東京商工リサーチ(TSR)が公表した2026年度の「ベースアップ」に関するアンケート調査結果によると、2026年度の賃上げ実施率の見込みは83.6%で、賃上げ内容の最多は「定期昇給」で、次いで「ベースアップ」が続いた。
一方、2026年度のベースアップ実施率(見込み)は46.8%となり、ピークだった2024年度の51.4%から2年連続で低下する見込み。TSRは、高水準の賃上げが求められるなかで、企業の体力が消耗する「ベア持久戦」の様相が強まっていると指摘する。
賃上げ実施率は5年連続で80%台を維持
2026年度の賃上げについて聞いたところ、「実施する(見込み)」と回答した企業は83.6%。2025年度の賃上げ実施率(確定値)82.0%を1.6ポイント上回った。
過去の賃上げ実施率の推移を見ると、2018年度の82.2%、2019年度の81.0%と8割以上で推移していたが、新型コロナウイルスの感染拡大で2020年度は57.5%まで大きく低下。その後は回復基調に転じ、2021年度は70.4%、2022年度は82.5%と持ち直し、2023年度は84.8%と期間中の最高を記録するなど、高水準の賃上げ実施率が定着し5年連続で80%台を維持していた。
賃上げの中身は「定期昇給」が最多、「ベア」は2番目
賃上げ内容別では、2018年度以降「定期昇給」が一貫して最も割合が高かった。2018年度の63.7%から、コロナ禍の2020年度には47.8%まで低下したが、経済活動の本格的な再開で人手不足が顕在化した2022年度は66.8%まで上昇。直近も6割強で安定的に推移している。
「ベア」は2番目。推移を見ると、3割台からコロナ禍の2020年度には17.4%まで急落、ただその後は年々回復し、2024年度には51.4%と過半に達した。2026年度の見込みは46.8%と前年(2025年度:48.8%)より低下するものの、コロナ禍前の3割台を大きく上回る水準を維持している。TSRでは賃金水準の底上げが構造的に進んでいると分析している。
「ベア」と「賞与(一時金)」の差を見ると、コロナ禍の2021年度は5.2ポイント差、2022年度は1.9ポイント差で、「賞与(一時金)の増額」の実施率が「ベア」を上回っていた。ただ、2023年度からは「ベア」の実施率が「賞与(一時金)の増額」を10ポイント以上上回り、2024年度以降もその差が定着している。
大企業と中小企業でベア実施率の格差が定着
企業規模別にベアの推移を見ると、コロナ禍前の2018年度の実施率は大企業36.4%、中小企業35.3%とほぼ同水準だった。しかし2023年度以降、格差が拡大。2025年度には大企業66.1%に対し中小企業は47.1%となり、差は19.0ポイントまで広がっていた。2025年度以降は両者とも緩やかに実施率が低下しているが、大企業は60%台、中小企業は40%台という構図が続いている。
産業別では運輸業がトップ、不動産業は3割台
産業別では、2026年度のベア実施率(見込み)が最も高かったのは運輸業で56.7%だった。2024年度以降、3年連続でトップとなっている。TSRは、運輸業では深刻な人手不足が続く中、政府の取り組みや荷主側への是正指導の強化などを背景に価格転嫁が徐々に進み、賃上げ原資の確保が進んでいると見ている。
産業別の実施率は、次いで製造業の50.6%、金融・保険業の50.0%が続き、3産業で5割を超えた。一方、最も低かったのは不動産業の34.8%で、10産業の中で唯一3割台にとどまった。
賃上げ率の重心は「5%台」から「3%台」へ
賃上げ率の分布では、2026年度(見込み)の最多レンジが「3%台(32.5%)」だった。「5%台」も28.2%と高水準ではあるものの、前年まで中心だった5%台から3%台へ重心がやや下がった構図となっている。TSRは「賃上げ疲れ」も出始めているようだと分析する。
また「6%以上」の構成比は2026年度(見込み)で7.3%となり、2025年度の実績値15.0%からおよそ半減した。
TSRは、原材料費やエネルギーコストの高止まり、価格転嫁の難しさ、固定費として積み上がる人件費への負担感などを背景に、賃上げ率のピークアウトの可能性や企業間格差にも目を向ける必要があるとしている。
