売上2倍成長を続ける創業5年のベンチャーが語るオムニチャネルの重要性と成長の秘訣
創業から5年で100万着以上の水着をネット販売するAndie Swimの創業者であるメラニー・トラヴィス氏が、オムニチャネルが成長に不可欠な理由を解説します。
Andie Swimがオンライン販売を開始したのは2017年。Andie Swimの水着を購入した人は、商品をInstagramで見つけた可能性が高いそうです。「Instagramは、コロナ禍以前から、私たちにとって主要な投資チャネルでした」と創業者兼CEOのメラニー・トラヴィス氏は話し、次のように続けます。
私たちは、ボトムオブファネルのデジタルマーケティング戦略に注力することで、Instagramで成功を収めました。Facebook、Instagram、Googleなど、誰もが使う重要なチャンネルをすべて活用しました。
「ボトムオブファネル・マーケティング」とは、消費者が顧客(購買者)に変わるステージ、つまり購買に近い見込み客を指します。コンバージョンを促すために、EC事業者はケーススタディや利用者の声、商品の詳細ページなどを積極的に用います。
コラボレーションや豊富なサイズ展開(0~26号)が、消費者の支持を集めているAndie Swim。創業から5年で7万5000人以上のロイヤルティ会員を獲得し、2021年12月にはシリーズBの資金調達で1850万ドルを調達しました。
その資金の大部分は、オムニチャネル展開に充てています。女優のデミ・ムーア氏は、Andie Swimの初期の投資家です。最近は2022年7月にイタリアとフランスで調達した素材とモロッコで製造した水着を「Demi Moore x Andie」コレクションとして発表しています。
現在、ブランドとして成功するためには、消費者が集まる場所でのプレゼンスが必須です。また、オムニチャネルで展開する必要があります。私たちのビジネスの大部分はeコマースですが、成長するためには、より多くの場所で展開する必要があると思います。(トラヴィス氏)
Anide Swimはフロリダ州ウェストパームビーチに6か月間のポップアップストアを含む、独自のテスト実店舗をオープン。この経験が貴重な学びになったとトラヴィス氏は振り返ります。
店舗でのマーチャンダイジングとオンラインでのマーチャンダイジング
トラヴィス氏は、店舗で売れる商品と、オンラインショップの顧客にアピールする商品は異なると言います。
私たちのブランドがオンラインでうまく機能しているのは、返品制度が充実しているからです。自宅でくつろぎながら、水着を試着することができます。その一方、水着は実際に素肌につけるアイテムなので、女性は店頭で商品に触れ、見て、感じたいと思う側面もあるのです。(トラヴィス氏)
Andie Swimは、消費者が望んでいるため店頭で買い物ができるようにしたかったのです。そして、その結果が興味深い教訓になったとトラヴィス氏は振り返るのです。
たとえば、店頭とオンラインでは売れるものが異なります。オンラインでは、女性は主力商品である黒のベストセラーに引き寄せられます。一方、店舗ではシーズンごとのファッション・コレクションに興味を示します。(トラヴィス氏)
そして、女性は店頭でより多く購入する傾向があるそうです。「店頭で試着してフィット感がいいとわかると、買いだめするのです」(トラヴィス氏)
その結果、店頭とオンラインでは平均注文額が差が出ています。トラヴィス氏によると、店頭での注文額はオンラインよりも20%から25%ほど高いそうです。店舗の売上高が高い理由は、商品担当が店頭消費者のために選んだ補完的な商品を消費者が購入するためです。
ビーチハットやサンダルなどのアクセサリーは、「店頭で簡単にかごに入れられます」(トラヴィス氏)。その反応を見て、オンラインでも同様にアクセサリーを拡充していきます。ニューヨークのサグハーバー店とカリフォルニアのバークレー店をオープンして以来、Andie Swimは店頭での売れ行きを観察し、オンラインショッピングをする消費者にとって何が良いかを判断してきたそうです。
女性が水着を買うとき、おそらくその旅行で必要な他のものも買っているはずです。(トラヴィス氏)
オンラインでのコンバージョン率は1桁台前半。店頭でのコンバージョン率はオンライン比で35~40%高いそうです。
「店頭でのコンバージョン率は全くの別物です」とトラヴィス氏は話します。
ソーシャルメディアとインフルエンサーの役割
Andie Swimは、FacebookやInstagramなどのソーシャルメディアを利用して、支持者を集めることに成功しました。コロナ禍によって対面での写真撮影を中止せざるを得なくなりました。その代わりに、ソーシャルメディア・コミュニティにいるマイクロインフルエンサーに注目しました。
インフルエンサーに関しては、彼らがどこにいても撮影できるように手配しました。彼らがビーチの近くに住んでいようと、裏庭で写真を撮ろうと、2020年の春夏コレクションをすべて撮影することに成功しました。(トラヴィス氏)
撮影された画像について消費者はリアルに感じ、SNS上ですぐに反応。現在、Andie Swimのマーケティング予算の約25%がインフルエンサーに費やされています。
