鳥栖 剛[執筆] 7:00

KPMGジャパンは10月17日、「顧客体験価値を向上させるテクノロジーに関する調査(国内小売業)」の結果を発表した。企業側の導入状況と消費者側が求める水準との間に多数のギャップが見られ、「セルフ化や無人店舗」は企業側の導入状況を消費者の活用状況が上回った。「OMOロイヤルティプログラム」「パーソナライズド広告・販促」は多くの企業が取り組む一方、消費者の活用や理解が進んでいない。

調査では、①実店舗における購買の利便性を高めるテクノロジー②オムニチャネルショッピング③ハイパーパーソナライゼーション④多様な配送サービスを実現するテクノロジー⑤エシカルソーシングを促進する情報提供⑥その他新興テクノロジー――の6つについて企業と消費者の双方へアンケート調査と企業担当者インタビューを実施。企業側の取組み状況と消費者側が求める水準のギャップなどを明らかにし、国内の小売企業がめざすべき購買支援のあり方を考察した。

実店舗における購買の利便性を高めるテクノロジー

「セルフ化や無人店舗」について、企業側の導入状況を消費者の活用状況が上回っている。セルフレジやセミセルフレジは35%の企業が導入しており、消費者側では活用経験ありが53%と過半数を超えている。

無人店舗やウォークスルー店舗については、企業の導入状況は1割未満と限定的だったが、人材不足・人件費高騰などにより約3割の企業が将来的に取組みを推進する意向を示した。また、消費者側では約4割が活用経験あり・今後活用する意向がある。一方で、「セルフ化や無人店舗」は初期費用が高額なことが導入の障壁となるとし、KPMGは企業側は採算性の検証が重要であると指摘している。

KPMGジャパンが実施した「顧客体験価値を向上させるテクノロジーに関する調査(国内小売業)」
セルフレジなどは導入企業3割強に対し、活用したことのある消費者は過半数を超えた

オムニチャネルショッピング

「OMOにおけるロイヤルティプログラム」の企業側の取組み状況に対し、消費者側の活用は進んでいない。店舗への来店や商品購入でポイントがたまる会員システムは6割程度の企業が導入済み・導入検討だったが、活用済み・活用意向がある消費者は3割程度と大きく乖離している。

KPMGでは、「ロイヤルティプログラム自体のコモディティ化による差別化の難しさ」や「消費者が求めるのはポイント付与による単純な割引ではなくなっている点」などがギャップの要因であると分析している。「購買関連行動以外の接点における金銭的なインセンティブ以外のロイヤルティ獲得手段を検討したうえでデータの活用目的を再定義し、必要なデータの管理や連携を行うことが重要」と指摘した。

KPMGジャパンが実施した「顧客体験価値を向上させるテクノロジーに関する調査(国内小売業)」
「OMOにおけるロイヤルティプログラム」活用済みの消費者は2割弱にとどまった

パーソナライゼーション

企業の取り組み状況と消費者の印象にギャップがある。「パーソナライズド広告・販促」は6割強の企業が取り組んでいるものの、監視されている気分による拒否感や精度が低いことから、半数以上となる53%の消費者がマイナスの印象を持っていることがわかった。なお「自分の好みに合った商品がおすすめされ、買い物を便利にしてくれると感じる」といった好意的な反応は19%にとどまった。個人情報の収集や閲覧履歴に基づくトラッキングに対して、情報漏えいリスクへの懸念や活用目的が分からないことへの抵抗感からのマイナスイメージがあるようだった。

KPMGではハイパーパーソナライゼーションの実現に向けて、プライバシー保護におけるさまざまな観点からの配慮が求められるほか、それらに対応するための人材や知識が必要不可欠と指摘。そのうえで「企業は一時的な閲覧履歴や活用目的が明確でない個人情報の収集ではなく、既成事実であるユーザーの購買履歴や同じ商品を購入したセグメントに基づきAIがニーズを類推し商品をレコメンドすることで、消費者にとって監視されている気分が払しょくされ、自然で受け入れやすい広告になっていくと想定される」と考察している。

KPMGジャパンが実施した「顧客体験価値を向上させるテクノロジーに関する調査(国内小売業)」
パーソナライズド広告が「買い物を便利にしてくれる」と感じる消費者は2割弱
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