Digital Commerce 360[転載元] 2023/2/2 8:00

効果的なプロモーションを展開するためには、コンバージョン率のアップは欠かせません。一方で、多種多様なブランドや商品が台頭している昨今、オンライン通販利用者はショッピングに関わる体験(編注:サービスの充実度)の期待値が高くなっています。小売事業者はこうした期待に応え、消費者のニーズを満たしていくことが求められます。

『Digital Commerce 360』と調査会社のBizrate Insightがオンライン通販利用者を対象に共同で実施したアンケート調査の結果をひもときながら、消費者が抱いているニーズを解説します。自社のコンバージョン率をアップさせるヒントが見つかるかもしれません。

記事のポイント
  • コンバージョンには、送料無料を含む適正価格が重要
  • カスタマーエクスペリエンスから納品まで、スピードが命
  • Facebook、Instagram、Amazonは、コンバージョンに最も効果的な場所

買い控えの理由は“価格の高騰”に一極集中

『Digital Commerce 360』とBizrate Insightは、2023年1月に1060人のオンライン通販利用者を対象に調査を実施しました。2022年を振り返ってみたところ、驚いたことに、すべては価格に集約されました。インフレがコンバージョンに影響したのです。消費者が注文をしない理由は何なのかを尋ねたところ、圧倒的に多かった回答は、価格の高騰でした。

注目すべきは、オンラインショッピングを利用した人のうち、「プロモーションが限られていた」と答えた人はわずか14%だったということです。4人に1人は、一般的な経済的不安を感じているようです。また、回答者のうち35%が送料無料に魅力を感じています。小売事業者は、この特典(編注:送料無料)をどのように拡大すれば利益を上げられるかについて、考え続けています。

個人的な事情、特に金銭的な理由が、コンバージョンに大きく影響しているのかもしれません。また、「その他」と回答した人の中には、「お金がない」「不要なものを買う気がしない」などの意見もありました。

その他に、買い物を阻害する要因としては、25%が「在庫切れ」、21%が「配送の遅れ」を挙げています。いずれも2022年を通しての要因であり、2023年以降も小売事業者の課題となっていく可能性があります。

「2022年に買い控えした理由は何か」の質問に対する回答(3つまで回答可。出典:Digital Commerce 360とBizrate Insightsが2023年1月に1060人のオンライン通販利用者を対象に実施したアンケート調査【以下同】)
「2022年に買い控えした理由は何か」の質問に対する回答(3つまで回答可。出典:Digital Commerce 360とBizrate Insightsが2023年1月に1060人のオンライン通販利用者を対象に実施したアンケート調査【以下同】)

基本要素の「送料無料」「適正価格」がコンバージョンを促進

コンバージョンを促進するために、どのようなWebサイトの機能や属性を備えるべきかを尋ねたところ、お金に関する条件が上位になりました。

回答のトップは、送料無料(69%)と適正価格(66%)でした。送料無料以外のキャンペーンがオンライン通販利用者の関心を引くのは周知の事実ですが、回答者の36%が送料無料以外のキャンペーンを購入の要因として挙げています。また、13%は注文を分割払いにできることを挙げました。経済的な要因によって、分割払いの重要性が増すかもしれません。

商品:豊富な情報と画像、レビューが購買行動を後押し

まずは商品が大切です。47%は商品からスタートします。そして、「買おうと思ったときに、その商品の在庫があること」(45%)がその後に続きます。消費者は、自分の買い物にとって最も良い判断をするために情報を求めています。そのために、適切な質と量の商品レビューが必要と考える消費者は39%、豊富な商品情報と画像を求める回答は28%でした。

13%は、商品のデモを含む動画に注目しています。動画の好みは、商品カテゴリーに依拠する傾向がありました。

ブランド:消費者からの信頼は重要なファクターの1つ

ブランドへの信頼はコンバージョンの要です。認知率の高さ(46%)や、これまでに購入した経験がある、または定期購入を利用したことがあること(43%)も、信頼の後押しをしています。

また、消費者がブランドへのロイヤルティが高い会員になると、コンバージョンが28%向上する可能性があるようです。このほか、数は少ないですが、ブランドが社会的な活動や政治的な活動への支援を行っていることは、回答者のうち12%が「信頼につながる」と答えています。この傾向は今後、さらに増加することが予想されます。

ユーザーエクスペリエンス:コンバージョンアップの“核”

