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“現金化”できるキャッシュバックで世界的ヒット。シンガポール発「ショップバッグ」に聞く「AIショッピングの最前線」

シンガポール発のキャッシュバックサービス「ShopBack(ショップバック)」のAI活用とは? サービスが支持される理由、世界におけるAIショッピング最前線を取材した

小林 香織[執筆]

8:00

シンガポールで誕生したキャッシュバックサービス「ShopBack(ショップバック)」が、日本市場に熱視線を送っている。APACを中心に13市場で展開し、会員数は約7000万人。膨大な行動データと最先端のAIをかけ合わせ、顧客の「時間」と「お金」を節約する買い物体験を提供する。買い物を通じて貯めたポイントは、現金化も可能だ。

現状、日本におけるBtoCでの展開予定はないが、日本企業の出店は歓迎している。「ショップバック」を運営するEcommerce Enablers Pte. Ltd.(イーコマースイネイブラーズ、シンガポール)の共同創業者兼CEOのヘンリー・チャン氏は、「『ショップバック』を通じて、日本企業の海外進出を支援したい」と語る。2026年夏に来日したチャン氏に、「世界におけるAIショッピングの最前線」を取材した。

会員7000万人、なぜAPAC市場でシェア1位を獲得できた?

2014年にシンガポールで生まれた「ショップバック」は、“現金化”できるポイントが貯まるキャッシュバックサービスだ。加盟店数は、Amazon、ナイキ、ユニクロ、トリップドットコムといったグローバル企業を含む2万店以上にのぼり、オンライン・オフライン両方の店舗が対象となる。顧客が「ショップバック」を通じて加盟店で買い物をすると、ポイントが貯まる。そのポイントを現金として受け取ることも可能だ。

貯めたポイントは現金化できる。また、AIの検索機能を使うほどアルゴリズムが最適化されていく(画像提供:Ecommerce Enablers Pte. Ltd)
貯めたポイントは現金化できる。また、AIの検索機能を使うほどアルゴリズムが最適化されていく(画像提供:Ecommerce Enablers Pte. Ltd)
買い物以外に、ゲームやアンケートなどでもポイントが貯まる(画像提供:Ecommerce Enablers Pte. Ltd)
買い物以外に、ゲームやアンケートなどでもポイントが貯まる(画像提供:Ecommerce Enablers Pte. Ltd)

現在、APACを中心に13市場で展開し、チャン氏によれば多くの市場でシェア1位を獲得しているという。全世界の会員数は約7000万人で、アクティブ会員数は約2000万人となる。男女比は女性が62%と過半を超え、年齢では26~35歳が40%と最も多い。

顧客が決済を完了した場合にのみ加盟店に利用料を請求する成果報酬型で、クリックによる課金やスポンサー枠の販売も行わない。チャン氏によれば、売上獲得コストはSNSの有料広告と比べて12分の1に抑えられるという。「なぜ多くの市場で支持を広げられているのか」とたずねると、チャン氏は3つの要素をあげた。

1つ目は、高品質なテクノロジーです。最先端のAIを活用し、ユーザーが時間とお金を節約できる買い物体験を重視しています。2つ目は、ユーザーファーストの仕様です。「ショップバック」経由で各店のECサイトに訪問して、いつも通り買い物をするとポイントが還元されます。ポイントは現金としても受け取れます。そして、3つ目は、現地企業とのコネクションです。各地にチームを持ち、現地企業とのつながりを強固なものにしています。(チャン氏)

「ユーザー、加盟店、『ショップバック』の三者に明確なメリットがある」とチャン氏は強調した(筆者撮影)
「ユーザー、加盟店、『ショップバック』の三者に明確なメリットがある」とチャン氏は強調した(筆者撮影)

では、サービスの肝となる「AI」には、どんな優位性があるのか。

「ショップバック」では、設計段階から「モデル・アグノスティック(特定のAIモデルに依存しない構造)」を採用しています。特定のAIモデルに縛られず、オープン及びクローズドソースの両方から多様な手法やモデルを活用し、各タスクにおいて最もパフォーマンスの高いものを選択しています。この柔軟性が技術的な優位性です。AIモデル自体が進化すれば、システムを一から構築し直すことなく、当社の機能も一緒に進化していきます。(チャン氏)

