消費者庁は2月17日、「第2回デジタル取引・特定商取引法等検討会」を実施した。SNSのダイレクトメッセージ(DM)やチャット機能などを通じた「広告・勧誘」について、消費者が意図しない形で取引に巻き込まれやすい点を問題視し、規制の在り方を議論した。公表資料をもとにポイントを整理する。
SNSメッセージ・チャット起点のトラブルが増加
インターネット取引では、パーソナライズドマーケティング、リアルタイム応答を活用した販売手法が広がっている。比較検討を容易にするなど消費者の意思決定を支える側面がある一方、ユーザーインターフェース(UI)の高度化により、事業者側の意図する意思決定へ誘導する動きも強まっていると指摘されている。消費者庁は、オンライン上の広告・勧誘の実態を整理し、特定商取引法(特商法)上の規律の適用関係や見直しの方向性を検討している。
インターネット取引における誘引行為としては、動画など強い訴求手段で事実と異なる内容を告げる行為、感情を揺さぶる働きかけ、しつこい繰り返しによる誘引などがあげられる。特に、SNSやチャットを用いた巧妙かつ攻撃的な勧誘を起点に、当初の接触動機とは異なる契約締結に至るケースが増加しているという。
チャット勧誘の「不意打ち性」「密室性」が課題に
背景には、スマートフォンアプリのプッシュ通知など、事業者側から能動的に接点を作れる手段の普及がある。SNSやメッセージアプリでEC関連情報を発信すること自体は、利便性向上や関係構築に資する側面もある。
一方、SNSメッセージのやり取りは「不意打ち性」「密室性」を帯びやすく、消費者が想定しない形で勧誘が進む点が、消費者団体や消費者委員会から課題として指摘されている。
消費者庁のアンケートでは、SNSチャットによる勧誘を経験した人の7割以上が不意打ち性を感じたと回答。繰り返し勧誘や勧誘目的の不明示、不実告知や不安をあおる言動を伴うケースも一定数確認された。購入に至った割合は約1割にとどまるが、そのうち約6割が「不要に感じたことがある」と回答しており、意思決定の質の低下が示唆される。
消費生活相談でも、2024年にSNS関連でメッセージアプリなどを通じて勧誘を受け契約したとみられる事例は約9000件と推定され、増加傾向にある。
「不実告知」「勧誘目的不明示」が横行?
東京大学エコノミックコンサルティングの調査によると、チャットの勧誘的手法によるトラブルの入り口は、SNSやメッセージ機能が約6割を占めた。ネット広告からメッセージアプリへ誘導されるケースが約2割、マッチングアプリなどが約1割となっている。
契約締結までの過程では、チャットによる文字ベースの勧誘が中心。Web会議など音声が介在する場合もあるが、チャットのみで完結するケースも多い。
「絶対に儲かる」などの不実告知が大半を占め、威迫的言動やしつこい勧誘が約3割に上る。また、販売目的を示さずにチャットが始まる「勧誘目的不明示」が約6割を占めるという。こうした契約の約9割弱が「解約したい」と感じている。
特商法では通信販売に勧誘規制なし
特商法上、通信販売は訪問販売などと異なり、消費者が圧力を受けずに契約意思を形成する類型と整理されてきた。そのため、広告表示義務や誇大広告の禁止など「広告規制」が中心で、電話勧誘販売のように勧誘行為そのものを直接規律する枠組みは基本的に設けられていない。
電話やWeb会議を用いれば電話勧誘販売、事業所外で契約すれば訪問販売に該当する可能性があるが、オンライン上で勧誘が行われ、そのまま申し込みが完結する場合は通信販売と整理され、勧誘規制の対象外となり得る。この点が制度上の課題として示された。
論点は「広告と勧誘の境界」と規律の強度
「デジタル取引・特定商取引法等検討会」で示されている主な論点は、対象主体・対象行為の範囲整理、悪質なオンライン広告・勧誘への対応、意思形成を歪める手法や解約妨害への対応、デジタルプラットフォームを踏まえた規律の在り方など。
今回の検討会では焦点の1つとして、個別化広告やメッセージアプリによる配信などで「広告」と「勧誘」の境界が曖昧になっているなか、どの範囲まで規制対象とするかという点をあげた形だ。
もう1つとして、不意打ち性・誘引性・複雑性が高い手法に対し、通信販売と同水準の規律で足りるのか、それとも電話勧誘販売や訪問販売に近い、より強い規律を設けるべきかという点が示された。
EC事業者への影響は?
議論が進めば、SNSのDMやメッセージアプリを活用した獲得施策、チャット接客の運用において、勧誘目的の明示義務や再勧誘の制限、威迫的表現や誇大表示への規制の導入が検討される可能性がある。EC事業者にとっては、コミュニケーションの利便性を維持しながら、消費者の意思決定を歪めない情報提示や、勧誘と評価され得る場面の適切な統制が課題となりそうだ。
