2025年のネットショップ担当者アワード「越境ビジネス賞」を受賞した、中古車越境ECを手がけるビィ・フォア―ドの土屋汐莉氏は、20か国以上にローカライズした全41アカウントのSNS運用、ローカルペイメントの担当などさまざまな事業カテゴリを担当している。土屋氏に、アワードの選考委員でスマイルエックス代表の大西 理氏が、受賞を振り返るアフターインタビューを実施した。


受賞が周囲のモチベーションアップに好影響
大西 理氏(以下、大西氏):「越境ビジネス賞」を受賞して変わったことや影響を教えてほしい。
土屋 汐莉氏(以下、土屋氏):チームメンバーには受賞の報告を行った。新卒で入社したメンバーや、海外で活躍するメンバーにとって、越境ビジネスという切り口で自分が受賞できたことは良い刺激やモチベーションになっているようだ。今回の受賞が今後も後進の励みとなり、挑戦する意欲を高めるきっかけになり、続けてほしいと願っている。
中古車輸出のリーダー的存在、ビィ・フォア―ドの特長
重量物の海外輸出に強み
大西氏: 越境EC市場は活況を呈しているが、そのなかでもビィ・フォアードは歴史が古く「越境ECといえばビィ・フォアード」と言われるほど大きな存在だ。問い合わせや相談を希望する企業も多いのではないか。国境を越えてモノを運ぶという点で、ビィ・フォアードのノウハウを求める声は大きいはず。

土屋氏:相談を持ちかけてくる企業は多い。現在は休止しているが、かつてはBtoB向けにマーケットプレイス運営を支援するサービスも提供していた。また、車以外の商材であっても、海外進出に関心を持つ企業から問い合わせを受けることもある。「越境ビジネスではどうすれば売れるようになるのか」といった相談や、「自社が扱う車をビィ・フォアードのプラットフォームに掲載してほしい」という依頼もあった。実際に、海外へ運搬する手段を持たない企業の車を、ビィ・フォアードのECサイトに掲載している。
また、他のEC事業者が販売している商品について、「ビィ・フォアードが物流のみを請け負う」というケースもある。こうした企業支援やBtoB向けサービスの展開拡大も、今後の検討事項となっている。

大西氏:ビィ・フォアードは214の国と地域に取引先を持つ。海外販売の特長や主な輸出国を改めて教えてほしい。
土屋氏:海外販売のうち約50%がアフリカ向け。特長としては、海外への発送件数は年間20万件以上にものぼり、重量ベースでも相当な量を扱っていることがあげられる。重量物の輸送において大きなイニシアティブを発揮できる点が強みだ。
繊細なローカライズでユーザーを拡大
大西氏:そのノウハウを踏まえると、ビィ・フォアードは単なるEC企業というより、専門商社に近い印象を受ける。国ごとのローカライズはどこまで行っているのか。商慣習が日本と大きく異なる地域も多い。
土屋氏:私は実際に現地へ赴き、現地スタッフへのティーチングを行っていた。ローカライズの観点では、支払いに関する不安点の解消や、各国でパートナーとして業務委託しているエージェントの教育が主な業務だった。ユーザーから寄せられる課題をシステムに反映したり、サービスを現地語に対応させたりと、細かな調整を積み重ねてきた。
また、ECサイト上で各国に合わせた情報を提供している。たとえばタンザニアであれば、同国の顧客向けに売れ筋情報やローカルサービスの案内を掲載するなど、その国に特化した情報を用意。販促企画も国ごとの特性に合わせて設計している。

