瀧川 正実 2022/2/28 7:00
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「アカウントを削除された」「手数料を一方的に変更された」「サイト内検索の結果が恣意的だ」――。公正取引委員会が2019年に実施したオンラインモールの取引実態調査で指摘された、こうしたECモール出店事業者の声。経済産業省がECモールと出店者の公正な取引を実現するため、出店事業者が抱える不満などを相談、支援するための“場”を設けたのをご存じだろうか?

経産省の委託を受けた公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)が運営する「デジタルプラットフォーム取引相談窓口(DPCD)」は、出店者の相談に応じ、課題の解決に向けた支援を行う。これまで“泣き寝入り”するしかないとの声も聞かれていたECモールへの不満に対応する「DPCD」の活動内容、利用方法、利用メリットなどについて解説する。

モール出店者の相談窓口「デジタルプラットフォーム取引相談窓口(DPCD)」とは

2021年2月に施行された、デジタルプラットフォームにおける取引の透明性と公正性の向上を図る「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」(透明化法)。デジタルプラットフォーム運営事業者に対し、取引条件などの情報開示、運営における公正性確保、運営状況に関する報告を義務付けている

規制の対象となるデジタルプラットフォーム運営事業者は、総合物販オンラインモールでは前年度の国内流通総額が3000億円以上、アプリストアでは2000億円以上のプラットフォームを運営する事業者。2021年4月時点で、ECモールではアマゾンジャパン、楽天グループ、ヤフーの3社が指定されている。

透明化法の規制対象企業(2021年4月時点)
透明化法の規制対象企業の条件や指定フロー

透明化法の実効的な運用を図るための取り組みとして設置されたのが「デジタルプラットフォーム取引相談窓口」。運営を担うJADMAは、特定商取引法の第30条に位置づけられた通信販売における自主規制などの中心的な業界団体で、1984年から通販に関する消費者からの相談窓口を開設し、年間約4000件の相談に応じている。2004年からは事業者からの相談にも対応している

なお、「デジタルプラットフォーム取引相談窓口」への質問・相談は専用フォーム、メール、電話、FAXで受け付けている。

デジタルプラットフォーム取引相談窓口

対応日時:平日9時~12時、13時~17時(土日・祝日・年末年始などを除く)
問い合わせ先https://www.online-mall.meti.go.jp/
メールアドレスinfo@online-mall.meti.go.jp
電話番号:0120-088-004
FAX:03-5962-3907

上記の方法で質問・相談した際、「デジタルプラットフォーム取引相談窓口」ではさまざまな支援で出店事業者の課題解決を試みる。主な内容を1つずつ解説する。

デジタルプラットフォーム提供者への質問・相談方法に関するアドバイス(過去事案も踏まえた対応)

専用フォーム、メール、電話、FAXで寄せられた内容に対し、窓口の専任相談員が対応。課題解決にあたって必要と判断される場合には、相談者の了解を得た上で、各ECモールの専任担当者とやり取りし、出店事業者の相談・質問の解決を試みる。

提供された情報については、相談者の承諾を得ない限り、経済産業省以外の第三者に「デジタルプラットフォーム取引相談窓口」から共有することはない。安心して相談してもらえるよう配慮している。

弁護士の情報提供・費用補助

弁護士を通して課題の解決などを行いたい出店事業者に対して、弁護士の紹介と初回相談料を補助する。

JADMAのネットワークで抱える、特商法や通信販売ビジネス、ECプラットフォームに詳しい弁護士などを紹介。その弁護士に相談する場合の初回費用(上限あり)を、「デジタルプラットフォーム取引相談窓口」が負担する。

複数の相談者に共通する課題を抽出し、解決に向けて検討

出店事業者から寄せられた質問・相談内容を集約。寄せられた内容を共通事項ごとにまとめていく。スムーズに充実した回答をできる体制を整えている。

なお、集約された情報は、経済産業省が行うモニタリング・レビュー(有識者等の意見を聞きながら、ECモールの運営状況を評価し、その自主取組を促していく枠組み)でも活用される。これにより将来的な取引環境改善につなげていく。

利用事業者向け説明会・法律相談会の実施

2021年5月、出店事業者向け「『特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律』に関するオンライン説明会」を実施。経済産業省、デジタルプラットフォーム取引相談窓口のほか、アマゾンジャパン、楽天グループ、ヤフーが登壇した。


「デジタルプラットフォーム取引相談窓口」からのメッセージ

ECモールの出店者のなかには、抱えている課題をどこに相談すればいいのか悩んでいる事業者もいると思いますが、「デジタルプラットフォーム取引相談窓口」は無料で相談や質問を受け付け、対応しているので、小さいことでもご相談ください

