ECの法律「〇と×」 元経済産業省官僚・弁護士が教える3大モールの『規約』と『ガイドライン』に泣き寝入りしない方法

「Amazon」出店者は必見! アカウント突然停止を防ぐ「3段論法」とFBA返品トラブルの対処法

Amazonのアカウント突然停止やAIの定型文回答、FBAの悪質すり替え・返品トラブルにどう立ち向かうか? 30日前通知ルールやAIの壁を破る「3段論法」の反論術、補填ポリシー活用法まで、巨大モールに泣き寝入りしない実践的サバイバル術を弁護士が伝授。【第3回】

竹内 謙礼[執筆]

7:00

多くの出店者が警戒するAmazonのアカウント停止問題と、背後に立ちふさがるAIの壁に切り込みます。「身に覚えがないのに、ある日突然アカウントが停止された」「問い合わせてもAIで定型文しか返ってこない」――そのようなAmazonのブラックボックスな運用に対し、国はどのような視線を向けているのか詳しく解説します。デジタルプラットフォーム取引透明化法(特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律)が定める「30日前の事前通知義務」の真実から、AIの誤検知を突破する「3段論法の反論術」、さらにはFBA(フルフィルメント by Amazon)で多発する悪質な「すり替え・返品トラブル」への具体的な防衛策まで、巨大なアルゴリズムに泣き寝入りしないための実践的なサバイバル術を椋木エラン弁護士が伝授します。

聞き手・執筆:竹内謙礼(経営コンサルタント)

有限会社いろは 代表取締役。大学卒業後、出版社に勤めた後に観光牧場に転職。企画広報担当を経て2004年に経営コンサルタントとして独立。「楽天市場」「ビッダーズ」などで多くのネットビジネスの受賞履歴あり。また、「千葉文学賞」などの小説、エッセイでも数々の受賞暦を持つ。

話し手・椋木エラン氏(メリットパートナーズ法律事務所 弁護士/元経済産業省官僚)

メリットパートナーズ法律事務所(https://www.meritopartners.jp/)で、EC事業者・EC支援事業者の支援に注力。特許や商標、意匠などの出願から紛争まで取り扱っている知的財産関係を専門としている。2022年に内閣官房へ出向、「スマホソフトウェア競争促進法(いわゆるスマホ新法)」の企画・立案に関与。その後、経済産業省に移り、「透明化法」の主にECモール分野における執行・運用に携わった。現在はメリットパートナーズ法律事務所に戻り、EC分野の法務支援に力を入れている。

突如襲うアカウント停止リスク、透明化法が定める「30日前事前通知ルール」と理由開示の真実

竹内氏竹内

Amazonは出店者に対して、ペナルティや退店の措置をどのように通告しているのでしょうか。

椋木椋木

Amazonの場合、管理画面に「アカウント健全性スコア」が公開されており、「楽天市場」と同様、出店者が現在の退店リスクを可視化できる体制が整えられています。ちなみに、楽天とAmazonの大きな違いとして、ペナルティにともなう違約金が、制度としてAmazonには設けられていません。

竹内氏竹内

現状の退店リスクをスコアでチェックできることはとてもありがたいことです。ただ、「何の前触れもなく、いきなりアカウントを止められてしまった」という声を耳にする機会も少なくありません。Amazonから指摘された理由が具体的ではなく、分かりづらいという声も多いです。事前に告知するルールなどは定められているのでしょうか。

椋木椋木

そこが今、経産省でも注視している「突然のアカウント停止」の問題です。本来、透明化法には法律としての最低ラインが定められており、プラットフォームが一方的にアカウントを停止する場合、原則として「30日前までに通知すること」と「その理由を開示すること」というルールが決められています。これにプラットフォーム側が違反すると、一発で透明化法違反になり、勧告等につながり得る重い規定が定められています。