回答者の40%が挙げたように、ユーザーエクスペリエンスはコンバージョンの核となるものです。購入にあたって、消費者はスピード感を求めています。回答者のうち32%が「速いチェックアウト」、21%が「速いサイトスピード」を必須条件として挙げています

必要なものが簡単に見つかることも同様に重要です。回答者の24%が「関連の高い結果を表示するサイト検索」を挙げています。消費者はより多くの情報を必要とすることが多く、そのような場合には「現場のカスタマーサービスに簡単にアクセスできることが貴重である」と、21%が回答しています。

また、オンライン通販の利用者は、テキストやソーシャルなど、複数の方法でカスタマーサービスに連絡できることを望んでいます(19%)。これは、年齢が若い消費者ほど顕著であるようです。顧客の行動履歴に基づいてパーソナライズされた購入体験も、11%が「コンバージョンを促進するために不可欠である」と回答。一方で、企業と顧客の相互作用を生み出すインタラクティブツールの価値は限定的であるとしました(9%)。

「オンラインショッピングをする際、Webサイトやアプリで注文するきっかけになりやすい機能や条件は何か」の質問に対する回答(複数回答可)
「オンラインショッピングをする際、Webサイトやアプリで注文するきっかけになりやすい機能や条件は何か」の質問に対する回答(複数回答可)

問われる、配送スピードと返品対応

オンライン通販利用者は、迅速な配送を期待し(61%)、配送時間の保証を望んでおり(39%)、両方ともコンバージョンに影響を与えています

小売事業者との過去の経験が重要であることは、回答者の45%が指摘しています。カスタマーサービスの担当者とのやり取り(16%)やバーチャル・アポイントメント(8%)と同様に、顧客とのやり取りの質がその後のコンバージョンに影響しています(24%)。

返品に関しては、消費者のニーズは以下の通りです。

  • 返品送料無料
  • わかりやすい/簡単な返品制度(42%)
  • 小売店以外(36%)または小売店の店舗経由(32%)の実店舗での返品オプション

オンライン通販利用者は、特にカゴ落ちした商品に関するプロモーションメールに惹かれることもあります(17%)。利便性には、質の高いモバイルアプリのオプション(18%)や簡単な再注文機能(21%)などが挙げられました。いずれも消費者の時間を節約することを目的にしています。

「オンラインで注文をするきっかけになる施策や取り組みは何か」の質問に対する回答(複数回答可)
「オンラインで注文をするきっかけになる施策や取り組みは何か」の質問に対する回答(複数回答可)

ソーシャルメディアで優位な広告はFacebook

広告について調べたところ、オンラインショッピングを利用する人の3人に2人が、購入時にオンライン広告がどこに表示されているのかを気にしていないことがわかりました。

彼らが気にするのは「場所」です。消費者がクリックし、最終的に購入に至った場所を掘り下げることで、小売事業者はマーケティング予算の使い方に優先順位をつけることができるのです。コンバージョンという点では、Facebookが最も強力であり、InstagramやAmazonも効果的です。ソーシャルメディアは以下のような順位になっています。

  • Facebook 36%
  • Instagram 26%
  • YouTube 22%
  • TikTok14%
  • Twitter 12%
  • Pinterest 6%
  • 興味のある商品を取り上げているソーシャルメディア広告 4%
  • インフルエンサー(プラットフォーム関係なく)3%
  • LinkedIn 2%

一般的な広告の成功は、スポンサー付き広告を含むAmazonがトップです(26%)。次は、Amazonとはずいぶん差が広がりますが、Webサイトのディスプレイ広告で5%。

Eメールは従来通り消費者の注目を集め、コンバージョンを促進しますが、Eメールで配信されるプロモーションの内容が重要です。具体的に商品を提案するメールは22%に支持されましたが、新商品やトレンドを紹介するメールは8%にしか支持されませんでした。

テレビ広告は18%にとどまっています。SMSまたはテキストメッセージも注目されていますが、現在では4%の普及率にとどまっています。

「広告をクリックし、購入につながる最も効果的な広告のプラットフォームはどこか」の質問に対する回答(3つまで回答可)
「広告をクリックし、購入につながる最も効果的な広告のプラットフォームはどこか」の質問に対する回答(3つまで回答可)

“カゴ落ち”を招いてしまうカートのUXとは?

