デジタル時代の消費者ニーズ大調査2020「最新の購買行動」「Amazonを利用する理由」「自社ECサイトに求めること」
2019年が終わり、消費者の好みを分析し、そのインサイトを武器に前進する方法を考える重要な時期に入りました。『Digital Commerce360』は2020年、定量的側面と定性的側面の両方に注目し、2019年のホリデーシーズンの購買体験と2020年に消費者が望むことについて調査しました。
消費者はどのように買い物をする? 最新の購買行動
筆者は30年以上小売業界に携わっていますが、興味深い数字が舞台裏で実際に起こっていることを常に表しているわけではありません。自由回答形式の質問を取り入れると、より多くの情報が集まり、記事のインスピレーションとなることを学びました。
EC利用者の42%は最低価格で購入。24%は定額購入の経験がない
まず消費者が、2019年に自分自身の行動がどのように変化したと思っているかを理解することが重要です。
商品を選ぶ際、価格が重要な要素であることに変わりはなく、消費者に定額で商品を購入してもらうことがますます難しくなっています。オンラインショッピング利用者の42%は最低価格で購入しており、24%は定額で購入した経験がありませんでした。
送料無料は小売事業者の収益に大きな影響を与えるにもかかわらず、多くのオンラインショッピング利用者にとっては必須の施策です。23%の消費者は送料無料の店舗からのみ購入しています。この問題をさらに複雑にしているのは、プライム会員に送料を無料で配送するAmazonです。消費者は、どのような状況であれ、送料無料であるべきだと感じています。
EC利用者の39%は商品が早く届くことを望む。配送スピードが購入のモチベーションに
配達時間の短縮に対する期待は徐々に高まっており、今後1年でさらに高まる可能性があります。この分野でもAmazonがリードしている一方で、TargetやHome Depotなどの大手小売事業者も即日配送オプションを提供しており、多くの場合、低額購入でも送料が無料になります。
実店舗ではトラフィックの獲得が課題となっており、来店数が伸びず売り上げが減少することがよくあります。消費者の39%は実店舗での買い物を減らしているのです。
とは言え、オムニチャネルはその課題を解決する役割を果たしており、14%がオンラインで購入し、店舗で受け取っています。店舗訪問を促進するためにあらゆる手段を模索している実店舗を基本とする小売事業者は、この数字からヒントを得られるでしょう。
ただ、消費者の30%が一握りの小売事業者のみ利用している状況は問題です。29%が主にAmazonから購入していると答え、26%が検索目的でAmazonを利用しているという回答も同様です。
2020年、消費者が望むこと
小売事業者にはカスタマーエクスペリエンス(CX)を向上させる機会が数多くありますが、まず配送です。オンラインで買い物をする人の39%は、商品が早く届くことを望んでおり、早い配送がオンラインでより多く購入する最大の理由となっています。これらのデータを見ると、消費者のニーズを満たし、トップを走る競合他社と同等のものを提供するためには、物流に集中しなければならないことがわかります。
“スピード”の概念は配送以外にも適用されています。効率性と使いやすさのためにカスタマーエクスペリエンスを合理化することが、成長に不可欠であることが、以下のオンラインショッピング利用者の「願望」から見て取れます。
- 24%がより効率的なチェックアウトを望んでいる
- 21%が検索結果の改善を望んでいる
- 18%がより簡単なモバイルショッピングを望んでいる
- 20%がより高速なWebサイトを望んでいる
商品からカテゴリーまで、必要な情報を分析し提供することで、消費者に最適な意思決定を促すことができます。オンライン購入者の30%は、より良い商品画像や情報を求めており、18%はよりわかりやすいカテゴリーの説明を求めています。多くの場合、動画やガイダンスを提供することで改善されますが、情報集約的なカテゴリーでは特にそれらが効果的です。
EC利用者の19%がカスタマーサービスの改善を希望
また、オンラインショッピング利用者の19%が、カスタマーサービスの改善を望んでいることも明らかになりました。これは、“最悪なショッピング体験”について聞いた調査の第2位にカスタマーサービスがランキングしていることを考えると、想定よりも低い数字になっています。