竹内氏竹内

つまり、問答無用で出店者を退店させることは、プラットフォーム側にとっても透明化法違反となる大きなリスクのある事案なんですね。

椋木椋木

もちろん、反社会的勢力との関係やセキュリティ上の重大な問題など「例外事由」に該当する場合は、事前通知をしなくてもいいルールにはなっています。しかし、そうしたイレギュラーなこと以外は、絶対に出店者に対して事前通知をしなければいけない取り決めになっています。 そのようななかで、あるプラットフォームでは、過去に一定期間以上の取引を行っていない状態にあった一定数の利用事業者に対して、事前通知のないまま一斉にアカウントの削除を行ったり、契約期間満了に基づく更新拒絶を行った際にその理由を通知していなかったりすることがありました。その点について経産省からも厳しく指導していたこともあり、最近ではプラットフォーム側もかなり慎重に精査した上で、退店を通告するようになっています。

竹内氏竹内

たとえば、プラットフォームから退店処分を受けて、アカウントが削除されても、透明化法の相談窓口を通じて経産省から指導が入れば、数か月前の話であっても、再び出店者として復活することができるのでしょうか。

椋木椋木

ケースバイケースですが、しっかり証拠がそろっていて、明らかにプラットフォーム側に退店処分の判断に誤りがあれば、復活する可能性もあると思います。場合によっては、なぜそのような不合理な退店処分をしてしまったのか、経産省からプラットフォーム側に報告をさせるケースもあり得ます。

竹内氏竹内

そこまで厳しいのに、なぜ今でも退店のトラブルが絶えないのでしょうか。

椋木椋木

まず、初歩的なミスも少なくないと思っています。たとえば、2025年にあった事例でいえば、プラットフォームの担当者が例外事由の解釈を間違えており、事前通知をせずに出店者のアカウントを停止してしまったことがありました。一方で、出店者側のミスもあり、ガイドラインの内容の誤解、スタッフが間違って禁止商品をアップしてしまったり……苦情が寄せられて調査をしてみると、退店処分を受けた側にも問題があるケースが多々あります。

竹内氏竹内

もっと具体的に「〇〇をしたらダメですよ」とガイドラインなどで明記したほうが、出店者も意識して運営できるようになるのではないでしょうか。

椋木椋木

そのお気持ちはよく理解できます。しかし、退店理由を明確にしすぎてしまうと、今度はハック、つまり裏技で穴をかいくぐられるリスクがプラットフォーム側に出てきてしまいます。「ここには〇〇と書いているけれど、解釈によっては△△は大丈夫ですよね」と、法の抜け穴を突いて悪用する事業者が出てくる可能性もあります。いつの時代も法律を逆手にとって悪用する人はいますからね。

「AIによる誤検知・定型文回答」の壁を打ち破る、 担当者を納得させる「3段論法」の反論術

竹内氏竹内

Amazonのような巨大企業から指摘を受けると、「間違っているのは私たちではないか」と尻込みしてしまい、窓口への相談を躊躇してしまう人もいると思います。

椋木椋木

プラットフォームの膨大なガイドラインをすべて読み込んで、完璧に理解することは一般の人には難しいと思います。そのため、出店者に厳しい処分が下されると、「私たちは悪いことをしたんだ」と思い込んでしまう人も少なくありません。 ただ、特に最近のプラットフォームはAIで規約違反のネットショップを検知している場合もあり、“誤検知”によるトラブルも発生しています。「身に覚えがないのに退店させられた」と相談を受けてプラットフォームに照会を求めると、「AIによる誤検知でした」というケースは増えています。まだAIも100%正確に規約違反を検知できるレベルではないですし、プラットフォーム側の担当者のミスも考えられるので、もし、プラットフォームから処分を受けた場合には、処分の通知やアカウント健全性ダッシュボードを確認し、心当たりのない指摘と思ったら、窓口に一度相談されることも一考したほうが方がいいでしょう。

