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AI時代の小売・EC業界を生き抜く道――ecbeing林社長が明かす「エージェンティックコマース」による未来とデータ統合の重要性

AIの急速な進化がEC業界に過去最大のパラダイムシフトをもたらしている。ecbeing林雅也社長へのインタビューを通じ、エージェンティックコマースの本質、文脈検索、一次データの重要性などをお伝えします。

ネットショップ担当者フォーラム編集部[執筆]

7:00

AIの急速な進化は、EC業界に30年で最大の変革をもたらしている。従来の「キーワード検索」から「対話・文脈検索」へのシフトが進むなか、EC事業者は単なる見せ方のテクニックではなく、「自社が何のために存在し、どのような価値を提供するのか」という商売の本質をさらに求められるようになる可能性が高い。EC黎明(れいめい)期からECサイト構築パッケージを提供してきたecbeingの林雅也社長に、エージェンティックコマース時代に求められるECビジネスについて聞いた。

ecbeingの林雅也社長
ecbeingの林雅也社長

30年間のEC史で最大のパラダイムシフト――「1年の変化が3か月で起きる」

1997年にインターネット通販をスタート、1999年にECサイト構築パッケージの提供をスタートし、EC黎明期から約30年に渡ってEC業界の第一線を走り続けてきたecbeing。林雅也社長の目には、現在のAI革命が過去のどの技術革新よりも巨大で急速な波として映っている。

これまでもEC業界には大きな変革期が存在した。Windows 95の登場によるインターネット通販の始まり、Googleの普及に伴うWeb 2.0とデジタルマーケティングの広がり、そしてiPhoneの登場によるモバイル化とネット・リアルの融合(オムニチャネル)――。しかし、林社長は現在のAIによる波の質的な違いをこう指摘する。

過去のイノベーションは国民全体に浸透するまでに一定の時間を要しました。しかし、現在の生成AIは開発と動きのスピードが圧倒的です。従来であれば1年かかっていたようなビジネスの変化やシステム開発の動きが、わずか3か月で起きてしまう。それほどの激しさを感じています。

実際に運営側の現場では、カスタマーサポート(CS)の問い合わせ対応、コンテンツ制作、調査・リサーチ業務などにおいて、AIを活用した劇的な業務効率化が浸透中。運営者が作業コスト削減の恩恵を実感する一方で、いよいよ本丸である「生活者の買い方や体験の変化」というビジネスインパクトのフェーズへと移っている。

アマゾンエフェクトの再来か? 「淘汰」ではなく「2極化」するEC市場

AI時代の波に対し、業界内には「AIに飲み込まれ、淘汰される事業者が増えるのではないか」という懸念もある。この問いに対し、林社長は10年前に叫ばれた「アマゾンエフェクト」を振り返る。

当時、「すべての店舗がAmazonに飲み込まれて消滅する」といった極端な議論があった。しかし淘汰されたのは立地や利便性だけに依存し、顧客に選ばれる理由をつくれなかったビジネスモデルであり、独自の体験や専門性を提供する企業は、リアルとネットを掛け合わせ、成長を遂げている。

林社長は、今回のAI革命においても市場は単純に淘汰されるのではなく、明確に「2極化」すると説明する。

Amazonエフェクトの時と同様に、AI時代でも「便利さ」や「自動補充」を追求する世界と、「豊かな顧客体験やエンターテインメント」を享受する世界の2極化が進むでしょう。単にテクニカルなSEOや見せ方の工夫だけで差別化しようとする時代は終わりました。自社が一体何のために存在し、顧客にどんな本質的価値や世界観を提供するのかを問い直さなければ、同質化の罠に陥ってしまいます。

林社長がたとえに出したのが、「よなよなエール」。商品をネットで販売するだけでなく、醸造所でつくり手の想いやビールづくりを体感できる見学ツアーや、ファンが集うイベントなどを通じて、ブランドの世界観そのものを体験にしている。商品の機能や価格だけでは伝えきれない「好きになる理由」を、リアルな体験とデジタル上の発信・購買をつなぐことで育て、強いファンとの関係をつくっている。

自社ECにおいても、こうした独自の「世界観」を提示できるかどうかが生き残りの境界線となるという。

本来のエージェンティックコマースとは――単なる「購買代行」を超えた代理人

現在、EC業界で注目を集める「エージェンティックコマース」だが、林社長はその概念に潜む「誤解」を指摘する。

多くの人が思い描くエージェンティックコマースは、日用品が切れそうになったら勝手に注文してくれるような「お買い物代行(タスク補給)」。しかし、林社長は「エージェントの真の意味」について次のように説明する。

