングの提示、配送予定日や送料の確認にも対応する。気になる商品についてはAIが「お気に入り」登録を提案し、価格が下がった際にLINE公式アカウントから通知を受け取れる仕組みも用意している。
注文後も、配送予定日や注文履歴の確認をチャット形式で行える。過去の購入履歴を踏まえ、「以前購入した商品に似た商品を探したい」「前回より安い商品を知りたい」といった要望にも対応する。
なお、「Yahoo!ショッピング エージェント」はOpenAIのAPIを活用しており、生成AIの出力結果については信頼性や正確性を保証するものではないとしている。
Yahoo!ショッピングにおける生成AI活用の変遷
「Yahoo!ショッピング」は2024年11月以降、生成AI活用を進めてきた。
2024年11月には、レビュー内容を軸に生成AIが類似商品をレコメンドする機能を提供。2025年1月には「Yahoo!ショッピング」「Yahoo!オークション」で、出店ストアからの問い合わせに回答するチャットボット「ストアクリエイターPro AIチャット」の提供を始めた。
翌2月には、ポイントがより多く付与される購入日を提案する機能のβ版の提供を開始。5月には他商品との比較やレビュー要約を行う機能のβ版、7月には生成AIが質問を通じて商品検索を支援する機能のβ版の提供を開始。10月には、生成AIによる商品検索サポート機能に、チャット形式で商品を提案する新機能(β版)を追加している。
9月までに生成AIの「自発的な提案」を実現へ
杉本本部長は、ネットショッピングが進化する一方で、「どれがよいかわからない」「比較軸が不明」「ページをまたぐ比較が面倒」「今日買って損しないか不安」といったストレスが依然として残っていると指摘。これらの課題解決手段としてAIエージェントをあげた。
AIエージェントは検索補助にとどまらず、「何がおすすめか」「なぜそれがよいか」を含めて提案し、ページ上に散在する情報を整理して比較表を自動生成する。購入タイミングの判断も含め、意思決定を支援する。
今後のアップデートとして、3月には過去注文の履歴をより深く理解したパーソナライズ提案を実装予定。さらに検索・閲覧など直近行動をリアルタイムで反映するインタラクティブな提案を強化する。9月までには、ユーザーが探す前から欲しい商品を提示する「自発的な提案」の実現をめざすと話した。
プロダクトの目的は「UIからUXへ」
市丸本部長はプロダクトの目的を「UIからUXへ」と説明。従来はUIを通じて体験を提供してきたが、ユーザーごとに求めるUXは異なる。単一のUIでは対応しきれない課題があったという。
「Yahoo!ショッピング」には多数のAPIが存在するが、従来はコードで定義した範囲内でしか活用できなかった。今後はAIエージェントがユーザーの要望に応じて適切なAPIを組み合わせ、最適な形で出力する世界観をめざす。利用は任意で、従来の買い物体験にいつでも戻れる設計とした。
デモで比較表作成や値下げ通知を披露
デモでは、「いつものコーヒー」と入力すると購入履歴から銘柄を推定し、最安値商品を提示する流れを紹介。ポイント付与日を確認し、最適な購入タイミングを判断する体験も示した。
※動画2挿入(可能であれば):260301ヤフショAIエージェント動画2_市丸さんのデモ.mp4
「本格的なコーヒーが飲めるコーヒーメーカーが欲しい」と入力すると、エスプレッソ式・ドリップ式などの選択肢を解説付きで提示。クリック入力で条件を絞り込めるUIも紹介した。
さらに「お手入れの簡単さで表にまとめて」と指示すると複数商品の比較表も自動生成。「安くなったら教えて」と依頼するとお気に入り登録を促し、値下げやセール時に通知する仕組みも示した。
生成AI活用で流通総額押し上げへ、LINEのデータ活用も視野
説明会では記者らの質問にも応えた。
具体的なシミュレーション数値はないものの「流通総額を押し上げる」
AIエージェント導入の成果については、杉本本部長は現時点で「どれぐらい上がるか」の見込みは、これからリリースを進める中で見えてくるとした。従来と異なる探し方が可能になることでCVRが上がる可能性があるとの見方を示した。キーワード検索では出会いにくかった商品に出会う「ディスカバリー(発見)」に近い体験が実現し、総合的に流通総額を押し上げると期待を示した。
将来的に外部ECとの連携も視野
AIエージェントが扱う商品範囲については、「Yahoo!ショッピング」内で起動するエージェントは「しばらくは『Yahoo!ショッピング』の商品を紹介する」(杉本本部長)とした。一方で、コマース領域では新品中心の「Yahoo!ショッピング」と、リユースの「ヤフオク!」「Yahoo!フリマ」を連携した探索の可能性を示し、エージェント同士の連携によって一点物など「Yahoo!ショッピング」にない商品も相互に探索・発見できる形を検討しているとした。
また、外部の生成AIと接続した場合には、外部ECサイトを含め総合的な探し方ができる可能性にも言及し、今後そうした世界観が出てくるとも示唆した。
LINEのデータ活用にはハードルも
LINEのデータ活用については、現時点でYahoo!ショッピングのAIエージェントはLINEのデータを使えていないと説明した。IDの問題など、仕組みとして解決すべき課題があり、展望には入っているものの「いつから」といった時期は明言しにくいとした。
商品選定ロジックは多重構造
商品選定は、AIの知識、ウェブ検索による外部情報、「Yahoo!ショッピング」内のブランド・商品データを組み合わせた上で、ユーザーニーズに沿うか再評価する多層構造だと説明。ストアにとっても露出機会の拡大につながるとした。
ハルシネーション対策は複数ゲートで制御
意図しない商品提示の可能性は認めつつ、「絶対に避けるべき出力」を防ぐ仕組みを構築。プロンプト制御に加え、別エージェントによる出力チェックなど複数のゲートを設けている。
出店者への提言「商品情報の構造化を」
出店者に対して、ブランドやスペックなどの商品情報の構造化を進めることが重要と指摘。AIが理解しやすいデータ整備が露出拡大につながるとした。
杉本本部長は、最終的な購買の決め手は「商品がよいか」「お得に買えるか」だと強調。出店者と連携しながら生成AI活用を進める考えを示した。
