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トイザらス、ジュピターショップチャンネル、三越伊勢丹の3社において、大規模EC・オムニチャネルの事業責任者として長らく通販・EC業界に携わってきた中島郁氏。今後、コンサルタント(ネクトラス株式会社 代表取締役)として、新規事業立上げや急成長ビジネスの企業支援や後身の育成を行っていくという。

なかでも、事業責任者を大規模ECサイト3社で経験した知見を今後の通販・EC業界に伝えるため、中島氏はネットショップ担当者フォーラムで新連載「EC部長が担当者に読んでもらいたいこと」を8月末にスタートする。連載スタート前、中島氏にこれからのこと、これまで携わってきたことなどをインタビューした。

ネクトラス株式会社 代表取締役 中島郁氏
中島郁(なかしま・かおる)ネクトラス株式会社 代表取締役。トイザらスのマーケティング部門や米国直轄のEC専業法人の立ち上げ、ジュピターショップチャンネルで執行役員本部長(EC、テレビ編成、マーケティング)、世界最大のECサービス企業GSI Commerce(eBay Enterprise)アジア太平洋担当副社長兼日本法人社長、三越伊勢丹で役員兼WEB事業部長などを歴任し、2017年3月に退任した。

――2012年からかかわっていた三越伊勢丹のすべての役職をすべて退任(2017年3月)しました。今後、企業支援やコンサルティングなどに携わっていくそうですね。

私が携わってきたのは、企業の新規事業や急成長事業のマネジメント、その中でも「eコマース」「メディア」といった分野が多い。これまでの経験を踏まえて、サービス業といった事業会社のお手伝いをしたいと思っています。

これまで小売企業やEC実施企業の方からさまざまな相談を受けてきました。「リアル店舗とECの関係をどうしたらよいのか」「オムニチャネルはどうすれば実現できるか」といった戦略や体制づくりの内容が多いですね。

EC、オムニチャネルの事業責任者などの経験や相談内容を含めて、企業の大きな課題の1つは、人材と体制だと思っています。私自身、ECの立ち上げから運用までを経験したことを踏まえ、「人材に投資、体制を整備しない会社は成長しない」ということは痛感しています。「こんな人がいれば事業がうまく回るのに」ということはよくありました。クライアントが成功するためのスキルを持っている人を育てたいし、新規事業を推進しやすい体制を整備していきたいと思っています。

そのためのビジネスのお手伝い(戦略・体制づくり、人材調達・採用のサポート、教育研修など)、執筆活動を行っていきたいですね。

ネッ担での新連載「EC部長が担当者に読んでもらいたいこと」では、EC責任者を歴任した私の経験から、部下の担当者などが読んでおくべき基礎ポイントなどを、EC部長が部下に知っておいてもらいたいこと、言わなくてもわかってほしいと思っていたことについて、実務経験を踏まえた上で解説していきます。

ネクトラス株式会社 代表取締役 中島郁氏

――三越伊勢丹ホールディングス前社長・大西洋氏がEC強化を掲げ、中島さんはその中枢で指揮を執っていたのですが、どんなことを行い、どんなことを感じましたか。

もともと入社前からシステムや体制作りなどのコンサルタントとして三越伊勢丹のお手伝いをしていました。こうしたご縁もあって入社したのが2013年4月のことです。

入社後にやったことと言えば、まず入社当時、三越伊勢丹のECはほとんどお中元・お歳暮などのギフト商品しか売っていなかったのを、アパレルなどの一般商品も掲載し、販売を始めたこと。そして、新システムでの「三越オンラインストア」「伊勢丹オンラインストア」の統合、共通IDでの買い物環境作り、コールセンターやEC専用の物流センターの立ち上げなどです。

基本的には、ECサイトで扱う商品の拡充、チラシなど既存媒体への積極露出、Web広告……などなど、普通のECサイトでは当たり前のことができていなかったので、それを当たり前にできるようにしたことです。

