世界の消費者はどこで買い物する?成長鈍化のAmazonとアリババ。存在感を高めるSheinとZalando【越境EC利用状況まとめ】
世界中で越境ECを利用している消費者の27%が「最後に利用した海外の小売事業者はAmazonである」と回答し、次いで17%が「Alibaba(アリババ)のマーケットプレイス『AliExpress(アリエクスプレス)』で購入した」と答えています。
コロナ禍で、ブランドや小売事業者によるEコマースの強化が進み、海外の通販サイトを利用する消費者が増加しました。消費者の購買傾向や、さらなる伸長が期待される商品カテゴリーについて解説します。
- 「Amazon」「Shein」「Zalando」はコロナ禍以降も成長。一方、「eBay」、米国発のファッションEC「Wish(ウィッシュ)」、「AliExpress」は減速
- 米国の小売事業者が越境EC購入に占める割合は、2016年の15%に対し、10%まで減少
- 海外の小売サイトで最もよく購入されるカテゴリーは「アパレルとフットウェア」、次いで「家電商品」、「パーソナルケア」
Amazonとアリババは他国にシェアを奪われている?
米国を拠点とするAmazonと中国のアリババグループは、依然として越境ECの世界的リーダーです。しかし、各国の郵便事業で構成するコンソーシアムInternational Post Corporation(IPC)が行った最新の越境ECに関する調査によると、米国と中国は近年、他国にシェアを奪われているようです。
「自国以外の小売サイトで最後に購入したのはどのサイトか」という質問に対して、27%がAmazonと答え、17%はアリババのマーケットプレイス「AliExpress」(編注:主に中国メーカーの安価な商品を提供)をあげました。
この調査は2022年10月に、過去3か月間に少なくとも1回、国境を越えたオンラインショッピングを行った39カ国の消費者3万3009人を対象に実施しています。
今回調査で27%だったAmazonのシェアは、IPCがコロナ禍前の最後の年である2019年に実施した同様の調査結果の25%から2ポイント上昇。17%だった「AliExpress」は2019年調査の20%から3ポイント減りました。
「eBay」は2019年の14%から、2022年の調査では9%に低下。中国など他国の低価格商品中心に取り扱う米国発のマーケットプレイス「Wish」は11%から5%に低下しました。
一方、2019年のIPCレポートでは言及されていなかった2つの小売事業者が、最新の調査でリーダー的存在となりました。1社目が、中国のファストファッション小売企業「Shein」で、6%を占めています。もう1社は、ドイツのEC事業者が運営するマーケットプレイス「Zalando」で3%を占めました。
Amazonは、マーケットプレイスを総販売額(商品総額)でランク付けした『Digital Commerce 360』発行「グローバル オンライン マーケットプレイス データベース 2022年版」で第3位。「eBay」は5位、「AliExpress」は15位、「Wish」は16位、「Zalando」は24位。アジアを拠点とする小売事業者をオンライン売上高でランク付けした「アジア データベース 2022年版」では、「Shein」は36位にランクインしています。
なぜ、米国の越境ECに占める割合は縮小したのか?
