平均ROAS256%を叩き出す広告運用の鉄則。キーワード設計からP-Max活用まで、顧客ニーズ起点で成果を最大化する設計思想とは?
D2Cエキスパート協会認定スペシャリストが、Google広告で単月平均ROAS256%を出している運用フローを公開
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広告運用を自社で行うべきか、代理店に任せるべきか。多くの企業が一度は直面する悩みだ。代理店に依頼すると、キーワードや訴求は一通りそろうものの、無難で平均的な表現に落ち着き、強い印象を残せないケースも少なくない。また、その設計は売り手目線になりがちで、広告の受け手から見ると「自分には関係のない売り込み文句」=「ノイズ」と感じられてしまう。
広告運用の代行や、インハウスでの伴奏支援を手掛けるD2Cエキスパート協会認定スペシャリストの川部篤史氏は、「顧客目線」の広告運用を提唱する。ノイズになりかねない売り込み文句を流し続けるのではなく、必要な人に有益な情報として配信される広告を実現するにはどうしたら良いのか。川部氏の「Google広告で単月平均ROAS256%を出している運用フロー」を公開する。

広告運用の3つのステップと事前準備の重要性
広告運用は大きく分けて3つのステップで構成される。
- [第1段階]事前準備……商品に関するキーワードを精査する
- [第2段階]検索広告……選んだキーワードで検索連動型広告を実施する
- [第3段階]ディスプレイ広告や動画広告……P-Maxへ展開する
はじめから画像や動画に着手せず、まずテキストから始めるのは、テキストだけでテストを重ね、良いパーツ(コピー)を選んだうえで画像や動画に広げていけば、無駄をおさえられるからだ。
広告を運用する人は、前提条件として「製品を本当に深く理解しているか」「ちゃんとお客さまに伝えられるだけの理解ができているか」ということも当然持っておく必要がある。深い製品理解という土台があるうえで、この3つの段階がある。
最も重要なのが、第1段階の事前準備。事前準備において顧客が「何をしたいのか」「何に困っているのか」を深く考え、そのニーズから生まれるさまざまな要素を、キーワードセットとしてグルーピングしていく。顧客のニーズを想像し、共感する力が必要な作業だ。(川部氏)
D2Cエキスパート協会 認定スペシャリスト 川部篤史氏
[第1段階]事前準備
キーワード選定のコツ
最初に行うのは、広告を出稿しようとしている商品やサービスについて、その優位性を整理することだ。顧客のニーズは「○○したい」という言葉で言語化できるため、まずはその「したい」という欲求を明確にしたうえで、そのニーズに対して自社の商品がどのようなベネフィットを提供できるのかへと転換することが重要である。
次に明確にしたいのが、自社商品独自の強み、価値、いわゆるUSP(Unique Selling Proposition)である。同じカテゴリーに属する競合商品と比較し、対象の商品がどこで優れているのかを整理する。競合との差別化ポイントや、模倣されにくい切り口、これらを踏まえたうえで行うテキストワークやコピー設計が、広告の質を大きく左右する。
改めて問うべきは、「この商品は本当に顧客に価値があるのか」という点。自社が売りたいだけになっていないか、他社製品のほうが顧客に適していないかの視点も欠かせない。疑問が残るなら広告以前に商品の課題に立ち返る必要がある。(川部氏)
キーワード選定に有効な「3つの軸」
次に、ユーザーがどのような言葉で検索してくるのかを想定してリストアップする。キーワードは大きく3つの軸で考えると広げやすい。例として「体温を逃がさず、遠赤外線と輻射熱でじんわりと優しく温める女性用の冬用ショーツ」を用いる。
- 解決軸……この商品がどのような課題を解決するのかという視点だ。今回の例であれば、「お腹が冷える」という悩みに対して「温める」という解決策が該当する。
- 解決手段・メカニズム軸……どのような仕組みや成分で課題を解決するのかという観点でキーワードを選ぶ。今回であれば、「輻射熱」「遠赤外線」といった要素が該当する。また今回の例の場合、「腹巻き」でも同じ課題を解決できる。しかし、腹巻よりもこの商品の方が目立たないため、「腹巻き」で検索した人にも訴求できる――こうした柔軟な視点からもキーワードは広がっていく。
- 解決後ベネフィット軸……課題が解決されて何が得られるのかという視点だ。「冷え知らずのお腹」「冬でも外出が苦にならない」といった表現が考えられ「お腹が冷える」という課題に対するキーワードセットは多角的に展開できる。
