今さら聞けないECサイトの集客戦略。SNS活用、アプリを軸にしたOMO、ライブコマースの事例を踏まえて解説
自社ECサイトの運営において、集客を課題にあげる企業・ブランドは多い。SNS、動画、ライブコマースなど、顧客との接点が多様化するなかで、事業者はそれぞれの接点において自社に最適な施策を見つけなければならないからだ。SaaS型ECサイト構築プラットフォーム「futureshop」を提供するフューチャーショップの安原貴之取締役が、自社EC集客の基礎知識、各SNSの特徴と活用方法、優良顧客化に向けた施策について、事例を交えて解説した。
顧客と自社ブランドの接点は多岐にわたる
顧客がECサイトにアクセスするまでの経路は非常に多い。Googleなど検索エンジンからのアクセスやリスティング広告から、アフィリエイトやオウンドメディア経由のアクセス、Facebook、Instagram、X、LINEといったSNSや、YouTubeやTikTokのような動画サイトからの流入もある。
こうした顧客接点の増加に伴い、さまざまなSNSを運用する企業は多いが、注意しなければならないポイントがある。安原氏は「その1つは一貫性」と話す。
どの顧客接点でも「この商品はこういうもの」「このブランドはこういうもの」と顧客に感じてもらえるように、一貫したブランドメッセージが必要。また、SNSは双方向になるので発信するだけでは駄目。顧客の声を聞く、つまりフィードバックを聞いて受け入れ、改善を繰り返す。こうして顧客満足度を高め、最終的にブランドのファンになっていただくことがもっとも重要だ。(安原氏)
集客施策は特性の理解から
SNS、各種広告、SEO施策などさまざまな集客施策があるが、「コストをかけて効果や反応が早いものを選ぶ」か「コストをかけずに少しずつ積み上げて実施していく」かの2つに分けられる。いずれの場合でも各施策の特性を理解したうえで実施する必要がある。
安原氏は、商材や企業のタイプ別に適した集客施策があると言う。
商品タイプを「型番・有名ブランドタイプ」(家電、スポーツ、高級ブランドなど)、「オリジナルタイプ」(食品、アパレル、コスメ、雑貨など)、「ギフトタイプ」(出産祝い、結婚祝いなど)「ニッチタイプ」(建設資材、工具など)に分けると、集客施策の向き不向きがわかりやすい。
どの商品タイプにもマッチするのは、Googleの検索結果画面などに表示される「ショッピング広告」。コストの安さも魅力だが、注意点もある。
重要なのは、ECサイトの商品データとショッピング広告のデータをしっかりと連携させること。最新の商品データを定期的にアップロードしないと、在庫切れ商品の広告を表示してしまうことになる。もしGoogleで広告表示されているのに在庫がなくて買えない、そういったアンマッチな状態が続くと、Googleによる評価が下がってしまう。(安原氏)
現代で不可避なSNS活用
SNSも商品タイプによっては多少向き不向きはあるが、「現代でSNS集客にトライしないという選択肢はない」と安原氏は話す。
Instagramはアパレルやブランドで活用されることが多かったが、最近は食品を扱う企業の利用も増加している。LINE、TikTok、YouTubeによる集客にトライする企業も増えているが、LINEは新規顧客の集客ではなく、すでにつながっている顧客とのコミュニケーションに適している。
EC事業者にとって重要なのは各種SNSと自社プラットフォームとの連携だが、それぞれに連携機能が実装されている。なかでも、最近は「YouTubeショッピング」との連携が話題。「YouTubeショッピング」の連携機能を使うには、チャンネル登録者数や直近の再生回数など一定の条件をクリアする必要があるが、YouTubeをうまく活用できている事業者にとっては良い集客導線になっているという。
オムニチャネルがコロナ禍を経て増加
フューチャーショップでは実店舗とECのポイントを共通化して、会員データを統合する機能を提供している。「futureshop」を利用している約2900サイトのうち、約126ブランドが統合ソリューションを利用。日本全国の2411店舗が活用している(2024年3月時点)。
