AI経由のEC流入が5%へ。米国EC企業に学ぶ「AI訪問客」のCVRと消費行動
2026年終盤、大手ECサイトにおけるAI経由の流入シェアが約5%へと急増しています。7月には前年比62%増を記録し、訪問単価も53%高い「AI優良顧客」の存在が明確になりました。ノンアルコールビール、家具、ジュエリー、ギフトのECを手がける4社の最新データから、AI経由の顧客がもたらすCVRやAOVの変化、2027年に向けたEC戦略を解説します。
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2026年も終盤に入った現在、大手小売企業の動向を見ると、ECサイトへのAI経由のアクセスは全トラフィックの約5%を占めるようになっています。企業によっては、その割合が10%近くに迫りつつあるケースもあります。
AI経由のEC流入が5%へ倍増、2026年終盤の最新トレンド
米国のEC専門誌「Digital Commerce 360」の取材に応じた大手EC小売事業者にAIプラットフォームからのトラフィックについて聞いたところ、共通する数字が示されました。それは、2026年初め時点では各社とも全体トラフィックの2%未満にとどまっていたということです。
その調査からわずか1年足らず。AI経由のトラフィックは存在感を急速に高めており、大手EC小売事業者ではAI経由のトラフィックが、2026年7月単体で流入全体の約5%を占めるようになっています。
「Digital Commerce 360」の調査によると、2026年7月単体でAI経由のECトラフィックは前年同月比で62%増加。さらに、AIツールを経由して訪れた消費者が1回の訪問あたりに生み出す売り上げ(RPV)は、一般のユーザーよりも53%高いことが判明しています。
この記事では、「Digital Commerce 360」とReFiBuyが共同展開する「Top 1000 Database」の掲載企業を含む北米EC事業者4社の最新インタビューから、AI経由の流入が現場に与えるリアルな影響と最新動向を解説します。
EC事業者4社が明かす「AIトラフィック」のリアルな影響と変化
1. Bero(ノンアルコールビール)、計測の課題と今後の変化への期待

ノンアルコールビールブランド「Bero」でECソリューション・グロース担当シニアディレクターを務めるヒョジン・パーク氏によると、AI経由のトラフィック割合は「5%未満にとどまっている」ようです。
現時点のアクセス解析ツールは、AI経由のトラフィックが具体的にどこから流入しているかを正確にトラッキングできるほど高度化していません。(パーク氏)
そのため、セッションに関するレポートでは、AI経由の可能性があるトラフィックを特定するにとどまっています。
アクセスログの流入元URLを細かく分析すると「ChatGPT」などの記述が散見されるものの、現段階では目立った規模の伸びは観測されていません。(パーク氏)
AI経由のトラフィックが「それほど急速には増えていない」というBero。これはパーク氏にとって意外な結果でした。直近で確認した際にも、ほかのAI関連分野のような指数関数的な伸びは見られなかったと言います。
それでも、状況が変わる可能性があることはわかっています。3か月ごとに、何かが変わっています。(パーク氏)
2. Povison(家具EC)、当初の予想を超えるペースで急増

オンライン家具ECを運営する「Povison」のエイデン・リン創業者兼CEOは「AIプラットフォームからのトラフィックは、想定以上のスピードで拡大しており、無視できない成長チャネルになっています」と評価します。
Povisonは2026年、AI検索や生成AIによる商品発見の仕組みを全社EC戦略に導入しました。その結果、現在では全トラフィックの約5%がAI経由となり、2027年初めには10%に達する見通しです。
AI経由のユーザーは事前に十分な情報を得た上でサイトを訪れるため、短時間で比較検討し、迅速に意思決定を行います。特に価格に見合う実用性を重視しており、精度の高いレコメンドや迅速なサポートへの期待値が高まっています。(リン氏)
なお、Povisonは年末商戦(Cyber 5など)に向け、AIアシスタントから自社家具が推薦される機会を増やす施策を進めています。
3. La Joya Jewelry(ジュエリーEC)、CVRが通常3%から13%超へ向上

ラボグロウンダイヤモンドを取り扱う「La Joya Jewelry」の創業者であるニシット・マータ氏によると、年初に2〜3%だったAI経由トラフィックは、現在5〜6%まで拡大しました。
La Joya Jewelryで最も顕著な変化はコンバージョン率(CVR)の向上です。LLM経由で流入した顧客のCVRは、一般のオーガニック流入や有料広告経由の顧客に比べて10ポイント以上高く、通常CVR(約3%)に対し、AI経由では13%超という数値を記録しています。
わかったのは、こうしたトラフィックは目的が非常に明確で、通常のオーガニック流入や広告経由の流入よりもはるかに高い確率でコンバージョンにつながるということです。おそらく、「ここは良い企業だ」という情報を得た上で訪れているため、それを信頼しやすく、結果としてコンバージョン率も高くなるのだと思います。(マータ氏)
一方で、ジュエリー購入は予算があらかじめ定まっているため、AI経由であっても客単価(支出額)自体が大きく跳ね上がる傾向は見られません。
ジュエリーを購入する際には、誰もが自分なりの予算を決めています。あらかじめ使う金額を考えているので、150ドルや200ドル程度の安価なジュエリーでもない限り、一度に3点購入するといったことはほとんどありません。(マータ氏)
また、かつて必要だった「ラボグロウンダイヤモンドと天然ダイヤモンドの違い」といった初期段階の質問は減少し、事前に知識を得た高意図な顧客の訪問が増えています。
4. Edible Brands(ギフトEC)、「ChatGPT」が95%を占め、AOV(平均注文額)も上昇

ギフト専門EC大手の「Edible Brands」(「北米ECトップ1000社」182位、「AIコマースランキング」581位)のエリカ・ランダーソン最高デジタル責任者は、AI経由のトラフィックは全サイト訪問の10%未満であるものの、そのうちの約95%を「ChatGPT」が占めていると言います。
Edible Brandsでは、AI経由のトラフィックは、消費者が低価格の商品を求める傾向の影響を「やや受けにくい」そうです。AI経由の顧客による平均注文額(AOV)がサイト全体平均より5.50ドル高く、価格に過度に敏感でない優良層の獲得につながっています。
AI経由のCVRは5%を超えていますが、ギフト専門サイトであるEdible Brands全体の平均CVR(10%超)と比較するとやや低い水準となっています。これは「誰に何を贈るか」をあらかじめ決定して直接アクセスしてくるギフト購買顧客の意図が高いためです。

