ゆうこす流! ファンを楽しませるから愛される ライブコマースもECサイトも決め手は“魅せるコンテンツ”
コロナ禍を経てライブコマースに参入する企業やブランドが増えたが、「勘所がつかめない」「運営が軌道に乗らない」という企業も多いのではないだろうか。
「ゆうこす」こと菅本裕子氏は、アイドルグループを卒業後、2016年に起業。現在はコスメブランド「YOAN(ユアン)」「anjir(アンジール)」などをプロデュースしている。SNS総フォロワー数は200万人以上で、数多くのライブ配信で売り上げを作ってきたほか、ライバー事務所321incでライブ配信を行う人のサポートも手がけている。
そんなゆうこす氏によるライブコマースの実践的なノウハウを中心に、画像軽量化「SmartJPEG」を展開する CRI・ミドルウェアの三上夏代氏と、ゆうこす氏のECサイトを制作したライムの森 匡之COOが「ファンを楽しませるSNSマーケティングとライブコマース」「ファンから愛される EC サイト」について語り合った。
ライブコマースはフォロワー数が多くなくても良い
CRI・ミドルウェア 三上夏代氏(以下、三上)ゆうこすさんがライブコマースに可能性を見出したきっかけを教えていただけますか?
KYU 代表 菅本裕子氏(以下、ゆうこす):ライブコマースを始めたのは2016年。当時はSNSのフォロワーがまだ10万人に満たない時でしたが、1人で韓国に行って商品を買い付けし、現地から生配信して販売すると、100万円くらい売れたんです。
生配信は商品に関するユーザーの疑問をその場で聞いて答えることができるし、1人ひとりの不安を解消できます。そこにすごく可能性を感じました。ライブコマースは友達や近所のお姉さんのような距離感が近い人、フォロワー数が多過ぎない人の方が強いかもしれないですね。
三上フォロワー数は多過ぎない方が距離感を近く感じられて有利というのは初めて聞きました。
ファンを作ってから販売する
三上一番手応えのあったライブコマースについて教えてください。
ゆうこすある商品を半年間かけて作り、そのようすをずっとコンテンツとして動画で発信、「待ちに待った」というところで販売したときですね。一番大事だと思ったのは、ファン作りをした上での販売です。購入体験で感動したい、その時間を共有したいという人たちを集める発信をして、その人たちと一緒に時間を共有できるのがライブコマースなんです。
Instagram Live(インスタライブ)で配信しているので、リアルタイムで視聴者数を確認できます。配信スタート時に商品への思いを語り、コメントを読んで、質問に答えてから販売をスタート。すると、視聴数が減っていきます。減っていくということは、インスタライブを抜けてECサイトで商品を買いに行ってくれているということなんです。嬉しかったですね。
さらに「(視聴者数が)どんどん減っています」とコメントし、盛り上げることで「みんなが買いに行っているから私も行こう」という気持ちになってくれたようです。
三上たしかに、視聴者の動きがリアルにわかるので「私も買いたい!」が加速しそうですね。
ゆうこすはい。「購入したら戻ってきてくださいね」と伝えたら、半分以下に減った視聴者が5分後くらいにどんどん戻ってきました。戻ってきてくれた方には感謝の気持ちを伝えて、買い方がわからない方がいたらサポートしたり、買ったものを教えてくれた方には似合うモノを提案したり……買ったあとの感動をさらに増やせるようなコメントを返しています。
社員教育には苦労も
三上大変だったことや、苦労したことはありますか?
ゆうこすブランドが大きくなるにつれて、私だけが配信するわけにはいかなくなり、社員に配信してもらうことになったんです。みんな未経験者なので教育に苦労しました。
ライブコマースで一番大事なのは、とにかくコミュニケーションを取ること。細かいことですが、最初の5分間くらいはコメントしてもらえるような投げかけをする。そのあとに必ず、その日の内容と終了時間も伝えておきます。いつ終わるのかわからないと離脱されてしまいます。
一方的な台本ではなくて「AとBのどちらが良いと思いますか?」といった投げかけができる、その空気を作る能力がある人は強いですよね。
社員を育成するときは必ずテストアカウントで事前に配信し、社内で何人かにコメントをもらって、空気感やタイムキープ力をつかむ練習をします。そうすると時間の感覚もつかめて、このタイミングでこうした方が良いとか、「間」が必要だというのがわかってきます。
三上インハウスでライブコマースの運営を考えている企業の方にも参考になると思います。
ゆうこすライブコマースもSNSも、「見た人が最終的にどんな口コミをSNSに書くか」をイメージして、そこから逆算して取り組んでいます。たとえば「お客さまが自分の友だちに私たちのブランドや商品のことを話すとしたらどう伝えるだろう」ということをベースに考えると、コンテンツが作りやすいでしょう。
最終的にはやはり場数。先ほどお話したような練習をして、閲覧者がどのような感想を持っていて、どのように発信すればいいのかを考えることで、心のこもった響くコンテンツになるはずです。
SNSマーケティングとライブコマース、売り上げを伸ばすために有効なのは?
