インフレ環境下で中高価格帯マーケットの成長が期待されている? ユナイテッドアローズの戦略とは

ユナイテッドアローズは、新中期経営計画で中高価格帯マーケットに経営資源を集中する方針を打ち出した。インフレ環境下でも「よりよいもの」を求める消費行動を追い風に、国内既存事業の成長、海外出店の拡大、非アパレル領域への展開を進める。

鳥栖 剛[執筆]

8:30

ユナイテッドアローズは、2027年3月期から2029年3月期までの新中期経営計画で、中高価格帯マーケットへの集中戦略を打ち出した。

インフレ環境下でも「より良いもの」にお金を使う消費行動が広がっていることを背景に、長期売上目標を従来の2500億円から3000億円へ引き上げた。新中計では、2029年3月期に連結売上高1850億〜1950億円、営業利益115億~125億円、ROE14.3~15.7%の達成をめざす。

インフレ環境下で中高価格帯マーケットの成長が期待されている? ユナイテッドアローズの戦略とは
長期売上目標を従来の2500億円から3000億円へ引き上げ(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

インフレ下で高まる「より良いもの」志向

ユナイテッドアローズは、外部環境の変化として中高価格帯マーケットの成長期待が高まっている点をあげる。

物価上昇が続くなかでも、趣味や娯楽など自己充足につながる分野では、品質や価値を重視して商品を選ぶ消費者が増えているという。

インフレ環境下で中高価格帯マーケットの成長が期待されている? ユナイテッドアローズの戦略とは
中高価格帯マーケットの成長性期待(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

トレンドマーケット(高価格帯・高感度)は客単価が約17%伸長し、ミッド・トレンドマーケット(中価格帯・アッパーマス)は客数が約36%増加した。主力ブランドである「UNITED ARROWS」「BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS」「green label relaxing」は、こうした市場変化を取り込みながら成長してきたとしている。

強みは「ヒト・モノ・ウツワ」と160万人超の顧客基盤

ユナイテッドアローズは、この3年間を通じて自社の競争優位の源泉を「ヒト・モノ・ウツワ」にあると整理。「ヒト」は感動を提供する接客・販売力、「モノ」は高付加価値商品の企画・調達力、「ウツワ」は好立地の店舗網と利便性の高いECサイトを指す。これらが相互に機能することで、高いブランド価値と160万人超の高感度顧客基盤という強固な資産を形成しているという。

新中計では、この強みを生かしながら、中高価格帯市場に経営資源を集中する。国内アパレル、海外アパレル、非アパレル事業を成長ドライバーと位置付け、「日本が誇る世界に向けた高感度・高付加価値グループになる」をテーマに掲げる。

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テーマは高感度・高付加価値グループ(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

国内アパレルは既存事業を軸に成長

国内アパレル事業では、「高感度顧客満足No.1ブランド」をめざし、既存事業の成長を軸とした戦略を進める。

前中期経営計画では国内既存事業の売上高が1541億円となり、長期ビジョンで想定していた水準に到達した。新中計では、2029年3月期に単体売上高1859億円、年平均成長率6.5%を計画。売上総利益率も前中計最終年度比1.2ポイント改善の53.1%をめざす。

売上成長については、客単価の上昇と客数増加の両立を図る。過去3年間は価格改定を実施しながらも客数を維持し、売上成長を実現しており、今後も品質向上を伴う価格戦略を継続する方針だ。

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国内事業は客単価の上昇と客数増加の両立を図る(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

出店・改装と「UA3.0」で収益性向上

店舗戦略では、新規出店に加えて移転・改装を積極的に進める。前中計期間中の単体売上高は30.1%増加したが、そのうち13.8ポイントは新規出店による効果だった。さらに、移転・改装した店舗の売上高は前年比約18%増と既存店平均を大きく上回った。

インフレ環境下で中高価格帯マーケットの成長が期待されている? ユナイテッドアローズの戦略とは
店舗の新規出店戦略(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

新中計では、トレンドおよびミッド・トレンドマーケットで約55店舗を新規出店し、アウトレットを含め約40店舗を移転・改装する計画。顧客接点の拡大と購買体験の向上を図る。

加えて、2025年4月に稼働した商品管理基幹システム「UA3.0」を活用し、原価管理の高度化や在庫配分の最適化を推進。販売機会ロスの削減や商品消化率向上につなげ、収益力を高める考えだ。

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商品管理基幹システム「UA3.0」の概要(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

海外は中国・台湾を中心に拡大

海外アパレル事業では、「高感度顧客を世界に広げる」をテーマに、中国と台湾を重点市場と位置付ける。

中国では、「UNITED ARROWS」「BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS」「Drawer」などを展開し、3年間で8店舗を出店、売上高31億円を計画する。台湾では「green label relaxing」「CITEN」を中心に12店舗を出店し、売上高27億円を見込む。さらに、フランチャイズ、卸売、越境ECを活用してその他地域でも事業を拡大。海外事業全体で売上高70億円を計画している。

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海外展開の戦略概要(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

中国大陸1号店となる上海店は初年度売上高が計画を上回り、客単価も5万円超と国内の高価格帯店舗と同水準だった。商品品質や接客サービスへの評価も高く、中高価格帯市場の成長余地を示す結果となったという。

非アパレル領域やM&Aも成長ドライバーに

アパレル以外のライフスタイル領域では、「高感度顧客との新たな接点づくり」をテーマに事業拡大を進める。

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アパレル以外にも事業領域を拡大させる方針(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

主要顧客である30~40代は、旅行やレジャー、外食などへの消費意欲が高いことから、アパレル以外の分野でも新たな価値提案を行い、顧客との接点拡大を図る。

M&Aも成長戦略の選択肢として位置付けており、高感度顧客基盤を生かしたライフスタイル提案を広げることで、顧客生涯価値(LTV)の向上につなげる考えだ。

OMO戦略で会員基盤とLTVの拡大をめざす

新中計では、OMO戦略も重要な柱に位置付けている。ユナイテッドアローズは、高感度顧客との関係性を深め、安定的な収益基盤を構築するために、集客・OMO・CRMを一体で推進する方針を示した。

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OMO戦略の概要(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

まず集客では、データやAIを活用し、ターゲットである高感度顧客層に対して精度高くアプローチすることで、店舗への入店客数やECのセッション数を増加。次にOMOでは、商品管理基幹システム「UA3.0」を活用した在庫配分の最適化により、欠品や過剰在庫を抑えながら、販売機会ロスの最小化と購買体験価値の向上をめざす。さらにCRMでは、UAクラブの購買・行動データを活用してパーソナライズを強化し、来店頻度や1人当たり購買額の向上につなげ、顧客生涯価値(LTV)の最大化を進める。

こうした集客・OMO・CRMのサイクルを回し続けることで、稼働会員数を現在の164万人から200万人へ、会員売上高を1200億円へ拡大する目標を掲げている。OMO戦略は、実店舗とECをまたいで顧客接点を強化し、中高価格帯マーケットでの成長を支える基盤施策と言えそうだ。

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