ネットショップ担当者フォーラム 2026 セミナーレポート

エージェンティックサーチ時代のEC戦略。なぜ今、検索とUGCの強化が不可欠なのか

AIがECと購買行動を変えつつあるいま、検索とUGCの重要性についてZETAの山崎氏が解説

小林 義法

7:00

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AIがECの新たな顧客接点となるなか、人間の検索とは比較にならない大量かつ複雑なアクセスに対応する「AI-Ready」なECサイトの構築が早急に求められている。カギを握るのが、AIの不確実性を補う「エージェンティックサーチ」と、判断の根拠となる「UGC(ユーザー生成コンテンツ)」の融合だ。ZETAの山崎徳之氏が、AI時代の検索・UGC活用や、商品詳細ページの整備など、EC企業が取るべき最新戦略を解説する。

ZETA 代表取締役社長 山崎徳之氏

AI時代に価値が高まる検索とUGC

検索は購買行動の起点の1つである。サイト上でユーザーが自らのニーズを入力する行為は、ほぼ検索に限られている。ECサイトでは「右上に検索ボックスが付いていれば十分ではないか」といった声もあるが、実際にはそうではない。商品検索は、ユーザーの意図を的確に捉え、最適な商品との出会いを生み出すための基盤。検索とはユーザーとの対話であり、この基盤を適切に構築できなければ、機会を大きく損失する可能性がある。(山崎氏)

ZETA 代表取締役社長 山崎徳之氏
ZETA 代表取締役社長 山崎徳之氏
ECサイトにおける検索の価値
ECサイトにおける検索の価値

検索と同様、UGC(User Generated Content/ユーザー生成コンテンツ)も極めて重要な要素である。UGCの中核は商品やサービスに対するレビューであり、近年ではハッシュタグの活用も広がるなど、ユーザーが登録するデータの重要性が高まっている。

UGCは購入の後押しをする
UGCは購入の後押しをする

かつてインターネットのトラフィックは、企業からユーザーへ流れる「下り」のデータがほとんどを占めていた。しかし現在では、SNSやCGM(Consumer Generated Media/ユーザー生成メディア)の普及で、ユーザーから企業へ向かう「上り」のデータ量が大きくなっている。

AIが変えるECと購買行動

米国の調査会社EMARKETERは、AI経由の小売EC売上高が2029年には1444.5億ドルに達するという調査結果を発表した (出典:『EMARKETER Forecast』2025年12月) 。これは全米のEC売上高全体の8.8%にあたる数値であり、AIがECの新たな顧客接点となる可能性を示している。

しかし、特性を理解しないでAIを利用するとさまざまな問題が生じる。たとえばハルシネーションによって存在しない商品や仕様を提示してしまう可能性がある。また、在庫や価格などの最新情報を正しく参照できず、誤った回答を返す可能性もある。さらに、生成AIは非決定性を持つため、同じ質問でも回答が揺らぎ、提示する商品が安定しないといった課題も発生する。

AIの不確実性がECに与える影響
AIの不確実性がECに与える影響

こうした特性を踏まえると、生成AIをECの購買体験にそのまま適用するだけでは不十分であることがわかる。AIを安全かつ正確に購買体験へ組み込むためには、AI自身が結果を検証し、必要に応じて再探索する仕組みが不可欠だ。

こうした課題を解決する鍵となるのがエージェンティックサーチである。エージェンティックサーチは、AIが一度生成した結果を自ら評価し「情報が不足している」「誤っている可能性がある」と判断した場合に、再度検索へ戻る仕組みを備えている。この自己検証プロセスがあることで、生成AIの不安定さを補い、より信頼性の高い回答を導くことができる。エージェンティックサーチは、AIを購買体験に安全に組み込むための重要な仕組みの1つと言える。

