「顧客体験」にこだわる中国EC企業が実践しているユーザーの感情分析とその実践法
先進的な中国企業の多くは、顧客の潜在欲求を正確に捉えて顧客体験の向上につなげることを戦略に掲げています。その実現のために、多くの企業がユーザーの感情をさまざまな方法で分析、そして、CVRの向上につなげています。ユーザーの感情は顧客体験に大きく影響し、カスタマージャーニーの改善において重要視されているからです。
ユーザーのプラス感情が商品のリピート購入につながる
ユーザーの感情を重視することは、顧客ロイヤルティと売り上げを向上させるだけでなく、企業のイメージアップにもつながります。ユーザーが買い物をする時には、必ず何らかの感情が生まれます。たとえば、ネットショップで商品を購入する際、期待値があがるものの、受け取った商品に問題があれば不満が生じ、カスタマーサービスにクレームが発生するということがあります。
オンラインコミュニティ「CustomerThink」に掲載された記事「カスタマー・エクスペリエンスにおける顧客感情の測定方法(How to measure emotion in customer experience)」によると、企業や商品に対してポジティブな感情を持つユーザーの74%はブランドを積極的に人に勧める傾向があり、63%は商品・サービスをリピート購入・利用するという結果が出ています。
一方、ネガティブな感情を持つユーザーの場合、ブランドを他人に勧める人は8%、商品・サービスをリピート購入・利用する人は13%でした。
このような結果も踏まえ、企業がユーザーに良い体験を提供するためには、ユーザーのプラスの感情がマイナスの感情を上回ることが大切だと考えているのです。
テキストマイニングを活用してユーザーの感情を可視化
企業はユーザーの感情をさまざまな方法で正確に理解しようとします。実店舗の場合、実際にユーザーの行動を見たり、商品・サービスに対する意見を聞いたりできます。もしユーザーが商品やサービスに満足しておらず、「ここをもう少し改善してほしい」などの意見が寄せられていれば、サービスの向上にも役立てられます。
ECサイトの場合、Tmall(天猫)やJD(京東)などのECプラットフォームには「DSR評価制度(Detailed Seller Ratings/セラー詳細評価)」が設けられおり、企業がユーザーの意見や感情を把握するための重要な役割を担っています。
「DSR評価制度」は、「商品詳細の的確性」「コミュニケーション」「発送のスピード」という3つの分野におけるサービスについて、消費者が評価する制度。この制度を活用し、企業は商品・サービスに対する評価からユーザーの感情を判断できるのです。
また、コンタクトセンターのオペレーターと顧客とのやり取りを分析することで、顧客の感情を正確に把握できるようになります。
Tmallのある店舗はCVR向上のために、ユーザーとオペレーターのやり取りの記録をテキストマイニング(大量のテキスト情報から有益な情報を発掘する方法)を用いて分析。その結果と「TGI指数(Target Group Index)」(ユーザーのある話題への関心度を示し指数)を基に出現頻度が高いコメントを分析することで、ユーザーが気に入る商品やサービス、またユーザーが離脱してしまう状況を把握し、ターゲットを絞ったサービスの改善に取り組み、店舗のCVR向上を実現します。
「TGI指数」は100を平均レベルとして、100以上ならターゲット層は関連業界・分野に対して関心を持っており、数値が大きいほど関心が高くなります。一方、100以下の場合は関連業界・分野に対する関心が低いことを意味します。「DSR評価制度」のようにモールに搭載されている機能ではありませんが、ターゲット市場特定のためによく使用するデータ分析手法です。
テキストマイニングツール導入で、品質管理においてもより多くのサンプルが収集でき、効率的に客観的な分析ができるようになりました。ユーザーの感情可視化、深掘り分析を行えるため、顧客体験の改善がより効果的になったのです。
また、感情分析ツールなどを活用して、言語のサンプルを収集・整理します。クローリングツールを活用して、複数のチャネルから商品やサービスに対するユーザーのフィードバックを収集、膨大なデータをAIで分析します。AIによるテキスト情報解析を行い、コメントを作成して、ユーザーへ自動的にフィードバックすることができます。
カスタマージャーニー改善の取り組み
ユーザーの感情を把握した後は、ユーザーがカスタマージャーニーのどの段階に位置しているのかを判断し、ユーザーに質の高い顧客体験を提供します。たとえば、ユーザーが怒りをあらわにしているときは、その原因の根本的なものは何かを理解する必要があります。その後は改善を行い、ユーザーとの良好な関係を築くことで、ユーザーのブランド体験価値を改善していきます。
カスタマージャーニーを改善するために、顧客体験に関するアンケート調査を実施、購買行動プロセスを可視化します。ネットショップの運営において、顧客満足度の調査方法としてアンケートはとても一般的です。
アンケートでは、ユーザーが「どのような時に」「どのような感情で」「どのような行動を取ったか」などの全体的な顧客体験を把握します。商品検索のしやすさ、サイトデザインの美しさ、オペレーターの対応など、複数の段階に関連する問題について分析します。
チャットボット導入で顧客対応の効率とCVRを向上
トランスコスモスチャイナが運営しているTmall店舗では、チャットボットツール「店小蜜(ディエン・シャオ・ミ)」を導入し、24時間365日のオンラインカスタマーサービスを提供しています。リアルタイムで顧客対応を実施することで、ユーザーはいつでも問い合わせをすることが可能となります。
一方、有人オペレーターサービスでは、ユーザーの感情を理解して、不満がいつ発生したかを判断し、迅速に有効な措置を取ることで、顧客体験の向上につなげています。
上の図は、ある家電ブランド公式旗艦店のAIチャットボット「店小蜜」がおすすめ商品を提案しているやり取りです。チャットボットは、簡単な問題を自動で返答できるだけでなく、オススメ商品の提案、人気商品の紹介といった情報提供を行っています。
ユーザーは問い合わせ内容をオペレーターに聞く前に知ることができ、カスタマーサービスの効率とショップのコンバージョンレートを大幅に向上させることができました。
上の図のように、ユーザーは「最適なおすすめ」をクリックして、各種の商品情報を見ることができます。そして、チャットボットとの会話によって、自分の希望に合った商品を素早く見つけて、ショッピングを楽しめるのです。
企業はさまざまな方法で顧客行動や経験、感情の変化をリアルタイムに把握し、顧客フィードバックによって持続的に改善に取り組んでいます。
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