ヤフー、ポイント戦略大転換の反響は? 日曜日の高還元施策の廃止に「売れない」の声
ヤフーが運営する仮想モール「Yahoo! ショッピング」が、ポイント戦略を大きく転換している。同モールの出店店舗は日曜日に合わせた販促を展開していたが、2022年10月に「PayPayモール」と統合する形で仮想モールを刷新。
決済時にグループの決済サービスやクレジットカードを使用した際、決済額に対する還元率を引き上げ、5%とするとともに、毎週日曜日の高還元施策を廃止した。
これにより、従来のポイント戦略と比べて「売れなくなった」となげく出店者の声があがっている。
日曜日のポイント高還元施策廃止が大きな痛手に
2022年まで「Yahoo! ショッピング」では、ソフトバンクの携帯電話契約者向けに、10%還元キャンペーン「ソフトバンクスマホユーザーなら毎週日曜日は+10%」を毎週日曜日に実施。他の施策も合わせると、20%以上の高額ポイント還元が見込めることもあり、同モールの出店店舗は日曜日に合わせた販促を展開していた。
ところが2022年10月12日、ヤフーでは「PayPayモール」と「Yahoo! ショッピング」を統合する形で仮想モールを刷新。決済時にグループの決済サービスやクレジットカードを使用した際、決済額に対する還元率を引き上げ、5%とするとともに、毎週日曜日の高還元施策を廃止した。
ヤフーは自賛も、EC事業者は「売れなくなった」となげく声
同社では、ポイントの還元率見直しでソフトバンクユーザーら特定層を優遇した販促策から、広い層に還元する形とすることで新規の利用者や「PayPay」および「PayPayカード」の利用者の獲得を図る狙いがあるとしている。
モールの統合後は「(売り上げが)日曜日にかたよらず、平準化が想定以上に進んでおり、日常使いのモールへ順調な滑り出しとなっている」(執行役員の畑中基ショッピング統括本部長)と自賛する。
しかし、ある大手ギフトEC企業の担当者は「毎週のイベントがなくなったので、『Yahoo! ショッピング』では売れなくなった」となげく。
ヤフーで買い物するメリットがなくなる? 顧客離れを懸念の声も
また、大手家電EC企業の担当者は「日曜日に集中して売れていたので、2022年12月の前年対比を見ると、日別の平均売上額は伸びているが、トータルで見ると減少している」と明かす。
2022年末、ヤフーはさらなるキャンペーンの条件変更を発表。毎月5日や15日、25日に実施するセール「5のつく日キャンペーン」に関して、2月5日から「PayPayポイント」の付与上限を5000ポイントから1000ポイントに減らした。
同キャンペーンでは、購入額(税別)の4%が還元されるため、これまでは1日あたり12万5000円(同)の購入までポイントが付与されていたが、2月以降は2万5000円(同)分までしかポイントが付かなくなった。
ホームセンター大手の担当者はため息をついて次のように話す。
影響は非常に大きい。もともとポイントが付く日でないと売れないモールだったのに、ここまでポイントが付かなくなるとユーザーにとってのメリットがなくなるのではないか。ヤフーにおける商売自体を考え直さなければいけない。
売上を上げるためにはかなりの投資が必要?
また、この担当者は「検索面での優遇がなくなったこともあり、『PayPayモール』から切り替わった店ほど苦戦しているようだ。3月からは販促企画『倍! 倍! ストア』への参加条件も変わる。売り上げを作るためには、かなり投資しなければいけないだろう」と話す。
「倍! 倍! ストア」は、参加店舗で買い物をすると、購入額の5%または10%が還元される企画。これまではポイントアップ分とPRオプションの負担で参加が可能だったが、3月からは販売価格の3%分を支払うことで提供される、出店者向けの販促支援サービス「プロモーションパッケージ」への加入が必須条件となる。
あるコンサルタントは次のように指摘する。
モール統合後は、商流の大きい店舗ほど苦戦している傾向にあるようだ。5のつく日のポイント上限変更に関しても、これまでより高額商品が売れにくくなるのは間違いないだろう。『ポイント競争でこれ以上シェアを取っていくのは難しい』と判断したのかもしれないが、他に手を打たないのであれば、今後もAmazonと『楽天市場』に次ぐ3番手に甘んじるということになるのではないか。
ECモール各社はポイント施策を絞る傾向に
一方で、ライバルとなる「楽天市場」においても、「楽天スーパーポイントアッププログラム」(SPU)で一部サービスの付与料率が引き下げになるなど、以前よりもポイントが付かなくなっており、仮想モール運営企業が、キャンペーンにおいて自社負担で付与するポイントを絞る傾向は続きそうだ。
先のホームセンター大手の担当者は「ヤフーの場合、ポイント還元率を高くする日を『5のつく日』以外にしたり、ポイント還元ではなく値引きをしたりといった工夫も考えている。また、自社通販サイトの強化も検討したい」と話す。
※画像、サイトURLなどをネットショップ担当者フォーラム編集部が追加している場合もあります。
※見出しはネットショップ担当者フォーラム編集部が編集している場合もあります。
「通販新聞」について
「通販新聞」は、通信販売・ネット通販業界に関連する宅配(オフィス配)をメインとしたニュース情報紙です。物品からサービス商品全般にわたる通販実施企業の最新動向をもとに、各社のマーチャンダイジング、媒体戦略、フルフィルメント動向など、成長を続ける通販・EC業界の情報をわかりやすく伝え、ビジネスのヒントを提供しています。
このコーナーでは、通販新聞編集部の協力により、毎週発行している「通販新聞」からピックアップした通販・ECのニュースや記事などをお届けしていきます。
→ 年間購読を申し込む(通販新聞のサイト)
→ 通販新聞の過去記事を読む(通販新聞のサイト)
→ 通販新聞についてもっと詳しく知りたい