中国小売・EC市場でニーズ拡大のペット産業。「エンプティネスト」が市場拡大を後押ししている背景とは
中国では1人暮らしの高齢者や若者が増加し人口動態が大きく変化している一方で、心のニーズを満たしたいと考える人が増えています。そんな人たちの心の支えになっているのがペット(ここでは主に犬・猫)です。「エンプティネスト(子供が親元を離れて、別の世帯に暮らし始めること)」の進展が、ペット関連産業への消費を後押ししています。
GDP成長でペット関連消費が増加、企業の投資意欲が旺盛
中国のGDP成長に伴い、1人あたりの平均所得と消費は2013年から右肩上がりで伸びています。GDPの成長は、ペットやペット関連商材の購入者増加、購入単価アップなどの好影響を与えているのです。
オンライン・オフラインのペット産業市場(ペット用品のほかペット医療など関連産業も含む)が高い成長率で伸びており、2021年の市場規模は1500億元(約3兆336億円)に拡大。2022年には1706億元(約3兆4502億円)に成長したと見られており、「エンプティネスト経済」の進展で今後さらに大きくなると予想されています。
Chinabgao.comによると、中国で飼育されているペット数は増加傾向で、2020年は前年比3.1%増の1億9000万匹に達したそうです。
iResearchの調査データによると、中国都市部の犬・猫に関する消費市場は過去7年間で順調に成長。2023年の市場規模は445億6000万元(約9011億円)に達し、2021年から2023年の推定CAGR(年平均成長率)は14.2%と予測さています。
飼育の種類では犬と猫が圧倒的に多く、犬と猫を飼育する人の割合は75%。猫の飼育数は犬を上回って増加し続けており、今後は猫関連消費の需要が盛り上がっていくと予想されています。
消費が伸びていますので、企業による投資意欲も旺盛。CBNデータとTianYanChaによると、ペット関連市場(ペット専用機器、ヘルスケア、医療サービスなど)への投資は2019年から2021年にかけて2.5倍に拡大したそうです。また、ペット関連企業の上場準備も進んでいます。
ペットフードがペット市場の成長をけん引、ニーズが高まるペットの衛生面
ペットカテゴリーの主なサブカテゴリーは「キャットフード」「ドッグフード」「猫・犬の掃除用品」「猫のおやつ」です。
なかで最も大きいのがペットフードカテゴリー。中国の2017~2021年におけるペットフード小売売上高は年平均25.1%で伸び、2022年は542億元(約1兆961億円)に達しました。そのうち犬猫フードが541億元(約1兆941億円)と99%近くを占めています。
2022-2027年では、犬の飼育者に比べて猫の飼育意欲が高いことから、キャットフードはドッグフード(CGAR 3.6%)よりも高い成長(CGAR 14.3%)が見込まれています。
また、保存性とコストパフォーマンスが高いドライフードは犬猫用フード市場の74%、市場の3/4を占めています。
消費やニーズの多様化、テクノロジーの進化などで、ペットフードはさらに細分化され、低価格商材からハイエンド消費までさまざまな商品が出現するでしょう。ペットフード業界からは今後、調合食品と免疫食品が新たな戦場となる可能性がるといった声もあります。また、処方食、高級ウェットフードなども注目されており、「健康」を軸としたペットフード消費が成長のカギになりそうです。
中国のペットオーナーは衛生面に気を配るようになっています。現にペット用シャンプーの需要が高まっており、なかでも安全で無添加の成分が入った製品の購入が上位にあがっています。「プロのペットウォッシャー」をうたうブランドからは、被毛や皮膚の特徴などペットの個体差に応じたパーソナルなペットシャンプーが開発・販売されています。
ただ、ペットフード、シャンプーなどのペット用品はレッドオーシャン。競争が激しく、勝ち抜くためには大きな投資が必要となります。資本が乏しい企業は、ニーズの細分化、消費の多様化に対応したニッチな製品に注力することが推奨されます。
一方、ブルーオーシャンなのがヘルスケア、医療・金融保険。これらの分野では現在、多くの資本が集まっており、今後の市場隆盛が期待されます。
拡大が予想されるペット産業
中国では今後、政府、企業、協会が一体となり、ペット産業の大規模化を進めていくでしょう。少子化と「エンプティネスト経済」の進展が、ペット産業の拡大を後押しすると予想されます。
中国畜産協会ペット産業分会会長の劉朗博士はインタビューで、「ペット産業は世界的に100年以上発展してきたが、まだ新興産業である」と指摘。中国のペット産業は今後も成長すると見られています。「エンプティネスト経済」への注目がより集まっていくことでしょう。
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