さらに、13市場、約7000万人の会員と約2万の加盟店による取引・行動のデータも、「ショップバック」の技術優位性を高める要素となる。ユーザーの同意の上で、これらのデータを活用することで、AIのコンテキスト(文脈)理解が深まり、精度の高い提案が可能になるという。

「AIショッピング」が利用増、なかでも「画像検索」が好評

「ショップバック」では、過去1年間にわたり、「レコメンデーション」「画像検索」「チャット形式のショッピングアシスタント」「旅行プランナー」など、AIを活用した機能を複数市場で順次ローンチしているという。

レコメンデーションは、一般的なECサイトと同様で、顧客の属性や過去の検索・購入履歴を元におすすめが表示される。ただし、「ショップバック」では取得できるデータや提案できる領域が圧倒的に広く、この点は他社と比較した強みとなっている。

旅行、食品、アパレルなど幅広い領域を横断したレコメンドができるのは「ショップバック」の強みだ(画像提供:Ecommerce Enablers Pte. Ltd)
旅行、食品、アパレルなど幅広い領域を横断したレコメンドができるのは「ショップバック」の強みだ(画像提供:Ecommerce Enablers Pte. Ltd)

また、「画像検索」では、ユーザーが画像をアップロードすると、50以上の提携店舗からおすすめを表示する。取材中、チャン氏が実際にイスやシャツを撮影して検索したところ、同一と思われる商品のほか、類似商品も多く示された。さらに、該当商品が最もお得に買える選択肢も提供された。Googleの画像検索と異なり、同機能は買い物に特化していることが優位性だとチャン氏は強調した。

画像検索は、類似商品を多数示せるほか、最もお得に買える選択肢も提示する(画像提供:Ecommerce Enablers Pte. Ltd)
画像検索は、類似商品を多数示せるほか、最もお得に買える選択肢も提示する(画像提供:Ecommerce Enablers Pte. Ltd)

チャット形式のショッピングアシスタントは、いわゆる「ChatGPT」のようなもの。ユーザーの質問に対して、AIが買い物に特化した回答を返す。これらの機能はローンチから間もないが、改善を継続していることもあり、利用者が増加傾向だ。最も定着している機能では、すでに数十万人が活用しているそうだ。

現状は初期段階ですが、現在の成長傾向からも、今後さらに利用率が向上すると確信しています。なぜなら、これらの機能が「ユーザーにとって真に価値のある体験」を提供できているためです。(チャン氏)

チャン氏が言う「真に価値のある体験」とは、「時間とお金を節約できる賢い買い物体験」を指す。「ショップバック」がサービスを展開するAPAC市場では、特に視覚的な検索が好まれているという。

その理由は、ショッピングの本質が「視覚的(ビジュアル)」であるためです。人々は多くの選択肢を目で見て確認し、並べて比較しながら探索したいと考えています。一方で、チャット形式では基本的に1度に1つの回答しか提示できないため、商品の発見・比較には非効率なインターフェースなのです。(チャン氏)

その一方、「チャット型AIそのものは非常に有用であり、今後も拡大していくでしょう」とチャン氏は付け加えた。

現状はカスタマーサービスを中心に活用されていますが、商品に関する質問に答える手段としても利用が増えています。買い物体験そのものを「代替するもの」ではなく、「補完するもの」として位置づけられるべきだと考えており、「ショップバック」でも今後さらに有益な活用方法を模索していきます。(チャン氏)

Amazonでは、「AI経由の購入率」が非AIを40%上回る

Amazonによると、2025年にAIショッピングアシスタント「Rufus」を利用した人は3億人を越えたという。月間平均ユーザー数は前年比149%増、インタラクション数は210%増となり、Rufus経由では購入に至る可能性が60%以上高くなっていた。

Amazonでは、AIショッピングアシスタント「Rufus」経由の場合、購入に至る可能性が60%以上高くなっている(出典:米Amazonのニュースリリース)
Amazonでは、AIショッピングアシスタント「Rufus」経由の場合、購入に至る可能性が60%以上高くなっている(出典:米Amazonのニュースリリース)

また、アドビが発表した調査でも、AIを起点に買い物を開始した消費者は、購入に至る可能性が高くなることが判明した(参考:アドビ「Summer is the new holiday season: Prime Day drives a record $26.4 billion.」)。調査は2026年6月23~26日のAmazon「プライムデー」を対象に実施。その結果、「プライムデー」期間中、AIチャットボット経由でAmazonに訪問した消費者の購買率は、AI以外のチャネル(有料検索、メール、SNSなど)よりも40%高かった。2025年の「プライムデー」では、AI経由の購買率がAI以外よりも23%低かったため、1年間で著しく向上したことになる。