三上ゆうこすさんから見て、ECの売り上げを伸ばすために有効なのはSNS マーケティングとライブコマース、どちらだと思いますか?
ゆうこすライブコマースもSNSの1つなので、どちらも有効で大事です。たとえば 、TikTokやYouTube、X(旧Twitter)といった、サクサク見られて拡散されるSNSは、新規顧客の獲得に向いています。Instagramは質問機能やコメント機能を使ってコミュニケーションが取れるSNSで、ライブコマースはコアなファン向け。
同じ商品でも「新規顧客」「ライトなファン用」「コミュニケーションを取りたい人用」「コアな人用」と分けて、まったく違うことを発信しています。
三上ライブコマースはコアなファン向けなんですね。
ゆうこす私たちは、他のSNSでコアなファン作りをし、ライブコマースではその人たちが集まる場所を創出するというイメージです。
三上相手の反応を見ながらできるライブコマースの方が盛り上がるんでしょうか。
ゆうこすリアルタイムで売るからこその限定感が絶対必要なので、ライブコマースは「いま来てもらうとクーポンプレゼント」など、コミュニケーションを取りながら背中を押せる場でもあります。視聴者数より、コアな顧客を大事にして、商品を作った背景を語れる方が強いですね。まさに店舗販売のライブ版というイメージで、他のSNSとは違った形で活用しているところがうまくいっています。
サイト運営上の注意点
三上ライブコマースやSNSマーケティングで集まったお客さまが、ECサイトに来たときに有効な施策はありますか?
ライム COO 森 匡之氏(以下、森)ライブコマースを配信しているときはECサイトに大量の流入が発生するので、課題が浮き彫りになることが多いです。「問い合わせが1件あったら同じ課題を持っている人が裏側には100人以上いる」という話があるように、その課題のせいでECサイトに訪れた人が離脱してしまうケースもよくあります。そういう課題をすくい上げられる仕組みがあると良いですね。
たとえば、最近AI が発達して優秀なチャットボットが出てきているので、継続した接客、おもてなしができ、データ化もできます。そのデータをコマーサー(配信者)にフィードバックして改善のために活用できると、より売上アップにつながるでしょう。
ゆうこすECサイトを見て使いにくいところがあっても問い合わせをしようとはあまりならないですが、生配信なら気軽にその点を伝えやすい。生配信することで商品やECサイトをアップデートできるのは良いですよね。
森そうですね。ライブコマースで気軽な双方向コミュニケーションができると、商品やECサイトがもっとよくなるためのヒントがたくさん得られると思います。
ライブコマースで大事なことは2つだけ
ゆうこす最近、ライブコマースを始める企業で説明会をする機会が増えてきています。「どのように話をすれば良いかわからない」という悩みや質問を一番多くいただきますが、基本的に大事なことは2つしかないと考えています。
1つ目は、モノを売る側として見た目がきれいかどうか。2つ目は、シンプルにお店だと思って接客すること。
売り場を店舗だと思えば、画面がきれいに見えるように背景や照明を工夫したりしますよね。あとは、一方的に話すのではなく、実店舗での接客のように「今何を探されているんですか?」という風に、お客さまと対話する。ライブコマーサーは店舗の販売員というイメージで、シンプルに考えると良いでしょう。
ブランドの背景を「生配信でどれだけ語れるか」、美しい写真を軽量化して見せる工夫
三上 集客後のお客さまの導線として、コスメブランド「anjir」のコンセプト、ECサイトでの見せ方について教えてください。
ゆうこす今までメイクを発信してフォロワー数を増やしてきたので、いつかコスメブランドを立ち上げたいと考えていたんです。すでにいろいろなブランドがあるなかでどう戦っていくかを考えたら、やはり「生配信でどれだけ語れるか」だと思いました。