竹内氏竹内

AIが導入されたことによって、出店者だけでなく、プラットフォーム側もどのようなロジックで検索や広告が運用されているのかわからない部分もあるのではないでしょうか。場合によっては、出店者が改善を求めても「AIが勝手にやっていることだから」と言い逃れができてしまうのではないかと心配になります。

椋木椋木

透明化法では、AIを理由にプラットフォームが「知らぬ存ぜぬ」を貫き通せない仕組みになっています。AIを用いていようがいまいが、たとえば、検索順位における主要なパラメーターは開示することが義務付けられているので、「AIが勝手にやっていることだからわからない」という言い訳は通用しません。また今後は、主要パラメーター通りに検索結果や広告が運用されているか、プラットフォーム自身による検証の実施状況を国がチェックしていく、という方法も考えられるのではないでしょうか。

竹内氏竹内

AIの進化によって透明化法の認識や対処法も、今後、大きく変わっていきそうですね。

椋木椋木

その認識は強く持っています。特に最近は、AIによる機械的な判定や、いわゆる「AIによる定型文の回答」に対する出店者からの苦情が増えています。私の関わった事例として、出品者があるプラットフォームからポリシー違反の指摘を受け、30日前の通知もなく突然アカウントが停止されてしまう事案がありました。 その出品者は身に覚えがなく、すぐにプラットフォームに問い合わせをしたのですが、定型文のメール返信が繰り返されるのみで、具体的な回答は得られなかったそうです。その後、相談窓口を経て経産省から照会したところ、突然アカウントが復活したのですが、その出品者は何がポリシー違反だったのか最後までわからず、ただただ機会損失のダメージだけを被ることになってしまいました。

竹内氏竹内

まさにAIによるブラックボックス化ですね。そのような事案が起きた時、出品者はどのように対処すればいいのでしょうか。

椋木椋木

制度として反論の機会が与えられても、単に「私は悪くない」と感情的に訴えるだけではAIの壁、そしてその裏にいる担当者を突破することはできません。実際のプラットフォームの審査実務、特にAmazonなどにおいて有効なのは、「3段論法」で論理的に改善策を提示することです。

  1.  第1段階:根本原因の特定 処分の通知やアカウント健全性ダッシュボードを参照しつつ、「仕入れは正規ルートだが、商品カタログの一部がAIの真贋判定フィルターに規約違反として検知される構造になっていた」「購入者の誤解を招く表現が含まれていた」など、客観的な原因を出品者側で特定します。 
  2. 第2段階:即時対応の実績 指摘を受けたらすぐに該当商品の出品を停止し、正規ルートの証明となる請求書を提出したり、疑義を生じさせる文言を修正したりして、物理的な対応実績を記載します。 
  3. 第3段階:再発防止策の提示 「仕入れ時の検品体制の強化」や「月1回のカタログのコンプライアンスチェックの導入」など、具体的な業務フローの改善を明記します。 

    こうしたプラットフォーム側でも確認できる客観的な材料をそろえれば、AIではなく、その裏にいる人間の担当者が「この店舗は悪質な違反行為を繰り返すリスクがない」と判断し、AIの壁を突破することができるようになります。

退店などの通知が来た場合の「三段論法」
退店などの通知が来た場合の「三段論法」

竹内氏竹内

AIへの対処法も、「冷静に判断する」という気持ちが大切なんですね。

椋木椋木

「これはAIによる誤検知だ」と思った場合は、まずは処分の通知や、Amazonの管理画面(セラーセントラル)の「アカウント健全性ダッシュボード」を確認して下さい。AmazonのAIがどのポリシー(知的財産権侵害なのか、真贋に関する懸念なのかなど)にフラグを立てたのかを分析することが、問題解決の第一歩になります。その上で、客観的な証拠をきっちりそろえて、Amazonのテクニカルサポートなど、通知文などに書いてあるコンタクト先に申請するのが最もスピーディな対応になるでしょう。もし、それでも埒が明かなかった場合に、透明化法の窓口から相談してください。