ECサイトの“当たり前”ができていない段階なのに、いきなり百貨店のレベルのサービスをめざしていたので、まずはそれを再考。普通のECサイトを作り、そこに百貨店らしさを付けていくイメージですね。そして後半から、タブレット端末を使った店頭のスタイリスト(販売員)や外商担当者が販売する仕組みや評価制度の整備ができ、三越伊勢丹として独自のオムニチャネルの方向性が見えてきたと思っています。どれも組織が大きいので、実行に移すのはとても大変でしたね。

前置きが長くなりましたが、こうしたことを行うにはやっぱり人材が重要なんですよね。私が入社するまで社員の中途採用制度はありませんでした。ただ、トップが期待しているスピードで、ECを強化するにはプロパー社員だけでは難しい。外部から新しい血を入れることで、時間を買う必要があったので、中途採用とそれに伴う知見のプロパー社員への移転を進めていきました。

中途採用社員は、私の部門だけで20人くらいいました。ちなみに、店舗情報の業務やコールセンターも含め、WEB事業だけで200人以上のスタッフが在籍していました。

私のキャリアは、既存事業のある会社で、新規ビジネスを立ち上げて伸ばしていくといった経験がほとんど。急成長しているビジネスのマネジメントは、成熟事業と違った種類のハンドリングが必要となります。もちろん多くのあつれきも発生します。さまざまな事象をコントロールしながら軌道に乗せていくことを三越伊勢丹で再び経験しました。

ネクトラス株式会社 代表取締役 中島郁氏

――通販・EC業界に携わって約20年の中島さんですが、そのキャリアを教えてください。

大学卒業後に入社したのがベンチャー企業。新卒1年目の途中から新規事業担当へと配属されました。自前主義の会社だったため、コンサルを入れずに自力で行っていたので、すべての自分で調べ、まず自分でやるということを身につけました。

ゴールから逆算して計画を立てたり、目標からブレイクダウンしたり……新規立ち上げに必要なことを身につけていったのはその当時の経験があったからこそ。当時は意識していませんでしたが、あの頃、無謀ともいえるやり方でやっていたことが私の立ち上げスキルのベースを築くことになったんです。

ちなみに、その会社で、輸出入や、小さいながらもアジア、ヨーロッパ、アメリカに拠点を作ることを担当したこともあり、その後、米国のビジネススクールに留学しました。

日本に帰国後、古いビジネスと新しいテクノロジーを組み合わせて、新しいビジネスを立ち上げようと考えていたのですが、テクノロジーの知識がなかったのでITベンチャーに入社。そこでたまたまかかわることになったのが、インターネットショッピングでした。1995年のことです。

――本格的にECの実務に携わるようになったのがトイザらスなのですか?

その前も、ベンチャーなど数社でかかわっていたのですが、あまりうまくいきませんでした。トイザらスは最初、店舗のマーケティング担当として入社しました。全国に70くらいの店舗があり、毎年10店舗レベルで新店を作っているなか、マーケティング部門を新たに立ち上げようとしていたときです。

店舗が増え、同じ地域に複数店を開設するようになり、これまで展開していた広告の再検討を始める段階でした。マーケティング目線で、調査、分析し、チラシの配布計画や広告投入計画を立てたり、DMを使ったダイレクトマーケティングを試したりしました。

数年間、塩漬けになっていたECビジネスの再検討に着手したのもその頃です。まずビジネスプランを作り、米国トイザらスのCEOが来日したときにプレゼンを実施したら、「Goサイン」が出て。そしたらもう大変。

日本トイザらスはIPOを控えていたので「情報が漏れてはいけない」と……数人だけの極秘プロジェクトとしてスタートしたんです。システムベンダー、物流会社、コールセンター、制作会社を片っ端から回り、新サイトの構築、事業の設計などを急ピッチで進めました。

2000年11月にECサイトを本格オープンしましたが、当時、日本のEC市場に大規模ECサイトはあまりなかった時代でした。アマゾンジャパンがスタートしたばかり、他に目についていたのは、ソフトバンクが関わっていた「イー・ショッピング・トイズ」(現在の「ハピネット・オンライン」)や「イー・ショッピング・ブックス」(現在の「セブンネットショッピング」)。その他、ツタヤ、スタートしたてのユニクロといったサイトなどです。ソフトバンクがECに気合いを入れていた時期だったと記憶しています。

