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「ZOZOが着るだけで身体のサイズを測定できるスーツを開発した」──。こんな情報が舞い込んだのは2017年末のこと。「これは凄い!」と早速「ZOZOTOWN」で「ZOZOSUIT(ZOZOスーツ)」を購入した。200円という安さもあって注文が殺到し、開発にも時間がかかるということで発送まで時間を要する旨が伝えられたが、「待たされてもぜんぜんオッケー」という思いで、ワクワクしながらZOZOスーツの到着を待った。

そして4月下旬、「順次発送しています」というメールが届き、それから1か月後の6月初旬、ようやく我が家にZOZOスーツが届いた。

ついに到着! しかし……

ワクワクしながら封を開けてみる。公開されていた写真の通り、全身黒タイツに白の斑点模様。なるほど、これは予想以上に着るのが恥ずかしい代物である

しかし、それよりもZOZOスーツの使用を躊躇させたのは、予想よりはるかに測定方法が難しい点だった。

事前情報でなんとなく理解していたが、スマホを置いて何枚か写真を撮らなくてはいけない。その説明を読んだだけで「これは面倒くさそうだ」という思いになった。着用してみたもののそのまま袋に戻してしまい、「今度時間があるときに撮影しよう」と引き出しの中に閉まってしまったのだ。

そして、それっきりである――。

ZOZOスーツで体のサイズを測定するわけでもなく、「ZOZOTOWN」で商品を購入するわけでもなく、すっかりZOZOスーツに対して興味が失せてしまっていた。

興味を失ったのは自分だけじゃない?

そんなある日のこと、知人の女性ブロガーがFacebookにZOZOスーツの写真とともに「届いたらしいが、すでにもうどうでもいい感じで面倒くさい」と投稿しているのを目にした。「同じく」「封切らずに放置状態」という友達からのコメントが立て続けに書き込まれており、ZOZOスーツに対して興味を失っているのは自分だけではないことを初めて知った。

もしかしたら、同じような思いをしている人がいるのでは?

こんな興味がわき、アンケート調査を実施してみることにした。本当はお金をかけて1万人ぐらいを対象に壮大な調査を行いたいところだったが、そこまで本気モードになるほどの案件でもないので、アンケートフォームを自作。自分のFacebook友達(2,639人)と自社メールマガジンの読者(10,687人)に答えてもらうという、ほぼ身内に限定した調査にとどめることにした。

性別と年齢層を聞いたうえでZOZOスーツを購入した人だけに限定し、下記の3つの選択肢から回答してもらった。

  1. ZOZOスーツを着用して測定を行い、ZOZOTOWNで服を購入している
  2. ZOZOスーツを着用して測定したが、ZOZOTOWNで服を購入していない
  3. ZOZOスーツで測定していない(使用していない)

その結果、6月20日~6月28日までの間、アンケートに答えてくれた人は39名。そのうち「測定もして服も購入もした」と回答した人は12名となった。そして、「測定したけど服までは購入していない」という人が9名、私と同じように「購入したけど測定していない」という人は18名と3つの選択肢の中で最多となった。割合でいえば46%の人がZOZOスーツを購入したのにも関わらず、「利用していない」という結果になったのである。

ZOZOスーツで測定して服を買った:31%
ZOZOスーツで測定したけど服は買っていない:23%
ZOZOスーツで測定していない(未使用):46%
ZOZOスーツ購入者の利用状況(n=39)

もちろん、私のFacebookとメルマガを通じてのアンケート調査になるので結果が偏ってしまったことは言うまでもない。39名という対象人数もサンプル数としては参考にならない数値である。しかし、それでも46%という数字は「思ったより使っていない人が多いんだな」と解釈してもおかしくない調査結果となった。

なぜ、ZOZOスーツは前評判と違ってここまで利用されないのか?

