化粧品ブランド「姫ラボ」に学ぶ、ファンが集まるライブコマース成功の秘訣や成果など評価ポイントとは
ライブコマースで成果を上げている企業は、どのような配信を行っているのでしょうか。今回紹介するのは、玉造温泉の温泉水を保湿成分として配合したスキンケア化粧品ブランド「姫ラボ」を販売している玉造温泉まちデコ(本社島根県)です。(※本記事は抜粋版となります。全文は「E-Commerce Magazine」にて、ご確認ください)
2020年5月にライブ配信を始めた同社は、温泉街を紹介するロケや、島根県内の名産品を販売している事業者をゲストに招いたコラボ企画など、趣向を凝らした3つの番組を運営しています。配信を通じて顧客と交流を深めつつ、オンラインショップでの販売にもつなげている「姫ラボ」。配信中に「いいね」の数が1万件を超えたこともある人気番組の作り方とは?
ライブコマースの内容や使っているプラットフォーム、視聴者の反応、販促効果などについて、Web事業部リーダーでありライブコマースにも出演している神門葵さんにお話をうかがいました。
日本の中小企業がライブコマースを効果的に取り入れて、お客さまとの関係を深めている事例は、まだあまり耳にすることがありません。姫ラボさんは、中小企業にも参考になるライブコマースの成功事例です。ライブコマースの貴重な経験談を、ぜひ参考にしてください。(聞き手:フューチャーショップ サービスプロデューサー/ライブコマースディレクター 稲生達哉)
2016年入社。大学で統計、分析について学んだ数字のスペシャリスト。現在は通販事業部の新規獲得業務を担当しながら3つのライブ番組に出演している。
スキンケア化粧品「姫ラボ」とは、どんなブランド?
フューチャーショップ 稲生(以下、fs稲生): 本日は「姫ラボ」が取り組んでいるライブコマースの内容や配信に使っているプラットフォーム、視聴者さんの反応、配信後の成果などについてお話をお聞かせください。本題に入る前に、「姫ラボ」とはどのようなブランドなのか教えていただけますか?
姫ラボ 神門葵さん(以下、神門さん):「姫ラボ」は島根県松江市にある「玉造温泉」の温泉水を保湿成分として配合したスキンケア化粧品ブランドです。2010年に玉造温泉街にお店をオープンし、石けん、化粧水、ゲル、クレンジング、フェイスパック、ボディローションなどを販売しています。
玉造温泉は古くから「美肌の湯」として知られてきました。約1300年前に書かれたと言われている「出雲国風土記(いずものくにふどき)」でも、肌が美しくなる「神の湯」として紹介されているんです。
美容効果に関するエビデンスもあります。玉造温泉の温泉水を8週間、肌につけ続けた結果、肌の基礎水分量が65%アップしたという調査結果が出ました。調査を行った化粧品製造会社のサティス製薬さんによると、この数字は高級化粧品にも匹敵するそうです。
fs稲生:温泉水を配合した化粧品なのですね。どのような経緯で商品化したのでしょうか。
神門さん: 玉造温泉まちデコは、玉造温泉を盛り上げるために、さまざまな地域振興事業を行っている会社です。その一環で、玉造温泉の魅力を多くの方に知っていただくとともに、美肌の湯・玉造温泉の潤いをご自宅でも実感していただきたいという思いから「姫ラボ」を商品化しました。
fs稲生:「姫ラボ」の商品はどこで買えるのでしょうか?
神門さん:玉造温泉の温泉街に直営店2店舗を構えているほか、島根県内の旅館の売店、土産品店、サービスエリア、また県外でも販売しています。通信販売も発売当初の2010年から行っており、オンラインショップやハガキで注文を受けています。
姫ラボの通販をご利用いただくお客さまの大半は、玉造温泉を訪れた観光のお客さまです。温泉の良さを実感した観光のお客さまが「姫ラボ」の商品をお土産として購入し、通販でリピートしてくださることが多いです。
コロナ禍で観光客が減りライブコマースに活路
fs稲生:ライブコマースを開始したきっかけを教えていただけますか?
