渡部 和章 2019/11/13 11:00

公正取引員会(公取委)は10月31日、ECモールなどデジタル・プラットフォーマーの取り引きに関する実態調査の結果を公表した。独占禁止法や公正な競争政策において問題になるおそれがある取引慣行として、プラットフォーマーが出店者に対する取引条件を一方的に変更することや、モール内検索アルゴリズムを明示しないことなどを上げた。

一方的な規約変更による取引条件の変更

出店料の引き上げや、新たなサービスの利用を義務化して利用手数料を設定するといった規約変更を一方的に実施し、出店者に不利益を与える場合には、独占禁止法上問題になるおそれがあると指摘している。

公正な競争環境を確保するには、プラットフォーマーは規約を変更する際に、「変更内容を事前に通知し、十分に説明する」「規約変更について出品者から合理的な意見が寄せられた場合には、その意見をできる限り考慮する」「規約変更の通知から適用までに十分な期間を設ける」といったことが必要だとしている。

公正取引員会(公取委)は10月31日、ECモールなどデジタル・プラットフォーマーの取り引きに関する実態調査の結果を公表
取引実態と評価―取引先に不利益を与え得る行為について(画像は公正取引員会が公表した資料を編集部がキャプチャ)

検索結果や手数料などで自社・関連会社を優遇

モール内検索の表示順位や決済方法、手数料などの条件について、プラットフォームを運営している会社や、その関連会社を優遇した場合、独占禁止法上問題になる可能性があるとしている。

公取委は、プラットフォーム運営事業者が取引の公正性や透明性を高めるために必要なこととして、「検索順位を決定する主なパラメータと、そのウエイトを明らかにする」「検索順位の上位を広告枠や自社関連商品にする場合、消費者に誤認を与えないよう、そのことを明らかにする」「手数料や表示方法などについて、自社や関連会社と、出品者との間で公平に取り扱う。異なる条件にする場合には、その内容や理由を出品者と消費者に明示する」といった見解を示している。

公正取引員会(公取委)は10月31日、ECモールなどデジタル・プラットフォーマーの取り引きに関する実態調査の結果を公表
取引実態と評価―競合事業者を排除し得る行為について(画像は公正取引員会が公表した資料を編集部がキャプチャ)

直販を有利にするためのデータ利用

ECモールなどの運営事業者が直販事業を有利にするために、プラットフォームを運営・管理する立場で得た販売データや顧客情報などを利用した場合、独占禁止法上問題となる可能性があると指摘した。

公正な競争環境を保つには、プラットフォーマーや関連会社は、デジタル・プラットフォームの運営管理を通じて得た販売情報や顧客情報などの利用の有無、利用目的、利用範囲などについて、出品者や消費者に明示する必要があると指摘している。

公正取引員会(公取委)は10月31日、ECモールなどデジタル・プラットフォーマーの取り引きに関する実態調査の結果を公表
取引データを利用した運営事業者の直接販売について(画像は公正取引員会が公表した資料を編集部がキャプチャ)

政府はプラットフォーマー台頭時代のルール整備目指す

政府は2018年6月に閣議決定した「未来投資戦略2018」において、プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応するために必要なルールを整備する方針を打ち出した。これを受け、公取委と経済産業省、総務省は「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」を2018年7月に発足。2018年12月に「プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備の基本原則」を策定し、プラットフォーマーの取引実態に関する調査を実施するとした。

公正取引員会(公取委)は10月31日、ECモールなどデジタル・プラットフォーマーの取り引きに関する実態調査の結果を公表
本実態調査の要点について(画像は公正取引員会が公表した資料を編集部がキャプチャ)

公取委はオンラインモールやアプリストアの運営事業者を対象に、出品事業者との取り引きの実態を調査した。2019年1月23日に公取委のウェブサイト上に情報提供窓口を設置。2019年9月末までに、オンラインモールに関する情報は795件、アプリストアに関する情報は20件、その他の情報は99件が寄せられたという。

また、2019年2月から3月にかけて、出品事業者や消費者に対するアンケート調査を実施。さらに、プラットフォーマーや出品事業者に対する聴き取り調査も実施した。

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