特定のチャットボットより「外部の生成AI」を3倍使っている? データが示す企業のAI利用における3つの変化

米Gartnerの調査によると、顧客は企業提供のチャットボットよりも、サードパーティーの生成AIを使う可能性が約3倍高いという。AIに求められる役割が「回答」から「タスク実行」へ広がるなか、企業には顧客期待に沿ったサポート体験の再設計が求められている。

鳥栖 剛[執筆]

7月23日 10:30

米Gartnerが7月8日に発表した調査によると、カスタマーサービスの場面で、企業は特定企業が提供するチャットボットよりもサードパーティー製の生成AIツールを利用する可能性が約3倍高いことがわかった。

自社サイトやアプリ内に設置するチャットボットではなく、外部の生成AIを通じて問題解決を図る企業行動が広がっているという。こうした変化を踏まえGartnerは、企業に対してAI投資の方向性や顧客対応体験の再設計を求めている。

Gartnerが2026年2月から3月にかけて実施した調査は、BtoBおよびBtoCの企業に勤める3566人を対象に、カスタマーサービスにおける生成AIの利用実態を分析した。その結果、顧客行動には大きく3つの変化が見られた。

企業のAI利用における3つの変化

特定企業が提供するチャットボットより外部の生成AIを選択

1つ目は、多くの企業が特定企業が提供するチャットボットよりも、サードパーティー製の生成AIツールを選択していることだ。

サービスやサポートに関する問い合わせで、サードパーティー製生成AIツールを利用する企業は過去1年間でほぼ倍増。一方、特定企業が提供するチャットボットの利用率は、2022年以降、統計的に大きな変化が見られていないという。

米Gartnerのシニアディレクターアナリスト、エリック・ケラー氏は、「企業は生活や仕事の両面で生成AIを受け入れているが、それが企業提供のカスタマーサービス用チャットボットの利用増加にはつながっていない」と説明する。

その理由として、生成AIが一部のサービス対応を企業が管理するチャネルの外へ移行させている点を挙げている。

企業がAIに求めるのは「回答」から「タスク実行」へ

2つ目の変化は、企業が生成AIを単なる質問への回答を得るためだけでなく、実際の手続きを完了するためにも利用していることだ。

生成AIを利用する企業のうち58%が、自分に代わって何らかのタスクを完了させる目的で利用した経験があると回答した。BtoB環境では、この割合は74%に達する。

具体的には、予約手配、書類提出、アカウント情報の更新など、従来は企業自身が行っていた作業をAIに支援してほしいというニーズが高まっている。

AIサポートでも有人対応への切り替えを求める企業

3つ目は、企業がカスタマーサービスでAIを活用する場合でも、企業は必要に応じて人間の担当者へ接続できる選択肢を求めていることだ。

AIだけで完結するサポートではなく、状況に応じて有人対応へ移行できる柔軟性が、顧客体験を左右する要素になっている。

企業にとって重要なのは、AIを導入すること自体ではなく、AIと有人サポートをどのように組み合わせ、企業の問題解決につなげるかという設計だ。

AI投資は拡大する一方、財務リターンを得る企業は限定的

米Gartnerは別調査として、2026年1月から4月にかけて、さまざまな業界のシニアリーダー1303人を対象に調査を実施した。

その結果、サービス・サポート部門は2025年予算の中央値で12%をAIに投資しており、調査対象となった10部門のなかで最も高い水準だった。

一方で、AI活用によってプラスの財務リターンを得られていると回答したサービス・サポート部門のリーダーは24%にとどまった。

AIへの投資は進んでいるものの、期待した成果につながっていない企業も多いことが明らかになった。

成果を左右するのは技術力より「顧客期待との一致」

米Gartnerは、AI投資の成果が限定的な理由について、技術的な制約よりも「企業の期待とのズレ」が大きいと分析している。

エリック・ケラー氏は、単独のチャットボット導入を中心に考えるのではなく、デジタル・音声チャネル全体で企業の問題解決を支援するAI活用型のカスタマージャーニーに注力すべきだと指摘する。

今後、企業に求められるのは「AIチャットボットを導入したかどうか」ではなく、企業が求める行動支援型の体験を提供できているかどうかだ。

問い合わせへの回答だけでなく、実際の手続きや処理まで支援する“アクション指向”のカスタマーサービスへの転換が、AI時代の顧客体験向上の鍵になりそうだ。

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