コンバージョンを促進する10の要素とカゴ落ちの理由。無料、在庫、スピード、信頼性、モバイルファーストなど重要施策まとめ
消費者にとってオンラインショップで商品を購入する際に最も重要なことは何か、一方、ECサイトを運営する事業者はコンバージョンを促進するために必要なことは何か? 詳細な消費者インサイトを紹介します。
コンバージョンに関して、基本的な要素が多くの優位性を持ち続けていることに驚かされます。米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』はBizrate Insightsと共同で、オンラインショッパー1108人を対象に調査を実施(2022年1月)。Webサイト、モバイル端末、アプリを通じて商品購入する要因、購入を妨げる可能性の要因などを聞きました。
その調査結果を10のキーワードで解説します。各質問のさまざまな要素を取り上げ、コンバージョンに関して何が重要かを考察します。
- 無料
- 在庫がある
- 速い
- 信頼できる
- 情報量が多い
- 利便性
- 顧客中心主義
- モバイル志向
- マーケティング主導型
- パーソナライゼーション
1. 無料
コンバージョンを促進するためには、さまざまな「お金に関する」条件が整っている必要があります。通販・EC利用者が評価し、小売事業者にとって不可欠な重要な戦術は、送料無料(76%)と適正価格(73%)です。
送料無料以外では、プロモーションがコンバージョンの鍵と答えた割合は45%で、インパクトは足りないと言えるでしょう。一方、魅力的なキャンペーンを紹介したメールは34%が有効と考えており、消費者の注目を集めています。
購入金額が高い、もしくは予想外のコストがかかると、消費者はすぐにカゴ落ちしてしまいます。その理由の上位では、通販・EC利用者の47%が、送料を含んだ注文の合計金額が予想以上に高くなったことがあがっています。
また、送料無料が対象外の場合は41%が購入を断念。消費者の25%は予想外の追加費用(税金、手数料など)が発生した場合に、プロモーションコードが受け入れられなかったり、見つけにくかったりした時は24%の消費者がカゴ落ちしています。また、回答者の21%が価格を比較するためにカートに商品を追加しており、消費者が価格に敏感であることがわかります。
無料が重要なのは、注文時だけではありません。通販・ECの利用者が、返送料を無料にすることを希望するケースが増えており、60%が返送料無料をあげています。
小売事業者の選択を促す新たな要因として、回答者の13%が分割払いによる注文方法を求めています。また、カゴ落ちの15%は、希望する支払い方法が利用できない場合に発生しています。
2. 在庫状況
調査対象者の53%が、購買活動の最初のステップである商品セレクションに注目しています。在庫の重要性に関し、消費者の54%が小売事業者を選択する際に在庫があることが重要であると回答しています。
在庫がない場合は購入しないと回答した割合は30%。消費者は通常、商品の在庫がないときや納期が不明なときは待ちたくないのです。
3. 速い
ユーザーエクスペリエンスは進化しています。小売店選びでは、45%が全体的な体験に関心を寄せています。
通販・EC利用者は、時間節約を重視する傾向があるため、「スピード」が重要になります。それを証明するために、「オンラインで買い物をする際、どのような特徴や条件があるWebサイトで注文する可能性が最も高いか」という質問をしてみました。
多くの回答の根底にあるのは効率性でした。回答者の29%は読み込みの速いサイトを、25%は関連性のある結果を表示するECサイト内検索をあげました。特に複雑な検索をする場合、消費者は時間の節約を求めるのです。
また、顧客プロフィールがあらかじめ入力された迅速なチェックアウトも、調査対象者の20%にとって重要な要素になっています。チェックアウトのプロセスが長すぎたり、わかりにくかったりすると、14%のオンラインショップ利用者が購入をあきらめるという結果も出ています。
もちろん、配送に関しても「速い」ことは重要です。オンラインショッピング利用者は、迅速な配送を期待し、配送時間の保証を望んでいます。アンケート回答者の66%が、小売事業者の迅速な配送能力は商品を選択する上で最も重要な要素であると回答。43%が配送時間の保証を希望しており、サプライチェーンの混乱のなかでも確実性がより重要視されています。
スピードの観点では、納期がニーズに合わなかった場合に、24%がカゴ落ちしています。15%は納期が保証されていないことに気づき、購入を断念しています。
4. 信頼できる
消費者にとって小売事業者との過去の買い物体験は重要で、58%がその体験を基に小売事業者を選択しています。また、通販・EC利用者の53%が、ブランドへの信頼感から小売事業者を選んでいます。
41%がオムニチャネルを利用する際、過去の経験を考慮に選択。さらに、小売事業者がより積極的に政治的・社会的な立場を取るようになると、消費者にとって重要な活動を支援する気持ちが高まるようです。一方、販売者が信頼できない場合、10%がカゴ落ちしています。
5. 情報提供
消費者は、興味のある商品に関する情報や画像に注目しています。また、商品レビューの質と量の両方も評価。ほとんどの回答者(51%)が、この2つを小売事業者の選択において重要であると答えています。
同時に、小売事業者が十分な商品情報と画像を提供してくれることを期待していると回答した割合は39%。商品のデモンストレーションを含むビデオを重視する回答者は14%で、ホーム、ビューティー、玩具などのカテゴリーでは不可欠としています
6. 顧客中心主義
顧客中心主義には多くの意味がありますが、最も注目すべきはカスタマーサービスでしょう。具体的には、消費者とのインタラクションです。
消費者の46%が小売店の選択基準にあげている「わかりやすい/簡単な返品ルール」もその1つです。また、カスタマーサービス担当に簡単にアクセスできることは、当然のことですが、それをあげたのは25%にとどまりました。