Amazonは好調ですが、米国の小売事業者全体が越境ECで負けている状況です。
2022年に実施した調査では、「2022年の最後に利用した越境EC」に米国が占める割合はわずか10%。IPCによると、米国の割合は2019年調査で11%、2016年調査は15%で、シェアの低下が続いています。
小売事業者向けのコンサルティング会社McMillanDoolittleのデジタル関連部署のトップで、国際的なオンライン販売を行う小売事業者やブランドを集めた 「Global Ecommerce Leaders Forum」の共同設立者のジム・オカムラ氏は、次のように述べています。
コロナ禍で、生き残りをかけたブランドや小売事業者がEコマースを迅速に展開したことで、国内の選択肢が大幅に広がり、消費者が特定の商品を求めて国外に行く必要性が低くなったのです。(オカムラ氏)
第1位は中国で、消費者が最後に利用した越境ECの30%を占めました。これは、2019年調査の36%から減少しましたが、2016年調査の26%からは増加しています。
ドイツはコロナ禍の間に地盤を固め、消費者の最後の越境EC購入の14%まで増加。2019年調査の12%から上昇しています。
英国は逆で、2019年調査の13%から2022年調査では10%に落ち込みました。これらの変化は、EU加盟国の消費者が、ドイツなどEU加盟国の小売事業者であれば免除される関税を支払うのを嫌い、Brexit(編注:英国のEC離脱)後に英国からの購入が減ったことを反映していると思われます。
消費者のオンラインショッピングは増加するものの、米国ECサイトの伸びは鈍化
「今後、国内通販サイトでの購入が増える」と答えた人は74%で、そのうち24%は「かなり増える」と答えています。一方、「購入が減少する(2%が大幅に減少)」と回答したのは6%にとどまりました。
しかし、米国の小売サイトではそれほど伸びず、米国のオンライン通販事業者での買い物が増えると予想する人は39%にとどまり(8%が大幅に増加と回答)、35%が米国のサイトでの買い物が減少すると答えました(16%が大幅に減少と回答)。
最も多いのは、「隣国からの購入が増える」という消費者です。58%が「隣国の小売サイトからより多く購入する」と答え、うち 10% が「非常に多く購入する」と回答。「少なく購入する」と答えたのは、11%(3%が非常に少ないと回答)でした。
オカムラ氏は、「Eコマースの発達していない国では、十分な品ぞろえや販売者間の競争がないため、消費者は“青く見える隣の芝生”で買い物をすることに魅力を感じています」と言います。
海外のサイトでアパレルや靴を買う消費者が増加
越境ECで最も購入頻度が高いのは「衣料・服飾」で、36%が直近の越境EC利用で購入した商品として挙げています。次いで、「家電製品およびアクセサリー」(20%)、「パーソナルケアおよび美容」(16%)でした。
コンサルティング会社The Research Trustの代表で、「Global Ecommerce Leaders Forum」の共同設立者であるケント・アレン氏は、次のように話しています。
注目すべきカテゴリーはパーソナルケアとビューティーです。ソーシャルコンテンツが爆発的に増えているカテゴリーでもあり、有害な化学物質を含まない“クリーンビューティー”をうたうブランドや、ウェルネスブランドなど、新しいDtoCブランドが従来を上回る成長をけん引するはずです。(アレン氏)
米国の消費者は、衣料品や靴を他国の小売サイトから購入する傾向が最も強いとされています。一方、「南米の消費者は家電商品を越境して購入することが多く、アジアの消費者はパーソナルケア商品を購入している」とIPC は述べています。
安価な商品が多い越境EC。買い物は“55ドル以下”が半数
IPCの調査結果には、他にも以下のようなものが含まれています。
- 購入金額の50%は50ユーロ(55ドル)以下。100ユーロ以上の購入はわずか6%。
- 最後に購入した越境ECが「5日以内に届いた」と回答した人は37%。「10日以上かかった」と回答した人は38%
- 越境EC利用者の79%が、通関手数料について購入時に知った。50%はオンライン購入時に、30%は配送中に、16%は配送時に通関手数料の支払いをした。
- 回答者のうち、10%が直近の越境購入品の全部または一部を返品した。越境EC事業者のうち、返品率が高かったのは中国(25%)で、次いでニュージーランドとスイス(ともに22%)、その次が米国(21%)だった。越境EC事業者は75%が「返品は無料」と回答。無料返品の割合が最も高かったのは、「Zalando」「Amazon」「Shein」だった
- 73%の消費者が、「配送による環境負荷を減らすため、荷物の到着を数日長く待つ」と回答し、そのうち30%はその意見に強く同意。しかし、72%の消費者は、「持続可能な配送のコストを負担するのは、消費者ではなくオンライン小売事業者の責任」だと考えている(29%が強く同意)