「Qoo10」で売れる韓国ブランドは何が違う? 「スピード・実行力・接点づくり」に学ぶEC成長の方程式
「Qoo10」が、原宿駅前の旗艦店構想を含むオフライン3拠点展開に乗り出す。初の出店者向けカンファレンスでは、韓国ブランドの成長事例をもとにした売り方の要諦や、国内ブランド向けの具体的な支援策も提示。セラー向けに何が語られたのかを詳報する。
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「Qoo10」が、オンラインにとどまらない売り場づくりに乗り出す。eBay Japanが8月25日に開いた出店者向けカンファレンス「「Qoo10」 Seller Conference 2026」では、原宿駅前での旗艦店構想を含むオフライン展開、韓国ブランドの成長事例から見る販売のポイント、国内ブランド向けの販促支援策などを示した。
カンファレンス全体を通じて見えてきたのは、「Qoo10」が若年層との接点を広げながら、ブランドや商品の発見、比較、購入、再来訪までを複数の施策で支援しようとしていることだ。会場では、セラーが「Qoo10」でどのように売り場を作り、顧客接点を増やしていくかという、より実務に踏み込んだ内容が語られた。
動画23億回再生の「メガ割」から旗艦店まで、「Qoo10」が構築する若年層との顧客接点
原宿駅前に旗艦店、渋谷・原宿で常設3拠点を展開へ
戦略マーケティング室のモラーノ絢香部長は、「Qoo10」のブランド戦略とあわせて、オフライン展開の計画を発表した。「Qoo10」は渋谷・原宿エリアを中心に、常設3拠点を展開する。
- 渋谷のライブスタジオを10月1日以降、「サンプルハウス」としてリニューアル
- 原宿キャットストリート沿いに11月20日、「メガポップアップ」を開設
- 原宿駅前に約2500平方メートルの旗艦店を2027年9月末にグランドオープン予定
「サンプルハウス」は、商品のサンプリングに特化した拠点として展開する。「メガポップアップ」は出店者向けに2種類の出店プランを用意する。旗艦店では商品販売も可能な店舗として準備を進める。
モラーノ部長は、国内小売市場におけるEC化率がまだ低い現状を踏まえ、リアルの顧客接点を強化する意義を説明した。
国内小売市場のEC化率が10%程度のなか、お客様の顔が見えるお買い物の遊び場、ワクワクする場所はまだまだ実店舗に残されていると考えている。オフラインとの総合シナジーを最大化することを次の事業挑戦と位置付けている。(モラーノ絢香部長)

渋谷ではすでにライブスタジオを展開しているが、今後はサンプリング拠点としての役割を持たせる。さらに原宿ではポップアップ施設に加え、大型旗艦店も展開し、トレンド発信地でブランドと消費者のリアルな接点を増やしていく。
「Qoo10」は「コスパが良い」「トレンドに敏感」「若々しい」「お買い物と遊ぼう」というイメージが定着
モラーノ部長は、「Qoo10」のブランドメッセージ「お買い物と遊ぼう」を軸に、「Qoo10」を「エンターテインメントコマース」と位置付けた。
2018年のeBay傘下入り以降、「Qoo10」はポップカルチャーを中心とした品ぞろえや、ランキングに表れるトレンド変化の速さを強みに成長してきたという。
2024年時点で顧客数は3000万人に到達し、10代〜30代が全体の7割を占める。認知度は2022年時点で8割を超え、2018年以降の商品数は13億点を超えたとしている。
15歳〜24歳を対象に国内大手EC4社の売り場に対する印象を調査したところ、「Qoo10」については「コスパが良い」「トレンドに敏感」「若々しい」といった印象が上位に挙がったという。競合と比較すると、「トレンドに敏感」は3倍、「若々しい」は4倍の差があったとしている。
モラーノ部長は、単なる年齢や属性だけでなく、Z世代の購買意識にも注目する。「コスパ志向」や「失敗したくない」という消費傾向、そして美容への高い関心を踏まえ、「Qoo10」では「メガ割」を核とした販促、SNSでの情報発信、コンテンツ接触、決済までを一連の購買体験として設計しているという。
関連動画は累計23億回再生、「メガ割」が生む発話の連鎖
モラーノ部長は、「Qoo10」の集客力について、広告投下だけではなく、ユーザー自身が情報を発信・拡散する仕組みが形成されていると説明した。
「メガ割」に関連するハッシュタグ付き動画の累計再生回数は23億回を超える。「#メガ割会議」「#プレメガ割」といった言葉はユーザーから自然発生し、創作動画や商品レビュー、価格比較、購入方法の分析などへ発話が広がっているという。
CMによる「メガ割」開始の告知を起点に、ユーザーによる動画投稿、商品レビュー、価格比較、キャンペーン分析などが連鎖する。「Qoo10」では、こうしたユーザー主導の情報発信が購買を後押しするエコシステムにつながっていると説明する。
顧客がブランドについて発話を増やしていく仕組みは、「Qoo10」側の広告だけではなく、お客様によって口コミで広まるというバイヤー自走型のエコシステムが形成されている点も大きく影響している。(モラーノ部長)