消費者とのインタラクションの質がその後のコンバージョンに影響することは、調査対象者の27%が認めています。
コンバージョンに至る可能性は、Eメールが49%と最も高く、電話によるコンバージョンが33%で続いています。
テキストによる新しいタッチポイントのコンバージョン率は20%。カスタマーサービスにツイート可能かどうかは、コンバージョンにほとんど影響を与えず4%でした。
ライブチャットに関しては、対人のインタラクションがコンバージョンに影響を与えると答えた割合は43%、ボット関連のインタラクションは14%しかコンバージョンに関連性がないようです。
店舗でのインタラクションは、コンバージョンを推進する重要な役割を持っており、消費者の30%がコンバージョンにつながると回答。アポイントメントについては、店頭でのアポイントメントが8%、バーチャルアポイントメントが5%と限定的な結果となりました。
7. 利便性
利便性の影響力は強大です。注文につながる可能性が最も高いオムニチャネルの柔軟な取り組みは、店舗で受け取るという選択肢から始まっています。
消費者の25%はオンラインで購入し、店舗で受け取る(BOPIS)をあげ、17%はカーブサイドピックアップ(車中受け取り)を受け入れています。さらに19%は地元の小売事業者から購入することを希望しています。
一方、カゴ落ちした人の15%が、代わりに店舗で購入することを決めています。
オムニチャネル購買を促進する要因について詳しく見てみましょう。コンバージョン要素のトップは「商品の入手可能性」で66%。そのほかは、「場所」に起因しています。コンバージョン要素の第2位は、「店舗への近さ」で60%。受け取り場所の種類を重要視したのは27%でした。さらに、16%が天候、店舗の広さ、指定された駐車場の数をあげています。
物流と利便性もオムニチャネル購買の推進力となっています。「注文した商品を受け取れるようになるまでの時間」を重要視したのは54%で、小売事業者の注文の迅速な処理能力が重要であるとしています。
在庫のある店舗数はそれほど重要ではありませんが、それでも消費者の24%は選択肢の1つとしています。また、店に向かうことを通知するオプションがあると便利であり、これらはすべて来店を効率化するのに役立つと24%が答えています。
また、ジオロケーションもオムニチャネルの消費者にスピードアップをもたらすことができると12%が回答しました。
最後に、利便性のもう1つの要素は、消費者のカートの使い方に関連しています。44%が「後で確認するために保存」し、25%が「忘れてしまった」と回答しています。
8. モバイル志向
リサーチや購入にモバイルを利用する消費者が増えています。「Adobe Analytics」によると、2021年のホリデーシーズンのオンライン売上の43%はスマートフォン経由で、全体で880億ドル(約9兆円)にのぼります。しかし、成長のチャンスはもっとあるのです。
モバイル利用の阻害要因は、ロード時間の遅さ(33%)、スクロールの多さ(32%)、購入までのステップ数の多さ(26%)。一方、ユーザー31%はデスクトップの方がまだまだ簡単にまたは速く購入できると感じています。
スマートフォンユーザーは、コンバージョンに必要なデバイスのユーザーエクスペリエンス(UX)ニーズを考慮した効率的なショッピング体験を求めているのです。
消費者のコンバージョンを妨げる課題は以下の通りです。
- 煩雑なナビゲーション 31%
- わかりづらいチェックアウト 26%
- わかりづらい情報のレイアウト: 25%
- モバイルサイトが最適化されていない: 24%
- 画像がうまく表示されない、または小さすぎる:23%
- コンテンツが正しく表示されない: 21%
- ナビゲーションボタンのサイズ: 16%
すべての消費者がスマートフォンで買い物を済ませたいと考えているわけではないので、上記の課題が小売事業者選定の基準にはならなかったかもしれません。また、「その他」の回答として「スマートフォンを持っていない/使っていない」が4%ありました。
アプリは、通販・EC利用者にとって魅力的なツールになり得ます。調査結果では、19%が質の高いモバイルアプリを、小売事業者を選択する理由に挙げています。また、オムニチャネルの観点から、小売事業者のアプリの完成度が購入に影響したのは8%でした。
9. マーケティング主導型
カゴ落ちしたユーザーへのメール、リターゲティング、ソーシャルメディアなどのマーケティング施策について、消費者の回答によるとコンバージョンにつながる施策としては限定的な効果しかないようです。
その数値は以下の通りでした。
- かご落ちした人へのメール:15%
- リターゲティング:11%
- ソーシャルメディア広告:10%
広告をクリックして注文につなげるという点ではAmazonが強いですが(45%)、スポンサー広告はそれほど影響力がありません(10%)。コンバージョンにつながるソーシャルメディア広告のトップはFacebookで(33%)、Instagram(19%)、YouTube(16%)、TikTok(9%)がそれに続いています。回答者の39%によると、Eメールは注目を集めており、コンバージョンにつながっているようです。また、テレビ広告は19%で影響力を維持しています。
10. パーソナライゼーション
ECサイトにおけるパーソナライゼーションは、コンバージョンを促進する可能性が高いことから、優先的に取り組むべき事項です。
トップページの見せ方で、消費者の44%がコンバージョンする可能性があると回答。過去の購買行動に基づくレコメンデーションが41%で続いています。一方、閲覧履歴に基づくレコメンデーションは39%。この3つの要素に着手するだけで、コンバージョンを促進することができるはずです。
消費者に過去の閲覧を思い出してもらうためにも、カゴ落ちしたユーザーへのメールは活性化されるべきでしょう。回答者の29%がカゴ落ちメールによって、小売事業者のECサイトで購入する可能性が高くなると答えています。
さらに、過去の行動に基づく購入後のコミュニケーション・メール(18%)やリターゲティング広告(16%)にもチャンスがあります。