大村 マリ, 995[イラスト] 3/22 7:00

「ネットショップ道場」第3回のテーマは「サイト内行動分析」。講師は1回目と同じくEC事業コンサルタントを手がける二天紀の山本頼和さん。1回目ではカテゴリ全体の訪問数や商品ページ全体の訪問数の分析方法を教えていただきましたが、今回はコンバージョンに貢献しているカテゴリや商品ページの見つけ方を学びました。

受注の公式は1つじゃない。4つの公式を理解しよう

まずは思考の整理。ネットショップを運営する上で、私たちはさまざまな指標を公式から導き出し、目標とする数値の設定、計画を考えたりしています。山本氏は「受注に関する公式はいくつかある。決して1つではない」と言います。今回はいくつかある受注の公式のうち4つを学びました。

山本氏山本氏

売上金額(件数)と受注金額(件数)は別物。一般的にECで使われている公式は売上を示すものではなく、受注を示している。ネットショップ道場では「受注の公式」と表現する。自分も最初は1つの公式しかないと思っていたが、実際には受注金額という値が成立すればいいので、いろいろな方程式や解答方法があっていい。さまざまな角度から考えてみることが大切。

受注の4公式
ネットショップ道場の受注の4公式

そもそも、なぜこの公式を学ぶ必要があるのでしょうか? 「成果とはCVである」と考えるならば、まずはCVが成立する導線(フロー)を知る必要があるそうで、そのフローを式で表現したものが「受注の公式」とのことです。山本氏はこの「受注の公式」を色んな角度から柔軟に考えていくことで「KPIが見えてくる」と言います。

「KPI」と聞くとどうしても「数値増やそう! 増やそう!」と考えがちですが、減らすことで成果が上がるKPIもあります。例えば、途中で離脱率を下げることができれば必ずCVは増えます。

もちろんKPIが増えれば良いというわけではありませんが、「受注の公式」から色んな角度から考えていくことで、思考の幅が広がり、自社ECのCVRをアップさせるために必要なポイントが見えてくるのです。

公式① 受注金額=集客数×CVR×受注単価

1つ目が最もポピュラーな公式で、成長期や需要が伸びている時に有効だと言います。

受注の公式① 受注金額 = 集客数 × CVR × 受注単価

客単価とコンバージョンレートを先に決めている方を多く見受けます。例えば「うちの客単価は○○○円で、CVRは大体○○%」というように。そう考えてしまうと集客アップしか施策がなくなります。

集客が増えると多くのショップは転換率が下がります。ここで大事なことは、この集客の正体は何かです。アナリティクスの場合、集客は訪問数(セッション)であり訪問者数(UU)ではありません。

どんなお客さんを呼ぶのか、集客のクオリティがとても重要で、集客しなければ全体の数字は上がりません。多くのショップが新規客を呼びたがりますが、新規客はすぐに商品を買わないため、コンバージョンレートが下がります。そうなると、売り上げを伸ばすためにクーポンなどを配って安く売る傾向になります。これはECならではの特徴だと言います。

山本氏山本氏

割引や優待のオファーは、新規客が来た時ではなくもっと後のフェーズで提示するべき。重要なのはどのページに集客を増やすかを決めておくこと。お店全体の集客を大雑把に増やしてもCVアップという点で考えると大きな効果はない。業績が伸びているショップは、まず販売強化商品、もしくは販売強化カテゴリーを決めて、そのページの流入数の最大化を図っている

公式② 受注金額=(訪問数−直帰数−途中離脱数)×受注単価

2つ目の公式は、今の訪問数で成果を上げようという公式。訪問総数から直帰するユーザーと途中でサイトを去る人を引いて、残るのが購入した人数。買った人がゼロの場合はここで終わってしまいます。このように引き算をすると受注件数が出てくるので、その時の客単価からも受注金額は成立します。

受注の公式② 受注金額 =(訪問数 − 直帰数数 − 途中離脱数)× 受注単価

今の訪問数と商品構成で受注金額を上げるには途中で帰る人(=途中離脱)を減らすことが必要です。「カテゴリページは見ているけど、商品ページは見ていない」「商品ページは見ているけどカートに入らない」「カートには入れるけど買ってくれない」など、離脱するポイントはいくつかあります。

山本氏山本氏

お客さんがどこで帰っているかを見抜いて、その穴の蓋をしていく。そうした点をチェックして、たとえばリニューアルなどのタイミングで調整する。「今来ている人に買ってもらうにはどうするか?」といったアプローチに活用できる公式。

仮にカテゴリページが20ページあったとしても、すべてにに等しく訪問があるわけではない。カテゴリページの評価は量と質。量的な評価とはどれくらい見られているかで、質的な評価とは離脱の多さ。よく見られているから貢献しているとは限らない。よく見られていても離脱が多ければ貢献度は低い。逆にあまり見られていなくても離脱率が圧倒底に低いなら、そのカテゴリページの貢献度は高いと言える。商品ページも然りで、ページを量と質で評価することができれば対策は打てる。