エージェンティックサーチの概要
エージェンティックサーチの概要

AI時代に求められる検索の量と質

エージェンティックサーチの次に重要になるのが「検索そのものをAIがどう扱っているか」という視点である。とりわけ「ChatGPT」は、生成AIの代表的存在でありながら、検索機能の強化に大きく舵を切っている。その背景には、LLM(大規模言語モデル)単体ではユーザーの需要に応えきれないという現実がある。

数年前「これから検索は不要になる」と語る人がいたが、実際はAIの裏側で膨大な検索が行われるようになった。かつてはクロールの頻度が低く、検索も比較的ゆっくりだったため負荷は限定的だったが、AIが高頻度で検索を繰り返すようになり、状況は大きく変わった。当社の顧客に「最近検索の負荷が異常に高い」と相談を受けて調査したところ、その約9割がAIによるアクセスだったというケースがある。(山崎氏)

AI検索の裏側には高度な処理技術がある
AI検索の裏側には高度な処理技術がある

AIが検索を多用するようになり、検索の量が変わったが、量だけではなく質も変わってきた。かつてユーザーがECサイトで検索していた頃は、「ワンピース」「白」「S」というように、ニーズを表す単語を入力してきた。しかしAIはまったく異なるアプローチを取る。

たとえばユーザーが「来週、友人の結婚式の二次会で軽井沢に行く。ふさわしい服装を探している」と入力したとする。AIはこの一文から、来週の軽井沢の気候や季節感、結婚式の二次会にふさわしいフォーマル度、移動手段など、膨大なコンテキストを自動的に抽出する。このコンテキストが増えたことで、検索に利用される情報量は人間の検索とは比較にならないほど膨大になる。

つまり、これからのECサイトに求められるのは「AI-Ready」であることだ。AIは驚異的な速度で検索するため、検索の機能、性能、処理速度には、従来とは比較にならないレベルが求められる。AIが大量かつ複雑な検索を行う時代に対応できる検索基盤を備えていなければ、ユーザー体験の質を維持することが難しくなる。

UGCが回答の質を支える

検索の高度化だけでは十分ではない。AIがより適切な判断を行うためには、検索結果の根拠となるデータの質が極めて重要になる。そこで鍵となるのがUGCである。

海外では「重要なのはコンテキストとオーセンティシティ(信憑性・信頼性)」だと指摘されている。このオーセンティシティに最も寄与するのがUGCだ。実際に商品を購入したユーザーが何を語っているか。その声は、AIにとっても人間にとっても極めて価値が高い。(山崎氏)

ECサイト上で収集・蓄積されるUGCは、企業にとってファーストパーティデータとして活用でき、写真・動画・レビューなどのリッチなコンテンツを含む。AIが高度なコンテキストを処理できるようになった今こそ、ECサイトはUGCを検索に統合し、AIが参照できる信頼性の高いデータを豊富に蓄積しておく必要がある。

AI時代のECでは、検索の高度化とUGCの充実が欠かせない要素である。どちらが欠けても、ユーザーが求める精度の高いレコメンドや商品提案は成立しにくくなるのだ。

UGCが保有するユーザー情報は多岐にわたる
UGCが保有するユーザー情報は多岐にわたる

AI時代のECでは、検索とUGCが密接に結びつき、ユーザー体験の質を左右するようになっている。アパレル商品では1商品に1000件以上の口コミが寄せられることもある。だが1000件もの口コミをすべて読むことは現実的ではない。そこで現在のECサイトでは口コミそのものを検索できるようになっている。

口コミには投稿者の年齢、性別、体型などの属性情報が記載されていることが多いため、ユーザーは自分と似た属性の人の口コミを検索し、参考にする。海外ではさらに細分化が進み、目の色、骨格タイプ(ウェーブ/ナチュラル/ストレート)などで口コミを絞り込んでいる。口コミは単なる評価情報ではなく、ユーザーが自分に最適な商品を見つけるための検索対象であり、検索の高度化を支える重要な基盤なのだ。