私は「モテクリエイター」という肩書きで「モテ」を発信していますが、「相手に愛されたい」「こういう風に見られたい」という内側の気持ちを表面的に「モテコスメ」として見せるのではなくて、ベールをかけて透けて見せるようなブランドにしたいと思って名付けました。アンジールはペルシャ語でイチジクの意味。イチジクにしたのは、果実のみずみずしさから、フレッシュな気持ちや肌の質感も表現できたらと考えたからです。
コスメとして質が良いのはもちろんですが、ブランド名だけでもこうやって語れることが重要です。
三上「アンジール」のECサイトはまさに内側から溢れる魅力が伝わってきます。このリップはみずみずしさが伝わってくる画像です。
三上アイシャドウも粉の感じや質感が伝わってくる画像になっています。腕につけて色味を見せていて画像がとてもきれいです。これらの画像はCRI・ミドルウェアの「SmartJPEG(スマートジェイペグ)」(画像のファイルサイズ削減と色調調整を自動で最適化するソリューション)を導入し、高いクオリティを維持しながら画像の高速表示を実現しています。クオリティについては、お考えやポイントはありますか?
ゆうこすどれだけSNSで商品を紹介しても、本当に良いものなのか信用してもらえるにはECサイトがしっかりしていることが基本です。購入方法がいろいろあってスムーズという点も重要ですし、画像を見てワクワクしてつぎつぎ見たくなるように、高画質のイメージや動画にもこだわっています。また、レビュー機能にも力を入れています。
森デザイン面では、ゆうこすさんのチームの思いが非常に強く、ブランドコンセプトの「イチジク」以外にも「色香(いろか)」などのキーワードがいくつかありました。抽象度が高いワードはチーム内で掘り下げて言語化し、デザインやアニメーションにアウトプットしていきました。
トンマナで言うと、ターゲットが「芯の強い女性」ということで、凛としたところを表現するために曲線よりも直線を多用したり、ダイナミックに文字をあしらったりして表現しました。
あとレビュー機能は苦労しましたね。今回完全にオリジナルでレビュー機能を作ったんですよ。特にコスメブランドは購入障壁を下げるためにも真の声というか、レビューのクオリティが大事なので、皆さんの要望をヒアリングしました。その結果、投稿者が撮影した画像のキレイを保ったまま掲載できるように、「SmartJPEG」を採用しました。。
ゆうこす森さんのヒアリング能力が本当に高いんです。いろいろなことを聞いていただいて、感情もすべて汲み取っていただきました。
森今レビュー機能にはオフィシャルのポイントもたまるようになっていて、そこのつなぎこみもしています。
三上レビューを見ていると、ファンから愛されているのがわかります。商品の良さをお客さまが二次的に伝えてくれているのでレビューが大事ですよね。
ゆうこす今月の一番良いレビューにはポイントをプレゼントしたり、公式SNSで紹介したりして、書く側も楽しめるようにすることでレビューも増えています。
三上ECサイトとライブコマースが相互で上手く作用していますよね。コンテンツのなかに詰まったおもてなしの心があるから、ファンに愛されているのがとても伝わってきました。
「YOAN」「anjir」などのECサイトが導入している「SmartJPEG」とは
高いクオリティを維持しながら多くの画像や動画をECサイトに掲載する場合、サイト全体が重くなり、表示に時間がかかってしまうという課題がある。つまり、顧客体験を損ねるというリスクが発生してしまう。
この課題を解消するのが画像軽量化ソリューション「SmartJPEG」だ。高いクオリティを維持しながら商品画像の軽量化が可能となり、情報量が多くてもサイトのパフォーマンスを落とすことなく、快適なユーザー体験の提供を実現することができる。
「買い物しやすい」「ストレスがない」「サクサク買える」――。多くの消費者がECサイトにこうした買い物体験を求めるようになり、ECサイトのUXが売り上げに直結するようになってきた。
ECサイトでのUXで大きな要素の1つといえる表示スピード。その改善と同時に、コンテンツ画像の画質維持によるECサイトの品質維持も同時に行える。