本来、エージェントとはスポーツ選手の交渉人や人材エージェントのように、依頼主自身もまだ気づいていない潜在ニーズや意図を汲み取り、プロとして提案・交渉してくれる「代理人」のこと。休日のお買い物は単なる義務や労働ではなく、楽しむためのエンターテインメントであり「コト消費」です。顧客に寄り添い、対話を通じて新しい発見や価値を届けることこそが、本来めざすべきエージェンティックコマースの姿なのです。

「ChatGPT」や「Gemini」といった外部AIプラットフォームを1つの流入・購買チャネルとして活用し、顧客に便利に買ってもらう施策は必要であろう。それと同時に、自社ECサイト自体を、顧客の好みに寄り添い買い物を楽しくする“プロのエージェント”として機能させることが必要だと林社長は指摘する。

「キーワード検索」の終焉――感性訴求と「文脈(コンテキスト)検索」への進化

では、自社ECサイトでエージェンティックな体験を実現するには何が必要なのか。林社長は「検索行動の構造的変化」をあげる。

従来のECサイトは「Tシャツ」「赤 ニット」といった単一の「キーワード検索」に依存してきた。しかし、実際の店舗で顧客が接客を受ける際、いきなり単語だけを会話をする人はいない。「近々イベントがあるけれど、どんなコーディネートが良いか」「普段着ない色に挑戦したい」といったストーリーや対話から会話が始まる。

生成AIの普及により、生活者は「文脈(コンテキスト)」で相談し、答えを得る便利さに急速に慣れ親しんでいます。自社ECにおいても、単なるキーワードマッチングではなく、顧客の文脈や背景を理解した接客や提案を展開しなければなりません。

さらに、「Instagram」や「TikTok」のように、AIがユーザーの好みに合わせた画像を最適なタイミングで提示し、感性に直接働きかけるUXも定着している。文章によるスペック検索から、感性訴求と「対話・文脈検索」へのシフトに対応することが、AI時代に選ばれるECサイトの必須条件となるという。

AI時代の「一次データ」の重要性とシステム選び

高度な文脈検索やパーソナライズ接客を実現する上で、最大の鍵となるのが「データ」である。しかし、多くの企業では部署ごとの縦割り構造がデータの壁となり、顧客体験を分断させている。

林社長は、商品企画、コーポレート、店舗、コールセンターなど、企業内のあらゆる部門に眠る「一次データ(自社固有のデータ)」を一元的に蓄積・統合することが重要だと訴える。

ネット上の情報を集めただけの二次データでは、どの企業も同じ答えに行き着き、同質化してしまいます。自社の商品開発コンセプト、店舗スタッフが持つ接客のナレッジや暗黙知、コールセンターに寄せられる生の会話データ、レビューなど、自社だけの「一次データ」を集約してAIに学習させなければ、質の高い文脈回答は作れません。

たとえば、店舗スタッフの日報入力も、AIとの音声対話によって現場の負担なく生のナレッジとして回収・蓄積できるようになっている。ecbeingであれば、収集したデータはマーケティング・分析ツール「Sechstant(ゼクスタント)」で活用することが可能。従来、データサイエンティストが時間をかけて作成していた顧客セグメンテーションや仮説検証のレポートが、AIとの対話によってわずか数分で出力できる。単なるデータの集計作業から解放されたマーケターは、ロイヤルカスタマー戦略や施策の意思決定に集中できるようになる。

「Sechstant」のイメージ
「Sechstant」のイメージ

ただ、こうした施策を行うにはシステム基盤も重要になる。ecbeingでは、カスタマイズ自由度の高いパッケージ「ecbeing」を「持ち家(マイホーム)」、迅速導入が可能なSaaS版のECサイト構築パッケージ「メルカート」を「分譲マンション」に例えている。

従来のパッケージ開発は、独自の世界観や高度な差別化を実現できる反面、構築に時間とコストがかかる点が課題でした。しかし、ecbeingが全面的に推進する「AI駆動開発」により、開発スピードとコスト構造が劇的に変化しています。これまでコストの制約で諦めていた独自世界観の構築が、より多くの事業者で実現可能になっています。

大切なのは「システムで何を実現したいのか」という要件定義です。ecbeingグループでは、店舗予約、アプリ、チャットボット、レビュー、データ分析まで一元的にデータを統合できるプラットフォームを擁し、専門スタッフが戦略的パートナーとして伴走します。AI時代の激変期だからこそ、事業者の皆さまと共に本質的な価値を創造してまいります。

ecbeingグループにおけるAI時代の支援イメージ
ecbeingグループにおけるAI時代の支援イメージ
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