そのほかの集客施策として、美容雑誌「LDK the Beauty」との付録付き連載セットでは発売後すぐに完売し、Yahoo!ニュースのトピックスにも掲載されたという。LINEでは「メガ割」期間中、単一媒体で国内人口の2倍以上に相当する接触規模を確保したとしている。
2026年6月の「メガ割」では、初日の来場者数が675万人、購入者数が350万人となった。1日平均の販売点数は112万点、流通総額は600億円を超え、2桁成長を続けているという。
ライブショッピングでは、1時間で73万ビュー、取引総額5億円を達成したブランドもあった。
さらに、モバイル決済比率は2025年6月の「メガ割」流通額全体の55%。そのうちPayPay決済比率は4割超を占めるという。PayPayのデータでは、「Qoo10」は全加盟店の中で10代・20代利用の第7位。モバイル起点の若年層購買との親和性の高さを裏付ける数字と言えそうだ。
音楽、アニメ、スポーツへ。「ファンダムマーケティング」も強化
「Qoo10」は、ファンが集まる場所にブランドや商品との接点を作る施策を「ファンダムマーケティング」と位置付け推進している。IP、スポーツ、音楽、アート、学園祭などを活用した取り組みを展開しており、IP活用では2026年から人気アニメ「パワーパフ ガールズ」をアンバサダーに起用した。
大型夏フェス「SUMMER SONIC 2026」にも協賛し、幕張会場に特設ブースを設置。17万人が来場した同フェスで、11万個の商品をサンプリングしたという。このうち8割以上は国内の「Qoo10」セラーが提供した。日本最大級のLGBTQ+関連イベント「Tokyo Pride 2026」にも4度目の出展を果たした。そのほか、専門学校での特別授業や、高校生約300チーム超からビジネスアイデアを募る企画なども実施している。
「「Qoo10」メガビューティーアワード」は年間と上半期の年2回開催。若年層の購買データをもとに、国内最大級の投票規模を集める企画として展開しているという。
韓国ブランドの成功要因は「スピード」「実行力」「顧客接点」
韓国営業本部のキム・スア本部長は、「Qoo10」で成長してきた韓国ビューティーブランドの事例をもとに、日本市場で成功するためのポイントを説明した。キム本部長が挙げた成功要因は次の3つ。
- スピード
- 実行力
- プロモーション・マーケティングへの投資

日本市場で成功するためのポイント①:スピード
「スピード」は、商品開発の速さだけではない。顧客の反応を確認し、それを次の施策へ反映するまでの速さを指す。
「Qoo10」では、どの商品が選ばれ、カートに入れられ、ランキングに上がっているかなどを把握しやすく、顧客の反応を次の販売施策につなげやすいという。
韓国ブランドが日本市場で成果を出した理由の一つは、顧客の反応を見て、その反応を次の行動につなげるスピードが非常に速かったことだ。(キム本部長)

