プライバシー保護とパーソナルデータ活用はどう両立する? 米国の実情に学ぶデジタル時代のマーケティング戦略
2020年1月1日以降、カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)とプライバシー問題がテクノロジーや消費者を対象としたほぼすべてのイベントで話題に上っており、特にConsumer Electronics Show(CES、毎年米国のラスベガスで開かれる世界最大級の家電見本市)で大きな話題となりました。
CESでは「プライバシー問題」が話題の中心に
主な焦点となったのは、ブランドがハイパーパーソナライゼーションの未来を推進するには、どのようにデータに頼ったら良いか、「なぜ」プライバシー保護が必要かという点でした。
なぜ今、企業はこの問題に真剣に取り組んでいるのでしょうか? そしてなぜ、プライバシーに対応した消費者への強力なアプローチが必要なのでしょうか?
一貫したコミュニケーションが提供されないと、消費者は混乱し、不満を抱き、ブランドから離れていきます。
CCPA、GDPRが直面している3つの課題
プライバシーの規制はCCPAが初めてではありません。CCPA以前の注目すべき規制は、おそらく2018年に発効されたEUの一般データ保護規則(GDPR)でしょう。GDPRは業界に多くの学びを与え、CCPAの基礎となりました。
この2つの規制が私たちに教えてくれたのは、法律順守のプロセスには3つの主要なポイントがあるということです。それは、データ戦略の見直し、データ活用の透明性、消費者第一主義の継続の3つです。ただ、どちらの規制でも、法律順守のプロセスはスムーズにいかないことを教えてくれました。
それは、GDPRもCCPAも課題に直面しているためです。今回は、最も一般的な3つの課題について説明しましょう。
消費者第一主義のアプローチを継続的に続けるためには
1. 変化する目標
The Vergeの記事が示唆しているように、データ保護に関するコンプライアンスの定義が欠けているため、企業が消費者データの取得と保存に関して何をすべきかを判断することが難しくなっています。
知られているのは、CCPAによって、消費者は以前よりも主体的にプライバシー問題を捉えるようになり、その影響はカリフォルニアの企業や消費者以外にも及んでいるということです。
世界をリードするテクノロジー企業やデータブローカーの多くがカリフォルニア州に拠点を置いているため、規制の影響は世界中に及んでいるのです。
企業が最初に行うべき重要なことは、組織内のデータ構造を確認し、消費者の同意を得ずに取得されたデータと比較して、消費者が求めていることを明確にすることです。CCPAは2018年12月31日以降に保存されたデータにのみ適用されますが、それ以前のデータを現状のまま保存しなければならない訳ではありません。
企業が実際に必要とする情報の量、情報収集の名の下に無闇に集められているデータ、消費者の利益のために実際に活用できるデータを見極めて、重要な決断を行うべきです。結局のところ、データはカスタマーエクスペリエンスを向上させるために活用されるのです。
この点は小売事業者にとって特に重要です。消費者は高度にパーソナライズされた体験を期待していますが、個人データの共有にはますます慎重になっています。両者のバランスを取るのは容易ではなく、小売事業者はカスタマーエクスペリエンスとプライバシー保護を等しく優先させるために、自社のデータ戦略を綿密に検討する必要があります。
データ戦略を具体的で実用的に再構築できれば、消費者第一主義のアプローチを継続的に達成できるでしょう。
データ活用の透明性を実現するには
2. 混乱する消費者
あらゆる種類の企業は、データポリシーの変更を早期かつ頻繁に消費者へ伝えることによって、個人情報に関する扱いへの理解を促進し、信頼を築く必要があります。プライバシーの問題が起きてから対応するのではなく、透明性を保ち、消費者の望みを尊重することで信頼を築ける企業が優勢になっていくでしょう。
CCPAが浸透し、成熟していくにつれて、企業がプライバシーに関して直面する最大の課題の1つは、「ブランドが必要とするもの」から「消費者が必要とするもの」へとマインドをシフトさせることです。
データ管理に関する消費者への啓蒙が大きな鍵となります。一貫したコミュニケーションが提供されないと、消費者は混乱し、不満を抱き、ブランドから離れていきます。
そして、今後は権限を与えられた消費者がブランドの成功を左右することになっていくでしょう。そのためにはまず、企業における消費者のプライバシーおよび個人データの取扱方法を知ってもらう必要があります。以下に、消費者とのコミュニケーションを向上させ、明確にするためのヒントを紹介します。
- プライバシーポリシーやオプトインメッセージに、消費者が理解しやすい明確な文言を使用する
- オプトアウト/好みを設定できるページに飛べるわかりやすいフッターリンクをWebサイトに追加する
- 消費者データの照会を法的期限内に処理するための社内ルールを作成する
- 組織内で個人データへの明確なアクセス権を決定し、順守する
データ戦略の見直しを行う理由は
3. 組織全体の責任となるコンプライアンス
消費者データは長い間、ITとマーケティングの傘下にありました。この2つの部門だけを見ても、コラボレーションは必ずしも容易ではなく、データの所有権とプラバシー保護に関して、どちらに責任があるのかはグレーな部分でしょう。
しかし、お互いに協力しなければならないというプレッシャーは高まっています。また、マーケティングやIT部門だけでなく、カスタマー・サービス、セールス、その他の部門も関わってきます。ビジネスのあらゆる側面で、戦略の一環としてプライバシーとコンプライアンスを考慮する必要があります。
これは、データのコンプライアンス(法令遵守)に向けて企業が直面している最大の課題の1つです。今後、州レベルと連邦レベルの両方で規制が追加されることは必至なため、各部門の役割を理解することが重要です。
シームレスなコラボレーションへの道は、透明性、コミュニケーション、共通の目標の開発、組織全体での大局的な戦略のトレーニングと、一貫したカスタマーエクスペリエンスをもたらすための戦略的実行、データのプライバシー、信頼を常に最優先することによって開かれます。
CCPAやGDPRなどの規制が、消費者の企業との関わり方、企業の消費者との関係構築の方法をどのように変えていくかは、時間が経たないとわかりません。
前途は多難であり、困難は避けられないでしょう。しかし、チームとして取り組むことを決め、消費者に対してオープンで正直に、消費者第一主義でデータを取り扱うことができる企業は、困難を最小限に抑えて、この試練を乗り切るでしょう。
消費者が信頼できるブランドになることは、最終的にロイヤルティ、成長、そして長期的な成功をもたらすのです。