アンケートで「ZOZOスーツを使っていない」と回答した人に対して、理由を尋ねたところ、私なりに仮説を立てることができた。

理由① 遅すぎた

まず「到着が遅すぎた」という点が大きいと言える。

私の場合、2017年11月22日に注文してから2018年6月6日に届いているので、商品発送まで半年かかったことになる。半年もたてばさすがに商品を購入した当初のワクワクしていた思いも薄れてしまい、「もういいや」という気持ちになった人も多かったはずである。恐らく、注文して1週間以内に届いていれば気持ちもホットだったはずなので、使用していた可能性は高かっただろう。

理由② 面倒くさい

想像していたよりも「測定方法が面倒くさい」というのが利用を躊躇させてしまった要因として考えられる。スマホを使って何枚も写真を撮らなくてはいけないというのは、アパレル店で店員にサイズを測ってもらうことが多い人にとっては、「もっと簡単に測定できると思った」という感想を持たれても仕方がない。

理由③ 恥ずかしい

3つ目の要因は「恥ずかしい」という点である。あの黒の斑点模様のスーツを着ることに気が引けて、着用すらしていないという人も多いのではないだろうか。一人暮らしならまだ問題はないが、家族と暮らしている人にとって、子どもや両親の前であのスーツを着用しなくてはいけないというのは、相当ハードルが高いように思われる。

ちなみに私の場合、冒頭でも書いたように着用してすぐに脱いでしまったのだが、実はこれには事情がある。すぐに体のサイズを測ろうとしたのだが、着用しているところを大学生の娘に見つかってしまい「マジうけるんですけど」と、パシャパシャとスマホで激写されるという“地獄絵図”のような状況に陥ってしまったのである。

ZOZOSUITを着用した筆者1(竹内謙礼氏)

名誉挽回のために「このスーツは体のサイズが測定できて、自分の体形に合った洋服を購入することができるんだよ」と説明したが、「そんなにファッションの意識高かったけ? マジうけるんですけど」と、再び激写されるという収拾のつかない状況に追い込まれた。

確かに娘の立場からすれば、自分の父親が斑点模様の全身黒タイツを着用して、リビングでくるくると回りながらスマホで自撮りしていたら家出したくなるかもしれない。どちらにせよ、自分の書斎のない肩身の狭い世のお父さんにとっては、このZOZOスーツを着用することは「ちょっと恥ずかしい」というのが、使用を躊躇させている理由として大きいように思われる。

ZOZOSUITを着用した筆者2(竹内謙礼氏)

理由④ 実はそんなに困ってなかった

4つ目の理由は「そんなに服のサイズに困っていなかった」という仮説である。確かに自分の体のサイズがわかればネットでもう少し洋服を買う機会は増えるような気がする。しかし、大抵のサイズ感はわかっているので、今までもネットで服を購入する際に「そこまで困っていたわけではない」という人が多かったのではないだろうか。その「そこまで」というのが、「全身黒タイツを履くほど困ってはいなかった」ということで、アンケートの結果に表れたように思う。

理由⑤ 200円だし、まあいいか

また、一着200円という低価格だったことも、「別に使わなくてもいいか、200円だし」という思いを利用者に与えてしまい、その結果、放置状態になってしまったのではないかと推測する。

それでもやっぱりZOZOスーツに期待する理由

なんだよ、ZOZOスーツってぜんぜんダメじゃん!

ここまで読んだ人の中には、そう思っている人がいるかもしれない。しかし、一方でこのアンケート結果から、ZOZOスーツの可能性を探ることができた。

今回のアンケート調査は私のメルマガとFacebookの読者が多いことから、年齢層が比較的高くなってしまったところがある。調べてみるとアンケートに答えてくれた人の平均年齢は36歳。40代が一番多く、10代の回答者はゼロ。20代に至っては2名しかいなかった。

