ファミリーマート限定販売コスメ「sopo」とコスメECサイト「NOIN」の成長秘話とは? カギは若年層と地方へのアプローチ
コスメECサイト「NOIN」と、オリジナルコスメブランド「sopo(ソポ)」を運営するノイン。「NOIN」は取扱商品数1万7000点以上、アプリのダウンロード数250万を突破し、若年層ユーザーを中心に支持されている。「sopo」は、トレンドのメイクアップアイテムを高品質かつリーズナブルな価格で、コンビニエンスストア大手のファミリーマート限定で販売。店頭での売り上げは累計160万本を突破し、コスメ愛好家から注目されるブランドだ。ECサイトとブランドの立ち上げの背景、成長の軌跡と戦略、将来的な事業の展望などを、ノインの千葉久義取締役COOに取材した。
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取扱商品数1万7000点以上、アプリのDL数250万を突破したコスメECサイト「NOIN」の魅力とは?
もともとInstagramでコスメの情報を発信するメディアだったコスメECサイト「NOIN」。「将来的にコスメアイテムを扱うECサイトを展開するにあたり、メディアのユーザーは顧客になり得る」と考え、メディア運営からスタートしていた。
こうした経緯をたどってECサイトへと生まれ変わった「NOIN」は、立ち上げ当初から若年層をターゲットにしている。利用ユーザーの平均年齢は約26歳、メインの購買層は20歳前後だ。将来的には年齢層の拡大を視野に入れている。
正規品の取り扱い、ユーザーへの親身な対応で他サイトとの差別化を図る
コスメの販売や紹介を行うサイトは数多い。そんな環境下、「NOIN」は他社サイトとの差別化施策として次のような取り組みを行っている。
大手ECモールに出店している店舗では並行輸入品を販売していることも多いが、「NOIN」では正規品を取り扱うことにこだわっていること。
ユーザーとのコミュニケーションを重視している点も「NOIN」の特徴だという。「『NOIN』のInstagramアカウントには、多いと1日に100件くらいDMが届くが、テンプレートではない返信を行っている」と千葉氏は話す。
たとえば、リップアイテムの紹介をすると「このリップは私に合いますか?」と、自撮りの写真を添付して問い合わせをするユーザーも存在し、「この色が合うのではないか」といった返信対応を行っている。これは1つの例だが、ユーザーに対する親身な顧客対応が「NOIN」への好感度を引き上げる要因になっている。
相談したユーザーのリピート率、購買率は高く、対応したユーザーの約7割が購入しているというデータがあり、ロイヤリティが高いサービスだと言える。
ブランドとユーザーとの接点作りも担うオフラインイベントを実施
「NOIN」のコミュニケーション施策はオンラインだけではない。2~3か月に1回のペースでオフラインイベントを実施している。
イベントでは毎回テーマを設定し、テーマに沿ったブランドとユーザーを募集する。直近では「SDGs」に特化したイベントを実施、「グリーンコスメ」や「サステナブル」に注力しているブランドを20ほど、10代~20代のユーザー約500人を集めた。
参加するブランドは常に新規ユーザー、特に若いユーザーとの接点作りやファン作りに取り組んでいる。既存ファンとのコミュニケーションは比較的行いやすいが、若年層との新しい接点を持つことは容易ではない。そこで「NOIN」がオフラインイベントという場を設け、ブランドとユーザーの橋渡しの役割を果たし、接点作りにも注力、ブランドの新規顧客開拓をサポートしているのだ。
メインターゲットを若年層ユーザーにした理由は「ブランドイメージの維持」
なぜノインは若年層をメインターゲットに設定したのか? 若いユーザーは高品質よりもプチプライスのアイテムを好む傾向があるため、顧客単価は低くなる。それでも若年層をメインターゲットに設定したのは「ブランドイメージをいかに作っていくかが重要だと考えている」(千葉氏)ためだと言う。