神門さん:2020年春に新型コロナウイルスの感染拡大によって、旅行の自粛が全国に広がり、玉造温泉を訪れる観光のお客さまが減ってしまったことがきっかけです。
玉造温泉を訪れる人が減ると、必然的に「姫ラボ」の直営店や販売店を訪れる人も減ってしまいます。店舗以外で新規のお客さまと出会う方法を考えた結果、ライブコマースに挑戦することになりました
fs稲生:初めてのライブコマースは、どのような内容だったのでしょうか。
神門さん:2020年5月に、モデルの柴田紗希さんとのコラボ配信で「姫ラボ」を紹介させていただきました。柴田さんはInstagramのフォロワーが30万人以上いて、インスタライブも頻繁に行っていらっしゃいます。柴田さんがライブ中に弊社代表の角をゲストとして招待してくださり、コラボ配信を行いました。
fs稲生:どのような経緯でコラボ配信が実現したのでしょうか。
神門さん:柴田さんと知り合ったのは、コロナ禍以前に柴田さんが仕事で玉造温泉を訪れた際、角が温泉街を案内したことがきっかけです。その後、コロナ禍になってから、観光のお客さまが少なくなっている玉造温泉の近況を柴田さんに相談したところ、柴田さんがコラボ配信を提案してくださいました。
配信中は柴田さんのフォロワーさんからも温かいコメントをたくさんいただけて、本当にありがたかったです。このコラボ配信を経験したことで、ライブ配信とはどういうものか、肌感覚で理解することができました。
fs稲生:そこから自分たちでも配信を行うようになったと。
神門さん:はい。最初の1年ほどは「姫ラボ」の周年祭や福袋シーズンなどに合わせて、数か月に1回の頻度でライブ配信を行っていました。その後、配信に慣れてきたので企画をブラッシュアップし、「たまナビLIVE」「姫ともライブ」「姫旅ロケ」という3つの番組を立ち上げました。これらの番組をそれぞれ月1回の頻度で配信しています。
姫ラボのライブコマースとは? 島根県や商品の魅力を伝える「たまナビLIVE」
fs稲生:島根県内のさまざまな事業者さんとコラボしているのですね。
神門さん:地元の名産品や名店を紹介することで「島根に行ってみたい」「島根にまた行きたい」と感じていただくのが目的です。弊社の祖業である地域振興にもなりますし、島根県に来てくださる方が増えれば「姫ラボ」の愛用者さんも増えていくと思っています。
実際に来店促進の効果も出ていて、「姫ラボ」の直営店を訪れたお客さまから「ライブを見て来ました!」「観光ガイドブックとは違う旅ができました!」といううれしいお声もいただいています。
配信は毎月第2金曜日の19:30から約1時間。前半はYouTubeライブで後半はLive cottageを使って配信しています。視聴者数は同時接続で100~150人ほど。視聴URLの告知は「姫ラボ」のLINEアカウントや、1万人以上が登録している「玉造温泉 観光案内 たまナビ」のLINEアカウントなどで案内しています。
fs稲生:2024年1月の配信から、ライブコマース配信プラットフォーム「Live cottage」を活用してくださっていますね。
神門さん:以前はYouTubeライブのみで配信していたのですが、「たまナビLIVE」の視聴者さんのなかには「姫ラボ」の商品を買ったことがない方もいらっしゃるので、そういった視聴者さんでも商品を購入しやすいように「Live cottage」を導入しました。
「Live cottage」は配信画面に商品情報を表示し、ワンタップでECサイトの購入ページに遷移できるなど、スムーズに買い物をすることができます。「たまナビLIVE」の視聴者数は毎回、同時接続で100人を超え、これからも伸ばしていける手応えを感じましたので、次の段階として商品をより買いやすいくしました。
ライブコマースの販売実績を可視化したかったという理由もあります。以前はライブ中にコメントが盛り上がっても、視聴者さんがオンラインショップで商品を買ってくださったのか否かを把握することができませんでした。
「Live cottage」の管理画面では、配信画面から公式オンラインショップへの遷移数もわかりますし、入退出の人数の推移も把握できます。そういった数字を見ることで、ライブコマースの改善にもつなげていけると思っています。
店舗での接客経験を生かしてアドリブで会話
fs稲生:ライブに出演しているスタッフさんは、進行や話の盛り上げ方がとてもお上手ですね。台本は事前に作っているのでしょうか。
神門さん:おおよその流れは事前に決めておきますが、台本は作っていません。配信中はコメントをできる限り拾って、視聴者さんのリアクションに合わせて喋るようにしています。「ここが気になる」「これをもっと知りたい」といったコメントが来たら、そこを深掘りするイメージです。そのため、時間がオーバーしてしまうことも多いです。
fs稲生アドリブで配信できるのはすごいですね。皆さんはライブの経験があったのでしょうか。
神門さん:私を含めて全員がライブ配信は未経験でした。ですから、慣れるまではカメラに向かって喋り続けるのは大変でしたよ。
でも、私たちは日頃から店舗でお客さまに接していたり、通販でのお問い合わせに対応したりしているので、お客さまのニーズや悩みなどを理解しています。店舗や電話でお客さまと話している内容をベースにライブで喋っているので、台本がなくても大丈夫なのかもしれません。
「姫ラボ」のスタッフはみんな、お客さまと会話するのが大好きなんですよ。商品の良さをお客さまに伝えたい、お客さまとコミュニケーションを取りたいと常に思っているので、そういった気持ちをライブ配信にぶつけているんだと思います。
fs稲生:出演者は何人いるのでしょうか。
神門さん:番組ごとに出演者は変わりますが、現在は合計で5人ほどがレギュラーのように出演しています。ライブは夜に配信することが多いですが、夜の時間帯は出勤が難しいスタッフももちろんいます。そんななかでも、なるべく多くのスタッフが配信に出られるよう、あらかじめ撮影した動画に出演してもらうこともあります。ライブに自信がないというスタッフもいますので、そういったスタッフはナレーションのみで出演するなど、できる範囲で参加してもらっています。
事前に番組の全体構成や配信内のコーナーの企画・スタッフの配置を考えてくれるスタッフもいます。ライブ配信のコーナー企画については社内でアンケートも実施しました。このように、リアルタイムでライブ配信に出演するスタッフ以外にもライブ配信に関わるスタッフが徐々に増え、みんなで作るライブになってきたことがうれしいです。
ライブコマースの成果とは?
fs稲生:ライブコマースを行うことで、どのようなメリットを実感していますか?