選んだキーワードを整理する方法
「お腹が冷える」に近い言葉として、「腹冷え」「腰が冷える」なども浮かぶ。ただし、「痛い」「下痢」といった症状系のワードは薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に抵触する可能性がある。表現の工夫次第で扱える場合もあるが、最初から切り捨てる判断も必要だ。特に「下痢」のような表現は、検索ボリュームが大きくても対象外にする。
「お腹」と「おなか」には漢字表記とひらがな表記が存在する。キーワードプランナーで調査し、両方に一定の需要がある場合は分けて扱ったほうが良いが、片方の割合が多い場合は、同一のワードセットとしてまとめて処理する。また、たとえば「胃が冷える」のように、キーワードプランナーが提示する類似語のなかで、課題やニーズが異なるものは除外する。語順の違いも同一に扱わないほうが良い。「おなかが冷える」と「冷えるおなか」は別のキーワードとして存在するため、個別に管理する。
このように、似たニーズ、似た表現で構成された30個から50個程度のキーワードセットを作り、広告セットを作っていく。
こういったグループ分けは、一度は手作業で行い体感しておくと良い。慣れてくれば生成AIを用いることもできるが、2026年7月現在では、AI利用はその制度において、個人の使い込み方、環境によってばらつきが生じるのも事実である。ただ工数削減の観点ではやはり有効な手段であり、そのクオリティも今後さらに高まることは疑いようもない。最終的にはAIを活用することも選択肢になる。(川部氏)
Google広告の「自動最適化オプション」には注意が必要だ。意図的に細かく分けたキーワードが自動で統合されてしまい、最適化精度が下がる可能性があるためだ。「アカウント設定」から「自働適用の設定に移動」をクリックし、「重複するキーワードを削除しましょう」のチェックを外しておく。
[第2段階]検索広告
Google広告の初期設定とコピーワーク
実際の広告運用は、まずGoogle広告で検索連動型のテキスト広告から開始する。実際の設定の手順についてポイントを整理していく。
アカウント設定
- キャンペーン名……「どの広告タイプで」「どの商品を」「どの文脈/キーワードグループで運用しているか」が一目でわかると社内共有が進めやすい。
- 入札と最適化方針……基本はコンバージョン数の最大化から始め、データが溜まった段階でコンバージョン値やROAS(Return On Advertising Spend/広告費用対効果)最適化へ移行する。目標単価は、獲得単価や成果が収束してきてから平均値や事業目標をもとに設定するのが合理的だ。ただし、立ち上げ直後でトラフィックが極端に少ない場合はクリック数を目標にする。
- 配信ネットワーク……初期段階ではディスプレイ配信をオフに。初動が見定まってから対応すると無駄がない。
- 地域と言語設定……国内向け商材の場合は、単に「日本」を指定するのではなく「所在地」を指定し、意図しない無駄な配信リスクを防ぐ。言語は「日本語」を指定する。
- AI最大化設定……オフにする。
AI機能を利用しない理由は2つある。1つは薬機法などに抵触する表現が自動生成されるリスクがあること。もう1つは、ブランド表現を自動生成にゆだねたくないという判断だ。(川部氏)
広告見出しと説明文
広告グループには先に用意した30組〜50組のキーワードセットを設定し、ランディングページ(LP)のURLを入力し、Googleが認識するテーマと乖離がないかをチェックする。この段階で「source」「medium」「campaign」の3項目のUTMタグを設定しておく。
では広告見出しはどう書くか。広告見出しは最大15個で、この枠をどう使うかが成果を大きく左右する。次の観点から作成する。
- キーワードベース……事前に作成したキーワードセットを、できる限り見出し文のなかに自然に含める。Googleの設定画面上で「一致している(関連性が高い)」状態をめざす。
- USPベース……商品の独自の価値や解決方法を伝える。機能、仕組み、使用感、他社との違いなど、角度の違う切り口を意識して枠を埋めていく。
まずはキーワードベースで枠を埋め、USPベースで残りを調整する。見出しが決まったら次は説明文だ。見出しで興味を持ったユーザーに対し、より納得感を与える補足情報を書き、どの説明文が最も成果につながるかをチェックしていく。
