カゴ落ち率を改善する3ステップ・アクションプラン。広告費を増やす前にふさぐべき、ECサイト最後のバケツの穴「決済承認率」改善方法

決済承認率の低下は、購入意欲の高い顧客を最後の決済画面で取りこぼす“見えにくい機会損失”だ。GMO-PGの「承認率可視化オプション」を軸に、3Dセキュア必須化後に重要性が増す決済改善の考え方と、売り上げを守るための3ステップを整理する。

鳥栖 剛[執筆], 吉田 浩章[撮影]

8:00

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広告費の高騰などで重要性がさらに高まっているカゴ落ち対策。そのカゴ落ち対策で見落とされがちな視点がある。それが、決済画面で起きる“最後の離脱”だ。GMOペイメントゲートウェイ(GMO-PG)の財津拓郎部長(インダストリーソリューション本部 第1営業統括部 ビジネス企画部)は、商品を選び、配送先の入力まで終えた購入意欲の高い顧客が、決済エラーや本人認証の途中離脱によって取りこぼされている状況を「ECサイト最後のバケツの穴」と表現。

こうした「サイレントカゴ落ち(=決済失敗による離脱)」を防ぐには、決済承認率を可視化し、原因を特定したうえで改善策を講じることが重要になる。GMO-PGが提供を始めた「承認率可視化オプション」を軸に、売り上げの機会損失を防ぐ3ステップを整理する。

GMOペイメントゲートウェイのインダストリーソリューション本部 第1営業統括部 ビジネス企画部 財津拓郎部長

カゴ落ち対策をしても売り上げが伸びない。その裏に「決済画面の離脱」

EC事業者にとって、集客効率の悪化は大きな経営課題となっている。

「オンライン広告費(CPA)が高騰していて、集客コストのROI(投資対効果)をこれ以上高めるのが難しい」「入力フォーム改善(EFO)やカートの離脱防止策など、一般的なカゴ落ち対策はやり尽くしたはずなのに、売り上げが伸び悩んでいる」――。こうした事業者の声は少なくない。

集客した訪問者を1人でも多く商品購入につなげるためのカゴ落ち対策は、EC事業者の永遠の課題。カート周辺や購入導線などUI/UXの改善に多くの投資が行われてきた一方で、こうした施策を重ねても、最後の決済完了率が想定ほど伸びないケースがある。

そんな課題や悩みを抱える事業者に着目してほしい指標が「決済承認率」だ。クレジットカード決済において、ユーザーが購入ボタンを押した後の3Dセキュア(本人認証)なども含め、最終的に取引が成立に至った割合を指す。

決済画面まで到達した顧客は、商品を選び、購入意思を固めている可能性が高い。そのため、ここで決済エラーや認証途中の離脱が発生すると、集客やカート改善にかけた投資が水泡に帰してしまう。

どれだけ広告費を投じて優秀な顧客を集めても、どれだけカートの手前でおもてなしをしても、最後の決済画面で離脱が起きていれば、購入意欲の高いお客さまを取りこぼす機会損失となってしまいます。まさに穴の空いたバケツで水をくんでいる状態です。(GMO-PG 財津部長)

GMOペイメントゲートウェイのインダストリーソリューション本部 第1営業統括部 ビジネス企画部 財津拓郎部長
GMOペイメントゲートウェイのインダストリーソリューション本部
第1営業統括部 ビジネス企画部 財津拓郎部長

「3Dセキュア」の導入で増える新たな摩擦

背景の1つとしてあげられるのが、「EMV 3-Dセキュア(3Dセキュア2.0)」原則必須化以降の変化だ。

クレジットカード不正利用被害が深刻化するなか、クレジット取引セキュリティ対策協議会は「クレジットカード・セキュリティガイドライン」を改訂。2025年3月末までに、全EC加盟店でワンタイムパスワードなどの動的認証を含む「3Dセキュア2.0」の導入が原則必須となった。

「3Dセキュア2.0」はクレジットカードの不正利用を防ぐ上で重要な仕組みだが、EC事業者にとっては新たな摩擦点にもなり得る。購入者は決済時に追加認証やワンタイムパスワードの入力を求められる場合があり、「認証方法がわからない」「入力を面倒に感じる」「スマートフォンでの操作中に離脱してしまう」といったケースにつながる可能性がある。

さらに、認証画面での離脱だけが問題ではない。「3Dセキュア2.0」を通過した後も、オーソリ(与信承認)の段階でカード会社側の判断によって決済が承認されないケースがある。

つまり、EC事業者にとっては「『3Dセキュア2.0』を導入すれば終わり」ではなく、セキュリティを強化しながら、真正なユーザーの購買体験をどう維持するかが新たな課題になっている。