検索×UGC×AIで最適な提案を実現
検索×UGC×AIで最適な提案を実現

商品詳細ページの整備は不可欠

もう1つ見落としてはならない要素がある。それが商品詳細ページという、ECサイトの最も基礎的なデータレイヤーだ。現在、海外のEC企業はこの商品詳細ページの整備に最もAIを活用しているという。まずは商品データが正しいか、最新か、欠落がないかをAIを利用して整備する。商品詳細ページという基盤が整って初めて、AIはマーケティング領域で力を発揮できるのだ。

商品詳細ページが整っているECサイトでは、AIが商品情報を参照・理解しやすくなる。AIは、ユーザーから相談を受けた際に商品データが正確で、UGCが豊富で、高速な検索基盤を備えたサイトを優先的に参照し、ユーザーに対してそのサイトの商品を紹介しやすくなる。

商品詳細ページを正確かつ最新の状態に整備し、そのうえで高速な検索基盤を用意する必要がある。これらがそろって初めて、「ロジックをどうするか」「プロンプトをどう最適化するか」といった高度なAI活用について議論できるようになる。「商品詳細ページのできが悪いが、AIでなんとかカバーしてくれないか」という要望は現実的ではない。(山崎氏)

ZETA 代表取締役社長 山崎徳之氏

エージェンティックコマース時代のEC戦略を提案するZETA

ZETAはCX向上生成AIソリューション「ZETA CXシリーズ」を提供しており、主力製品としてAIによる自動最適化と高速な検索性能を備えたEC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」、レビューを複数の評価軸で収集し、サイトコンテンツの充実を支援するレビュー・口コミ・Q&Aエンジン「ZETA VOICE」、商品説明やレビューから関連するキーワードを抽出するハッシュタグ活用エンジン「ZETA HASHTAG」を展開している。とりわけ「ZETA SEARCH」は処理速度が速く、膨大な検索条件を高速に処理できる点で高い評価を得ている。

ZETAが提供するソリューションの概要
ZETAが提供するソリューションの概要

ZETAはトータルで1750万件以上の口コミデータを保有している。また、「ZETA CXシリーズ」は国内外のEC企業に幅広く導入されており、業界専門誌が発表するECサイトランキングのうち、上位100社の約3割がすでにZETAの検索エンジンを採用している。ZETAの検索エンジンを導入した結果、検索結果離脱率が40%減少し、さらに「ChatGPT」経由のアクセス数が11.7倍に増加したという事例もある。

AI経由で流入するユーザーは購買率や1回あたりの購入金額、リピート率が高い傾向にある。つまり、AIはロイヤルカスタマーを連れてくる可能性が高いと考えられる。だからこそ、「AI-Ready」なECサイトであるかどうかが重要になる。AIがユーザーにECサイトを紹介しなければ、結果としてロイヤルカスタマーが流入する機会を失うことになるからだ。

また、ハッシュタグを踏むユーザーも、ロイヤルカスタマー率が高い傾向にある。ハッシュタグを踏むという行動は、ユーザーが「自分の興味や文脈に合った商品を探したい」という意図の表れともいえる。AIが文脈を理解して商品を探す時代において、ハッシュタグはその文脈データとして極めて価値が高い。ハッシュタグを整備し、文脈データを豊富に蓄積しておくことも重要な戦略と言えるのだ。ある大手雑貨店の事例では、「ZETA HASHTAG」を活用した結果、CTRが3倍に向上し、ハッシュタグページ経由のセッション数は2.3倍に増加した。

検索はECにおいて長年重要な役割を果たしてきた。UGCもまた、ユーザーの信頼を支える不可欠な要素である。そしてAI時代の到来によって、検索性能への要求はかつてないほど高まり、UGCの重要性も急速に増している。

ZETAは10年以上前からCX向上に徹底して取り組み、「ユーザー体験を高めるために必要なデータは何か」を追求してきた。その結果、同社が磨いてきた検索・UGC・ハッシュタグという領域が、AIが購買体験に深く入り込む現在において、より大きな価値を発揮するようになっているのだ。

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