ショッピングカートは、すぐに購入を決められない消費者にとって、さまざまな場面で利用されています。たとえば、カートに保存しておきたい(32%)や、気が散ってカートに入れたことを忘れてしまった(17%)なども挙げられました。また、価格を比較するためにカートに商品を入れた人(19%)にとって、カートは便利な場所となっています。

カゴ落ちの理由は、お金に関係があります。35%の消費者が、「配送料によって注文の合計金額が予想以上に高くなった場合、カゴ落ちする」と回答しています。また、29%が、送料無料にならない場合にもカゴ落ちしています。

予想外の追加費用(税金、取り扱い手数料、配送料)が発生した場合は、18%がカゴ落ち。同じ割合で、クーポンコードを受け付けない場合にもカゴ落ちしています。

在庫切れの場合も、22%が注文を止めています。配送自体はそれほど問題になっていないものの、消費者のニーズに合っていない(18%)、または配送日が保証されていない場合、12%がカゴ落ちしています。

利便性の観点から、15%が店舗で購入することを決め、8%が単に販売者を信用しなかったと回答しました。

カートのユーザーエクスペリエンス(スピード、エラー、支払い方法の選択とルールの透明性など)も、カゴ落ちにつながる可能性があります。他の多くの問題ほど重大ではないものの、次のような問題点がある場合には、対処したほうが良いでしょう。

  • 希望の支払いオプションが使えない 15%
  • チェックアウトページでエラーが発生する 12%
  • チェックアウトに時間がかかりすぎる 10%
  • 読み込みが遅い 9%
  • 返品規定が明確でない 8%
  • 融資が受けられない 8%
  • ギフトカードが使えない 8%
  • ユーザー名/パスワードを思い出せない 6%
「カートに商品を入れた後、購入せずにサイトを離脱した場合、その理由として最も多いのはどれか」の質問に対する回答(複数回答可)
「カートに商品を入れた後、購入せずにサイトを離脱した場合、その理由として最も多いのはどれか」の質問に対する回答(複数回答可)

81%が“オンラインカスタマーサービスを利用したことがある”

消費者は、ブランドから適切な情報が得られなかったり、購買の意思決定をするために質問をしたいときがあります。

小売事業者はさまざまなコミュニケーション・タッチポイントを提供する必要がありますが、すべてのタッチポイントが同じコンバージョン率を実現するわけではありません。コンバージョンを促進するカスタマーサービスのトップはEメール(40%)で、次点は人間によるライブチャットのやりとり(37%)でした。

自動応答のチャットボットによるものは14%とかなり低くなっています。電話は26%、テキストは21%と僅差でした。ソーシャルメディア経由のやりとりは12%と低いですが、特定の消費者層にとってはより重要であり、成長すると思われます。予約/店舗関連のオプションは、過去数年間で、多くのバリエーションが登場しました。

各サービスのコンバージョンの可能性は次の通りです。

  • 店頭での対話 18%
  • バーチャルアポイントメント 10%
  • 店頭スタッフとのアポイントメント 6%
「過去1年間に体験したカスタマーサービスについて、どのようなやりとりをした後にオンライン購入をする可能性が最も高いか」の質問に対する回答(3つまで回答可)
「過去1年間に体験したカスタマーサービスについて、どのようなやりとりをした後にオンライン購入をする可能性が最も高いか」の質問に対する回答(3つまで回答可)

全ての利用者がスマホで買い物するわけではない

市場調査子会社のeMarketerによると、2022年のオンラインショッピングに占めるモバイルの割合は41.6%であり、順調に利用されていることがうかがえます。

しかし、すべての消費者が「スマートフォンで買い物を済ませたい」と考えているわけではありません。データで示されるカゴ落ち率は、この点を考慮していない可能性があります

小売事業者が最適化されたモバイルアプリを提供していない場合もあり、17%の消費者はモバイルアプリがない状況に直面しています。また、5%の人が、単にスマートフォンを持っていない、またはスマートフォンを使って買い物をすることを選択していないことも忘れてはいけません。

モバイルでの買い物を敬遠する人も

スマートフォンユーザーは、その端末特有のユーザーエクスペリエンス(UX)ニーズを考慮した、効率的なショッピング体験を必要としています。

消費者にとって時間の節約は常に重要です。28%が「デスクトップでより簡単、かつ迅速に買い物を済ませられる」と回答し、モバイルショッピングを敬遠しています。

ユーザビリティの観点からは、商品を比較する際に行ったり来たりするのが大変(26%)、スクロールが多すぎる(25%)、読み込み時間が遅い(24%)、ステップが多すぎる(17%)など、数多くの課題があります。また、「疑問が生じたときに、販売店の電話番号がすぐにわからない」という回答が10%ありました。