日本市場で成功するためのポイント②:実行力
2つ目の「実行力」は、立てた戦略を結果につなげる力を指す。
商品詳細ページ、レビュー、価格、配送、カスタマーサービスまで含め、購入時の不安を一つひとつ解消する必要があるという。良い商品があるだけでは十分ではなく、購入までの導線で不安を残さないことが重要だとした。

日本市場で成功するためのポイント③:プロモーション・マーケティングへの投資
3つ目のプロモーションとマーケティング投資は、広告費を投じること自体より、顧客接点をどれだけ増やせるかが重要だとした。ここでいう投資は広告費の多寡ではなく、顧客接点をどれだけ増やせるかを指す。また購入タイミングを作ることも重要だと指摘した。ユーザーは商品を知ってもすぐ購入するわけではないため、韓国ブランドは「メガ割」を購入タイミングに設定し、それまでの3カ月間、「まず試してみたい」、「いったんカートに入れておきたい」と思わせる接点づくりに継続的に投資しているという。

成功する韓国ブランドの事例
キム氏は具体例として、韓国スキンケアブランド「Anua(アヌア)」、美容機器・スキンケアブランド「medicube(メディキューブ)」、韓国コスメブランド「CLIO(クリオ)」の事例を紹介した。
Anua:顧客の悩みを起点に商品を訴求
「Anua」は、敏感肌、毛穴、鎮静、肌バランスといった悩みに焦点を当て、ユーザーが理解しやすい形で商品を訴求した。顧客の反応を確認しながら商品ラインアップを拡充し、ファンを増やしていったという。

medicube:高価格帯商品の不安を段階的に解消
「medicube」は、スキンケアと美容機器を組み合わせた提案で存在感を高めた。
高価格帯の商品に対してユーザーが感じる「使いこなせるのか」「価格に見合うのか」といった不安を、商品改善やメッセージ設計、企画商品などを通じて段階的に解消していったという。

CLIO:色選びの不安をコンテンツで解消
「CLIO」は、色味が自分に合うかどうか迷いやすいメイクアップ商品に対し、カラーチャートや肌での発色例、季節ごとのメイク提案などを継続的に発信した。
色物の商品は季節性の影響を受けやすいため、タイミングに合わせて顧客接点を増やすことが重要だと説明した。

重要なのは、商品を見つけていただき、選んでいただき、購入につなげ、さらにブランドのファンになっていただく。そのプロセスを設計すること。(キム本部長)
韓国ブランドの事例ではあるものの、キム氏は特定国のブランドに限った成功事例ではなく、オンラインでブランドを成長させるための基本原則として共有したい内容だと位置付けた。
国内公式ブランドは前年比47%成長、「顧客理解」を支援
日本営業本部の川鍋優子本部長は、国内ブランド向けの支援策を詳しく説明した。「Qoo10」における国内公式ブランドの前年比売上成長率は47%。国内セラー全体の22%増を大きく上回り、韓国公式ブランドの成長率も超えたという。
今「Qoo10」にいるお客様は、韓国ブランドだけではなく、日本国内の公式ブランドを強く求めている。「Qoo10」の中でお客様からの信頼感、安心感の醸成につながっているのは、まさに国内ブランドの皆様のおかげ。(川鍋本部長)