ブランドイメージの年齢層の広げ方は不可逆だと考えている。若いユーザーに人気のブランドをターゲット層より高い年齢層に広げることは可能でも、ブランドの若返りはとても難しく、コストも非常にかかってしまう。(千葉氏)
「年齢の高い層向けのブランドでは?」と一度認知されてしまうと、イメージの引き戻しは難しくなるという。常に若年層の新規ユーザーを得るために、フレッシュなブランドイメージを維持。同時に、年齢があがる既存ユーザーのニーズに対応しながら、徐々に対応年齢層を広げてきたのである。
成長のポイントは「小売り」「メディア」「ブランド」という3つの事業領域
2017年10月の開設以降、「NOIN」は取扱商品数1万7000点以上、アプリのダウンロード数250万を突破。大きな成長の要因は、ECサイト「NOIN」の運営という「小売り」、「メディア」、プライベートブランド「sopo」の3つの事業領域を持っていること。
この3事業領域の関係性について、千葉氏は「ユーザーに商品を販売する小売り、商品の魅力を伝えるメディア、商品を作るブランドの3つの関係性はジャンケンみたいなもの」だと言う。
小売りとブランド(メーカー)なら、売り場の権限がある小売りが優位に立ちやすい。ブランドとメディアでは、メディアの収益源である広告を出稿する立場であるブランドの方が強いことが多い。そして、メディアと小売りでは、商品のポイントや使用方法を魅力的に伝えられるメディアに小売りが憧れを抱くことが多い。
「小売り」「メディア」「ブランド」という3つの顔を持っていることで、交渉力の強さにつながっている。パートナー企業に合わせて、どの顔でどんなカードを出すか選べるのは大きい。(千葉氏)
3つの事業領域を持つノインだからこそ、注意すべき点も心得ている。千葉氏は「メディアとブランドを両方運営するなら、メディアの価値とユーザーの感情の塩梅(あんばい)に敏感になることはとても重要だ」と言う。
「NOIN」と同じようにブランドを作りたくなるメディアは多いが、すべてが順調な状況とはいえません。これはメディアの価値が「中立であること」だから。中立であるメディアだから信頼していたのに、急に自分たちの商品を推し始めると、ユーザーは強い違和感を抱くようになる。現在はSNSで情報を得る機会が多く、ユーザーはそういったことに非常に敏感だ。(千葉氏)
論理的に勝ち筋を見つけたうえで、ユーザーに寄り添い丁寧に事業を進めたことが「NOIN」の発展につながったのだ。
独自性の高いカラー&ミニサイズ&プチプラで「試してみたかったを叶える」
ノインが展開するプライベートブランド「sopo」は、「みんなの“試してみたかった”を叶える」をブランドコンセプトに掲げ、2020年11月にデビューした。全国のファミリーマート限定で販売し、2022年8月時点で累計販売数160万本を突破している。
「試してみたかった」というコンセプトの通り、たとえばマスカラは定番色の黒は出しておらず、あえてパンチの効いたカラーを採用。それは他のアイテムも同様で、色味を他のブランドに寄せず、流行色を出さないこともある。決して「二番煎じ」にならない、独自性の高いカラーを展開しているのだ。
カラーマスカラは、他の商品と比べて小さいサイズで価格は半額程度に抑えている。カラーマスカラは、使ったことがある人が少なく、「購入してもフルサイズを使い切れるかわからない」という理由から手に取りにくいと予想。そのため「sopo」では価格を抑えたミニサイズにすることで、ユーザーが攻めたカラーもトライしやすくした。
「sopo」は「NOIN」同様に10代~20代がメインターゲットだ。若年層ほど「攻めたカラーで遊んでみたい」という願望があるのではないかと考えたからだ。
しかし蓋を開けてみると、若年層に加えて想定よりも上の年齢層も購入していた。「どの年齢層でも『試しやすいアイテムを使ってみたい』という気持ちがある、ということがわかった」(千葉氏)。
アイテムの企画・開発で注力したクオリティとデータ活用
