小林 義法[執筆] 10/31 8:00
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これからBtoB-ECサイトを立ち上げ、クライアント企業との間で古くから続いてきたアナログな取り引きをデジタル化し、企業全体のDX化に取り組もうと考えている企業にとって、まずやるべきこととは何だろうか。受発注・請求・営業をDX推進するBtoB ECプラットフォーム「Bカート」を提供するDaiの清水誠司氏は、「まず受発注からDXに取り組むべきだ」と提唱する。残業時間が88%減少し、売り上げが3倍になった実際の導入事例を交えて解説する。

Dai B2BソリューションDiv. セールス 清水誠司氏

日本国内の企業間取引を取り巻く環境

従来型のアナログな企業間取引にはさまざまな課題がある。まず、受注時に発生する課題だ。FAXが毎日大量に届くものの、書いてある内容が読めないこともあれば、そもそも取引先が送ったはずのFAXが見つからないといったこともある。電話注文はやり取りに時間がかかり、確認しても言い間違い・聞き書き間違いが発生する。こういった状況ではトラブルや機会損失は避けられない

従来型の企業間取引でよくある課題

受注情報を管理する際にも課題がある。基幹システムや販売管理システムをすでに自社で運用している企業は多いが、入力を手作業で行っている企業は少なくない。そのための人員が必要になり、手作業である以上、ミスやトラブルが起こる可能性はある。金額に間違いがあった場合、修正に膨大な手間がかかることも少なくない

こうした課題を解決しようという動きに加え、コロナ禍以降に広がった行政からのDX推進の流れもあり、BtoB-ECは急速に普及してきている。経済産業省の調査によると、2022年のBtoB-ECの市場規模は約420兆円。これはBtoC-ECの18.5倍にもなる。また、BtoBのEC化率は37.5%と、BtoCの4倍以上という非常に高い数字だ。

BtoB-ECの市場規模とEC化率
※「令和4年電子商取引に関する市場調査報告書」(経済産業省)をもとにDaiが作成

2つのBtoBと2つのEC

BtoB-ECは大きく2種類に分けられる。1つはEDI(Electronic Data Interchange/電子データ交換)で、もう1つがECサイトだ。EDIは専用の回線を利用した企業間取引で、ECが誕生する前の1980年代から行われてきた。BtoB-EC市場規模が大きいのは、このEDIが含まれているという背景がある。

ECサイトはBtoC-ECと同様、専用サイトで受発注を行う。ECサイトにはモール型とカート型があり、モール型のメリットはなんといっても集客のしやすさだ。まずは多くの顧客に知ってもらうことができ、売り上げも早めに立ちやすい。しかし、当然ながら手数料が発生する。また、自社ブランドのファンを増やしにくいというデメリットもある

BtoB、BtoCそれぞれのモール型とカート型の違い

カート型のデメリットは、サイトを自社で構築していかなければならないため、モール型より手間がかかる。しかし、モール型と違って制限がないため、自社のオリジナリティを自由に表現できる。また、顧客が目にするサイトだけでなく、バックヤードを含めて、自社の課題を解決できる仕組みを作り、企業自体のDX化を進めるのに適していると言える。

BtoB企業の課題を解決していくカート型のサービスが「Bカート」。「Bカート」は受発注、請求、営業などにおけるDXを推進するBtoB-ECプラットフォームだ。導入企業はすでに2000社以上。75社以上の買い手企業に利用されている。(清水氏)

Dai B2BソリューションDiv. セールス 清水誠司氏
Dai B2BソリューションDiv. セールス
清水誠司氏

なぜ受発注がBtoB-ECのポイントなのか

実際にDX化を進めるにあたり、清水氏は受発注の業務からDX化するべきだと言う。

社内外の業務の分解例。水色が「Bカート」で対応できる分野

業務を分解してみると、社外業務は顧客や協力企業との連携、広報活動などがある。社内業務は人事労務や会計、生産や販売の管理業務といったものがある。これを「受注」「出荷」「売上」という3つの情報の流れを図式化すると次のようになる。