ECの本格スタートから、店舗のチラシや店頭の袋、ポスターにURLを入れたり……当時の言葉で言えば「クリック・アンド・モルタル」ですね。実店舗とECの双方を運営することで相乗効果を狙う手法はすでにその頃から実践していたと思っています。

当時のプロモーションは、メルマガ、バナー広告といったネットを活用した広告、オンラインクーポンのほかは、主に店舗の活用でした。それはなぜか。実は、米国では「ちゃんと店舗を活用していこう」という考えが当時からあったんです。

いい例が米国のオンライン玩具販売の草分けと知られる「イートイズ・ドットコム」(1997年創業、急成長を遂げたが2001年に倒産、現在はトイザらス傘下)。一般的には小売の広告費は低い(日本だと売上の2.5%)。ところが、「イートイズ・ドットコム」は店舗がなかったため、まず、トイザらスなど実店舗企業に比べて不足している認知を、テレビなどのマス広告で獲得しようとしたんですね。資金が足りるはずありません。結果的に、実店舗を持つトイザらス・ドットコムは成長、「イートイズ・ドットコム」は破たんという道を辿ることになったんです。

店舗活用という点で言うと、店頭取扱商品をECサイトで掲載・販売しない会社がよくあるのに驚かされます。また、なぜか「EC限定商品の方が売れる」と思っている経営者が多いこと。大きなアクセス数がなければ、店頭での取扱商品や認知のある商品に比べてWebサイト上だけでの訴求では販売が難しい、ということを理解していない責任者や現場の人もいますよね。

ネクトラス株式会社 代表取締役 中島郁氏

――その後は、最大手のテレビショッピング企業「ジュピターショップチャンネル」でテレビとネット通販のクリック・アンド・チャンネルの実践に移るわけですね。

ECの立ち上げや運用を任せるということで入社したのですが……入社してびっくり。チームは社内で孤立しているし、システムはとん挫しているのに、数か月内にオープンしろという指示が出ていました。

ジュピターショップチャンネルはテレビショッピングを中心としたビジネスです。ECを、最初からテレビとCTI(電話やファックスをパソコンと連携、統合したシステム)、基幹システム、会員管理、在庫、受注システムと連携させるべきと考えていて、その実現の難易度が高くなっていました。結局、力技で2003年3月の本オープンへこぎつけました。

ショップチャンネルでもWebとの連動は大変でしたね。テレビ番組上でECサイトの告知をするといった露出は簡単だと思うでしょ? 一番有効なテレビ画面上でのURLの常時表示だけはやってもらえたのですが、今より文字の大きさはかなり小さかったです(笑)。たとえば、司会者にECサイトの紹介をしてもらう取り組みだけでも、数年かかったんですよ。

商品調達を担当するバイヤーが「ネットでは扱いたくない」とか、商品供給会社がECサイトでは売って欲しくないなどといった意見があり……当時はWebへの理解が進んでいない時代でしたから。

そんな状況下でもテレビショッピング会社としてできるECの施策は進めていきました。生放送と完全連動させてECサイトで商品を販売したり、テレビ動画を配信したり、在庫が残ったものをECサイトで販売したり、ECサイトを活用する試みは進めていきました。

◇◇◇

その後、中島氏はジュピターショップチャンネルを退職。世界最大のECサービス企業GSI Commerce(eBay Enterprise)アジア太平洋担当副社長兼日本法人社長に就任。ベンダー側からネット通販業界に携わりました。そして、再び、三越伊勢丹でEC事業者側に。今後は。。。

ネットショップ担当者フォーラムで始まる新連載「EC部長が担当者に読んでもらいたいこと」では、中島さんの経験を踏まえて、“部長が担当者に読んでもらいたいECの話(考え方)”を読者の皆さんにお伝えしていきます。

自社ECサイトの運営に携わっている担当者の皆さんはもちろん、経営者や責任者の皆さんはビジネスを振り返ったり、部下に共有する情報としてぜひ、目を通してください。

1回目は8月30日(水)スタートです。

新連載「EC部長が担当者に読んでもらいたいこと」をお楽しみに。

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