Amazonの配達員が「眼鏡」をかける理由。配達証明もハンズフリーで撮影、配送効率と安全性を高める「スマート配送グラス」とは
米Amazonは、配達員が配送情報を視界内で確認できる「スマート配送グラス」の展開を進めている。配達証明写真もハンズフリーで撮影でき、配送効率の向上と安全性の確保につなげる狙いだ。
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米Amazonは、配達員が配送情報を視界内で確認できる「スマート配送グラス」の展開を進めている。「スマート配送グラス」は、配達先までの案内や荷物情報、顧客の受け取り指示などを表示し、配達証明写真もハンズフリーで撮影できる眼鏡型デバイス。手元の端末を取り出して操作する手間を減らし、配送業務の効率化と安全性の向上を図る。2026年中に5000台のスマート配送グラスを展開し、2027年末までに2万台超への拡大をめざす。
Amazonによると従来、配達員は携帯型の配送端末で住所や配達指示を確認し、配達証明写真を撮影していた。スマート配送グラスは、こうした作業を視界内で支援するために開発したもの。荷物を持ちながら端末を操作する機会を減らし、前方や周囲に注意を向けやすくする狙いがある。

荷台から玄関先まで、配送作業を視界内で支援
スマート配送グラスは、配送車両を停車した直後から配達完了まで、一連の作業を支援する。眼鏡の内側にある小型ディスプレーが自動で起動し、配達先にひもづく荷物の数を表示する。荷札のバーコードを読み取ることで、正しい荷物を取り出せているかどうかも確認できる。

配達先へ向かう途中には、ナビゲーション情報や顧客の配達指示を視界内に表示する。ゲートの暗証番号や建物への立ち入り方法、希望する置き配場所などを、その場で確認できる。従来のように端末の画面を確認するために手を止めたり、視線を下げたりする機会を減らせる。

配送データに基づく注意喚起機能も備える。敷地内にペットがいる可能性がある場合は、肉球のアイコンと音声アラートで知らせる。また、荷物を置こうとしている場所が配達先住所と一致しない場合には、警告を表示する。
レンズは度付きに対応するほか、周囲の明るさに応じて色が変わる調光レンズも利用できる。屋外での使用や、配達員それぞれの視力に配慮した設計となっている。
配達証明写真もハンズフリーで撮影
EC・通販の配送では、荷物を届けたことを確認できる配達証明も重要だ。スマート配送グラスでは、配達員が端末を取り出して構えることなく、ハンズフリーで配達証明写真を撮影できる。

Amazonは、写真の撮影方法を変えながらも、荷物が届いたことを示す確認情報としての役割は維持する。端末操作の負担を減らすことで、配達完了までの作業をよりスムーズに進められるようにする。
「眼鏡」である理由は、手と視線を奪わないため
Amazonが眼鏡型デバイスを採用した理由は、配達に必要な情報を配達員の視界内に直接表示できる点にある。手は荷物の運搬に使い、目線は前方や周囲の安全確認に向けたまま、必要な情報を確認できる。
テストに参加した配達員は、スマート配送グラスについて「スマートフォンを見るために下を向く必要がなく、前方に意識を向け続けられるので、より安全に感じた」とコメントしているという。
配送現場では、歩行中の転倒や敷地内の段差、車両・歩行者との接触など、さまざまなリスクがある。情報を確認する際に視線や手を奪われにくいことは、作業効率だけでなく、安全面でも利点となる可能性がある。ただし、こうした効果はAmazonが掲げる狙いであり、事故の減少などを示す独立した検証結果とは区別する必要がある。
プライバシーに配慮、着用は任意でカメラ停止スイッチも搭載
カメラを搭載する眼鏡型デバイスでは、顧客や周囲の人のプライバシーへの配慮も課題となる。Amazonはスマート配送グラスについて、顧客と配達員双方のプライバシーを考慮して設計したとしている。
顧客に関する画像については、自動的に匿名化処理を施し、顔やナンバープレートなど、個人の識別につながる可能性がある情報を検知してぼかす。撮影するのは静止画のみで、動画や音声は記録しないという。
画像は暗号化し、配送品質の改善や誤配送の削減に必要な限られた担当者だけがアクセスできるようにする。一定期間が経過すると自動的に削除し、第三者が画像を処理・閲覧することもないとしている。
配達員に対しては、着用を任意としているほか、休憩中や昼食時などにカメラを停止できる専用のプライバシースイッチを搭載する。また、配送先間を車で移動している間は画像を撮影しない設計としている。
バッテリーや演算装置は配送ベスト側に分離
Amazonは2025年以降、300を超えるDSP(Delivery Service Partner、Amazon商品の配送を担う事業者)と数百人の配達員にスマート配送グラスを試用してもらい、改良を進めてきた。試作品以来、ソフトウェアとハードウェアの両方に数百回のアップデートを加えているという。
配達員からのフィードバックを受け、演算装置やバッテリーを眼鏡本体から分離し、配送ベストに装着する小型コントローラー側に移した。長時間着用する際の負担を軽減するためだという。

コントローラーには交換式バッテリーのほか、緊急ボタンも搭載する。たとえば、配達先の敷地内で放し飼いの犬に遭遇した場合など、予期しない事態への対応も想定している。
2026年に5000台、2027年末までに2万台超を目標
米Amazonは2026年中に5000台のスマート配送グラスを展開し、2027年末までに2万台超へ拡大する目標を掲げている。配送現場の安全性と効率性を高める技術の1つとして、今後も開発と導入を進める方針だ。
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