公式③ 受注金額=新規受注金額+リピート受注金額

3つ目は新規顧客とリピート客の受注金額を足した総数が受注金額という考え方。

公式③ 受注金額 = 新規受注金額 + リピート受注金額

図のように、最初はどのショップでも新規1件の受注から始まり、徐々にリピーターが増え、数字が伸びていきます。どんな商売でも新規顧客は大事ですが、新規ばかりでは成長はしません。リピート客が付いた方がスケールしやすく安定感が出てきます。新規とリピートを両軸で増やし、伸ばしていくことが大事です。

山本氏山本氏

新規客獲得に全力で取り組んでいるショップは、過剰在庫や欠品の可能性もあり、在庫コントロールが難しい。一方リピーターがついているショップはリピーターによる受注を先読みしたり、動く商品をしっかり手配して在庫をきちんと調整したりしている。新規とリピートをバランスよく、お客さんとの心地良い関係を作りながら数字ができ上がっていくのが理想

公式④ 受注金額=量・数・幅・質・筋

最後の4つ目は公式というよりも考え方。

「量」……1アイテムの在庫量(これが少なければ販売機会ロスになり、多すぎると過剰在庫につながります)
「数」……アイテム数(ECサイトの場合は商品ページの数で考えると良いそうです。提案の幅を広げるためにアイテム数を増やすという考えです)
「幅」……サイズ、色展開など
「質」……品質(グレード)
「筋」……客筋、仕入れ筋

これらのすべてが「どのような品ぞろえにするのか?」という商品計画につながります。読み間違えて欠品や過剰在庫を起こすと、受注金額の最大化はなかなか難しくなります。

受注の公式④

図の赤枠で囲んだゾーンを「品ぞろえ」または「商品力」と呼びます。売れているお店は品ぞろえが良いということで、それを支えているのは「仕入れ筋」であり、品ぞろえが良いかどうかを決めるのは「客筋=お客さま」です。

自社サイトで自分たちが好きなものを揃えるだけでなく、「顧客が求めているものを揃えているのか」を振り返ることも必要かもしれません。

山本氏山本氏

4つの受注公式はECだけではなく商売全般に関わる話で、コンバージョンを増やすには、いろいろな角度から考えられるように引き出しを増やしていくべき

すべて並行してやるのではなく、いろいろなパターンから考えて取り組む。たとえば、新規立ち上げのショップなら、まずは①をやりながら、どこかで②や③をミックスしていく。商売を長く続けているショップなら④でテコ入れするといったアプローチがある。

筆者は公式は基本的に1つ目くらいだと思っていたので、他の角度から考えてみるのは新鮮でした。逆に1つだけに囚われていたのかもしれません。

受注に至るまでの流れをアナリティクスで分析

ここからはGoogleアナリティクスを使ったワークショップの準備の話に入ります。

受注までの流れ
多くのショップに共通する受注までの流れとユーザー量の推移

最初からカテゴリページや商品ページに訪問する動きもありますが、大体はまずトップへの訪問があってカテゴリページに行き、商品ページ、カートページ、情報入力ページ、購入手続き、そして決済完了へと進みます。基本的にその数はどんどん減り、右肩下がりになります。

この数字の動きは次のようなさまざまなパターンがあるので、「自社はどんな状況か?」を知ることが重要だと言います。たとえば、受注までの流れのには下記のようなパターンがあります。

  • 訪問はあったがカテゴリページの訪問が少ない(お店のショーケースが見られていない)
  • 商品ページの訪問が少ない(販売スタッフが接客できていない)
  • カートページの訪問が少ない(商品ページでの接客が不十分でカートインされていない)
  • カートページの訪問があるが決済完了ページの訪問が少ない(カートに商品が入っているが次に進まない。いわゆるカゴ落ち)

このように、自社サイトの状態をまず見抜き、パターンを知ることで、どこにボトルネックがあるのかを見ていきます

分析の前に自社ショップにおいて、「売れている商品は何か?」「どうやってそれを決めているのか?」ということを考えながらアナリティクスに向き合いましょう。また、カテゴリも「良いカテゴリページとは何か?」を考えることも重要だと言います。

山本氏山本氏

言葉は悪いがカテゴリページを雑に作っているショップが多い。カテゴリページがどういう役割を担っているかをいまいち理解できていないから、取り扱っている商品が動的に吐き出されているページという風にイメージされがち。それは、そもそも「良いカテゴリーページとは何か」という定義がないため。その定義があるとページの構成も変わってくる。

今回の言葉

山本氏山本氏

結果だけはなくプロセスもちゃんと見ていかないと戦略を組みにくい。自社サイトのどのカテゴリの訪問が多いのか少ないのか、機能しているのかしていないのかを洗い出すと、いろいろなことが数字で把握できる。手間だが心折れずにやっていくと、改修に役立てることができる。

今回はデータの整理など、準備から分析まで少し時間のかかる作業でしたが、正直、これまではカテゴリや商品ページを細かく見てみようという機会がありませんでした。カテゴリはお客さんにとってわかりやすく、かつ自分たちも認識を合わせやすい観点で運用していて、「PV数が多いカテゴリが貢献している」というようなざっくりとした見方をしていたと思います。

「OPQR」(O:OKカテゴリ(OK)、P:PVアップカテゴリ(PVを上げる)、Q:Qualityアップカテゴリ(ページの品質を見直す)、R:Reviewカテゴリ(再評価))の4軸で分析することで、各カテゴリや商品の個別の課題が明らかになり、着手すべきページがわかりやすくなりました。

つづく
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