自社ECサイトの広告媒体化で収益アップを実現した米国EC企業のリテールメディア事例
オンライン小売事業者「PulseTV.com」の成長戦略の1つは、他の小売事業者に向けて広告を販売し、収入を得ることです。
- 2022年のアフィリエイトからの広告収入、PulseTVの利益の3割を占めるようになった。
- 広告収入は、11月と12月のホリデーシーズンに35,000ドルに上った。
コロナ禍によって工場や港の閉鎖が過去の出来事になりました。2022年は従前と比較すると、安定した状態でオンライン通販事業者のオペレーションが行われました。ただ、2022年において小売事業者の新たな闘いは、インフレや燃料価格の上昇といった要因への対処です。
燃料費の高騰は「PulseTV.comの利益面を圧迫している」とジャファー・アリCEOは言います。また、送料や手数料も「劇的に上昇した」そうです。この問題に対処するため、PulseTV.comは自社ECサイト上での競合企業の広告販売、他の販売事業者のECサイトでの広告販売を開始しました。
PulseTV.comは、ダイエット、家庭用品、電子機器などさまざまなカテゴリーの商品を、割引価格で提供するオンライン通販事業者です。2020年はコロナ禍の最中、個人防護具(PPE)の提供へと戦略を転換した大きな年でした。
2020年には数百万個のマスクと、60mLのスプレータイプから4Lサイズまで、数十万個の手指消毒用ボトルを販売しました。(アリ氏)
この戦略が功を奏し2020年の平均注文額(AOV)は51.24ドルに上昇。アリ氏は、コロナ禍に合わせて販売したPPE商品がけん引したと考えています。その後、AOVは苦戦を強いられています。
2022年のAOVは35.71ドルで、2021年の39. 78ドルから減少。コロナ禍前の2019年のAOVは36.61ドルでした。
燃料費の高騰で、PulseTV.comは配送料金の値上げも行いました。2021年に7.54ドルだった送料は、2022年6月には9.59ドルにまで増やしました。
競合企業とアフィリエイト向け広告を相互に展開
PulseTV.comは2019年、顧客がリンクをクリックするとアフィリエイトを利用する小売事業者のECサイトに移動するアフィリエイト用広告の販売を開始しました。PulseTV.comは、移動先の商品売上からマージンを獲得しています。
また、アフィリエイト先のECサイトにも、PulseTV.comの商品紹介リンクを掲載してもらい、それらが売れた場合、アフィリエイトマージンを支払います。
PulseTV.comは300万人のメール購読者に「本日のお買い得品」メールを配信しているほか、有名人のゴシップ、ビットコイン、車など15種類のニュースレターも配信。これらのメールにもアフィリエイトリンクを含んでいます。
アフィリエイトメールを毎日配信しているわけではないものの、頻繁にアフィリエイトメールを送信しているそうです。「在庫の状況にもよりますが、Eメールを送信するときは、何かしらのプロモーションを提供しています」
#競合企業と相互プロモーションと相互競争
PulseTV.comは、自社ECサイト上に外部の広告を表示することを許可しています。戦略は、競合他社に自社ECサイト上の広告スペースを販売し、収益を上げることです。同時にPulseTV.comは、競合他社のECサイト上にもアフィリエイト広告を掲載し、自社製品の販売を行います。その結果、2022年の広告収入はPulseTVの利益の30%以上を占めました。
我々は別のオンライン通販事業者のECサイトにトラフィックを送り、商品が売れた場合にその収益の何パーセントかを獲得しています。(アリ氏)
正確な数字は明らかにしませんでしたが、カンナビジオール(CBD:大麻やヘンプに含まれ、薬用として使われることもある)商品の広告を含む取引が成功しているそうです。
広告収入は月平均2万ドルから2万5千ドル。11月と12月のホリデーシーズンには3万5千ドルにも達します。
AmazonやWalmartも広告を売っています。ですから、我々も広告を販売することにしたのです。(アリ氏)
Amazonの広告収入は、2021年に312億ドル(米国1人当たり約96ドル)に達し、全体の総収入の約7%を占めました。Walmartは2021年に21億ドル(米国では1人当たり約7ドル)の広告収入を得ています。
Amazonに対抗するための方法などありません。プロモーションも競争も、さまざまな企業が絡み合う相互プロモーションと相互競争なのです。(アリ氏)
PulseTV.comは今後、SMSのテキストサービスを増やす予定です。現在9万1000人以上の加入者に毎月120万通のテキストメッセージを送信しています。