別の話ですが、プライバシー問題も議題に加える必要があるでしょう。オンライン購入者の間でプライバシーに関する懸念が高まっていることを考えると、小売事業者は広告手法を見直す必要があります。
オンラインショッピング利用者の39%は、自分の行動の追跡やターゲティングが減らされることを望んでいます。このような兆候は、プライバシー問題と消費者分析によって提供される強烈なユーザーエクスペリエンス(UX)の両方が原因かもしれません。
Amazonでの購買体験が与える消費マインドへの影響
Amazon、Amazon以外に求める消費者の視点
消費者にとって最も重要な事を知ることで、見えてくるものがあります。2つの質問を通じて、興味深い事実が明らかになりました。1つ目の質問はポジティブな体験に関するもので、2つ目の質問は小売事業者が期待に応えられなかったネガティブな体験に関するものです。
ポジティブな体験に関して、その理由をAmazonと比較した回答が63%あったため、Amazonとそれ以外の事業者に分けてランキングを作成しました。一部では重複が見られましたが、Amazonでのショッピング体験が消費者のマインドに強く影響していることがわかりました。
Amazon利用客のインサイト
Amazonの利用者は、(プライム会員の)送料が無料であることから、迅速な配送と効率的な購買体験のために少しの犠牲を払うことを厭わず、価格にあまり焦点を当てていないようでした。彼らは、ワンクリックモデルを前提とした効率的なチェックアウトとスピードを求めて一喜一憂します。多くの場合、スピードが速すぎて購入した気がしないのも事実です。
他の小売事業者がAmazonよりも高い評価を受けた項目は、カスタマーサービスでした。価格同様、Amazon利用者はこの部分に注目していないかもしれません。カスタマーサービスへのニーズが低いことと、自分で解決するマインドが高いこともあるでしょう。
Amazonでの検索は、商品の品ぞろえが圧倒的に多いため、上位にはランクされませんでした。おそらく膨大な品ぞろえのおかげで、検索結果が長くなり、Amazonのユーザビリティをやや難しくしているからでしょう。
自社ECサイトで最高の購買体験を提供するには?
商品や品ぞろえは購買体験の生命線です。多くの人が品ぞろえの幅広さをあげ、常に必要なモノを見つけることができることが大切と答えました。最高の購買体験の実現には、配送スピードから価格、送料無料、強力なカスタマーサービスまで、すべての基本要素が必要です。
eコマースの特徴である手軽さとスピードはどちらもトップ10に入っています。これらの項目はオンライン以外での買い物においても常に重要だったかもしれませんが、Webがその役割をより際立たせました。
配送遅延と商品の説明不足は、最悪なEC体験につながる
消費者が嫌いな項目は小売事業者が取り組むべき課題
配送の遅さが最も好まれない、または最悪の購買体験として一番多く挙げられます。消費者は長い間ネガティブな経験を覚えているため、カスタマーサービスが第2位にランクインしています。
ユーザーエクスペリエンス(UX)の面では、多くの不満がありました。なかでも商品の説明不足による不満が顕著で、特に画像や情報が不十分だったり、サイズの詳細が明らかにされていなかったりする場合に問題視しています。
価格は常にトラブルの原因になり、多くの場合消費者は、価格が高過ぎたり、チャネル間で一貫性がなかったり、表示された内容が詐欺まがいであると感じています。サイト内検索も理由にあがりました。商品を見つけられないのは、長い間、消費者のフラストレーションの一因となります。
Amazon利用者にとって返品は重要です。上段のAmazon利用客のインサイトグラフでもわかるように、プラス要因の上位を占めています。このことからも、返品ポリシーと利便性は、オンライン購入者の間でより高い期待を持たれていることがわかります。
小売事業者は基本的な事を正しく行うことに集中してください。「速い」というのは、配送からサイト上での体験まで、重要なキーワードです。検索からチェックアウトまで、消費者が簡単に取引できるようにすることが必要条件です。
速さをフロントエンドとバックエンドの両方で提供することは、交渉の余地がない重要事項です。Amazonがあらゆる注文に取って代わる可能性がある中、またAmazonに対する消費者のポジティブな感情を変えることは難しい中、2020年にはユーザーエクスペリエンス改善への注力がこれまで以上に求められています。