GMV26倍+売上高10億円超のスキンケアブランド「Advanced Clinicals(アドバンスドクリニカルズ)」。約6.3人でブランド運営を成功させるAI活用法
AnyMind Groupが日本展開する米スキンケアブランド「Advanced Clinicals(アドバンスドクリニカルズ)」が、約6.3人の少人数体制でECと店舗を横断し急成長している。成長を支える運営の仕組みと、ブランド全体に組み込まれたAI活用の実態を聞いた
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EC支援やブランド事業を展開するAnyMind Group(エニーマインドグループ)が日本の総代理店を務める米国発スキンケアブランド「Advanced Clinicals(アドバンスドクリニカルズ)」が、ECと店舗を横断して急成長している。2025年9月にはGMV(流通取引総額)が前年同月比26倍に伸長。2025年から2026年にかけても前年比2倍以上の成長を続け、足元の売上規模は10億円を超えたという。こうした成長を支えているのが、わずか約6.3人という少人数体制と、ブランド運営全体に組み込まれたAI活用だ。内田直希氏(ブランドコマース事業部長 兼 社長室長)と、伊東朋希氏(Brand Commerce Associate Brand Manager)に、運営の実態を聞いた。
なぜ6.3人で運営できるのか? 役割統合と組織構造のイノベーション
AnyMind Groupは、ECマネジメントプラットフォーム「AnyX」、インフルエンサーマーケティングプラットフォーム「AnyTag」、グローバル物流プラットフォーム「AnyLogi」、会話型コマースプラットフォーム「AnyChat」などを展開し、ブランド企業の成長をソーシャル、EC、物流、顧客対応まで横断的に支援している。ツール提供にとどまらず、ブランド運営も手がけ、戦略設計から実行、改善まで一気通貫で担う点が特長だ。こうした支援事業で生かしたノウハウなどを生かし、ブランド運営事業にも注力している。
「Advanced Clinicals(アドバンスドクリニカルズ)」は、米シカゴ発のスキンケアブランド。25年以上の研究開発経験をベースに、「誰でも購入しやすい価格で、高品質なスキンケアを届ける」という考え方の下、ボディクリーム、美容液、ヘアケアなどを展開している。

(画像提供:AnyMind)
AnyMindが2024年から日本における公式総代理店となり、日本市場での展開を本格化した。販売チャネルは「Qoo10」「Amazon.co.jp」「楽天市場」「TikTok Shop」、自社ECへと広がり、「PLAZA」などオフラインでも販路を拡大している。
主要3大バラエティショップ(LOFT、PLAZA、@cosme STORE)ではベストコスメを獲得。「ロフト ベストコスメ2025」「@cosmeベストコスメアワード2025」「PLAZA THE BEST HIT COSMETICS 2025」を受賞した。さらに「Qoo10 MEGA BEAUTY AWARDS 2026 上半期」では「レチノールアドバンスドファーミングクリーム」がボディケア部門1位を獲得している。
2024年から2025年にかけて大きく売り上げを伸ばし、2025年から2026年にかけても前年比2倍の成長を続けているという。
共通化と個別対応の領域を分け、少人数で運営可能な体制を構築
そのブランド運営を担うのが約6.3人のチームだ。専任は伊東氏のみで、そこに全体を統括する内田氏、法人営業、サプライチェーン、EC運営、PR・SNS・インフルエンサー施策、クリエイティブ、バックオフィスなどが関わる。企業やブランドの規模によって異なるが、ブランド運営を役割統合とオペレーションの再設計によって圧縮しているのだ。
少人数でも右肩上がりの成長を実現するポイントは、すべての業務をブランド専用で抱え込まないことだという。
サプライチェーン、物流、申請業務などは他ブランドと共通化し、共通機能として運用する。一方、ブランド固有の戦略や意思決定、各部門とのハブ機能は専任性を高める。「共通化すべき領域」と「ブランドごとに個別対応すべき領域」を切り分けることで、少人数でも運営できる体制を構築している。
