中国の進化するオンライン診療に学ぶCX向上と価値創造を実現するためのヒント
世界的規模で流行したパンデミックは、多くの企業の業績に影響を及ぼしています。コロナ禍で外出が制限されるという特殊な環境下において、Eコマースが独自の優位性を発揮。特に生鮮食品、健康食品(免疫製品、コンビニエンス食品など)、衛生用品(マスク、消毒製品、洗浄剤、使い捨て手袋など)の需要急増は、短期的な消費ギャップを補填し、経済成長を促進しました。
一方で、企業はコロナ禍の苦難のなかでも新たな楽しみや利便性を提供しようと試行錯誤を重ねました。これをビジネスチャンスと捉え、たくさんの「オンライン」商品が誕生したのはコロナ禍の影響によるものでしょう。ここでは中国で進化したオンライン診療にフォーカスし、カスタマーエクスペリエンス(CX)や新しいサービスの価値創造についてお伝えします。
「オンライン」がWithコロナ時代の新たなビジネスチャンス
中国では、オンラインジム、オンライン飲み会、オンライン旅行などのサービスや、公共事業ではクラウドサーバー、オンライン裁判、オンライン診療なども誕生しました。社会全体のデジタル化が大きく進むなか、いかに消費者の期待する「オンライン」サービスを提供できるかが、Withコロナ時代の新たなビジネスチャンスとなります。
拡大する中国のオンライン医療市場規模
オンライン医療サービスについて詳しく触れていきます。中国のオンライン医療市場規模は、2020年に544.7億元へ達し、医療分野でのオンライン活用は徐々に拡大しています。
オンライン医療は、ユーザーにも受け入れられています。その理由は、中国の特に大都市周辺でコロナ前に存在していた医療の課題も大きく関わっています。風邪などの軽い病気の診察を例に以前のプロセスをご紹介します。
まずは病院で整理券を入手するのですが、都市部の病院は人気が高く地方からも多くの患者が集中するため、早朝から長蛇の列に並ぶ必要があります。整理券を入手できたら診察のための費用の支払いを行い、そのあと診察まで順番待ちを行うだけで少なくとも約半日を要します。
診察が終われば、医師から処方された薬を購入するために院内の薬局でまた長蛇の列に並び、支払いを済ませて薬をもらう必要があります。つまり、軽い風邪などの病気でも病院で診察してもらう場合、1日がかりとなっていたのです。
この大きな課題が、オンライン医療の発展によって、時間や場所を選ばずに診療を受けることができ、かつ迅速な医療プロセスや便利なオンライン決済が実現されました。つまり、多くの“不便”が解消されたのです。
「iiMedia Research」の調査でも、整理券の予約、薬の購入、オンライン診察、オンライン決済などが多くユーザーに利用されていることがわかります。
オンライン診療で利便性向上&二次感染の不安を軽減
実際の利用体験について、新浪網の記事から一部抜粋し紹介します。
山東省にある病院での慢性疾患患者のフォローアップ診断をビデオ予約、診察、投薬、支払いまでを、スマートフォンを介して「対面」で完了した患者Liさん(冠状動脈性心臓病患者で、62歳)の例です。
これまでは、2週間ごとに病院へ通院し、薬を処方してもらうという日々を過ごしていました。しかしコロナ流行後、病院での二次感染に怯えながら娘と共に病院に行ったところ、オンライン診療に関するチラシをもらったため、娘がすぐにアリペイを開き、病院を検索。すると、病院の専門医全員を検索することができました。担当医の名前をクリックすると、医師の空き時間が表示され、直接予約することができたのでした。
慢性疾患は中高年に多い病気で、かつ2週間ごとに再診する必要があります。抵抗力が弱く、特にコロナ禍では病院での診察はとても心配でした。しかし、オンライン診療を試してみたところ、まったく問題なく診察ができ、とても便利だったとのこと。
また診察後、医師から「オンライン処方箋」が発行されるため、アリペイで患者が自己負担分をオンラインで決済すると、院内薬局で薬が準備され、宅配会社が2時間以内に患者の自宅へ届けました。
こうした仕組みは、患者にとって大きな医療体験の変化につながっています。これから徐々に各都市で環境が整えば、より多くの患者をオンライン医療で救うことができるようになります。
紹介した内容は、コロナによって起こったオンライン医療に関するほんの一部の例ですが、医療業界に関わらず、環境の変化に対応している企業に共通して言えることは、消費者行動の変化を敏感に捉え、インサイトを正しく把握、カスタマーエクスペリエンスの向上を実現していることです。
そして、既存ユーザーを熱狂的な「ファン」に昇格させることにブランディングやマーケティングの重点を置いているのです。
人々の声に耳を傾け、求められているモノやサービスが消費者の支持を受け、企業は商品として提供できるようになるのです。
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