また、財経新聞によれば、Amazonでは「プライムデー」期間中に「ChatGPT」内の有料広告枠で、セールをプロモーションしていたことも確認されているという(参考:財経新聞「【アマゾン】ChatGPT広告に参入、プライムデーで「AI経由の購入率」が検索を40%上回る驚きの結果に」)。

アドビの調査では、2026年1~5月において、AmazonへのAI経由の訪問(リンクをクリックした買い物客数で測定)が、前年同期比で235%増加したこともわかっている。この傾向は「プライムデー」期間中も続き、同期間は89%の増加を記録した。

「AIによる自動購入」は加速していくのか

このように世界中で「AI経由の買い物」が増加している事実に対し、チャン氏は「AI機能の利用者増は心強い兆候だが、真に取り組むべき課題は、日々ユーザーの信頼を獲得し続けることだ」と話した。

「信頼」は前提として与えられるものではなく、勝ち取るものです。AIが信頼性と透明性を備え、最終的なコントロール権をユーザー自身が握っていると実感できることで信頼は生まれます。そして、結局のところ最も重要なのは、「AIがどれだけ人々の役に立っているか」です。信頼の根源はそこにあります。

「ショップバック」にとって重要な問いは、「AIをいかに活用して、ユーザーに真の価値とインパクトをもたらすか」。当社のミッションは一貫して「人々の時間とお金を節約すること」であり、AIはそのミッションをより強力に実現するための手段です。AIがスマートな買い物をサポートすればするほど、AIや当社に対する信頼が深まっていくと考えています。(チャン氏)

「日々ユーザーの信頼を獲得し続けることが最重要課題だ」とチャン氏(筆者撮影)
「日々ユーザーの信頼を獲得し続けることが最重要課題だ」とチャン氏(筆者撮影)

AIによる自動購入の導入について、「ショップバック」では「現状は不可」との回答だった。

AIの自動購入を阻む理由は、主に2つです。1つ目は「信頼」の問題です。「AIが常に正しく処理できると確信できるか」「問題が発生した場合、責任を負うのは人間かAIか」という点が解決されていません。2つ目は「規制が市場(国・地域)ごとに異なること」です。

決済に至るステップをAIがより迅速にする流れは加速しますが、「決済の瞬間」において人間を完全に代替することは、少なくとも大規模なレベルや近い将来には実現しないと考えています。(チャン氏)

ただし、「将来的に責任の所在と信頼の問題が正しく解決されれば、決済をサポートすることも可能になるでしょう」とチャン氏は付け加えた。

私は、決済に至るあらゆるステップにおける摩擦(ストレス)をAIが取り除き続けるべきだと考えています。将来的には自動決済を導入する可能性はありますが、それでも「最終決定権は常に人間が保持すべき」というのが、「ショップバック」のデザインにおける根本的な原則です。(チャン氏)

Amazonでは「自動購入プログラム」を加速させている(出典:米Amazonのニュースリリース)
Amazonでは「自動購入プログラム」を加速させている(出典:米Amazonのニュースリリース)

Amazonでは、すでに「自動購入プログラム」の提供を開始。2026年5月に米Amazonが発表した新たなAIアシスタント「Alexa for Shopping」では、「Rufus」およびAIを基盤とした音声アシスタント「Alexa+」を組み合わせ、より個別最適化された買い物体験を提供している。

同サービスでは、「この日焼け止めが10ドルに値下がりし、過去2か月以内に購入していない場合はカートに追加する」といった条件付き購入にも対応。AIが商品選定や価格監視、ユーザーへの通知やカート追加まで自動で行う。

また、他社ECサイトでの商品購入を支援する「Shop Direct」を通じてAmazon外のECサイトの商品を発見、購入することも可能だ。対象商品は「Buy for Me」と呼ばれるエージェント型AI機能が、ユーザーの代わりに購入手続きまで完結する。

「ショップバック」では、日本を含む世界で加盟店を増やすと共に、AIによる買い物アシスト機能を引き続き進化させていくという。「将来的には、AIグラスと『ショップバック』を連携させ、現実世界で見たものをその場で検索・購入できるかもしれない。AIショッピングの未来をつくる一助になりたい」とチャン氏は期待をにじませた。

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