海外ブランドの日本展開では、商習慣や規制の違いへの対応も必要になる。パッケージやラベルの変更、成分規制、小売りごとに異なる基準など、オフライン流通には細かな調整が伴う。
こうしたなかで、影響範囲が大きく取り返しのつかない判断は慎重に行う。それ以外の業務はスピードを重視しているが、「スピードを意識しつつも、コミュニケーションをおろそかにしない・お互いが納得して動き出すという文化づくりをしている」(内田氏)
AnyMindには「Move faster」というカルチャーがあるが、単に速く進めればいいわけではない。影響範囲が大きく、取り返しがつかない意思決定は慎重に行う。スピードと精度、安全性のバランスが重要だと考えている。(ブランドコマース事業部長 兼 社長室長 内田直希氏)
ブランドコマース事業部長 兼 社長室長 内田直希氏
ブランドの業務を専任の伊東氏に集約する体制ではあるが、「ブランドの年間戦略や方針はチームメンバーにすりあわせを行っている。大きなズレが生じないよう、全員の認識がそろった上で各業務を遂行する」(伊東氏)ことを意識している。
売上急成長の背景には「TikTok Shop」起点のOMO戦略
少人数体制で運営効率を高めながら、売上成長につなげるうえで重視したのが、SNSとEC、店舗を分断しない販売設計だ。
日本上陸当初の課題は、ブランド認知と販路の不足だった。SNS施策は行っていたものの、SNS上の反応がEC売上や実店舗での購買にどこまでつながっているかを正確に測ることが難しかった。
そこでAnyMindは、海外で先行していた「TikTok Shop」の事例や、SNS発の話題がモールや店頭へ波及する「スピルオーバー」に着目。日本では「TikTok Shop」を起点にした施策への投資を強めた。

「TikTok Shop」を重視した理由は3つある。1つ目は若年層への接触力、2つ目は再生数やエンゲージメントだけでなく購買指標まで比較的ダイレクトに見られること、そして3つ目がTikTok上で生まれた話題が「Qoo10」「Amazon.co.jp」「楽天市場」、オフライン店舗にも波及しやすいことだ。「SNSを伸ばすこと自体が目的ではなく、ECモールや店頭まで含めてどう売り上げにつなげるかを見ていた」(内田氏)
SNSで生まれた話題を各売り場につなげるため、ECモールでは顧客属性やイベント特性に合わせて訴求を変えている。たとえば「Qoo10」の「メガ割」、「Amazon.co.jp」の「Amazonプライムデー」といった大型セール、「楽天市場」の販促タイミングなど、それぞれに合わせて施策を設計する。
オフライン展開はブランドの魅力を伝えられる店舗に絞り込み
オフラインでは、単純に出店店舗数を増やすのではなく、ブランドの魅力が伝わる陳列や棚位置、POP展開ができる小売先に絞り込む。SNSでの実績を営業現場からバイヤーへ伝え、店頭販促につなげる取り組みも進めた。
以前はさまざまな店舗に出店していたが、それではブランドの認知拡大にうまくつなげられなかった。こうした経験もあり、闇雲に広く商品を置くのではなく、什器や棚位置も含めてブランドの良さが伝わる売り場を選ぶことが重要だと実感した。SNSで話題になっていることを小売り側にしっかり伝えると、店頭施策にもつながりやすくなる。(内田氏)
POSデータやECのカート追加数、お気に入り数などの先行指標を確認しながら、どの施策がどのチャネルで成果につながるのかを検証し、効果の高い施策を拡大する。SNS、EC、店舗を一連の流れとして設計し、施策ごとの反応を見ながら改善するPDCAも、成長を支える要素となっている。
単なる自動化ではない! 全プロセスを支える「AI基盤」の全ぼう
少人数運営を支える大きな柱がAIだ。AnyMindではAIを個別業務の効率化ツールとして使うだけではなく、ブランド運営全体の基盤として組み込んでいる。
AI活用対象は、市場分析、SNSトレンドの把握、CEP分析(消費者が商品を思い出したり、購入を検討したりするきっかけ・状況を分析する手法)、インフルエンサー選定、広告運用、クリエイティブ制作、CSの自動化、売上・在庫データの分析まで幅広い。