「相談をすると情報が漏れてしまい、ECモールからアカウント削除や指導を受けてしまうのでは」といった心配をする事業者もいらっしゃるかもしれませんが、提供された情報は「デジタルプラットフォーム取引相談窓口」内部で厳重に管理し、相談者の承諾を得ない限り、経済産業省以外の第三者に窓口から共有することはありません。経産省に提供した情報は、法律の運用や今後の政策立案などのために利用されます。安心して相談・質問をお寄せください。

経産省以外の第三者に情報を共有することはありません。小さなことでもご相談ください
デジタルプラットフォーム取引相談窓口

対応日時:平日9時~12時、13時~17時(土日・祝日・年末年始などを除く)
問い合わせ先https://www.online-mall.meti.go.jp/
メールアドレスinfo@online-mall.meti.go.jp
電話番号:0120-088-004
FAX:03-5962-3907

窓口に寄せられた質問・相談トップは「取引の全部拒絶(アカウント削除など)に関する事項」

「デジタルプラットフォーム取引相談窓口」の運用が始まったのは2021年4月。上半期(4月~9月)にオンラインモール利用事業者向け窓口(※窓口にはアプリストア利用事業者向け窓口もあり、そちらは一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラムが運用を受託している)には計474件が寄せられた

アプリストア利用事業者向け窓口と、経産省Webフォームを合わせると1601件。窓口に電話などで寄せられた相談・情報提供は245件、相談窓口が行ったヒアリングなどで寄せられた情報提供は1356件。

オンラインモール利用事業者向け窓口に寄せられたトップ3は、「取引の全部拒絶(アカウント削除など)に関する事項」が82件(17%)、「取引条件の変更に関する事項」が41件(9%)、「検索順位・ランキングなどに関する事項」が39件(8%)

オンラインモール利用事業者向け窓口に寄せられた相談・質問内容
  • 上記の情報提供件数は、デジタルプラットフォーム取引相談窓口において情報の内容に応じてカウントされた件数であり、ポジティブな内容やネガティブな内容等を含む

経済産業省は、窓口に寄せられた情報などをもとに、有識者等の意見も聞きながら、ECモールの運営状況の評価に向けて議論。議論を行う場は「デジタルプラットフォームの透明性・公正性 に関するモニタリング会合」。会合では、2022年秋頃をめどに評価を取りまとめる。ECモールの自主取組を促し、取引環境改善につなげていく

オンラインモール利用事業者向け窓口に寄せられた相談・質問内容

長きにわたって懸案事項だったECモールと出店者の取引

上述した「取引の全部拒絶(アカウント削除など)に関する事項」「取引条件の変更に関する事項」といった相談内容は、長きにわたってECモールと出店事業者の間で介在していた懸案事項でもあった。

遡ること2006年。公正取引委員会(公取委)は「電子商店街等の消費者向けeコマースにおける取引実態に関する調査報告書」を公表し、大手ECモール3社(当時は楽天、ヤフー、DeNAの3社)とその出店者の取引関係には、「優越的地位の濫用」「拘束条件付取引」など独占禁止法に抵触するおそれがある取引が存在すると指摘した。

公取委は資料公表後、調査を継続した。最終的な結論として2007年、大手ECモール事業者と出店者の間の取引関係について、独占禁止法に抵触する問題はないとの結論を出し、“シロ”判定を下している。

2006年の調査から、ECプラットフォームと出店事業者の間に課題があることを指摘していた

それから約15年が経過し、市場環境はガラリと変化。市場規模は一気に拡大し、ネットショッピングは一般的な買い物の手段に。プラットフォームに出店する事業者は、数万、数十万といった規模にまで増加し、過去の調査では名前があがっていなかったプラットフォームも勢力を拡大している。

2016年には公取委と経産省が共同で、電子商取引(コンテンツ関係含む)などオンラインビジネスに関連するプラットフォーム事業者と、そこで取引関係にある出店者などに対し、事業者間の取引実態などを把握するためのヒアリング調査を行った。

2018年には公取委がECモールでの取引実態に関する調査を実施した。2019年に公表した資料で、「公正取引委員会としては、消費者向けeコマース取引の動向について、特にオンラインモール運営業者による行為を中心に、情報収集に努めるとともに、独占禁止法に違反する行為に対しては厳正に対処していく」と指摘。

独占禁止法や公正な競争政策において問題になるおそれがある取引慣行として、プラットフォーマーが出店者に対する取引条件を一方的に変更することや、モール内検索アルゴリズムを明示しないことなどをあげた。

以下では、出店事業者がECモールとの取引で懸念事項としてあげていたいくつかの内容について、公取委の考え方をまとめた。

一方的な規約変更による取引条件の変更

出店料の引き上げや、新たなサービスの利用を義務化して利用手数料を設定するといった規約変更を一方的に実施し、出店者に不利益を与える場合には、独占禁止法上問題になるおそれがあると指摘。

公正な競争環境を確保するには、プラットフォーマーは規約を変更する際に、「変更内容を事前に通知し、十分に説明する」「規約変更について出品者から合理的な意見が寄せられた場合には、その意見をできる限り考慮する」「規約変更の通知から適用までに十分な期間を設ける」といったことが必要だとしている

