【2023年の物販系BtoC-EC市場まとめ】市場規模は14.6兆円、EC化率は9.38%。スマホ経由は8.6兆円、スマホ比率は約59%に

2023年の物販系分野におけるBtoC-EC市場規模は14兆6760億円(前年比4.83%増)。そのうちスマホ経由は8兆6181億円(同10.0%増)で、スマホ比率は58.7%に達した。

鳥栖 剛[執筆]

2024年9月30日 7:00

経済産業省が9月25日に発表した「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、物販系BtoC-EC市場におけるスマートフォン経由の市場規模が堅調に推移した。

2023年の物販系分野におけるBtoC-EC市場規模は14兆6760億円(前年比4.83%増)。そのうちスマホ経由は8兆6181億円(同10.0%増)で、金額にして前年から7806億円増加。スマホ比率は58.7%に達した。商取引金額に対するBtoC-EC市場規模の割合を示すEC化率は9.38%で同0.25ポイント増。

経済産業省が9月25日に発表した「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」
BtoC-EC(物販)におけるスマートフォン経由の市場規模(画像は経産省の報告書から編集部がキャプチャ)

情報通信機器の保有状況(世帯)に関する統計データによると、2022年における世帯あたりのスマホ普及率は90.1%。パソコン保有率は低下傾向となっている。報告書では「BtoC-ECの市場規模が拡大するなかでPCからスマートフォンへの移行がさらに進んでいるものと見られる。当面は、スマートフォンを通じた電子商取引が物販系BtoC-EC市場規模拡大の要因となる状況が継続するものと考えられる」としている。

経済産業省が9月25日に発表した「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」
スマートフォン経由の物販のBtoC-EC市場規模の推移(画像は経産省の報告書から編集部がキャプチャ)

スマホ経由とPC経由の電子商取引の異なる特徴として、スマホアプリの存在を指摘した。スマホアプリの場合、プッシュ通知機能を用いて能動的にユーザーへコミュニケーションを図ることができ、ユーザーにとって利便性が高く、事業者もユーザーとより強いリレーションを構築でき得るチャネルであると説明。BtoC-EC事業の拡大には、ユーザーとの強いリレーション構築が重要な要素であり、存在感を増すスマートフォン経由の動線を確立することが欠かせないとしている。

報告書では、2023年度の国内BtoC-EC市場の特徴としてスマホ比率のほか「SNS活用のさらなる広がり」「実店舗の位置付け・役割の変化」「情報セキュリティへの根強い不安」についても指摘している。

SNS利用のさらなる広がり

買物の情報源としてのSNSの活用が広まっているとし、「SNSとECの連携が進み顧客の購買体験価値の向上につながっている」(報告書)と分析している。ECマーケティングにおけるSNS活用は、自社のターゲット層にリーチできるSNSを、年代別や利用動向を勘案して選択することが望ましいとした。

実店舗の位置付け・役割の変化

これまでもリアルとECの最適な融合が模索されてきたが、コロナ禍によって改めて実店舗の存在意義を再考し消費者の行動変化に対応する動きが見られたと指摘。2023年は消費者のリアル回帰が本格化したこともあり、「オンライン接客」「ショールーミング化店舗」「EC購入商品の店頭受け取り」といったリアルとECを融合させる取り組みがさらに進んだとしている。

情報セキュリティへの根強い不安

ECを取り巻くセキュリティ分野についても言及。クレジットカード不正による被害額は、2022年は436.7億円(一般社団法人日本クレジット協会調査)と過去最高だった。2023年も9月までの累計被害額は既に401.9億円となり、通年で過去最大の不正利用被害額を更新する可能性が高い。こうしたことが消費者側の懸念につながっていると指摘した。

経済産業省が9月25日に発表した「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」
クレジットカード不正による被害額は2023年に過去最高となる可能性が高い(画像は経産省の報告書から編集部がキャプチャ)

報告書では、業界側の取り組みとして日本クレジット協会が中心となって設立された「クレジット取引セキュリティ対策協議会」が2020年に「クレジットカード・セキュリティガイドライン」をとりまとめ、2023年3月には改訂版を発表していることに言及。ガイドラインには「クレジットカード情報保護対策分野」と「不正利用対策分野に関する対策」が記載され、加盟店・クレジットカード会社・国際ブランド・行政業界団体といった主体別の具体的な対策を策定するなど取り組みが進んでいることに触れている。

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