特に「アドバンスドクリニカルズ」のブランド運営におけるAI活用は、大きく3つに整理できる。
1つ目は自動化。従来は手作業で行っていたトレンド収集やリサーチ、相性の良いインフルエンサーの抽出などを高速化する。
SNSのトレンドは流れが速すぎて、人の目だけで追うのは限界がある。AIでトラッキングし、外部要因や季節要因も含めてデータとして蓄積することで、雰囲気ではなく根拠を持ってブランドとして再現性のある施策に変えられる。(内田氏)
2つ目は分析。蓄積されたデータを対話形式で引き出しながら、誰に・どのチャネルで・どの訴求が響くのかを可視化する。3つ目はクリエイティブ。伸びている動画や他社事例を分析・言語化し、再現性のある動画構成やコピー案に落とし込む。デザイナーがゼロからすべてを作るのではなく、AIでたたき台を量産し最終調整を人が担うことで、制作スピードと品質の両立を図る。
「なんとなく伸びそう」という感覚で判断するのではなく、「どのような要素がある動画が伸びるのか」を言語化し、インフルエンサーにも共有できる形にしている。そこまで落とし込むことで、再現性のあるクリエイティブを量産しやすくなる。(Brand Commerce Associate Brand Manager 伊東朋希氏)
AIが見つけた「夏のボディクリーム」という勝ち筋
AI活用の象徴的な事例が、ボディクリームの「UVリカバリー市場」を作った取り組みだ。
一般にボディクリームは冬場の保湿商材とみなされ、夏は需要が落ちる。一方、AnyMindはAIを活用した市場トレンドや消費者インサイトの分析を通じて、多角的な視点から新たな訴求機会を抽出。得られた示唆をもとに、従来の発想にとらわれないマーケティング施策を立案・実行した。競合が手薄な時期に、集中的に投稿や販促を行った結果、夏場でも強く売れる市場ポジションを確立した。
AIがいくつもの切り口を提案してくれるなかで、どこに勝ち筋があるかを見極めて投資するのは人の役割だ。UVリカバリーはその象徴的な例で、夏場に他社があまり投資しない領域を押さえることができた。(伊東氏)
Brand Commerce Associate Brand Manager 伊東朋希氏
ここで重要なのは、AIが勝ち筋を自動的に決めたわけではないことだ。AIが提示したインサイトや仮説が妥当なのかを消費者目線で検証し、どこに投資するかを判断するのは人が担う。
つまり、AIによって分析や仮説づくりの速度を高め、その先の意思決定を人が担う。これが少人数でもブランド運営を回すためのカギであり、人とAIの役割を明確に分担することにつながっている。
AIと人による役割分担。人間しかできない「高付加価値業務」へ集中する体制づくり
AI活用では、出力を鵜呑みにしないことも重視している。AIが出したインサイトや仮説が本当に妥当なのかを消費者目線で問い直し、最終的な意思決定は人が行う。また、個人情報を含むデータを扱うため、セキュリティにも細心の注意を払っている。
AnyMindが重視しているのは、個人がそれぞれAIを使いこなすことではない。AIを活用することを前提に、ブランド運営そのものを再設計することだ。
AI活用は、各自がチャットで壁打ちする段階で終わってはいけない。フローや仕組みそのものをAI前提で再構築し、経営陣が責任を持って推進することが重要だ。(内田氏)
少人数でブランドを運営するには、人を増やして業務量を吸収するだけではなく、「そもそも人が行う必要のある仕事なのか」を見極める必要がある。共通業務は仕組み化・共通化し、AIで分析や制作などのスピードを高める。そのうえで、ブランド固有の戦略や重要な意思決定には人が集中するということだ。
「アドバンスドクリニカルズ」の成長は、単純な「少人数で効率よく運営する」という話ではない。人が担う仕事を絞り込み、共通化できる業務とAIで支援できる業務を切り分けることで、少人数でもブランドの成長に必要な機能を維持する運営モデルといえそうだ。
AnyMindは今後、「アドバンスドクリニカルズ」のさらなる成長に加え、同ブランドで得た成果や知見を他ブランドにも展開し、ブランド事業の成長につなげていく方針だという。成功要因を再現可能な形で分析・標準化し、自社のインフラを活用しながら他社ブランドへの支援にも生かしていく考えだ。



