鳥栖 剛[執筆] 9/30 7:30

経済産業省が9月25日に発表した「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、2023年のBtoC-EC市場規模は24兆8435億円で前年比9.23%増。物販系分野のBtoC-EC市場規模は、同4.83%増の14兆6760億円、EC化率は同0.25ポイント増の9.38%となった。

経済産業省が9月25日に発表した「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」
物販系分野のBtoC-EC市場規模とEC化率の経年推移(画像は経産省の報告書から編集部がキャプチャ)

物販系分野のBtoC-ECで最も市場規模が大きかったのは「食品、飲料、酒類」で、同6.52%増の2兆9299億円。「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」が同5.13%増の2兆6838億円、「衣類・服装雑貨等」が同4.76%増の2兆6712億円、「生活雑貨、家具、インテリア」が同5.01%増の2兆4721億円で続いた。

上位4カテゴリの合計市場規模は同5.39%増の10兆7570億円で、物販系分野におけるBtoC-EC市場の73.3%を占める。2022年の4カテゴリ合計の市場規模は10兆2073億円で、シェアは72.9%だった。

経済産業省が9月25日に発表した「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」
物販系分野内での各カテゴリの構成比率(画像は経産省の報告書から編集部がキャプチャ)

最もEC化率が高かったのは「書籍、映像・音楽ソフト」で53.45%。「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」が42.88%、「生活雑貨、家具、インテリア」が31.54%で続いた。市場規模が最も大きい「食品、飲料、酒類」のEC化率は4.29%。

調査におけるEC化率は、電話、FAX、E メール、相対(対面)なども含めた全ての商取引金額(商取引市場規模)に対するEC市場規模の割合と定義している。

経済産業省が9月25日に発表した「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」
物販系分野のカテゴリ別BtoC-EC市場規模と(画像は経産省の報告書から編集部がキャプチャ)

食品、飲料、酒類

市場規模は同6.52%増の2兆7505億円で、EC化率は4.29%、構成比率は20%。コロナ禍によりECで食品で購入する消費行動が定着、ネットスーパー市場が拡大した。既存事業者がネットスーパー事業の強化を進めていることや、ネットスーパーの新規参入が増えたことが拡大要因と指摘している。また、健康食品もシニア層のECシフトが進みBtoC-ECで売上が拡大したと見ており、「今後も市場規模の拡大は継続する可能性が想定される」(報告書)としている。

生活家電、AV機器、PC・周辺機器

市場規模は同5.13%増の2兆6838億円で、EC化率は42.88%、構成比率は18%。外出が増え家電利用シーンが少なくなったこと、物価高などによる買い控えはあったものの、省エネ製品ニーズなどにより高単価商品の需要増などもあり、緩やかな伸びとなったとしている。今後の市場拡大にはリユース家電が寄与することが期待されるとした。

書籍、映像、音楽ソフト

市場規模は同3.54%増の1兆8867億円、EC化率は53.45%、構成比率は13%。コロナ禍による巣ごもり需要が終息したこと、物価高騰により趣味・娯楽品の1つである出版物への買い控えが発生し、2023年の市場規模の伸びは緩やかとなった。電子出版(電子書籍、電子雑誌)市場は引き続き拡大傾向で、2023年も同市場は本カテゴリの伸び率を上回った。映像・音楽ソフト(オンラインコンテンツを除く)は2023年のBtoC-EC市場は拡大したものの、サブスク配信などの伸長が影響しBlu-rayなどの出荷実績は横ばいだったとしている。

化粧品、医薬品

市場規模は同5.64%増の9709億円、EC化率は8.57%、構成比率は7%だった。外出機会の増加により、メイクアップ用品全般の支出が拡大。男性の美容意識が高まり、男性化粧品の市場も拡大している。一方、マスクや消毒液といった衛生商品の需要は減少した。ECの伸長は、コロナ禍による実店舗需要の減少に対応するためライブコマースやオンライン接客など「EC販売に大きく力を注いだ結果といえる」(報告書)という。医薬品のEC売上は規模はまだ小さいものの右肩上がりで伸びているという。オンライン診療や服薬指導が普及すれば、「一般用医薬品のネット販売に対する消費者の心理的ハードルが下がり、市場拡大が一層進む可能性も示唆される」(報告書)ともした。

生活雑貨、家具、インテリア

市場規模は同5.01%増の2兆4721億円、EC化率は31.54%、構成比率は17%。2022年からコロナ禍による需要増は一服し、伸び率は鈍化、2023年もその傾向が継続した。日用品分野についてはクイックコマースにおける取り扱いが拡大しているとし、新たな需要の取り込みにつながる可能性があるとしている。拡張現実(AR)の技術を使い、家具やインテリア商品を自宅の部屋に置いたイメージをスマートフォンで確認できる機能を提供する事業者が増えている。さらに、AIを活用してECサイト上で消費者の好みに沿った商品を提案する技術も進化しており、新たな需要の発掘が期待されるとしている。

衣類、服飾雑貨等

市場規模は同4.76%増の2兆6712億円。EC化率は22.88%、構成比率は18%。コロナ禍の影響が一巡し2022年に続き2023年も緩やかな伸びだったとしている。2023年は暖冬傾向もありアンダーウエアの不振などもあったという。ECでは各社が積極的に店舗と連動したOMO推進のほか、メタバースやNFT領域の進出が増えている。メタバースやNFTへの進出が同カテゴリの市場拡大に寄与する可能性があり期待が寄せられているとした。

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