「3Dセキュア2.0」の原則必須化以降、「カゴ落ちが増えた気がする」「承認率が下がっているようだが、原因がわからない」といった声が高まっています。(財津部長)

「3Dセキュア2.0」を通過した場合の決済完了までのイメージ
「3Dセキュア2.0」を通過した場合の決済完了までのイメージ

なぜ決済画面で「サイレントカゴ落ち」が起きるのか、その対策法

決済画面での離脱が厄介なのは、原因が表面化しにくいことだ。

ユーザーが購入を完了しなかったこと自体は把握できても、それが「3Dセキュア2.0」の認証途中なのか、カード会社による承認NGなのか、特定の時間帯や金額帯に集中しているのかまでは、加盟店側から見えにくい。背景には、EC事業者が抱える「守り」と「攻め」のジレンマもある。

しかし、クレジットカードの不正利用やチャージバックへの対応は欠かせない。一方、セキュリティ対策を強化しすぎると、本来は問題なく購入できる真正ユーザーまで弾いてしまうセキュリティ対策の「過干渉」が起こる可能性がある。

さらに、クレジットカードの承認にはカード発行会社ごとの基準や傾向があり、「3Dセキュア2.0」の認証を通過していても、その後のオーソリでNGとなるケースもある。こうした状況から、「承認率が落ちている気がするが、どこに手を打てばいいのかわからない」という状態に陥りやすいという。

不正利用対策を厳しくするほど、安全性は高まります。ただ、その反面、本来は問題なく購入できるはずの真正ユーザーまで弾いてしまうケースが出てきます。このバランスをどう取るかが、いま多くのEC事業者にとって大きなテーマになっています。(財津部長)

だからこそ、決済改善の第一歩は、感覚論ではなく「どこで何が起きているのか」を可視化することになる。

STEP 1:決済状況を可視化し、機会損失の発生箇所を知る

GMO-PGが2026年7月28日に提供を始めた「承認率可視化オプション」は、こうした決済の課題を解決するためのサービスだ。オンライン総合決済サービス「PGマルチペイメントサービス」でクレジットカード決済を利用する加盟店向けにオプションとして提供。承認率や「3Dセキュア2.0」の認証状況を管理画面上で可視化する。

承認率や3Dセキュアの認証状況を管理画面上で可視化
承認率や3Dセキュアの認証状況を管理画面上で可視化

特長は、新たなシステム開発が不要な点だ。「PGマルチペイメントサービス」の加盟店であれば、無料版はショップ管理画面から申し込むと利用できる。なお、詳細な分析ができる有料版は別途手続きが必要。

無料版で4指標を確認

無料版では、次の4つの指標を確認できる。

  1. 承認率
  2. 3Dセキュア認証適用率
  3. チャレンジ認証発生率
  4. 3Dセキュア離脱率
「承認率可視化オプション」の無料版の画面イメージ(数値はダミー)
「承認率可視化オプション」の無料版の画面イメージ(数値はダミー)

これらを見ることで、「想定より承認率が低い」「『3Dセキュア2.0』での離脱が多い」といった状況を把握できる。

GMO-PGによると、加盟店からの要望もありサービス化したもので、すでに300以上の加盟店が無料版を利用しているという。

これまで加盟店さまは、決済エラーが増えている感覚はあっても、その原因を定量的に把握しにくい状況でした。まずは無料版で、自社の決済状況を知ってもらうことが出発点になります。(財津部長)

有料版では時間帯やカード会社別などで分析可能

より詳しい分析ができる有料版は、月額1万円(税抜、1店舗あたり)、初期費用0円。

月次、日次、時間帯、決済金額帯、イシュア別、3Dセキュア実施有無、エラーコード別などの切り口で承認率を分析できる。加えて、3Dセキュアの利用状況や認証結果、各プロセスでの離脱状況も確認できるのだ。

「承認率可視化オプション」の有料版の画面イメージ(数値はダミー)
「承認率可視化オプション」の有料版の画面イメージ(数値はダミー)

無料版から有料版へ切り替える加盟店も出てきているという。

たとえば、深夜帯だけ承認率が落ちていないか、高額決済に失敗が偏っていないか、特定のカード会社だけエラー率が高くないか――。こうした切り口で分析することで、「何となく失敗が増えた」という感覚を、「どこで失敗しているのか」という具体的な課題に可視化できるのだ。