UXの観点からは、スマートフォンは気になる点がたくさんあります。20%がナビゲーションの煩雑さを挙げ、プロモーションコードの追加やポイント交換が困難であることを挙げています。

また、画像がうまく表示されなかったり、小さすぎたり(18%)、チェックアウトが困難(17%)ということもよくあります。モバイルデザインに関しては、表示される情報のレイアウトが悪い(17%)、またはコンテンツが正しく表示されない(15%)と回答しています。最後に、ナビゲーションのボタンサイズが合わない場合があり、調査対象者の10%がこれを挙げていました。

「スマートフォンを使ってオンラインショッピングをする際に、注文を妨げる要素は何か」の質問に対する回答(複数回答可)
「スマートフォンを使ってオンラインショッピングをする際に、注文を妨げる要素は何か」の質問に対する回答(複数回答可)

効果的なパーソナライゼーションは“検索結果”が首位

コンバージョンを促進したいと考えるとき、パーソナライゼーションはもっと重要視されるべきです。パーソナライゼーションが最も効果的なのは、パーソナライズされた検索結果(32%)、ホームページの見せ方(28%)、ウェルカムメッセージ(16%)です。

商品ページは重要な意思決定の場であり、過去の購入履歴(24%)と閲覧行動(22%)に基づいたレコメンデーションも効果的です。ショッピングカートの役割はそれほど大きくはないようで、事前の閲覧(17%)と購買行動(15%)に基づいたレコメンデーションはコンバージョンにつながりにくいようです。

カゴ落ち商品に関するメールは、消費者に過去の閲覧を思い出させることができるため、有効であると考えられます。また、過去の行動に基づいた購買後のメールは、11%の回答者に支持されています。

オンライン通販利用者のなかには、パーソナライゼーションに興味がない(22%)、あるいは好きではない(12%)という人もおり、小売事業者はこの点も考慮する必要があることに注意してください。

「パーソナライズされた体験のうち、Webサイトで購入する可能性が高いものは何か」の質問に対する回答(複数回答可)
「パーソナライズされた体験のうち、Webサイトで購入する可能性が高いものは何か」の質問に対する回答(複数回答可)

オムニチャネルは商品の入手しやすさと利便性がポイントに

店舗での受け取りを希望する場合、商品の在庫があることが条件となります。在庫の有無は47%でトップ、次いで店舗に近いこと(43%)となっています。また、駐車場の有無は12%にとどまり、購入の決め手にはなっていません。

注文を受け取るために消費者が店舗を利用するメリットを与えることは、購入を後押しすると考えられています。42%の消費者が、店舗での買い物をする場合の割引を高く評価しています。

小売業は、注文を迅速に処理する能力が重要です。41% が注文した商品受け取りまでの時間を挙げ、25%が在庫を持つ店舗数を挙げています。小売事業者とのコミュニケーションも大切です。19%は、店舗に向かうことを通知するオプションを高く評価し、12%は、近くにいることを検知するジオロケーション技術を挙げています。

小売店でのポジティブな体験の重要性に関して、30%の回答者がそのことを強調し、16%が小売店のアプリの洗練度を挙げました。このように、オムニチャネル利用者の購買にも影響を与えます。

「店舗受け取り(店頭・カーブサイドピックアップ)の注文をする際、購入の可能性を左右する要素は次のうちどれか」の質問に対する回答(回答は5つまで)
「店舗受け取り(店頭・カーブサイドピックアップ)の注文をする際、購入の可能性を左右する要素は次のうちどれか」の質問に対する回答(回答は5つまで)

価格、配送などの基本をおさえることが肝心

小売事業者は、経済やインフレによる物価高をコントロールすることはできません。しかし、デスクトップからモバイルデバイスまで多岐にわたって最適化された購買行動で、高いコンバージョン率を達成するためには、地道な努力が必要であることはわかっています。

それにあたって、価格を意識し、商品、在庫、配送などの基本をチェックする必要があります。これらがうまく機能すれば、消費者はユーザーエクスペリエンスから配達時間まで、迅速なプロセスを期待し続けるでしょう。

そして、無料のサービスはいつでも消費者に喜ばれるものです。際限のない仕事ですが、その分、しっかり取り組めば利益がもたらされます。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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