15.8兆円の2025年物販系EC市場。食品3.3兆円、アパレル・家電2.8兆円など全ジャンルの市場規模&EC化率まとめ

経産省の調査によると、2025年の物販系BtoC-EC市場規模は前年比3.97%増の15兆8233億円だった。食品、飲料、酒類が3兆3332億円で最大となり、アパレルや家電、生活雑貨など各ジャンルで市場規模とEC化率の差が鮮明になった。経産省の分析をもとに、主要ジャンルごとの特徴を整理する。

鳥栖 剛

7:30

経済産業省が10月21日に発表した「令和7年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、2025年の物販系BtoC-EC市場規模は前年比3.97%増の15兆8233億円、EC化率は前年比0.13ポイント増の9.80%だった。BtoC-EC市場全体の27兆6000億円のうち最大の分野で、日本のEC市場を支える中心領域となっている。

15.8兆円の2025年物販系EC市場。食品3.3兆円、アパレル・家電2.8兆など全ジャンルの市場規模&EC化率まとめ
物販系分野のBtoC-EC市場規模とEC化率の推移(市場規模の単位は億円)

ジャンル別では、「食品、飲料、酒類」が3兆3332億円で最大。これに「衣類、服装雑貨」の2兆8941億円、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」の2兆8829億円、「生活雑貨、家具、インテリア」の2兆6258億円が続いた。

15.8兆円の2025年物販系EC市場。食品3.3兆円、アパレル・家電2.8兆円など全ジャンルの市場規模&EC化率まとめ
物販系分野における商品ジャンルごとのBtoC-EC市場規模

一方、EC化率にはジャンルごとに大きな差がある。「書籍、映像・音楽ソフト」は57.93%と突出して高く、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」は43.08%、「生活雑貨、家具、インテリア」は31.73%。一方、最大市場の「食品、飲料、酒類」は4.66%にとどまる。市場規模が大きいジャンルと、EC化が進んでいるジャンルは必ずしも一致しない。

経産省の分析をもとに、主要ジャンルの市場規模とEC化率、成長の背景を整理する。

食品、飲料、酒類

「食品、飲料、酒類」の2025年のBtoC-EC市場規模は、前年比6.96%増の3兆3332億円。物販系で最大の市場となった。EC化率は4.66%だった。

経産省は、食品は鮮度管理の難しさなどからECでの販売が伸びにくいカテゴリーである一方、市場は拡大しており、ネットスーパーの成長が大きく寄与していると分析する。新型コロナウイルス禍をきっかけに広がった、食品や飲料をECで購入する消費行動が定着し、利便性への認識が高まったことも追い風になっているという。

また、オーガニックやヴィーガンなど、特定の志向に対応した商品の需要に対し、一般的なスーパーの店頭だけでは満たしきれない品ぞろえをECが補完している点も成長要因の1つとしている。加えて、2025年はコメ価格の急騰など物価上昇の影響もあり、名目ベースの市場規模を押し上げた側面がある。

参入企業も幅広い。総合スーパー(GMS)やEC専業事業者によるネットスーパー、EC大手、飲料専門事業者、従来型通販、菓子メーカー、酒類販売業、百貨店などに加え、日用品メーカーなど異業種からの参入も見られる。競争環境は多様化している。

生活家電、AV機器、PC・周辺機器等

「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」の2025年のBtoC-EC市場規模は、前年比5.05%増の2兆8829億円。EC化率は43.08%で、物販系の中でも高い水準にある。

経産省は、このカテゴリーの特長として、仕様や性能が明確で、購入前の情報収集や比較を通じて商品を理解しやすい点を挙げている。食品やアパレルのような「経験財」とは異なり、スペックや価格を比較して購入する「探索財」に当たるため、ECとの親和性が高いという位置付けだ。

市場では、Amazonなどの大手ECプラットフォームと、大手家電量販店・通販事業者との競争が続いている。物流力も競争優位を左右する要素で、短時間配送を実現する配送網の整備や大型物流センターの拡充が、市場拡大を支えてきたと分析している。

書籍、映像・音楽ソフト

「書籍、映像・音楽ソフト(オンラインコンテンツを除く)」の2025年のBtoC-EC市場規模は、前年比1.14%減の1兆8495億円だった。今回の調査で、物販系の主要カテゴリーのうち市場規模が唯一縮小した分野となった。EC化率は57.93%で、物販系では最も高い。

ただし、EC化率の高さとは裏腹に、市場構造そのものの変化が進んでいる。紙の出版市場は長期的な縮小傾向が続いており、巣ごもり需要で一時拡大した書籍ECも、2022年以降は伸びが落ち着いている。電子出版市場も拡大基調から横ばい傾向に移りつつあり、こうした動きが市場規模の微減につながった要因の1つと経産省はみている。

映像・音楽ソフトでも、DVDやブルーレイなどの物理メディアは縮小傾向にある。背景にあるのは動画配信サービスの普及だ。パッケージ商品の販売が減少する一方、月額課金型の動画配信サービスは伸びており、映像・音楽分野では消費の軸がパッケージ販売からオンライン配信へと移っている。