ここまで作り込むと、最適化スコアが十分に高くなり、Googleから「ユーザーに有益な情報を届けている」と評価される。CTR(クリック率)が向上し、CPC(クリック単価)やCPA(獲得単価)の改善が期待できるようになるはずだ。
テキスト広告で良い成果が出たものには画像を追加する。検索広告ではサイズ違いを含めて最大20セットまで登録できるが、1画像につき横長、スクエア、縦長の3サイズを用意し、それを3パターン程度用意できれば十分だ。管理画面上でトリミングも可能なため、最初から大きめの画角で画像を用意し、管理画面で切り出しても問題ない。Googleが提供する無料画像素材や、社内ポリシー上問題がなければ生成AIの画像も活用できる。
[第3段階]ディスプレイ広告や動画広告
P-Maxへの展開方法
P-Max(Performance Max)はGoogle広告の自動化キャンペーンで、検索、YouTube、ディスプレイ、Gmailなど、Googleのすべての広告枠に配信できる。検索広告で使用したアセットをほぼ流用できるため、検索広告である程度の成果が出たら、その構成を引き継いでP-Maxに展開する。P-Max運用のポイントは次の通りだ。
- キャンペーン設定……検索広告と同様の考え方で良いが、検索広告で使用できた「所在地指定」がP-Maxでは初期設定時に使えないため公開後に追加調整する。
- アセットの生成……Google AIにアセットの生成を任せることを促されるが、やはり意図しない表現によるリスクがあるのでオフにする。
- リスティンググループ(商品グループ)……対象商品以外に配信されないよう必ず絞り込みを行う。カスタムラベルは最大5つまで設定可能なため、「主力商品」「セール対象品」など目的別にラベルを分けて管理すると運用しやすい。
- アセット……広告見出しセットは最大15個で、検索広告と同じ内容をそのまま使用して良いが、P-Maxでは新たに長い広告見出しを作成する必要がある。元の全角15文字の広告見出しを組み合わせて作るとよいだろう。説明文と画像は検索広告と同じ素材を使用できる。
- 動画……最低1本必要。画像から自動生成できるスライド動画も使用可能だが、横長、スクエア、縦長の動画を用意するのが望ましい。動画はYouTubeに限定公開でアップロードし、そのURLを指定する。
- シグナル設定……「検索テーマ」に検索広告で使用したキーワードセットをそのまま登録する。最大50組まで入力できるため、最初から50組で設計しておくと無駄がない。
- 予算……無理に高く設定する必要はない。1日1000円程度から開始し、成果を見ながら徐々に増額する。
検索広告とP-Maxを同じ粒度で連携させれば、相乗効果で20%前後の効率改善が見込める。運用上はP-Max側にコンバージョンが寄りがちだが、検索広告と合算したROASで評価すれば問題ない。(川部氏)

そして、さらなる潜在層までリーチするために、「デマンドジェネレーション(画像・動画に特化型したGoogleの広告メニュー)」も利用できれば、より太く強い広告セットに育てられるが、検索広告とP-Maxだけでも、十分に収益性の高い構成は作れる。
シンプルな判断がデイリー運用のポイント
キャンペーンが走り出した後、どのような指標をチェックするべきなのだろうか。川部氏は「デイリーでは実際に見る指標は多くない。基本的にはCTRとROASを確認し、調子が良ければ日予算を増やし、悪ければ日予算を下げる。現実的には、全体をしっかり確認するのは週1回程度」と語る。
CTRは最低でも1%以上を基準とする。2%を超えれば合格ライン、3%以上で優秀、5%以上ならかなり優秀と考えるが、「悩み系商材」の場合、ニーズを絞り込むと、場合によっては10%超えも珍しくない。
ROASの目標は企業ごとの収益構造によって異なる。妥当な目安としては定期購入商材で100%以上、単発商材で300%前後である。CPCは平均すると50円以下に収まるケースが多いが、競争の激しいキーワードでは高止まりすることもある。ただしROAS目標がクリアしているのならCPCが高くても許容範囲と考える。
広告運用の内製化は、コスト削減やスピード向上だけが目的ではない。顧客の課題に向き合い、考え抜いてクリエイティブにこだわり、検証するプロセスそのものが企業の資産になる。(川部氏)
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