出店者は相談窓口から相談することができる(https://www.online-mall.meti.go.jp/)
出店者は相談窓口から相談することができる

FBAで多発する「すり替え・使用済み返品」トラブル、泣き寝入りを防ぐ「補填ポリシー」活用法

竹内氏竹内

Amazonの「FBA(フルフィルメント by Amazon)」における返品・返金のトラブルも絶えません。置き配で購入者から「商品を受け取っていない」と言われて確認もせずに返金してしまったり、返品できない商品を勝手に受け付けてしまったり、FBAは購入者にとって便利なサービスである半面、その仕組みの強引さには不満を漏らす出店者も少なくありません。

椋木椋木

FBAに関するトラブルは、透明化法の窓口にも多数の相談が寄せられています。たとえば、配達証明書や写真があるのに返金されてしまったという場合に、経産省を通じてAmazonに照会が入り、出店者側にお金が補填されたケースがありました。また、商品のパッケージが損傷し、新品でなくなったものを返品されてしまった場合なども、照会をかけることがあります。

竹内氏竹内

最近は、購入者が古い商品や別の商品を箱に入れて送り返してくる「すり替え」や、使った後に不良品として戻してくる「使用済み返品」の問題が多発しています。倉庫側でしっかり検品されず、店舗側は商品の損失と返品手数料のダブルパンチを食らうという悲痛な声も耳にします。

椋木椋木

その点も経産省では大きな課題として取り上げています。FBAによる一貫した購買体験の理念から、商品に落ち度がないのに「気に入らない」「思っていたのと違う」という理由だけで、全額返金を自動決定してしまうケースが過去にはありました。Amazonが十分な事実確認をせずに返品を受け入れてしまっているという出品者からの苦情も寄せられているところです。

竹内氏竹内

そうした出店者の損失に対して、国はAmazonへ何かしらの追及を行っているのでしょうか。

椋木椋木

もちろん行っています。そして、直近のモニタリング会合で、Amazonは国に対して「悪質な返品への対策を行い、返品時の調査プロセスを整備している」といった趣旨の回答をしています。これは、購入者の言い分だけを鵜呑みにせず、返品理由をきちんと精査する体制にしているとも受け取れます。

竹内氏竹内

それは大きな進歩ですね。

椋木椋木

なので、もし理不尽な返品やすり替え被害に遭った場合は、「FBA在庫の補填ポリシー」に基づく申請を徹底して行うようにしてください。もっとも、窓口に「ひどい」「詐欺だ」と感情的に訴えても一次窓口に弾かれるだけなので、発送前の商品の重量や梱包状態がわかる写真・データ、納品時の商品のシリアルナンバー、そして手元に返送されてきた商品の写真などを用いて、すり替えられた商品とは別物であることを証明する客観的証拠をそろえて提出することが重要になります。 

Amazonが国に約束した返品理由の精査プロセスを盾に、エビデンスをそろえて主張することが重要になります。また、もしAmazonの窓口経由での再審査が通らなかったとしても、その後、相談窓口を通して照会した結果、補填が行われたケースもあります。「FBAだから仕方がない」と諦める必要はありません。

経済産業省が行ったEC事業者向けのアンケート調査によると、3大モールにおいて約4〜5割の出店者は商品の返品、返金でトラブルを経験している。特に、FBAを展開するAmazonでのトラブルが突出していることが伺える。(2025年度 オンラインモール分野 デジタルプラットフォーム利用事業者 アンケート調査結果より) https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_platform_monitoring/pdf/2026_001_s03_01.pdf
経済産業省が行ったEC事業者向けのアンケート調査によると、3大モールにおいて約4〜5割の出店者は商品の返品、返金でトラブルを経験している。特に、FBAを展開するAmazonでのトラブルが突出していることが伺える。(2025年度 オンラインモール分野 デジタルプラットフォーム利用事業者 アンケート調査結果より)

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