このカテゴリーは、物販系ECの中でEC化率が最も高い一方、「モノ」として販売する市場自体が配信サービスに置き換わる構造変化にも直面している。EC化率だけでは捉えきれない市場の変化が進んでいる分野といえる。

化粧品、医薬品

「化粧品、医薬品」の2025年のBtoC-EC市場規模は、前年比4.90%増の1兆647億円。EC化率は9.11%だった。

このカテゴリーには、化粧品全般、医薬品、美容・健康関連器具などが含まれる。市場は拡大しているものの、EC化率はほかの主要カテゴリーと比べて高くない。経済産業省はその背景として、日本ではドラッグストアなどの店頭販売が充実していることや、化粧品には比較的安価な商品が多い一方、カウンセリングを伴う対面販売に適した商品も多いことを挙げている。

スキンケア、ベースメイク、メイクアップ、香水、オールインワンなど商品領域が幅広く、無添加、オイルフリー、エイジングケア、保湿といった訴求ポイントも多様だ。オンラインで説明しやすい商品がある一方、実際に試したり、店頭で相談したりしたいという需要が強い商品もある。カテゴリー内でECとの親和性に差がある。

医薬品については、制度改正により、一般用医薬品の多くがインターネットで販売できるようになった。市場規模はまだ大きくないものの、EC売上は伸びている。発毛剤やビタミン剤など、店頭で購入しにくい商品や、急いで購入する必要性が比較的低い商品はECとの親和性が高く、今後の成長余地が期待されるとしている。

生活雑貨、家具、インテリア

「生活雑貨、家具、インテリア」の2025年のBtoC-EC市場規模は、前年比2.51%増の2兆6258億円。EC化率は31.73%だった。

このカテゴリーには、食器・台所用品などの家事雑貨、洗剤やティッシュなどの家事用消耗品、一般家具、カーテンなどのインテリア用品、寝具類が含まれる。

経産省によると、日用品や雑貨はコロナ禍のストック需要を背景としてEC利用が拡大したが、2022年以降は伸びが落ち着き、2025年もその傾向が続いているという。

一方、生活雑貨や日用品は、まとめ買いや定期購入との相性が良く、EC化の余地は大きい。継続的な需要をどうECで獲得するかが、今後の成長の鍵になる。また、家電量販店など異業種のEC事業者が、既存の顧客基盤を生かして日用品の取り扱いを強化するクロスセル戦略も、市場拡大を後押ししている。

家具・インテリアもECとの親和性が高い。店頭では陳列スペースに限界があり、消費者にとっても大型商品を持ち帰るのは容易ではないため、ECでの購入が進みやすい。実店舗で商品を確認し、購入はECで行うといった行動も広がっている。

こうした背景から、店舗とECを融合するOMO戦略の重要性が増している。在庫の最適化や販売機会の損失防止など、事業者側にもメリットがある分野としている。

衣類、服装雑貨

「衣類、服装雑貨」の2025年のBtoC-EC市場規模は、前年比3.43%増の2兆8941億円。EC化率は24.08%だった。

このカテゴリーには、インナーウエア、アウターウエア、靴、鞄、宝飾品、アクセサリー、子供服、スポーツ用品などが含まれる。アパレルEC市場は、ZOZOTOWNに代表されるECモール型と、ユニクロなど大手企業が展開する自社サイト型を中心に構成されている。

経産省は、2020~2021年にかけてコロナ禍を背景に市場が大きく伸びた一方、2022年以降はその勢いが落ち着いていると分析する。背景には、消費者意識の変化もある。ファッション業界では環境負荷への関心が高まり、エシカルファッションやサステナブルファッションへの注目とともに、短いサイクルで服を買い替えるのではなく、気に入った服を長く着る価値観が広がっているという。

また、アパレルはサイズ感、色味、質感などを実際に確かめたいニーズが強い「経験財」であり、ECには根強い障壁がある。事業者側は、体型データを活用したサイズ提案機能や、購入後のサイズ・色交換の無料化などで対応を進めている。こうした取り組みがECの利便性と信頼性を高め、中長期的な市場拡大を支えるとみられる。

物販系ECは市場規模やEC化率に加え、成長の背景を読むことが重要

2025年の物販系EC市場では、食品が最大で、アパレル、家電、生活雑貨・家具が続いた。ただし、各カテゴリーで市場を動かす要因は大きく異なる。

食品はネットスーパーの拡大や生活必需品需要、家電は商品比較のしやすさや物流力、書籍・映像・音楽ソフトは高いEC化率と配信シフト、化粧品・医薬品は対面販売の強みと制度改正、生活雑貨・家具は継続需要とOMO、アパレルは試着できないという課題への対応が、それぞれ市場構造を形づくっている。

物販系ECを読み解く際は、市場規模やEC化率の大小だけでなく、商材の特性や市場を動かすプレイヤー、成長の背景まで押さえることが重要といえそうだ。

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