ファーストリテイリング柳井社長が語った「世界一のブランドになる」決意とは
ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、「世界一のブランドになる」と改めて決意を表明。売上高10兆円も視野に入るなか、東南アジアでの成長やジーユーの再成長、人材・経営体制の変革を通じて、その実現をめざす考えを示した。
10月20日 7:00
ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は10月8日、2026年8月期の決算説明会で、「世界一のブランドになる」と改めて決意を示した。
ユニクロを中心にグローバルブランドとしての存在感が高まるなか、次の成長に向けて最も重要なのは、人材育成と経営体制の変革だと説明。売上高10兆円の実現も視野に入れながら、その先にある「世界一のブランド」への道筋を語った。

ユニクロは「グローバルブランドの入り口」に
柳井氏は、「LifeWear」に対する支持が世界各地で高まっているとした上で、「我々は今、改めて『世界一のブランドになる』と決意している」と表明。世界で最も愛されるブランドになるため、必要な改革を全力で進めていると強調した。「LifeWear」は、顧客の声を起点に商品を磨き込み、必要な商品を必要な量だけ、必要なタイミングで届けるという、商品開発から販売までを一体で設計する考え方。
その背景としてあげたのが、外部からのブランド評価の変化だ。米「TIME」誌が2026年4月、ユニクロを「世界で最も影響力のある企業100社」に初めて選出したことを紹介。さらに、インターブランドの「Best Global Brands 2025」では、ユニクロが初めて世界トップ100入りし、47位にランクインした。
柳井氏は、グローバルな影響力を持つメディアや第三者機関が、ユニクロを世界の有力ブランドとして評価するようになったことを大きな変化と位置付けた。
一方、現状は到達点ではなく、「グローバルブランドの入り口に立った」段階だと捉える。創業当時から「世界一」という目標は明確にあり、海外展開の成功を見込めたから掲げたわけではないと説明した。
国内の店舗数がまだ数十店で、売上高が100億円に満たない頃から、売上高3000億円を超えたら海外に進出すると決めていたという。ここまで成長できたのは偶然ではなく、「絶対にそうなる」と決め、計画を立て、行動し、自らを変えてきたからだと振り返った。
東南アジアなど成長市場で現地起点の商品づくり
次の成長領域として柳井氏が重視するのが、東南アジア・インド・オーストラリアだ。特に東南アジアについては、若年人口の比率が高く、ファッション感度も高いことに加え、中間層の拡大が見込める市場だと説明した。
ASEANの人口約6億9000万人のうち、2030年には中間層が約4億8500万人となり、全体の70%に達するとの統計を紹介。所得水準の向上に伴い、品質や着心地への要求が高まるなか、ユニクロが「最初に選ばれるグローバルブランド」になりつつあるとした。
実績面では、2026年8月期にタイで売上高1000億円を突破し、フィリピンも1000億円規模になったと説明。ASEAN各国で1000億円規模の売上高を実現し、さらなる成長をめざす考えを示した。
柳井氏が強調したのは、「日本で作って世界に売る」モデルからの転換だ。世界各地の暮らしを起点に新しいLifeWearをつくり、地域に密着した商品構成で顧客の期待に応える姿勢を鮮明にした。
ジーユーもグローバルブランドへの成長をめざす
グループ成長のもう1つの柱として柳井氏が挙げたのがジーユーだ。20周年を機に、2026年秋冬コレクションから本格的に生まれ変わり、ユニクロと並ぶグローバルブランドをめざすという。
ジーユーの使命は、「あらゆる人がもっと自由にファッションを楽しめる服」を届けることにある。ユニクロが「より快適な日常生活を実現する部品」だとすれば、ジーユーは「より自由に自らのスタイルを表現する部品」だと位置付けた。
ジーユーの強みとしてあげたのは、生産体制、素材調達、品質管理、物流、在庫管理、需要予測、店舗運営など、ユニクロが築いてきた仕組みをグローバルに活用できる点だ。そのうえで、商品やスタイリング、売り場では「ファッションの楽しさ」を提供するブランドを確立していくと説明した。
すべての店舗がゼロから再オープンするつもりで新しい価値を届けるとし、中長期的には売上高1兆円、さらにそれを超える成長も視野に入れる。
成長を支える「チーム経営」と経営人材の育成
柳井氏が講演で最も重要だと位置付けたのは、人材育成と経営体制の変革だ。ユニクロだけでなく、すべてのブランドが「グローバルワン・全員経営」「個店経営」を実現し、グループ全体で成長していくには、経営者の数が足りていないと指摘した。
その解決策として打ち出したのが、全社をチームで統括する「チーム経営」だ。世界各地で10人程度の経営チームを多数つくり、全世界で「グローバルワン・全員経営」を実践する構想を示した。
この文脈で柳井氏は、店長の仕事には企業経営の要素や経営者としての資質が数多く求められるとし、「優秀な店長」と「優れた経営者」は直結すると説明した。
世界中の店長から約200人の経営者候補を選び、そのトレーナーとなる「教え手となる店長」も選定。店舗経営を担える人材を育成するプロジェクトを進めていると明かした。
具体例として、9月1日付でユニクロ銀座店の幸田勇紀店長が、ファーストリテイリンググループで初めて現役店長として執行役員を兼任し、「グローバル営業教育責任者」を担う事例も紹介した。
人を育てることが最大の経営課題
柳井氏は、「人を育てる」ことが最大の経営課題だと強調した。「教育とは誰かを成長させる仕事と思われがちだが、一番成長するのは自分自身だ」と述べ、人に教えること自体が教える側の学びになると指摘した。
理念や哲学をしっかり受け継いだ人材の育成を進めるとともに、優れた人材を集めるには報酬水準も重要だと説明。継続的な高収益を実現し、社員の報酬も着実に引き上げていく企業をめざすとした。
また、短期的な株価の変動に一喜一憂せず、長期にわたって事業を継続し、社会の利益に貢献し続ける「Going Concern」が最も重要だという従来の考え方も改めて示した。安定した業績向上と長期的な企業価値の向上に責任を持つ姿勢は変わらないという。
ユニクロがグローバルブランドとしての評価を高め、東南アジアなどの成長市場で存在感を増すなか、ファーストリテイリングは現地の暮らしを起点にした商品づくりや、ジーユーの成長、人材育成と経営体制の変革を進めている。柳井氏の発言からは、世界で長く支持されるブランドをめざすうえで、商品や市場の拡大だけでなく、それを支える人材と組織づくりを重視する姿勢が垣間見える。
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