取引先に不利益を与え得る行為について(公正取引員会の公表資料を編集部でキャプチャ)

検索結果や手数料などで自社・関連会社を優遇

モール内検索の表示順位や決済方法、手数料などの条件について、プラットフォームを運営している会社や、その関連会社を優遇した場合、独占禁止法上問題になる可能性があると指摘。

プラットフォーム運営事業者が取引の公正性や透明性を高めるために必要なこととして、「検索順位を決定する主なパラメータと、そのウエイトを明らかにする」「検索順位の上位を広告枠や自社関連商品にする場合、消費者に誤認を与えないよう、そのことを明らかにする」「手数料や表示方法などについて、自社や関連会社と、出品者との間で公平に取り扱う。異なる条件にする場合には、その内容や理由を出品者と消費者に明示する」といった見解を示している

競合事業者を排除し得る行為について(公正取引員会の公表資料を編集部でキャプチャ)

直販を有利にするためのデータ利用

ECモールなどの運営事業者が直販事業を有利にするために、プラットフォームを運営・管理する立場で得た販売データや顧客情報などを利用した場合、独占禁止法上問題となる可能性があると指摘。公正な競争環境を保つには、プラットフォーマーや関連会社は、デジタル・プラットフォームの運営管理を通じて得た販売情報や顧客情報などの利用の有無、利用目的、利用範囲などについて、出品者や消費者に明示する必要があると指摘している。

取引データを利用した運営事業者の直接販売について(公正取引員会の公表資料を編集部でキャプチャ)
◇◇◇

「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」(透明化法)の実効的な運用を図るために設置された「デジタルプラットフォーム取引相談窓口」は、長きにわたってECモールと出店事業者の間で介在していた懸案事項を解消する“場”としての機能が期待される

ECモールとの取引で悩み、課題などを抱えている企業はぜひ、「デジタルプラットフォーム取引相談窓口」を活用してもらいたい。窓口は「どんな小さいことでも質問、相談してほしい」とコメントを寄せている。

デジタルプラットフォーム取引相談窓口

対応日時:平日9時~12時、13時~17時(土日・祝日・年末年始などを除く)
問い合わせ先https://www.online-mall.meti.go.jp/
メールアドレスinfo@online-mall.meti.go.jp
電話番号:0120-088-004
FAX:03-5962-3907

「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」とは

「透明化法」は2021年2月に施行。デジタルプラットフォーム運営事業者に対し、取引条件などの情報開示、運営における公正性確保、運営状況の報告を義務付け、評価・評価結果の公表といった必要な措置を講じるとしている。

「透明化法」で指定されたデジタルプラットフォーム運営事業者(特定デジタルプラットフォーム提供者)は、取引条件などの情報の開示、自主的な手続・体制の整備を実施。その措置や事業の概要について、自己評価を付した報告書を毎年提出する必要がある。

1. 取引条件などの情報開示

特定デジタルプラットフォーム提供者に対し、契約条件の開示や変更時の事前通知などを義務付ける。

2. 自主的な手続・体制の整備

特定デジタルプラットフォーム提供者は、経済産業大臣が定める指針を踏まえ、手続・体制の整備を実施する。

3. 運営状況の報告と評価

特定デジタルプラットフォーム提供者は、上記1と2の状況と自己評価を経済産業大臣に毎年報告する。経産大臣は報告書に基づき運営状況を評価し、評価結果を公表する。

行政庁と特定デジタルプラットフォーム提供者の役割

楽天グループは2021年4月、「透明化法」の指定を受け、「楽天市場」運営における基本的な事項を明確化し、出店店舗に向けて情報を開示。「検索順位を決定する基本的な事項」「出店店舗のデータの利用」などの項目を出店者に公開している。また、出店店舗が「楽天市場」の運営について苦情や紛争を申し立てることのできる専用窓口も新設した。

ヤフーは、外部有識者で構成する「デジタルプラットフォーム事業者情報開示の在り方検討会」を2020年に立ち上げた。検討会による提言を踏まえ、「『Yahoo!ショッピング』にて開示しているユーザー向け・ストア向けの『おすすめ順について』の記述について、背景や理念を明確化して補足」などの取り組みを実施し、2020年12月までに対応が完了したとしている。

「透明化法」では今後、デジタル広告も規制対象に追加する見通し。こうした方針を踏まえて、経産省は次のような考えを示している。

相談受付の体制整備などの枠組みは、対話を促していく役割を担うはず。デジタルプラットフォームを提供する事業者とそれを利用する事業者間のコミュニケーションが進み、お互いの状況を理解しながらともに課題を解決してともに成長していく。そういったWin-Winの関係を築いて行くことこそが透明化法において最も大切なポイントだと思っている。

経済産業省の考えなどは「JADMA NEWS 第381号」で詳細を閲覧できます
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