業務と情報の流れ

清水氏が受発注業務のDX化から始めることを提唱する理由は、「業務に関わるすべての情報は受注情報を管理するところから始まるから」という。この受注情報をデジタル化することによって、その後の流れもデジタルで処理しやすくなる

「Bカート」で対応できる業務はかなり幅広い。たとえば「注文を受け付けた」「発注メールが来た」「FAXが届いた」などの顧客への連絡を自動返信にすることができるし、物流との連携でも伝票の自動化や、過去の出荷伝票の集計もできる。(清水氏)

DXを進めるために行うべき3つのこと

清水氏によるとDXを進めるために行うことは3つある。それが「業務を整理する」「対象顧客を絞る」「業務体制を変える」だ。

・業務を整理する

いま社内の誰がどのような業務をしているのか、誰がいつどのシステムを使って何をしているのか、これらを100%説明できる人は少ない。しかし、DX化にあたってはこれらを洗い出し、整理する必要がある。それにより「この業務はDX化できそう」「ここは手動入力でも大丈夫」といった判断がしやすくなる

・対象顧客を絞る

すべての取り引きをシステム化しようと考えがちだが、新しいことをしても対応してくれそうな顧客と、それが難しい顧客がいる。まずは一部の顧客だけを対象としてシステムをスタートさせ、定着をめざすことが有効だ。また商品数が多い場合は、顧客と同様に商品も絞り、一部の商品だけを対象に開始し、少しずつ増やしていく方がスムーズだという。

・業務体制を変える

DXを進めるなかで、社内から「本当に変える必要があるのか」という声が上がることもある。しかし、変わらないと進まないのも事実である。社内でとことん意見をすり合わせる必要がある。そのためには体制を変えることも検討する必要がある

「Bカート」導入によるDX成功事例

最後に「Bカート」導入企業の事例を紹介する。琉球ワークスはグッズやOEM商品の企画から制作までを手がける沖縄の会社だ。

琉球ワークスの公式ECサイト(https://ryukyuworks.i12.bcart.jp/

「Bカート」導入前、琉球ワークスは電話とFAXで注文を受けており、注文を販売管理ツールに手動で入力、そこから伝票を出力して倉庫へ手渡して商品を配送していた。商品が戻ってきたときにはまた手動で入力し、伝票を出力するの繰り返し。そのため、FAX注文の対応にかなりの時間を取られてしまい、新規企画も営業がまったく行えていなかった

「Bカート」導入前の琉球ワークス

しかし「Bカート」導入後は、受注データはAPI連携した新しい販売管理システムを通して自動的に倉庫へ流れていく。不要なデータの手入力や伝票の出力がなくなった

「Bカート」導入後の琉球ワークス

「Bカート」を導入する際、琉球ワークスが重視したのは「買い手の使いやすさとわかりやすさ」だった。そこで実際に行ったのはマニュアルの作成である。そのマニュアルを持って、営業担当が買い手である店舗に行って直接説明した。さらに、スマートフォンでも簡単に注文できるようにした。わざわざパソコンを開かなくても、バーコードを読み込んで注文できるようにしたのだ。

こういった取り組みの結果、琉球ワークスの売り上げは「Bカート」導入前と比較して3倍にアップした。そしてさらに、今まで行えていなかった営業にも行けるようになり、労働生産性も上がって、残業時間がなんと88%も減少したという。

琉球ワークスにおける「Bカート」の導入効果

このほかにも、ペット商材の輸入を行う企業では「Bカート」導入後の売り上げが前年比115%に伸びた。さらに、以前は代金引換が多かったが、顧客が「Bカート」を使うようになったおかげで、金額突合作業が従来の6分の1に減少した。これはまさに受発注DXの成功例と言えるだろう。

BtoBの受発注DXを成功させるためのポイントをまとめると、1つ目は「スモールスタートで始める」ということ。2つ目は「業務フローと対象顧客の整理」。3つ目は「企業としての方向性を新たに考える」である。これらのポイントが、受発注DXを成功させるコツだ。(清水氏)

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