大西氏:非常に複雑で繊細な取り組みのように見える。
土屋氏:そのために、セールスもロジスティクスも国単位で管理・調整できる体制を整え、各国に適したビジネス仕様に組織を対応させている。私自身はデジタルマーケティングの施策に落とし込む役割だ。
大西氏:国ごとの商慣習は、その国のエキスパートと言えるようなキーパーソンが介在しなければ処理できない部分が多い。それを長年積み重ねてきたことこそがノウハウの蓄積につながっているということか。
土屋氏:一見デジタルに見える領域にも、アナログな要素は多く残っている。属人的な仕事も少なくないが、それが当社の強みでもある。デジタルだけでは実現できない領域を、人の力で補完している。
中古車海外販売の商流を変革
大西氏:ビィ・フォアードが中古車の越境輸出を始めたのは2004年。当時、日本から世界への中古車流通は一般的だったのか。
土屋氏:存在はしていたが、商流は現在とは大きく異なっていた。当時は日本の中古車をイラン人やパキスタン人がドバイへ運び、そこに世界中のバイヤーが買い付けに来るという流れだった。当時はリアルのオークションが中心だった。
ビィ・フォアードは中古車越境販売市場に参入した後、リアルのオークションの代わりにECサイトを活用した。そして、BtoCへ移行し、消費者へのダイレクトな販売を始めた。これにより、クルマをUAEへ運ぶ必要がなくなった。その後、海外への輸出は日本からの直行便が整備されていき、商流も変化していった。
大西氏:ビィ・フォアードが従前の商流を覆したとも言える。
土屋氏:海外に進出したのはそもそも、国内のように「すでに中古車販売の競合が多い市場で勝負しない」という経営層の判断もあった。実際にアフリカなどの海外で中古車越境ECを始めると、「お客さまからは非常に感謝され、お礼のメールも多く届き、大きなやりがいを感じた」――と社内では聞いている。
海外進出当時からの「一日でも早く顧客に商品を届ける」という姿勢は、今も変わらず追求している。
また、当社は、ECサイトを訪問するが購入はしない「冷やかし」も“ウエルカム”としている。これが海外から月間6000万PVを集められている理由の一つだ。見に来るだけで楽しい、情報に富んだサイトをめざしている。
大西氏:現在のECサイトの緻(ち)密なローカライズは、進出当時の思想を引き継いでいるからこそだろう。
売り上げ・販売台数は堅調に推移。今後は上場を計画
大西氏:現在のビィ・フォア―ドの実績と、今後予定している展開を教えてほしい。
土屋氏: EC事業の売上高は、2024年6月期に前期比9%増の1180億円となっている。売上高は同8.9%増の1,180億8,322万円、中古車の世界販売台数は同20.8%増の15.7万台だ。現在、ビィ・フォアードは上場の準備を進めている。
| ビィ・フォアードは2024年12月に決算月を6月から12月へ変更 。従来は7月1日から翌年6月30日までが事業年度だったが、決算・予算編成・業績管理などの効率化・強化などから事業年度を毎年1月1日から12月31日までとした。 2025年12月期の売上高は1609億4642万円。中古車の販売台数は19.0万台だった。 |
大西氏:取引の形態をBtoBからBtoCへと転換し、従来のビジネス常識を変えていった点は非常にイノベーティブであると思う。もっと多くの人にビィ・フォアードの存在を知ってほしい。「国境を越えて商売をしていく」後進の企業に向けて、メッセージをお願いしたい。
土屋氏:デジタルはもちろん重要だが、何より大事なのは常にお客さまのことを考える姿勢。デジタルが生活に深く浸透している時代だからこそ、お客さまの気持ちを忘れないことが、EC上のシステムやサービス改善にも生きてくると思う。
大西氏:「ネットショップ担当者アワード」は、EC業界で活躍する人を増やし、光を当てることを目的に開催している。最後に、前回受賞者としてエールをお願いしたい。
土屋氏:日々の業務に追われるなかで、自分が「EC事業」の一端を運営しているという意識を強く持てていない担当者もいるのではないかと思う。受賞することで、自分の取り組みを改めて認識できるし、「ECの運用をしっかりやれている」という自信にもつながる。それがモチベーションアップにもなるはずだ。推薦や立候補、授賞式への参加をぜひお薦めしたい。