「sopo」のこだわりは「気軽に手に取れるコンビニ商品の価格帯で、クオリティはデパートコスメ」という点だ。
実際、デパコス(デパートなどで販売している有名ブランドのコスメ)と「sopo」を比較したユーザーから「『sopo』の方が品質は上」だと評価され、SNSで拡散されることもあるという。
工場の選定にもこだわっており、「sopo」のアイテムは有名ブランドと同じ工場や同じラインで製造している。全国のファミリーマートで販売しているため、大量に発注することでボリュームディスカウントを可能にし、高品質なアイテムを買いやすい価格で提供できているのだ。こうして「コンビニで買いやすいプライス」と「デパコスと並ぶ高クオリティ」を両立するコスメができあがった。
またデータの活用にも注力しており、マーケティングと商品開発にはECサイト「NOIN」のユーザーの情報を分析・活用している。
「sopo」を立ち上げた当時はコロナのまっただ中、「NOIN」で売れている商品に変化がみられていた頃だ。
日常的にマスクをするようになったことでリップの売り上げと価格が下がっており、逆にアイメイク商品の価格は少しずつ上昇していた。目元のアイテムにもニューノーマルな兆しが見え、それまで売れていなかったビビッドカラーの売り上げが高まりつつあったのだ。
こうした状況を受け、「sopo」の記念すべき最初のラインナップはアイブロウ、カラーマスカラ、アイライナーとなった。
女性が化粧をしなくなることはほぼないため、化粧品は不況の影響を受けにくいといわれている。ただ傾向が変わることはある。コロナ禍前後での顕著な変化がその例で「sopo」はデータをしっかりと活用して、結果を出せた。(千葉氏)
コスメブランドをコンビニで展開するという戦略
元々「sopo」は商品内容より先にファミリーマートで販売することが決まっていた。コンビニが抱える悩みとして「若い人の来店頻度が低い」というものがある。「sopo」はこうした課題解決策として誕生した商品・企画だった。
コンビニのコスメは「持ってくるのを忘れた」「急な宿泊が決まった」など“緊急時の”需要がほとんどだが、ノインはこの点に注目。「コンビニには普段使いできるコスメが少ない」という点から競合が少ないのではないかと分析していた。
ドラッグストアでは棚の取り合いが厳しいが、コンビニなら競合が少なく激しい戦いが少ない。コンビニが注力しているのは食品で、日用品の棚は熾烈な争いがなかったので狙い目だった。食品でより売れる物を作るより、他のカテゴリで売れる物を作る方が売り上げを作りやすいと考えていた。(千葉氏)
こうして誕生したコスメブランド「sopo」は、全国におよそ1万6000店舗あるファミリーマートのうち、約90%で販売されている。店舗数の多いファミリーマートで販売することで、地方の悩みに応える結果となった。
地方は百貨店の撤退が続いており、必ず新商品が並ぶわけではないドラッグストアも多く、気軽にトレンドコスメを手に取れない人たちもたくさんいるのだ。
こうしたなかノインは「コンビニに行けばトレンドコスメが買える」という新しい状況を作り出した。コンビニでコスメを“日常的に”買うという習慣が「sopo」を通じて全国に広がりつつある。
キーワードは「J₋Beauty」。海外でみるコスメの未来
今後のノインの事業の展望、見据える未来について、千葉氏は「『NOIN』『sopo』ともに今は国内がメインなので、海外への進出に力を入れていく」と話す。
「sopo」は香港で販売をスタートしているが、もっと販路を世界に広げて、さまざまな国で販売されるワールドワイドなブランドにしていきたい。
海外進出における大きなキーワードとして、安全性と品質の高い日本メーカーのコスメや日本人女性の美容習慣などを表す「J₋Beauty」が挙げられる。この価値を海外で高めていきたい。(千葉氏)
日本のコンビニで気軽に手に取れるように、海外ユーザーの“試してみたかった”を叶える未来をノインは見据えている。
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