川鍋本部長は、「Qoo10」内の国内公式ブランド登録者数が過去5年間で年平均2倍以上増えていることも紹介した。
日本ブランドへの需要が高まるなか、「Qoo10」では出店数を増やすだけでなく、ブランドの成長を支援する取り組みを強化する。その柱となるのが「顧客理解」と「メガプログラム」だ。
国内ブランド成長の柱①:顧客理解
顧客理解については、
- 外部トレンド調査
- 「Qoo10」内の美容感度が高い若年層データの活用
- 両者を組み合わせた購買インサイトの把握
の3つを柱に据える。
実践例として、エレクトロニクスカテゴリに関するアンケートを「Qoo10」ユーザーにポイントプレゼント形式で実施し、2000人以上の回答を得たことを報告した。川鍋氏は、これらのデータを基にPDCAを回しながらブランドと共に顧客理解を深めていくプロセスを重視していると述べた。
データと知見で皆様と伴走して「Qoo10」にいる顧客の理解を深くすること、それがまずベースになる。(川鍋本部長)
国内ブランド成長の柱②:メガプログラム
川鍋本部長は、ブランドの成長フェーズに応じた3つの販促支援策「メガプログラム」も解説した。
- メガデビュー:初めて「Qoo10」に登場するブランド向け
- メガコラボ:既存ブランドの認知・売上拡大向け
- メガオシ:重点戦略商品を集中的に支援する最上位施策
「メガデビュー」は週替わりで6ブランドを紹介する仕組み。サンプル配布、ライブ配信、共同クーポン発行などを行う。これまでに累計268ブランドが参加し、累計売上高は56億円。参加前後の平均売上成長率は約15倍に達するという。

「メガコラボ」は1ブランドごとに特設ページを設ける施策で、実施前後の売上は平均約13倍に成長した。新商品と主力商品の両方を訴求した大藤製薬の事例では、前週比約17倍の売上伸長があったという。

「メガオシ」は毎月4ブランドを選定し、3カ月間にわたって集中的に露出を強化する。累計1億ページビューの実績を持つという。

「Qoo10」は現在6%にとどまる国内ブランドのメガプログラム参加率を、2029年までに50%へ引き上げる目標も示した。
限定品、ライブ、キュレーションで新たな商品との出会いを創出
川鍋本部長は、「Qoo10」独自の施策として「Q ONLY」「「Qoo10」ライブ」「ライフスタイルコンテンツ」も紹介した。
「Q ONLY」は、「Qoo10」限定商品や先行販売商品に公式マークを付ける仕組み。対象商品数は開始以来約4倍に増え、現在は全体売上の約4割を占めるまでに拡大したという。通常商品と比較すると、コンバージョン率は約3倍としている。

ライブ配信では、ブランドストーリーや商品の魅力を双方向で伝えられる点を訴求する。
ライフスタイルコンテンツでは、ユーザーが検索して商品を探すだけでなく、「Qoo10」側がキュレーションした商品群を紹介することで、新たな商品との出会いを促す。
「Qoo10」のユーザーは、単純にスピーディーに検索で商品を見つけたいという方々ではない。ワクワクできるお買い物体験を求めていらっしゃるので、私たちからもキュレーションした商品群を紹介している。(川鍋本部長)
eBay本社が強調した「売り手の成功」と若年層との接点
カンファレンスにはeBayのアジア太平洋事業責任者であるジョン・リン氏も駆けつけた。「Qoo10」の親会社であるeBayの立場から、グループとして重視する方向性を説明した。
eBayは2025年に創業30周年を迎え、オンラインのマーケットプレイス、オンライン決済、オンライン広告、越境取引などの分野を展開してきたと振り返った。
そのうえで、プラットフォームとして最も重視するのは「売り手の成功」だと強調した。
セラーは私たちのすべての活動の核となる原動力。私たちは、セラーが成功したときにのみ成功する。(ジョン・リン氏)

リン氏は、「Qoo10」が日本の若い美容関心層を多く抱えていることに触れ、若年層に支持される買い物体験を継続的に強化していく考えを示した。
あわせて、ライブストリーミング、AI活用、越境販売支援など、eBayグループ全体の機能や知見も「Qoo10」の今後の成長を支える要素として紹介した。
セラーに求められるのは「出店」だけでなく、顧客接点の設計
今回のカンファレンスでは、2026年の年間流通総額が3500億円となる見通しで、2029年には流通総額5000億円超を計画しており、今後3年間で1000億円以上を投資する方針も示した。加えて、「Qoo10」が売り場づくりをどう考えているのかも具体的に示された。
「Qoo10」で成果を上げるには、単に商品を並べるだけでは足りない。商品をどう見つけてもらい、どう比較され、どう購入につなげ、どう次の来訪やファン化へ結びつけるか。「Qoo10」は、その設計をセラー側にも強く求めているようだ。

