米Amazonは3月10日、健康に関する質問への回答や医療記録の説明、診察予約、処方箋の更新といった管理などを支援するAIアシスタント「Health AI」を、「Amazon.com」とAmazonアプリで提供開始したと発表した。
オンライン診療と対面診療を組み合わせた年会費制の総合診療サービス「One Medical」アプリ内で提供していた機能を拡張したもので、近く米国のすべてのユーザーに提供を拡大する予定という。

「Health AI」は、ユーザーの健康状態や医療履歴に基づいたパーソナライズされた洞察やガイダンスを提供し、必要に応じて医療提供者につなぐエージェント型AI。Amazonは「医療は本来、個人的で、つながっていて、必要なときに利用できるべきだが、現実は複雑で摩擦が多い」とし、その課題の解決を狙う。
なおAmazonは、「Health AI」は医療提供者との関係を補完するためのものであり、単独で診断や治療を行うものではないと強調している。
「Health AI」で質問対応から処方箋管理まで
「Health AI」は、個人の健康情報がなくても一般的な健康関連の質問に回答する。ユーザーが許可すれば、医療記録(病歴、服薬、検査結果、臨床ノートなど)にアクセスし、検査結果や診断の説明、症状や薬に関する「より正確でパーソナライズされた」回答を提供する。
専門的なケアが必要な場合は、メッセージ、ビデオ、対面などでアプリ「One Medical」の医療提供者につなぐ。また「Amazon Pharmacy」や任意の薬局での処方箋更新の管理にも対応。必要に応じて「Amazon.com」から関連するヘルスケア製品を提案する。
医療データや購買履歴を活用しパーソナライズ
「Health AI」の利用は「Amazon Health」ページからサインアップして開始する。アクセス権が付与されるとメールで通知され、Amazonヘルスプロフィールにログイン後、チャット形式で健康に関する質問を入力できる。
パーソナライズでは、医療データ共有システムのHIE(Health Information Exchange)を通じて医療記録へのアクセスを許可できる。対象には病歴、服薬状況、検査結果、臨床ノートなどが含まれる。
さらにビタミン剤や血圧計など、Amazonで購入した関連商品の履歴も参照可能。たとえば、喘息患者がインフルエンザの季節に咳を訴えた場合、「Health AI」は既存の診断や服薬情報、過去の発作履歴などを踏まえて追加質問を行い、症状の深刻度を判断する。
「Health AI」は健康状態の文脈から症状の意味を説明し、次の行動を判断するための情報を提示する。専門的なケアが必要な場合は「One Medical」の医療提供者へ接続し、処方箋更新の依頼も可能。
「Health AI」が回答できる質問の例は次の通り。
- 「最近のコレステロールの検査結果が私にとって何を意味するのか説明してくれますか?」
- 「最近、腎臓結石と診断されました。再発リスクを減らすためにどのような食事の変更をすべきですか?」
- 「鼻が詰まって喉が痛いです。どうすればいいですか?」
- 「現在処方されている薬と一緒に飲んでも安全なアレルギー薬は何ですか?」
- 「医師が処方した薬の副作用は何ですか?」
Prime会員向けに無料メッセージ診療
新規導入オファーとして、米国のPrime会員が「Health AI」を利用すると、30以上の一般的な症状について「One Medical」の医療提供者によるダイレクトメッセージ診療を5回まで無料で受けられる。対象例には風邪、インフルエンザ、アレルギー、結膜炎、脱毛などが含まれる。
Prime会員や「One Medical」会員以外でも「Health AI」自体は利用可能。無料枠を超えてメッセージ診療を受ける場合や非会員の場合は、1回29ドル(14日間の無制限フォローアップメッセージ付き)を支払うか、「One Medical」のメンバーシップを購入することで診察を受けられる。米国のPrime会員は、「One Medical」のメンバーシップを通常199ドルの半額となる年額99ドルで利用できる。
健康情報はマーケティングや広告に利用せず
Amazonは、「Health AI」とのやり取りは医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律HIPAAの準拠環境で行われ、会話内容は暗号化と厳格なアクセス制御で保護されるとしている。
また「Amazon One Medical」や「Amazon Pharmacy」から取得した健康情報(PHI)を、Amazonストアの一般商品のマーケティングやAmazon Adsには使用しないとも説明している。
開発は「One Medical」の臨床リーダーと共同で進めた。臨床安全性や緊急対応について広範な評価を実施し、臨床医レベルのパフォーマンスを満たす、またはそれを上回ることを確認したという。
「Health AI」には患者の安全を守る複数のガードレールを組み込んでおり、臨床的な推奨に確信が持てない場合は誤った助言を出すのではなく、人間の医療提供者へ誘導する設計としている。
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