STEP 2:データを基に決済改善を打つ

原因を特定したら、次は具体的な改善策を講じる。

「3Dセキュア」運用を最適化し、真正ユーザーを通しやすくする

すべての取引に一律で厳しい認証をかけるのではなく、リスクに応じて認証の強度を変える考え方が重要になる。

GMO-PGでは、不正検知サービス「Forter (フォーター)」との連携により、不審な取引には追加認証をかけ、安全性の高い取引はスムーズに通す運用を支援している。これにより、「不正は防ぎたいが、通常顧客まで止めたくない」という課題に対応しやすくなる。

GMO-PGによると、「承認率可視化オプション」のプレ導入段階の事例では、可視化したデータを基に「Forter」などの具体的な対策を講じた国内導入企業では決済承認率が平均10ポイント改善した実績があり、旅行会社で約22億円、ユーティリティ企業で約10億円、小売企業で約4億円の売上向上といった大幅改善につながった事例もあるとしている。

「承認率可視化オプション」の利用想定シーンの例
「承認率可視化オプション」の利用想定シーンの例

決済失敗時のUIを見直し、代替決済へ誘導する

もう1つ重要なのが、決済エラーが発生した際の顧客対応だ。

カードの利用限度額やカード会社側の判断など、一定数の決済失敗は避けられない。その際、「決済に失敗しました」とだけ表示して終わるUIでは、顧客がそのまま離脱する可能性がある。

エラー発生時には、状況をわかりやすく案内するとともに、別のクレジットカードや他の決済手段へスムーズに切り替えられる導線を用意することも有効だ。

たとえば、「楽天ペイ」「PayPay」「Amazon Pay」「後払い」など複数の決済手段をすぐに選択できるようにしておけば、購入意欲の高い顧客を別の手段で救済できる可能性がある。

STEP 3:「不正対策」と「売り上げ向上」の最適バランスを探る

決済改善は、一度設定して終わりではない。

不正対策を強化すれば承認率が下がる可能性がある一方、通しやすさを優先しすぎれば不正リスクが高まる。重要なのは、承認率や不正抑止の状況を継続的に確認し、自社にとっての最適なバランスを探ることだ。

改善前後で承認率や「3Dセキュア2.0」の離脱率がどう変化したかを比較し、仮説を立て、施策を実施し、再度測定する。こうしたPDCAを回すことで、不正を抑止しながら、真正ユーザーの購入機会を最大化する運用をめざせる。

言い換えれば、めざすべきは「不正を100%防ぐこと」だけではない。防御を極端に優先して売り上げが落ちれば、事業としての収益性にも影響する。逆に売り上げだけを優先して不正被害を拡大させても、健全なEC運営とはいえない。

承認率、3Dセキュア離脱率、不正抑止のバランスを見ながら、自社にとって最も収益性の高い決済運用を探ることが重要になる。

ツール提供にとどまらず、改善まで伴走

なお、GMO-PGはツールの提供だけではなく、加盟店の改善を支援する体制も整えている。

200人以上の営業担当者が加盟店とデータを確認しながら、業界水準との比較や改善余地を加盟店と協議し、必要に応じたカード会社への交渉・相談までサポートする。

「承認率可視化オプション」を活用した決済承認率改善に向けたフローのイメージ
「承認率可視化オプション」を活用した決済承認率改善に向けたフローのイメージ

決済代行会社が単に決済インフラを提供するだけでなく、承認率の改善や売り上げ拡大まで支援する姿勢が特長といえる。

このオプション単体で収益を上げるというより、加盟店さまに課題を把握してもらい、承認率改善を通じて売り上げを伸ばせる環境を作るのが目的です。加盟店さまの成長が、結果として私たちの成長にもつながります。(財津部長)

GMOペイメントゲートウェイのインダストリーソリューション本部 第1営業統括部 ビジネス企画部 財津拓郎部長

決済は「コスト」ではなく、売り上げを守る投資

EC事業者にとって決済は、これまで「手数料をどう抑えるか」といったコストの文脈で語られることも多かった。

しかし、決済承認率を可視化し、購入直前の離脱を減らす取り組みは、追加の広告費をかけずに売り上げ機会を増やす施策になり得る。

対象となるのは、新規集客によってこれから購入を検討するユーザーではなく、すでに商品を選び、購入意思を固め、決済直前まで進んだ顧客だ。ここで発生している離脱を減らせれば、同じ集客コストのまま売り上げを押し上げることが可能になる。

広告投資の効率を高める意味でも、決済画面まで含めた購入導線の改善は、後回しにできないテーマと言える。

広告費を増やす前に、まず最後のバケツの穴をふさぐ――。 ECの成長を支えるうえで、決済承認率を「見えない指標」のままにせず、可視化して改善につなげることが、売り上げ機会の最大化につながるはずだ。

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