つまり、今回のアンケート調査ではZOZOTOWNがターゲットとしている若年層にまったくリーチできておらず、その点を考えれば「中高年に評判が悪くて、若年層には評判がいい」ということも可能性としては考えられる。恐らく、ZOZOのヘビーユーザーに対してアンケート調査を行えば、逆転どころが大差で「ZOZOスーツを使用して、商品を購入している」という人が多くなるではないだろうか。

また、今回のZOZOスーツはあまりにもセンセーショナルな商品だったこともあり、興味本位で購入した人が多かったことも、アンケート結果に影響を与えたように思われる。つまり、もともとそんなに服に興味がない人がZOZOスーツを購入したことによって、「使っていない」「測定したけど購入していない」という結果に結びついてしまったところがあるのではないか。

ちなみにこの原稿を執筆した6月28日現在、若年層の利用者が多いといわれるメルカリにおいて、ZOZOスーツが新旧モデル合わせて434件も出品されていた。そのうち約6割の263件がすでに「SOLDOUT」となっており、それなりに若い世代の間では注目を集めていることがこの数字からも伺える。

初回購入者が興味本位でZOZOスーツを購入してしまったり、そもそも服に興味がない人が買ってしまったりしている可能性は高く、そういう意味でいえば、「ZOZOスーツって届いたけど使っていないよね」というのは、初期だけの現象であり、今後はその傾向が少しずつ弱まっていくのではないだろうか

おそらく今後、ZOZOスーツは改良を重ねて、さらに使いやすくなっていくはずである。前澤社長が率いるファッション業界のモンスター会社「ZOZO」が、このままの状態で終わることは考えにくい。測定方法から商品の選び方まで、さらにブラッシュアップされていくことは間違いないだろう。

また、利用者も今現在は興味本位の人が多いが、やがてアパレル店舗が少ない地方都市の中高生がZOZOスーツでサイズを測り始めると、本格的に利用者は拡大していくだろう特に成長期の中高生は短期間で体のサイズが変わるので、このような測定ツールは重宝されるに違いない

ファッションに興味のない中高年にも活路はありそうだ。今回、FacebookでのZOZOスーツに関する投稿を見てみると、私の回りだけかもしれないが、ダイエットや体形維持を目的としてZOZOスーツを着用している人が思いのほか多かった。今後、商品が改良されてZOZOスーツがスポーツウエアにアレンジされ、健康商材として販売されたら、また違ったマーケットを拡大させるチャンスにつながるかもしれない。

◇◇◇

このように、現時点では賛否両論のZOZOスーツではあるが、今後の展開によってはまだまだ面白くなりそうなので、引き続きウオッチングしていきたいと思う。大阪の写真スタジオまで借りて、プロのカメラマンにZOZOスーツを着用している写真をカラダ張って撮ってもらうほど気合も入れたんだし

ZOZOSUITを着用した筆者3(竹内謙礼氏)

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竹内 謙礼

有限会社いろは 代表取締役

竹内 謙礼(たけうち・けんれい)

1970年生まれ。大学卒業後、出版社に勤めた後に観光牧場に転職。企画広報担当を経て2004年に経営コンサルタントとして独立。楽天市場、ビッダーズ等で多くのネットビジネスの受賞履歴あり。また、千葉文学賞等の小説、エッセイでも数々の受賞暦を持つ。

大企業、中小企業のコンサルティングはもちろん、サイドビジネスや起業に対しての販促、営業、人材教育のアドバイスを行い、特に実店舗のキャッチコピー制作とネットビジネスへのコンサルティングには定評がある。また、低価格の会員制コンサルティング「タケウチ商売繁盛研究会」の主宰として、180社近いコンサルティング指導を日々行っている。

販促、企画、会計、投資の書籍執筆の他、新聞や雑誌等でも連載を持っており、ラジオのパーソナリティとしても活躍。商工会議所や企業での講演、企業での人材教育等、経営コンサルタントとして精力的に活動している。NPO法人ドロップシッピング・コモンズ理事長。著書多数(詳しくはこちら

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