神門さん:ライブコマースを行ってきて一番良かったと感じていることは、お客さまとの距離が近くなったことです。
通販の場合、お客さまから感謝や応援の声をいただく機会は、そう多くはありませんよね。また、私たちの思いをお客さまに直接伝える方法も限られます。
でもライブなら、私たちの思いをダイレクトに伝えられますし、お客さまの声もリアルタイムでたくさん届きます。その結果、売り手とお客さまの感情のコミュニケーションが生まれやすいと思うんです。
感情のコミュニケーションを通じてお客さまがブランドのファンになってくださり、商品の購入にもつながっていくのがライブコマースのメリットではないでしょうか。
私たちはライブコマースを行う以前から「姫ラボ新聞」というフリーペーパーを発行していましたし、通販のお客さまにメルマガや手書きのメッセージカードを送るなど、お客さまとのコミュニケーションを、とても大切にしてきました。だからこそ、ライブによるコミュニケーションの力を実感していますし、欠かせない施策の1つだと考えています。
SNSにはない「Live cottage」のメリット
fs稲生:せっかくインタビューの機会をいただきましたので、「Live cottage」に対する感想もお聞きしたいのですが、ライブコマースはSNSや配信専用アプリなどを使う方法があるなかで、InstagramやYouTubeといったSNSを使ったライブ配信と比べて「Live cottage」を使うメリットを、どのように感じていますか?
神門さん:「Live cottage」は配信中に商品を表示し、オンラインショップにワンタップで遷移できるので、ダイレクトに購入につなげられることがメリットだと思います。
また、アプリをダウンロードしなくても配信URLをクリックすればブラウザで視聴できますし、ログインしなくてもコメントできますので、視聴者さんにとって使いやすいプラットフォームだと思います。
それから、「Live cottage」に投稿されたコメントはアーカイブにも残るので、アーカイブ動画でも擬似的にライブ感を楽しめるのも良いですよね。
接客が好きならライブコマースはオススメ
fs稲生:最後に、ライブコマースの抱負をお聞かせください。
神門さん:「Live cottage」の活用頻度を上げていきたいです。今は配信頻度が月1回ですが、欲を言えば毎日やりたいぐらいです。店頭に立って接客を行うのと同じように、オンラインでもライブで接客するのが理想です。
これはあくまでイメージですが、お客さまがオンラインショップを訪れたら、その場でライブ配信を始められるような仕組みがあれば、新しいEコマースの形が実現できるのではないか、こんなことをスタッフ同士で話しています。
fs稲生:姫ラボの皆さんは、ライブコマースが本当にお好きなのですね。
神門さん:「今、一番楽しい仕事はなんですか?」と聞かれたら「ライブ」と答えます。お客さまとのつながりを実感できて、温かいコメントをリアルタイムでいただけることがうれしくてたまらないです。
「姫ラボ」は店舗を持っていて、私たちは店頭での接客も大好きだから、尚更そう感じるのかもしれませんね。普段から店舗で働いている方で、私たちのように接客が好きな方は、ぜひライブコマースに取り組んでみてほしいです。
取材を終えて
「姫ラボ」のライブコマースを視聴すると、スタッフの皆さんが視聴者さんとのコミュニケーションをとても大切にしていることが、ひしひしと伝わってきます。視聴者さんが喜ぶ企画を考え、配信中はコメントを丁寧に拾い、福袋の企画会議なども実施して視聴者さんを番組に巻き込んでいく。こうした“視聴者と一緒に番組を作る”スタンスが、ファンから支持される理由の1つだと感じました。
そして、ライブに出演しているスタッフさん自身がライブを楽しんでいる姿も印象的でした。商品を無理に売ろうとせず、視聴者さんとの交流を楽しむことで結果的にファンのエンゲージメントが高まっていく「姫ラボ」のライブコマースは、ECのファンマーケティングにおいても注目すべきことでしょう。
「姫ラボ」のライブコマースは、アーカイブで視聴することも可能です。百聞は一見にしかず。ライブコマースを強化していきたい事業者は、「姫ラボ」の取り組みを参考にしてみてください。
この記事はフューチャーショップのオウンドメディア『E-Commerce Magazine』の記事を、ネットショップ担当者フォーラム用に再編集したものです。