フューチャーショップの顧客企業でオムニチャネルに取り組む企業は、2019年度は59ブランドだったが、2023年度には126ブランドと増加。業種としてはアパレル・ファッション系のブランドが現在も比率としては最も多いが、最近は食品関連が増えてきた。
「土佐料理 司」の事例
最初に紹介する事例は高知県の老舗「土佐料理 司」の通販サイトだ。会員証アプリをダウンロードするとアプリを起動しただけで仮会員状態となり、ポイント付与の対象となる。登録の負担が少なくスムーズに会員になれるのが特長だ。
また、ポイント利用のために会員登録をすると自動的にECサイトの会員になるため、EC会員向けのデジタルマーケティング施策の対象となる。これにより、今まで実店舗しか利用していなかった顧客にECサイトを訪れてもらう機会を創出できる。
「大江ノ郷自然牧場」の事例
鳥取県の「大江ノ郷自然牧場」もECサイトと実店舗で顧客情報を統合。その情報をもとに、メールマガジンやLINEやアプリでブランディングと接客を実施している。
「大江ノ郷自然牧場」の一番の特長は充実したコンテンツだ。アプリで配信しているコンテンツのクオリティが秀逸なのだ。デザインについても牧場、サイト、アプリすべてのクリエイティブを自社のデザイナーが制作することで、高いクオリティの統一したブランドメッセージを伝えることに成功している。
日本のEC事業者が取り組むべきライブコマースとは
最後に、安原氏は昨今のライブコマース事情について解説した。最近では実店舗を持たない事業者でも、ライブコマースを実施する事業者が増えているという。ライブコマースには4つのパターンがある。
「コマーサーコラボ継続型」と「KOLイベント型」はインフルエンサーやプロコマーサー(フォロワーの多いインスタグラマーやYouTuberではなく、リアルタイムで商品やサービスについての質問に応えながら販売するライブコマースに特化した配信者のこと)中心の施策。たとえば中国のライブコマースで「1日に何千万円売り上げた」というようなニュースがあるが、これは「KOLイベント型」だ。
対して店頭スタッフや自社の広報担当者が取り組むべきは「インハウスコミュニティ型」と「モーメントイベント型」だ。
フューチャーショップが日本の自社ECのライブコマースに薦めたいのは「インハウスコミュニティ型」。これは、ライブコマース経由で爆発的な売り上げを作るものではなく、あくまでコミュニティを作ってLTVを向上させていくもの。低コストで導入できるメリットもある。(安原氏)
ライブコマースというとYouTubeのライブ配信やInstagramのインスタライブが思い浮かぶかもしれないが、手軽に行えるメリットがある一方で課題もある。1つ目の課題は購入導線が弱いこと。ライブで紹介した商品ページを開くためには、ライブから離脱する必要があるため、熱が冷めてしまうこともあり、そこからの購入がつながりにくい。
もう1つの課題が配信終了後の競合表示だ。YouTubeのライブ配信やInstagramのインスタライブでは、ライブ終了後に類似する競合ライブへの動線や関連動画が表示されるケースがあるため、せっかく集めた顧客を競合店舗に誘導してしまう結果になりかねない。
1万円台から始められる高機能なライブコマースプラットフォーム
フューチャーショップではライブコマースプラットフォーム「Live cottage(ライブコテージ)」を提供している。「Live cottage」では自社ECサイト内でライブ配信を実施でき、ライブに参加したまま商品の購入が可能だ。商品ページも既存のものを利用できる。
また、自社ECサイトでライブコマースを配信できるサービスは、月額10万円から15万円といった価格帯が多い。そのなかで「Live cottage」は、月額1万円台という低価格からライブコマースに取り組むことができる。さらに売上手数料も不要だ。
SNSでのライブコマースはどこでユーザーがライブから離脱したか、どこがよく多く見られたか、といった細かい数値が取りにくいが、「Live cottage」にはライブ配信後の振り返りと改善に役立つ機能が搭載されている。商品クリック数など、EC事業者が必要とする項目を確認可能だ。