リテンション・マーケティング
Andie Swimは、コロナ禍以前は新規獲得に重点を置いていました。しかし、コロナ禍をきっかけに、リテンションが焦点になったと言います。
私たちは、社内に非常に強力なリテンション・チームを設置し、顧客との関係性を構築し続けています。リピーターが優良な顧客であることを認識しました。そして、リテンション・マーケティングが非常にうまくできるようになったのです。(トラヴィス氏)
また、「リピーターは返品回数が少ない」とも話します。「彼女らは自分のサイズを知っています。ブランドの支持者なのです。平均注文額が高く、LTVの向上につながります」(トラヴィス氏)
配送は航空便か船便の使い分け
インフレは誰にとっても最大の関心事です。実感がないと言う人は嘘をついています。業界によって感じ方は違いますが、私たちは皆、影響を受けているのです。(トラヴィス氏)
Andie Swimのコレクションは、中国、スリランカ、モロッコ、カリフォルニアなど、世界各地で生産しています。昨今のコスト高と生産にかかる時間の増加に対応する方法としてあげたのが、輸送手段の変更です。
異なるものを作るために、いくつもの工場を持つようにしています。コレクションの生産地を分散させることは、ブランドの運営を1つの大きな供給源に依存しないようにするための戦略です。サプライチェーンの遅延や燃料費の高騰が続くなか、私たちは最も費用対効果の高い方法を見極め続けているのです。(トラヴィス氏)
Andie Swimは生産にかかる時間と輸送時間に基づいて、展開するコレクションを決めます。「お客さまのために価格を上げず、コストを抑えるために、できることをやっています」とトラヴィス氏。そのための準備として、オーダーを早めにまとめることもあるそうです。また、配送方法の最適化にも取り組んでいます。
以前は、商品の輸送はすべて航空便でしたが、今は、航空便と船便を使い分け、コレクションの大部分を船便にすることで、利益を確保しています。(トラヴィス氏)
サステナビリティへの取り組み
Andie Swimは、リサイクル素材から製造された竹とレーヨンの混紡糸を使用したルームウェアと下着ラインを発表しました。100%サステナブルでありたいと考えていますが、「まだそこまでには至っていません」とトラヴィス氏は言います。
Andie Swimの水着のほとんどは、リサイクルされたナイロン生地で作っています。そのような生産技術を持つ施設を増やす取り組みを継続的に行っています。
倉庫の多様化に伴い、グリーン認証を取得する必要がありました。(トラヴィス氏)
そのためには、水のリサイクルや廃棄物の削減、太陽光発電などの代替エネルギーの利用が必要です。
アパレル業界全体が環境に与える影響は相当なものです。米国環境保護庁のデータによると、アメリカ人は2019年に1300万トン以上の衣類を捨てました。そのうち70%以上が埋立地に送られ、13%は新しい衣類や別の用途にリサイクルされました。
Andie Swimがより環境に優しい商品を作りたいのであれば、そのオペレーションは世界規模でなければならないとトラヴィス氏は言います。
アメリカは水着の製造大国ではありません。すべてを国内で生産していては、需要に追いつかないのです。アジアには、廃棄物の多くを占める水のリサイクルなど、サステナブルに物事を進める非常に高度な技術があります。(トラヴィス氏)
Andie Swimのルームウェアは米国で生産されていますが、マーチャンダイジングにおける割合が少ないため、国内で生産する方がコスト効率が良いとトラヴィス氏は言います。
ホリデーシーズンに向けた取り組み
春から夏にかけては、Andie Swimにとってハイシーズンです。ホリデーシーズンは、ビジネスが落ち込むそうですが、割引を求める消費者にアピールするチャンスは残っています。
ホリデーシーズンの顧客層は異なります。カリブ海への逃避行やその他の旅行の準備のために買い物をする、より裕福な顧客が多いようです。(トラヴィス氏)
トラヴィス氏によると、Andie Swimはブラックフライデーとサイバー5の期間のディスカウントに頼ってはいませんが、キャンペーンは行っています。
ブラックフライデーに何もしないなら、閉店したも同然だからです。ソーシャルメディアで、ある種の割引を行わなければ、消費活動から締め出されることになる期間なのです。(トラヴィス氏)
Andie Swimは、セール期間と非セール期間とで、どのような消費者が来店するかを追跡しています。
ブラックフライデーの消費者は、リピート顧客になる傾向がありますが、彼らは割引のタイミングをうかがっています。レイバーデー、ブラックフライデー、メモリアルデーの前後など、1年を通じてセール時期を予測し、年間を通じて何をすれば良いのかを決定しています。(トラヴィス氏)
いつか、Andie Swimもブラックフライデー商戦に参戦しない小売店に追随するかもしれないと、トラヴィス氏は言います。
PatagoniaやREIのようなブランドがブラックフライデーに閉店するのは素晴らしいことで、いつか私たちもそうなるかもしれません。しかし、今のところ、私たちはこのゲームを続けるつもりです。(トラヴィス氏)